第四話 [遭遇]
クローと莉未は公園を出て少し歩いた場所にあるT字路に来ていた。
車や人通りは少なく、辺りは静かだ。
「ここ」
クローに抱っこされている莉未はT字路を指差した。
「ここでしんだの」
見ればT字路の近くにある電柱のところに花束やお菓子が置かれていた。
「ここでね、ママと歩いてたの。そしたらきゅうにうしろからくるまがやってきて……」
跳ね飛ばされた。
即死だったと書類には書いてあった。
「(ブレーキ痕はない………)」
ってことは二人を元々車で轢こうとしていたか、居眠りか飲酒か………
「(でも……)」
クローは書類を取り出す。
書類には莉未とその母親を轢き殺した男の写真と証言が書かれている。
居眠りをしていた訳ではないし飲酒もしていなかったらしい。
麻薬やそういうものを使った形跡も無い。
男性の証言では急に車が母子の方に向かって走り出し、ブレーキも効かなかったという……
「(となると……)」
クローの頭の中に一つの仮説が浮かび上がった。
可能性はある。
クローは一人確信する。
そして莉未をちらりと見た。
莉未は楽しげに足をブラブラさせながら道を見ていた。
その莉未をみてクローは目を細める。
「(やっぱりこの子………)」
「?どうかしたの?お兄ちゃん」
莉未がクローの顔を覗き込んだ。
莉未の顔は心配そうだ。
「いや、なんでもない。一回天界に君のお母さんが行ってないか確かめてみるよ」
クローは歩きながら天界と通信するためにイヤホンとマイクがついた小さな機械を取り出す。
イヤホンを右耳につけるとマイクが口元に来る。
暫くするとガガガッと音がした。
『こちら中級援護部隊。ご用件をどうぞ』
「柊 和恵って人の魂って天界に還ってきてるか確かめて欲しいんだけど」
確か書類に書かれていた母親の名前はこれで合っていたはずだ。
『了解しました。確認できましたら連絡を入れます』
ブツッと通信が途切れた。
連絡を待つしかないか……
いたらもうこれで終わりだからいいんだけど……
「よし、じゃあ次は何処に探しに行く?」
「ん〜とねぇ……お家!!」
「はいはい」
クローは羽を広げると空に飛び立った。
そんな二人を見つめる黒い影があった。
+++++
「はぁ〜……」
疲れた。
本当に疲れた。
あれだけ飛んだり歩き回ったりしてたらなぁ……
莉未と会って、母親捜索を開始したのが朝の9時頃。
今は何時かは分からないが太陽は西に沈もうとしており、空が少しオレンジ色になってきていた。
《見ィ〜ツケタ!!》
急に不気味な声がした。
低くて、少し枯れているような不気味な声。
クローはゆっくりと後ろを見た。
傍で楽しそうに地面に絵を描いていた莉未もそっとクローにしがみつく。
「下級悪魔………」
現れたのは下級悪魔。
下級悪魔は全員髑髏の仮面をつけ、黒い布を被っている。
大きさは30センチくらいで手には鎌を持っている。
そして何より喋り方が片言というのが一番の特徴だ。
「やっぱり……悪魔が絡んでたか……」
クローはめんどくさそうに言う。
悪魔。
それは天使と相反するもの。
魔界という場所に住み、死した人間の魂を取り込もうとする。
取り込まれた魂は二度と天界や人間界に還ることはできない。
そのまま悪魔になってしまうのだ。
または悪魔に食べられるか。
《ソノ子供ヲ渡シテ貰ウゾ!!天使!!!》
悪魔は鎌を構えた。
+++++
キィィィンッ
ガッ
ドゴッ
悪魔の鎌は近くにあった塀や電柱を切り倒していく。
クローは莉未を抱えて瞬間移動して全ての攻撃かわしていった。
「お兄ちゃん………」
莉未は心配そうにクローを見つめている。
《天使。オ前ノセイデ予定ガ崩レタ》
悪魔は鎌を振り回しながら喋る。
《当初ノ予定ハ女共ヲ殺して連レテイクダケダッタガ………オ前ノセイデ作戦ヲ変更シタ》
すると悪魔の後ろに三つの影が現れた。
「!!」
「あ……」
莉未は目を見開く。
「ママ………っ」
現れたのは二体の下級悪魔と莉未の母親だった。
母親の首元には悪魔の鎌が突きつけられている。
「莉未………っ」
《サァ!!ドウスル天使!!助ケタカッタラソノ子供ヲ渡スカ………ソノ銃デ自分ヲ撃テ!!!》
「…………」
クローは悔しげに悪魔を睨む。
悪魔三匹はケタケタと高笑いをしている。
するとクローが急にニヤリと笑った。
「お兄ちゃん……?」
「……………」
クローは無言で莉未を下ろすと前に進み出る。
「後ろ、向いてな」
クローは後ろにいる莉未に笑いかけると銃を手に取る。
その銃口は悪魔ではなくクローの頭に向いていた。
「お兄ちゃん……っ」
莉未は何かを感じ取ったのかクローに駆け寄ろうとする。
クローの引き金を握る指の力が強くなる。
「待ってよ!!お兄ちゃん!!!」
バァァァァアアンッ
乾いた銃声が響いた。
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