エピローグ
ここは何処だ。先程まで一面真っ白な世界を駆け抜けていたハズだけど。
瞼が重い。目が開けられない。体がだるい。
だがしかし。
「ふんっ」
力を振り絞り目を開ける。すると辺り一面白世界……では一応あるがちょいと違う空間が目に入る。
なんともいえない薬臭い、この感じは……。
「ここは……?」
病院。左腕に違和感を感じ、そちらを見ると点滴が施されていた。
他にを誰かが来たのだろうか、お見舞いの品らしき物が置いてあった。
「そっか。俺、トラックに轢かれて――」
でも、俺が過ごした幻想郷での出来事は一体どう説明できるのか。――いや、出来る。反語。
単純にあれは俺の見ていた夢だったんだ。長い、長い、楽しかった夢。
覚めて欲しく無い夢もいつかは消えてしまう。まさしく俺の願望が作り出した『幻想』の世界って訳か。
くっくっく、と一人自嘲の笑いを浮かべた。
そりゃ、あんな事が現実で起こる筈もない。何時もの妄想癖が祟った夢だったのさ。
……けれども、なんでこんなに苦しいんだ。胸の奥にあるつかえが取れない。
突如頬に何か雫のようなモノが垂れてきた。雨漏りでもしてんのか、ボロ病院め。と思いながらその雫を拭う。
また垂れてくる。視界もぼやける。あぁ、クソったれ。俺の眼から水が溢れ出てるのか畜生。
幻想郷で出会った人々、妖怪、起こった出来事が。
全てが無かった事だと。全ては『幻想』だったのだと悟ったら悲しくなった。
人の夢と書いて儚いと言うけれど。俺には辛過ぎる、残酷すぎる。
最初から存在しないのならば、こんな、こんな夢を見せてくれるな――。
……俺は、そのまま暫く咽び泣いた。
☆☆☆☆☆
その後、俺の意識が回復したのを見つけた看護師がすぐに俺の両親に連絡。
そして主治医の診察の結果後遺症も大きい怪我も無いらしいのでソッコー退院しても良いそうだ。
ただ脇腹は酷い打ち身になっているらしく大きな痣が出来ていた。歩くとほんの少しだが痛い。
連絡を受けた両親は流れ込む様に俺のいる病室まで来た。その時の母さんといったら大泣きしながら喜ぶという忙しい状態に。
一方父さんは堅い顔をしたまま俺に近寄るとビンタを一発。
「あまり心配をかけるな」
「……ごめんなさい」
「でもお前は自慢の息子だ」
女の子を救ったんだってな。と言うと父さんは俺の頭をガシガシと撫でた。
あぁ、そういえば俺は女の子を助けたんだっけ。トラックにわざと轢かれに行った、何で絶対に言えなかった。
本当は途中でトラックにビビって本当は逃げようとしたんだけどね。
その際足がすくんでしまい、紫さんが俺をスキマに……って、それは夢だった。
……しかし。俺の回復を心から喜ぶ両親を見て俺は罪悪感に苛まれていた。
死ぬ事を理由に行動を起こすなんて。もうあんな馬鹿な真似はしないから。と心の中で誓った。
☆☆☆☆☆
その後父さんの車で帰宅。外のコンクリートジャングルの景色でも眺めて心を落ち着かせた。
何となく景色を眺めるだけで踏ん切りがついた。
で、現在。自分の部屋のドアの前である。
しっかし何となく外の空気がまずかった。夢の中ではとっても澄んでいたのに、とまた自嘲する。
だけどもう夢から覚めた。ここは幻想の世界ではない。
それに、これからは例えつまらない現代でも楽しく過ごしてやる。
変な夢だったけれど学んだ事はあった。逃げてばかりではいけない、と言う事。
この事を話せば所詮は夢の話だろ? と馬鹿にする人は沢山いるかもしれない。
たかが夢、されど夢。俺にとっては大切な夢だったのだ。
有難う。『幻想郷』の皆。実在し得ない連中だったけれど俺には救いになったのかもしれない。
すぅーっと思い切りまずい現代の空気を吸い込んでバシッと両頬を叩いた。
……このドアを開けたら今日から心機一転、頑張るぞ。誰にでもない、俺に対しての誓い。こういう心意気が人間を強くするのだと思う。
「せーのッ!」
ガチャッと力強くドアを開け放った。嗚呼懐かしきマイルーム。と部屋に入ろうとした。
……が俺の思考はそこで固まった。
「お邪魔してるわ」
だとか言いながら胡散臭い微笑を浮かべながら我が家の様に寛ぐ者が一人。紫がメインのゴスロリチックな服装の変な人。
その、なんだ、まだ夢から覚めていないのか。
俺は呆然としたまま数秒間立ち尽くし、その後おもむろに布団を敷き始めた。
――――うん、寝よう!
何事からも逃げないという教訓を俺は直ぐに撤回。
そのまま現実から脱兎の如く夢の世界へ逃げ出した。
東方凡人記:『完』
東方凡人記閉幕です。回収してない複線もたくさんありますがとりあえずはこれにて。
思い返せば去年の3月に書き始めたんですねぇ。殆ど1年ですね。
当初は本当に落書き感覚で「どうせ誰も見ねえよwww」と自己満足程度に執筆していた物でした。
でも後書きで見ていってね!的な文章は書いていたんですけれども。
で、書き始めて少し経った時に初の感想コメント……冗談抜きで1つもこないだろうと思っていたのですが来たときは何となく恥ずかしい感覚に襲われながらも素直に嬉しかったです。こんな物でも読んでくれてる人がいるんだと。
そして次にアクセス解析なる物がある事を発見。
(他の作家さんと比べると少ないであろう数字でしたが)こ、こんなに読んでくれている人がいるのか。と見て驚愕。
それで調子に乗って執筆していくと……
変な複線作りすぎてたこあし配線状態に。遅筆よりもこれが1番反省すべき点だったかも。
作者が気になっている辺りをピックアップ。
その1.銃。
流斗に持たせて霊力を供給させてドンドンバカスカ撃たせたいと思いましたけど
『こいつに銃持たせて調子に乗らせるのは何か癪だ』と考えて却下。そのまま放置に。
その2.11話より香霖堂での携帯の電波が一瞬立っただの云々の話。
当時何を考えていたのか良く解りません。意味なしネタになってしまっています。
外の物が幻想入りした際に電波が立つ時があるというだけで止まったのがある意味幸い。
その3.21話より髪の毛云々の話
これが俺の中で一番拙かったんじゃないかな、と思っています。現在進行形で。
テンション上がる→付近の妖怪から放出されている妖気を吸う→1番近くに居る妖怪の影響を受けて髪の色や髪質がその妖怪のモノに似る。
とかウハ俺厨2病な設定を考えていたんですけど
……この主人公、テンション常に高めなんでほぼずっと髪の色変わるじゃねぇか。と。
投稿して数日後に気づくがもう軌道修正不可なんで消しても不自然になるし戒めの為に置いてます。
これは後々何かに利用して複線を回収しようと思ったんですが結局放置になってしまいました。光の屈折とか見苦しい言い訳で勘弁して下さい。後生です。
……えぇと、後は幻想郷の『郷』の部分を殆ど『卿』と書き間違え続けていた事。
幻想卿て。幻想卿!Sir!yes,sir!みたいな感じになってしまいますよね。(意味不明)
指摘して頂いた方、本当に感謝します……。と同時に恥ずかしさで心臓がキュッとなりました。責任とって下さい。
--追記--2/02 0:43 また幻想卿誤字発見。穴に埋まりたい。
では長ったらしい後書きもそろそろこれでお終いにします。これ以上書くと自分で地雷を踏みかねないので。
この作品の続きは……もしかすると近々書くかもしれませんし、書かないかもしれません。
でもまた始めたら「またお前か」みたいなノリで生暖かく見ていって下さい。
その時は変な複線張り過ぎないように気をつけます。……懲りない作者でありますが。
ではでは、ここまで続けられたのも読んで下さった皆さんのお陰です。
本当に有難う御座いました。
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