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東方凡人記:3話
「疲れた、歩くのしんどい……明日絶対筋肉痛だクソが」

 結局、ルーミアとかいう暗黒幼女からは逃げられたんだが状況は変わってない。むしろ悪化している。クソが。
まず俺の腕のケガ。肩の少し下辺りが火傷を負っている様に爛れ、ズキズキ痛む。プラス打ち身でアザもできてやがる。クソが。なんだか最近クソばっか言ってる気がする、クソが。……話を戻そう。
 そして服。ビリビリに破れている。妖精の光弾を掠めたり逃げてる時に服を木の枝に引っかけたり最悪だ。
あぁ、少し触れたかもしれないが今着ている服は上下青いジャージだ。中には黒い長袖のTシャツだけ着ている。詰まる所部屋着である。
 いやね、近所のスーパーにお使い行く程度だからファッションなんて気を使わないって! 普段は出かける時くらいちゃんとしたカッコウしてるッての! はい、どうでもいいっすね。そもそもあまり外出しないけどね……。だから出会いもなければ彼女も……。

 ウォッホン!

 でもまぁ、動きやすい服装でよかった。ダボダボなズボンなんて着てたら絶対逃げれなかった。裾が引っかかってこけるのは目に見えてる。

「しかし、腹減ったなぁ……」

 今考えたら昼ご飯食べてから結構時間も経っている。1時頃にお昼ご飯食べて、3時くらいにお使い頼まれて一悶着あって……今何時だ?
 時計、ケータイだ! ケータイ! こんな便利な現代人の神器を忘れるとは俺らしくない。ポケットに常に入れてあるからな。ってない!?
 ポケットに手を入れたり裏返したりして見るがそれらしき感触は一切無い。出て来てもせいぜい砂程度。後ろポケットも確認するが入っていなかった。逃げている最中に落としちまったかなぁ……。まぁいい、機械なんぞに頼らん。
 お腹をさすりながら考える。今は……周りの暗さと俺の腹時計から考えて大体22~24時頃だと思う。適当にも程があるが。
 はぁ……今日はオールナイトになりそうだ。一晩くらいならどうにかなるかもしれないがこれから何日も森で彷徨う事になったらどうしよう。野草とか食えばいいの? でもどんな野草食えばいいの? 雑草? 雑草という草は無いッ!!

チョロチョロ。

「ん……?」

 ネガティヴ思考を通り越してハイになってきた俺に一筋の光が差し込んだ。これは水の音、とすると……水場!!
 よしきたとばかりにさっきまで重かった体が急に軽くなり、水場まで駆けた。


☆☆☆☆☆


「うはッ! 湖だッ!」

 ジャバジャバ、JAVA。と顔を洗ったり喉の渇きを潤わさんと両手で水を掬って飲む。

「ぷはぁっ!」

 おいしい。水がこんなにおいしく感じるなんて……。くやしいっでも感じ(誰も得しない為省略)
 腕の傷も洗っとこう、ボロボロな服の袖を捲ってとな。ええい、面倒だ! 直接腕ごと水につけちまえ。

「しみるっ!」

 でも冷たくて心地良い。ばしゃり、と転がりまわったせいで汚れた顔を洗ってすっきり。
 ガーゼと包帯が欲しいな。あと塗り薬。まぁ、そんな便利な物が森に転がっている訳はないので我慢するしかないのだが。
 そして水場で休息をとることやや数分。吹き抜ける風に寒さを感じてきた。うぅ、流石に春とはいえ夜は寒いな。少しでも暖をとろうと自身の体を抱き締める……が、一向に暖まらないしむしろどんどん寒くなる一方である。

「ってさぶっ!! 寒冷季突入ですか!」

 幻想郷とやらの春はこんなに寒いのか、と考えたが少し引っかかることがあった。――さっきと似たようなシチュエーションじゃないか? と。ルーミアの時だって急に暗くなった時に出現したんだし。
 そういえばあのガキ何者なんだ? 人間を食うとか言ってたから……妖怪? まっさかぁ~。と、とりあえず今はそんな事を気にしている場合ではない。
 何か出てくる。さっきより増して寒くなってきたし絶対出てくる。やっぱり妖怪か!? 雪女か、妖獣フェンリルの二者択一。いや、選択肢少なすぎるだろ。畜生。寒がりな俺に対しての嫌がらせか――ごちゃごちゃ考えている内に来たぁっ!?

 ばっと突然出てきた小柄な影を注視する。

「アンタ、人間のくせにアタイのなわばりに来るなんていい度胸じゃない」


 ……。またガキか……。いい加減にしてくれ。
 なんだか氷柱みたいな羽を背負い、水色ワンピース。そして大きいリボンを着けて可愛らしい格好をしている割に気の強さを感じさせる勝気な目をした活発そうな女の子……これは羽が生えてるし妖精、なのか? 色合い的に寒そうな格好しやがって。

「すまない、僕はまだ幻想郷に来たばかりなんだ。だからここが君の縄張りだなんて知らなかった。すぐに立ち去る」

 無駄な争いは避けようと無難に下手に出た。ガキんちょでも羽生えてるしなんか浮いてるしとりあえず人間でない事は解ったので。

「へぇ、アタイの縄張りだって知ってて来たんだ。いい度胸してるじゃない」

 が、全く通じてはいない様で。話を聞かないやつだな!!

「アホかおめぇ」
「誰がバカよ!」
「俺はアホかって言ったんだ」
「そんなの一緒じゃない!」

 尤もである。しかし初対面にして何故かバカという言葉がしっくりくる妖精だった。

「最強の妖精、チルノを前にしてバカよばわりとはしつれいな人間ね!」
「天災だ……」

 頭を抱える俺。俺が何をしたというんだ。最強なのはお前の頭じゃないのか。無論、別の意味でだが。

「そうよ、アタイはてんさいよ。わかってるじゃない」

 少し機嫌がよくなったみたいだ。でもな、俺が言いたいのは天からくる災いと書いて天災だ。頭痛が痛くなってきた。バカは相手にしていても仕方ない。
 頭痛が痛いとか言っている時点でそのバカといい勝負している気はしないでもないが。

「それじゃあ最強で天才の妖精チルノ殿、私めは早々に立ち去るでござる」
「待ちなさいよ」

 ギクっと立ち止まる。早くトンズラしたいが逃げるタイミングが見つからない。

「ええと、今からバイトあるので帰ります……」
「やっぱりアンタ生意気だからおしおきしないとね」

 と言うとチルノのまわりから氷が形成されて……!

「飛んできたっ!?」

ズガガガガッ!

「のわっ!!」

 氷柱がザクザクと木に突き刺さり、寸前で回避した俺はそれを見てぞっとした。
 氷弾かっ!? 当たったら痛いじゃすまねーぞ!!! ツララ! ツララがたった!! とか考えてる暇はない訳で。

「アンタなかなか人間の癖に避けるのうまいじゃない」
「そりゃどうも」

 正直、あれは咄嗟に体が動いただけで偶然だったのだが。ばかばか撃たれたら避ける自信は無い。
 ルーミアのようにバルス作戦こと目潰しでいくか……? でも、さっきからこんなガキにばっか追い掛けられていい加減腹がたってるんだ。よし、一泡吹かせてやる!!
とりあえずこの広い湖では制空権を得ていない俺では不利なので森に逃げ込む。

「逃がさないわよっ!」
「撃たせるかっ! くらえッ!」
「痛いっ! いたっ!」

 掌いっぱいに詰めた石ころを投げる。ふはは、土と違って痛いぞー!

「こっちまでこいよ、おバカさん」
「むぐぐぐ……!」

 顔がタコみたいに真っ赤になるチルノ。何やら堪えている様だが後少し挑発すればその理性も崩壊するだろう。

「ビビってんのかッ! 来いよ雑魚ッ!」
「むきぃ~~!!」

 予想通りの単細胞。さっさと隠れよう。ザザッと直ぐに距離を取り、近くの草むらに身を隠す。

「出てきなさいよ!! ビビってんのはアンタでしょ弱虫!」

 なんとでも言うがいいさ。実際ビビってるから隠れてますし。

「そこよ!!」

 バッと手を翳し氷柱がズガガガッとまた放たれた。俺の隠れている場所とは明後日の方向に、だが。

「どこいったのよ!!」

 俺を見つける事ができずイライラしてじたんだを踏むチルノ。地に足を着けたその瞬間を待っていたッ!

「無想転生」
「ひぁっ?!」

 蛇足だが北○の拳の究極奥義。哀しみを背負った者にしか出来ない、某世紀末格ゲーでは後ろに回り込む技。まぁ、ただ単に隠れてから出て来ただけなんだけどね――あらよっとぉ!
 ガッシリと両足を掴んだ、が。

「冷たっ!!! ドライアイスかお前は!」
「何すんのよ! 離せ変態!!」
「変態だと? 流斗神拳奥義!」

 紳士に対して何たる言い草。やはり手加減する必要は無い様だな……! 火傷……もとい凍傷になるのを覚悟して足を掴んだまま駆け抜ける。目指す先は、

「そぉい!!!」

 湖! ざっぱーんといい音が辺りに響く。 日本(JAPAN)の湖にジャッパーンってか!! ざまぁ見やがれ!!!
 冷えた手をふーふーと息で温めながら勝利の余韻に浸っていた(何故か俺の心は非常に寒い)。のだが。
 ブクブクブク……。と浮いてくるのは泡のみで肝心のチルノが浮いてこない。しまった、やり過ぎた! ちと大人気なさすぎたか?
 慌てて放り投げた湖に近寄り、声をかけてみる。

「おい! 大丈……」

 大丈夫か? と言おうとしたのだが、いつの間にか俺は仰向けに倒れていた。……何が、おこっ、た? 足に力が入らない……。

「アタイとしたことが人間にここまでやられるなんて」

 今気付いた。アゴを蹴り上げられたのだ。小さい体に似合わず、結構な力を持ち合わせているようで油断していた事もあって一撃で倒れてしまった。
 馬鹿な、こんなガキに、高校、生がッ!

「ぬ、ぐっ……」

 ノックアウトされたK1選手ってこんな感じなのだろうか。視界が少しぼやけ始め、同時に頭に衝撃が加わった。

「アタイをここまでバカにした分お仕置きするんだから」

 この、ガキ……! 俺の頭を踏んでやがる……!

「てめ、ぇ」

 覚えてろよ、と一言吐こうとしたがそのまま気を失った。

「はぐぅ!?」
「あん? 何かぶつかったか?」

 ……最後にそんな会話が聞こえた気がした。
なんだか気絶してばかりの主人公です


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