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東方凡人記:7話
 小屋を住居としてから二週間後。

「もうちッとこの野菜安くして下さいよ!」
「これ以上安くしたらウチが赤字よォ!」
「クッ……」

 ……野菜売ってるオジさんと値段交渉している俺であった。思いの外、人里での暮らしはわりと快適で周りの人もいい人ばかりとあってかすぐに馴染んだ。
 こんなエアコンも無いド田舎で暮らせるかコノヤロウと一人ごちでいたが、俺にもちゃんと適応能力が備わっていたらしい。
 風呂とかトイレは? 等という俺の不安要素はまだ俺の知らぬ河童さんがいつのまにか水洗式のトイレや給湯機を取り付けてくれたらしい。(小屋もいつの間にか拡張されていた。もうこれ小屋じゃない)
 恐るべきは河童の技術。小さい頃河童(人形)の頭のお皿ぶっ壊してごめんなさい。
 そして俺の資金源なのだが寺子屋の授業の手伝い(と言っても掃除、教材運んだりする程度)や、人里の住民の手伝いで少しずつ稼いでいる。こういった仕事を与えてくれたのも慧音さんだ。感謝しまくりである。
 後に聞いたのだが彼女は半獣で里の守護者らしい。驚いた。半獣ってのがよくわからなかったけれど、妖怪ってことでいいのだろうか?

 と、こんな感じで過ごしている。特に妖怪に襲われるといった事もなく、本当にふつーに暮らしていた。
 今、食材を買い終えて家でお茶を飲んでぐうたらしている。このまま一日が過ぎるんだろうなぁとほのぼのまったり過ごしていると。

ドンドン!

「おいリュート! いるか?」

 そんな事はなかったぜ! せっかくぐうたらしていたのに。はーいと戸を開けると酒屋のおじさんがいたのだが。

「どうしたんですか?」
「ああ、ちょっと手伝ってほしい事があってよ」

 よしきた。(ゼニ)は急げってね。

「いいですよ」
「そうか! 助かった、酒の配達に行ってほしくてな」
「配達……?」

 人里内で酒の配達ってそんなに量が多いのか? それとも忙しいのか? 猫の手もかりたい程に。

「いいですけど何処に配達するんですか?」
「え、ええとな」

 何故目をそらす。なんだか面倒くさそうだ。

「じゃあ僕忙しいので寝ますね」
「忙しいのに寝るっておかしいだろ!?」

 ……チッ。

「じゃあ早く場所を言って下さいよ。配達場所わからないと配達しようもないじゃないですか」
「……博麗神社だ」
「おいマテやおっさん」

 道中に妖怪出る確率高いだろうがボケ。しかも博麗神社と言えば幻想郷の異変解決のプロフェッショナルと言われる巫女が居るそうなのだが、そこの神社は妖怪に占拠されただとかまことしやかに噂されているのである。

「頼むッ!! これでどうだ!」

 と指を3本立てる酒屋。

「少ないですねえ」
「なっ……!」
「コレならいいですよ」

 俺は指を5本立てた。ファイブフィンガー。

「くッ……いいだろう。それで頼んだぞ」

 ククク、地獄の沙汰も金次第よ。正直、あまり意味は知らない。

「任せて下さいよ」


☆☆☆☆☆


「これが神社までの地図。そして……」

 バッ!! とたくさん詰んでいるそれを指差す酒屋のおじさん。

「これが配達してもらう酒だ!!」

 一升瓶がわぁいっぱい。

「こんなに運べる訳にいでしょう!?」

 驚いて若干かんだ。

「台車使えばいいじゃねぇか」

 簡単に言ってくれる……! 今思えば結構安運賃で引き受けちまったんじゃ……!

「酒屋……貴様(金交渉を)やりこんでいるなッ!!」
「答える必要はない」

 汚いなさすが酒屋きたない、これで俺は酒屋が嫌いになったな。だってあまりにもひきょうすぎるでしょう?
 心の中で呟いたセリフに返事をするものは誰も居ない。引き受けた手前断りづらいのでトボトボと外出の準備をした。



………

……………

ガラガラガラガラ。ガチャガチャ。

 台車を押す音と酒瓶がぶつかる音以外何も聞こえない。台車を押しつつ周りにくせ者(妖怪)がいるか警戒する俺。

「道なんて、整備、されてねぇから、台車押すのしんどいんだよっ!」

 こういう時だけアスファルトが恋しくなる。妖怪がでないか結構不安でたまらない
 ……ま、まぁ、ヤツらが出たら俺のブレードで一刀両断してやる。あぁ、そうそう。RPG風に俺の装備を教えるとしよう。

頭:なし
体:和服
手:軍手
足:スニーカー
武:謎の刀

 何このオープニング終わったばかりみたいな装備。せめて『かわのよろい』は欲しいな。防御力的に。
 って何が防御力やねーん!

ガラガラガラガラ。ガチャリガチャリ。

 あぁ、台車よ。俺の突っ込みに対して返事をしてくれるのはお前しかいないようだ。

 ……。

 少し休もう。俺は疲れている。そこら辺にある石に腰掛ける。ついでに少し遅いお昼ご飯にしよう。シュルル、と腰に引っ掛けていた巾着袋から取り出す。
 おにぎり(うめぼし)×2だ。梅干しのかおりでよだれ出てきた。

「うん、うまい」

 口いっぱいに頬張りながら食べる。このすっぱさがたまらん。こういった自然を眺めながらお昼ご飯を食べるのもオツなもんだ。
 外はマズい空気にコンクリートの森だからなぁ……。都会っ子の俺はこういった自然の空気なんて味わったこともなかったしな。とか考えている内に二つめのおにぎりはもう俺の口にピットイン。
 指についた米も残らず食べる。お米は八十八のなんとかっていうし。
 腹ごしらえも済ませたしよし、いくか。と、台車を押そうとしたのだが。

「向こうだけ一点して暗くなっている所が……?」

 そう、何やら黒い大玉があっちへこっちへふよふよと飛んでいる。まさか、あの不思議な能力は……森で出会ったルーミアとかいう暗黒幼女か!?
 宵闇を操るルーミアであるが昼間だとわかりやすい能力で助かった。と、とりあえず台車はこの木の近くに隠しておいて、茂みに隠れよう。
 バッと草村に隠れる俺。するとこっちへゆっくりと来るまっくろくろすけ。やべえ!! こっち来てるよ! 息を殺して気配を絶て俺! せぇーの! と息を止めて気配を殺す。
 心配する程でもなかったようで俺の隠れている草村を通り過ぎる黒いボール。気付いてない様だ。余裕、余裕。
 が、通り過ぎていったかと思えば台車を隠した木の方へゆっくり近付き……硬い物がぶつかる音がした後ぼてっとルーミアが落ちた。ついでに、闇も消えた。
 ……何で真正面にある木にぶつかってんの? まさか、前見えないの……? もしかしてあの妖怪、意外と頭悪いのではないか。

「あいたたたた……あれ? 何でこんな所にお酒が?」
「バカ野郎! 人の配達物に手を出すな!!」
「え?」
「あ」

 折角隠れていたのに飛び出す俺。バカなのは俺だった。

「あ! この前土投げてきた人間!」

 プンスカ怒るルーミア。知るか。

「よく言うぜ、殺そうとしてたクセによ」
「食べようとしてたんだよ」
「同じだろアホ!!」
「夜にうろついてる人間がいたらとって食べていいって聞いたよ」

 誰だよそんな物騒な事いうヤツは。それに、俺は天空でらんらんと自己主張している太陽を指差した。

「今は昼だ」
「そーなのかー」
「そうなのだよ」

 ……もうね、帰っていいですか?

「俺は早くこの酒を配達しなきゃならんのでな。暇な奴に構っている時間はない」

 夜に台車押して外をほっつき歩くとかそれこそ妖怪に出会ってゲームオーバーだ。さて通らせて頂きますよ、と強引に前に進もうとした時にルーミアの眼を見たのだが。……明らかに話を聞いていない様子だったし補食者の眼だアレは。ヤバい。

「で、あなたは食べていいの?」
「ダメだ。妖怪に攻撃しそうで挙動不審な人間なら食ってもいいぞ」
「目の前にいるのがそうなのかな?」
「チッ……良薬口に苦しって言葉知ってるか」

 こうなったら仕方ない。腰に差した刀に手をかけ、鞘と柄をしっかりと握り、

シャッ!

 刀を抜いて正眼に構える。勿論見せ掛けだけだ。抜刀の動作だけ練習したのでサマにはなっている、と思う。刀の扱いに長けている人が見たらバレバレだろうが。

「今回は本気なんだね、お兄さん」
「お兄ちゃんと呼べ!」

 先手必勝!

「だァッ!!」

 だんっと地面を蹴り間合いを詰め袈裟懸けに斬りかかった。ブンッ! とただ空を斬る俺の刀。
 相手はトン、と地面を軽く蹴ると同時に宙に浮きそのまま飛翔した。こうなれば手の施し様がない。攻撃が届かないのである。

「飛ぶのは卑怯だろ!」
「人間って飛べないの?」
「飛べねえよ!!」
「私の知ってる人間は飛んでるんだけどなあ」

 何処のハイスペック人間だ。そんな奴等と俺を同じカテゴリに分類してくれるな。

「でもあの人間達以外は飛んでなかったなあ」
「そうかい」

 逃げる方法を必死に考えるが全く見つからない。ええと、土、土……二度目は通用してくれないか、流石に。

「逃げようとしても無駄だよ」
「逃げる? 俺の妖刀が100匹目の血を啜りたいと慟哭しているぜぇ!」
「目が泳いでるよ?」

 目、目はスイムしませんし? ビ、ビビッテナイヨ。たじろいでいると「隙あり!」と弾幕をバスバス放って来た。

「うおお!」

 右へ跳び、左へ跳び、足を大きく開いて垂直に飛ぶ。ナイス回避俺。カッコつけてる余裕はないらしく間髪入れず次から次へと来る弾幕。さっきの弾と違いバラけて飛んできている。だが弾の隙間は結構広い、避けられる。……ん? バラけて?
さっきの弾は纏まって俺の方に来た。だが今の弾は俺を狙ったというより弾をテキトーに放ったという感じ。慧音さんに弾幕について聞いた時の言葉を思い出す。

『弾幕について教えてほしいだって?』
『はい。もしも妖怪に襲われた時に役立つかもしれませんし。ルーミアやチルノみたいなガキ連中に、ね』
『……見た目は子供でもリュートより年上だぞ』
『ウソ!?』
『本当だ。妖怪は寿命が人間よりずっと長い。見た目で判断するのは命取りになるぞ、と。弾幕についてだったな』
『はい、お願いします』
『妖怪の弾幕なんてそれぞれに個性があるからな…なんといえばいいか』
『避け方のコツだとかそんなのはないですか?』
『避け方のコツ、か……。弾の種類は簡単に分けると2種類ある。自分を狙ってくる弾か、拡散させる弾の2種類だ』
『なるほど』
『拡散されている弾は落ち着いて弾を見る事。見た目は派手だが全てが自分の方にとんでくる訳じゃあない。そして自分を狙ってくる弾は意外と避けるのは簡単だ』
『大きく移動して避ければいいんですね』
『いいや、その逆だ。『最小限の動き』で回避だ。大きく動いて避けるとその分弾が分散されてそれこそ悲惨な事になる。カスらせるくらいの心持ちがいいかもしれないな』
『へぇー。ありがとうございます。そういえば慧音さんも半獣の妖怪なんですよね』
『ああ、それがどうした』
『何歳なんですか……ってどうして近付いてそんな怖い顔してるんですか! やめて! やめて!!』


ガッ! ゴチン!!


 嫌な事まで思い出した。これからは女性に年を訊くのは絶対にやめようと思います。……今はそんな事を考えている暇は無い。
 落ち着いて相手の弾を見る事。これは自分を狙ってくる弾だ!

チリッチリッ。

 弾が服を掠める音がする。これがチョン避けっていうやつだな!

「グレイズするなんて余裕いっぱいだね……」

 は? グレイズってなんぞ?

「グレートだかグレープだか知らんがお前の攻撃は見切った」

 お前の攻撃はもう当たらない! だからこのまま戦えば痛い目を見るぞ!
 雄たけびをあげる様に言い放つと刀を右手でヒュンヒュン振って片足立ちになり、左手を相手に向けていよぉっ! と謎のポーズをとった。痛っ、足ちょっと切った。血、血が出てる!?

「へえ……?」

 なんだか雰囲気が変わった。なんで俺は一々相手をおちょくるのか自分でも知りたい。

「じゃあこれを受けても同じ事が言えるかなあ?」

 そう言うとルーミアがカードを手に取る。カード……? 成る程、あれがスペルカードとやらか。
なんとか、カード自体に特に効力といった物は無く、スペルカードルールとかに用いられるらしい。今はスペルカードルールとやらじゃないのに。宣言するのがクセになってるんだろうか?
 つーか、余裕ぶっこいてる場合では無い。

「ザコ相手にスペルカードを使うのはどうか思います。最近の妖怪の品格が疑われますね」
「そーなのかー」

 やはり話聞いてない……って何だあの黒い粒は? 空に急速で接近してくる黒い物体。

「なあ、ルーミア。あの黒いの何だ?」
「また子供騙しでもしようって? そんなんじゃ私は騙せないよ」

 嘘じゃないって。確かに振り向いてたら砂投げてたけどさ。

「夜符……!」

 うわっ! このままこっち来たらぶつかるぞ! 急いでしゃがみ込み、頭を抱える姿勢に入った。

「『ナイトバー……きゃああああ!?」

ごきゃっ。

 鈍く生々しい音がしたなぁ、と思ったらルーミアは激しく回転しながら地面とキスしていた。
 だから言ったじゃないか。というか、今のは人間だったら頚椎イッてそうな着地だったんだけど。しかし今の黒い謎の飛行物体Xは一体……。

「何か轢いたような気がしたが気のせいだったぜ」

 誰だお前は!? といった感じに振り向くと……箒に跨った女の子? ふ、古臭ぇ魔女ルックだ。

「いや、おもいッきり轢いてましたから」

 横でボロ雑巾みたいになっているルーミアを指差す。

「ちゃんと前見てない方が悪いぜ」

 見てないのはどっちだよ。

「で、お前は誰だか知らないがこんな所で妖怪と何してたんだ?」
「……失礼。リュートと言う。今さっき食べられそうになっていた。偶然とはいえありがとう。助かったよ」
「何だ、襲われていたのか。こんな所に一人で歩き回っていると妖怪のいい餌だぜ? あ、そうそう。私は魔理沙。普通の魔法使いだ」

 魔理沙……? それに白黒のカッコウの自称普通の魔法使い。あ、もしかして。

「森で倒れてた時人里まで届けてくれたってのは君か?」

 訊くと魔理沙は「ん~?」と顎に手を当てて考え込んだ後、閃いた様に顔を上げた。

「あの時森でぶっ倒れてた奴か」

 そう。そのぶっ倒れてたやつ。

「その時のお礼を言いたかったんだ。ありがとう」
「礼なんていいぜ、たまたま通りかかっただけだしな。何故か寝てたバカ妖精は放っておいたけどな」

 多分チルノも轢かれたのだろう。その光景が簡単に予想できた。ざまあみやがれ。

「ま、さっさと人里に戻った方がいいぜ? またコイツの様な妖怪に襲われるかもしれないしな」
「そうしたいのは山々だけど博麗神社に酒を届けてて」

 ほら、あれ。と台車を指差す。

「今度の宴会で使う酒か。あの量を徒歩で配達って中々無茶をするな」
「やっぱりおかしいよな……?」

 あの酒屋のおっさん覚えてろよ。仕込みでもしている時に忍び込んでドリルカンチョー決めてやるからな。

「そうだな、私が神社まで護衛してやるぜ」
「え?」
「宴会で使う酒がダメになったら私も困るからな」

 魔法使いっていうくらいだからやっぱり強いのかな。でも女の子に護衛される男の人って。

「だ、大丈夫さ。いざとなったら妖怪なんぞ刀の錆に……!」
「そうか、じゃあ私は一足先に」
「でも道がちょっと解らないかなーなんてね!! ね!!」
「どっちなんだよ。痛い痛い、腕を離せ」

 こりゃ失礼。えほん、と咳払いをひとつする。

「じゃあお願いするよ魔理沙」
「任せとけ!」

 どんっと胸を叩く魔理沙。何故かその姿はとても頼もしく見えた。道中に護衛がつくなんて俺も中々運がいいのかもしれない。
どうでもいい補足ですが流斗君が刀を使った理由は刀に注意を向けさせる為です。スキが出たらまた砂で目潰ししようという魂胆です。しかし刀に警戒すらされていませんでしたが。


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