「ごめんね、あたし……」
「あ、こら、泣くな!」
うつむいたあたしが泣き出す前に、イマドが止めた。
「けど……」
「だから、いいんだって。
どうせやらなきゃいけねぇんだ、ここで一緒にやっちまおうぜ」
彼はいつも優しい。
「ごめん……」
「だ〜か〜ら、謝らなくていいって。
ともかくまずは朝メシ食って、それからな。それでいいだろ?」
「あ、うん」
一方的に言い立てられて、思わずうなずいた。
だいいちイマドの言ってることは、別におかしくもない。
「よし、それで決まりな。んじゃさっさと食いにいくか」
「そうだね」
2人で部屋を出る。
食堂は2層ほど下で、取った部屋でだいたい座る場所が決まっていた。
――どれにしよう?
メニューを見て、毎度のことながら考えこんでしまう。
書いてあることは読めるけど……どんな料理か分からなかった。
イマドのほうはすぐ決まったみたいで、もうウェイターを呼んで頼んでいる。
「すみません、それでお願いします。
――あれ? お前頼まないのか?」
「だって……」
そんなあたしをじっと見ていたイマドが、ふっと笑った。
「肉と魚、どっちがいいんだ?」
「え? お魚、食べたいかな……?」
急に問いかけられて、反射的に答える。
「そうか。そしたらすみません、これも追加してもらえますか?」
「かしこまりました」
気がつくとイマドがあたしの分まで頼んでくれていた。
「ありがと……」
「いいって。だいいちいつもだしな。
にしてもこの程度かよ。んなの俺でも作れるっての」
まだメニューを眺めながらの彼の言葉に、思わず絶句する。
――そりゃイマド、料理上手だけど。
でもいくら船内の食堂とはいえ、ちゃんとしたシェフが作っているはずだ。
なのにそれを「この程度」だなんて……。
「ねぇ、イマドって……どうやって料理とか、覚えたの?」
いったいどこで覚えたのか、不思議になって尋ねる。
「ん? まぁいちおう、最初はお袋からな。
あとは適当にそこらへんでか?」
「ふぅん……」
きっとよっぽど家事が上手なお母さんだったんだろう。
――あれ?
いちど納得してから、また不思議に思った。
「ねぇ、イマドのお母さんって、だいぶ前に亡くなったって……?」
「ああ。3つの時な」
「……? それでどうして……?」
たった3つくらいで、こんなに覚えられるものなんだろうか?
なんだかよく分からない。
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