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とうとう12月に突入ですね。長かった様な、短かかった様な。
この調子じゃあ2010年もすぐやってくるんだろうなあ。
東方凡人記:31話
SOS書簡を発射してから間も無く妖精メイド達の捜索範囲は俺の隠れている部屋へと迫ってきた。
本当はもっとたくさん書いて窓からポイポイと乱れ撃ちしようとしたのだがソレをする暇は全くなさそうだ。

何故なら耳を澄ますと「こちらの部屋には……」だの「上の階に逃げたんじゃ……」だの断片的な会話が聞こえてくるからだ。
どどどどどうしよう、隠れる場所は……!とあわてふためく俺。

1.ベッドの下。

NG。隠れんぼですら鉄板すぎてバレバレだ。

2.ドアの裏。

これもNG。部屋を捜索して引き上げる時に絶対見つかる。

残る隠れ場所のクローゼットに目がいく。
いや、これも絶対バレるだろ。

ベッドの下と同様に隠れんぼでも鉄板すぎる。と考えていたのだが――

「その部屋調べた?」
「今から調べる」

メイド妖精の会話が聞こえてきた。もう思考時間すら無く、やっべえええええと脳内で叫びながら仕方無しにクローゼットを開けて飛び込む。

がちゃり。バタン。

入ったのは妖精2人(2匹?)。
室内のドアが開けられ、もし俺が居たら逃げないようにする為かきっちり閉められた。

そっとクローゼットの隙間から妖精メイドの捜索している様子を窺う。

ベッドのシーツを乱暴に剥がしたり……こら、折角綺麗にベッドメイキングされてあったのになんてことするんだ。(至極どうでも良い)
ベッドの下を屈んで見たり……良かった、隠れなくて。

そしてそのまま帰ってくれればいいが、当然俺の隠れているクローゼットに手が伸びる。ついにはガラッッ! と大きな音をたてて思い切り開けられた。

だがバレない。

説明するとこのクローゼットの戸はスライド式になっており戸が左右両側にある。右から開けたら左の方が隠れ、左から開けたら当然右の方が隠れる。ごく普通の家庭でもありふれているタイプの物だ。
そう!開け放たれた方と逆の方へ移動して難を逃れたのだ!

バァァァァァァァァン!!!

脳内では謎の効果音が流れる。

先程は左から開けられていたので次は右の戸を勢い良くあけられる。スススと左の方へ移動する。
そして妖精達は一通り見て満足したのか閉じられるクローゼットの戸。
ふぅ。危ない危ない……。妖精の頭が残念で助かったぜ。

結局俺を見つける事ができずに去っていく妖精。俺を置物か何かと勘違いしているんじゃないか。
全く、紅魔館のセキュリティが心配だ。(そんな余裕は無い)

しかし今難を逃れたのはいいがこれからが問題だ。

あの文章を読んで誰かが助けに来てくれればいいんだけど、正直期待は出来ないだろう。
だけど可能性を少しでも上げる為にもやはりもう何枚か書いて外に投げるか。

そう結論づけ再び机に向かいペンを握る。……さっき何て書いたっけ。


カツーン。


慌しい妖精達は別の階へ行ったので静かになった廊下に響くヒールの靴音。


カツーン。


足音の主は誰? いや、問うまでもなく確信しているが。


カツーン。


信じたくないがメイド長だ。何故。気絶から回復するには早過ぎる。
という事は元々気絶していなかったという事か? なら、何故能力を使わず俺を捜すんだ。
俺ごときに時を止めるまでもないという事か? でもそんな事をして何のメリットがある?
何でも完璧にそつなくこなすあのメイド長は主であるレミリアさんの命令であれば直ぐにでも、いや、文字通り1秒もせずに俺の命を奪いに来る筈。
それほどに彼女の主に対する忠誠心は傍目から見ても分かった。だったらレミリアさんが命令を変えたという事か?

俺を殺す、ではなく俺をじわじわとあぶり出して殺す、と。

……馬鹿にしやがッて! 一発はぶん殴ってやるっ。と思いドアに手をかけ飛び出そうとした。


カツーン。


……ヒールの音で目が覚める。俺がいくら憤怒に燃えようとも今飛び出したら一発殴るどころか返り討ちコースまっしぐら。
当初の目的は脱出する事、だ。思いきり筋道外れてどうすんだ。


カツーン。


依然聴こえてくる足音。だが少しずつその音は大きくなっている。
まさか居場所がバレているのか? 流石にそれはない……と思いたい。見つかる要素は今のところ一つもないのだから。
そう自分に言い聞かせても次第に近付き大きくなる足音に比例して不安から俺の心音もどんどんと上がる。


カツン、カツン、カツン。
どくん、どくん、どくん、と。


駄目だ。極度の緊張でめまいがする。吐きそうだ。だが弱音とゲロを吐く暇は雀の涙程もない。
札を取り出し、握る。ならば発想の転換でいこう。
このまま追撃を恐れて隠れるんじゃなくて逆に奇襲をかける。足音がこの部屋の前まで来たらドアごと霊撃をかましてやる。

油断大敵という言葉を身を持って味わえ!

そうと決まれば霊力を溜める。叫んでテンションを上げる訳にはいかないが少しずつ札に込めていけばいい。


カツン、カツン、カツン。

まだまだ。

カツン、カツン。

あと少し。

カツン。

あと一歩。

カツ――

「どっせいッ!」

ヒールの踏み出した音を聴いた瞬間霊撃を放つ。
放った霊撃はドアをぶち抜き廊下の壁を直撃、粉塵を巻き上げる。
流石の咲夜さんも今の奇襲は避けれないだろう。が、倒せたとも思えないので直ぐにこの場を離れようと廊下に出る。

すると前方にこちらへ向かってくる銀色に光る物体を多数確認。
何か判らないがとりあえず転がり込み回避を試みる。ヒュンヒュンと耳に風切り音が聴こえ、ドスドスと壁に何かが刺さる音が聴こえた。

ざくり。

「ぐぁっ」

突如右肩に激痛が走る。一体何が、と右肩を見ると一本のナイフが深く刺さっているではないか。

「痛ぇ、痛えぇっ」

熱い。肩が焼けるように痛い。

「いけませんわリュート様。貴方はお客様なのですから貴方が持て成すのではなく、私の持て成しを受けていただかないと」
「ッッ!」

眼前に立ち塞がるメイドさんを痛みで顔を歪めながらも見据える。
最悪のシナリオだ。奇襲が失策に終わった揚句逆に相手の反撃を貰ってしまっている。
しかも見つかった相手はこのメイド。もう諸手を挙げて万々歳である。降参的な意味で。

「何の真似ですか?」
「降参です。あれだけやったのに平然としてる貴女達に敵う訳が無いっす」
「あら。お嬢様からはもっと愉しめる様に狩れと言われたのに」

畜生、嫌な予感だけは的中しやがる。

「もう許して下さい。そしてレミリアさんに詫びる機会を下さい。完全にあれは失言でした」

非常に情けないが俺はまだ死にたくはない。

「その程度の覚悟でお嬢様に物言いしたの?呆れるわ」
「……すいません」

ごもっともだ。何も言い返せない。
すると咲夜さんは明らかに見下した眼で俺を射るように見ていた。

「下らない。ただの思いつきだけで行動したの?」
「……否定はできません」
「芯までバカなのね。その時の必要の無い同情で行動して、お嬢様達の為になるとでも? とんだ偽善よ」

カチン。今の言い方に少し腹が立つ。

「偽善、と言いましたが咲夜さんはフランドールの為に何か行動した事があるんですか」
「私はレミリアお嬢様の従者。ただ命令に従うだけよ。そんな勝手な行動なんてしないわ」

勝手な行動?ただアンタは与えられた命令だけをこなすというぬるま湯に浸かっているだけなんじゃないのか。

「だったらもしレミリアさんに死ねと命令されたら?」
「従うわ」

――ぶつり。俺の中で何かがキレた。

「ふざけんな。アンタが言う『善』ってのは一体何だ?行動すべき時に指をくわえてただ傍観するのが『善』で、行動すべき時に行動したら『偽善』と言うのか」
「そういう事ではないわ。貴方はお嬢様の心境も知らずにその場の感情だけで行動を起こしてして悦に入りたいだけでしょう。それを『偽善』と言うのよ」
「お嬢様の心境、と言っているがフランドールの気持ちを考えた事があるのか。495年レミリアさんに幽閉されていて誰ともまともに接した事も無いんだぞ。レミリアさんが悪いとは言わない。フランドールを閉じ込めたのは彼女の能力と狂気のせいだろう。しかし仕方ないとはいえフランドールがレミリアさんを恨む要因を作るには充分だ。
それなのにフランドールはレミリアさんと仲良くしたいと心の底では願ってる。以前は知らないが今はそう思っている。フランドールだって495年間の幽閉はそれが正しかったか間違っていたかはともかくとして自分の為にやってくれている事だと理解出来ている筈だ。だのに同情だの偽善だのどうでもいい単語並べやがって。
振りかざさない善なんてそれこそ要らない。だったら必要なのは振りかざす偽善の方だ。それに」

長い台詞を淡々と述べて呼吸が乱れたので息を整え、胸に残った空気を全て使い怒号した。

「命令に『イエス』と答えるだけなら俺みたいな馬鹿でも出来るんだよっ、『ノー』と言えるようになれ、大馬鹿野郎!!」
「言いたい事はそれだけかしら」
「あぁ。これで全部だバーーーカ!」
「……そのまま謝罪していればお嬢様に掛け合ってあげたものを」
「あ、じゃあ今の取り消しでお願いします」
「……」

一気に冷める場の空気。俺はやっぱり空気を凍結させる程度の能力も持っているかもしれない。

「もういいわ。死になさい」

物騒な事を言い放つとパチンッと指を鳴らす咲夜さん。
するとたくさんのナイフが何処からともなく出現し列を作り、それが彼女の周りに纏い始めた。
次にそのナイフ全てが意思を持っているかのように俺目掛けて飛来する。

う、うおお! なんじゃこの数は。こんなの避けれる訳がない。

だからと言って防がないとハリネズミになってしまうのでそれは御免被りたい。
札に突風のイメージを込めて放つ。ナイフを風で無力化、威力減退しようという魂胆だ。

だが――。

ぷすん。

「不発っ!?」

ガッツ(テンション) が たりない。

「ぬおおおおおお!!!」

ナイフの群れから背を向けて全力で逃げる。

ダン、ドスドドスドスドスと背後からは壁に刺さりまくっている音がするが振り返らず廊下の曲がり角を目指し、

「っだぁ!」

モン○ンの緊急回避よろしくダイブした。刹那、背後の壁にナイフが次々と刺さる。
恐ろしい。後少しでも判断が遅れていればまさしく人間剣山が出来上がったに違いない。
その光景を想像して肝を冷やしながら立ち上がろうとすると。

(うっ!?)

自身に突然降り懸かる影に驚き、急いで顔を上げるとナイフを振り上げる咲夜さんの姿が。しかしッ!

「遅いッ!」

最小限の動きで回避。フォンッと勢いよく振り下ろされたナイフが空を切る。
ちょっと言って見たかった台詞ベスト3だったんだよね。『遅いッ!』って。
んな事考えてる暇あるのかと自分に問いつつ体勢を崩した咲夜さんに渾身のヤクザキック。


スカッ。


「ってあらぁ!?」

思い切って出した蹴りを躱される。否、目の前から消えた。

……能力かっ!

「さっきの台詞そのまま返させて貰うわ」
「~~っ!!!」

耳元で背後から囁かれる。一般男性ならこんな美人さんに耳元で息を吹き掛けられながら囁かれると悶えると思うが、俺は別の意味で悶えていた。
肩に突き刺さったナイフをグリグリと動かしながら囁いていやがるのだ。そしてナイフはずぶっと肩から抜かれる。

「痛ッ……てめぇっ!」

ブンっと振り向き様に裏拳を放つもやはり手応えは無い。こ……こんなのじり貧ってレベルじゃねえぞ!?

攻撃を躱して体勢を崩しても時を止めればすぐに整えれる。それだけではなく悠々と相手の死角に回り込む事も可能。
回避し続けてもいつかは体力的にも限界が来る。相手は間髪を入れずに連続攻撃をしてくるだろうし。
相手はこちらの奇襲を幾度となく回避してほぼ無傷だしこちらは肩から血をだらだら流して息もあがってきている。

……これは将棋でいう詰みに入ったんじゃないか。

ヒュン、ヒュン。

「くっ!」

思考する時間も与えてくれないみたいだ。咄嗟に飛んでくるナイフを腕で受け止めた。
勿論、俺の腕が鉄鋼で出来ている訳でもないので腕にざっくり突き刺さる。

「ぅぐく……」

ギリリと奥歯を噛み締め痛みに堪える。腕からは血が滴り落ちる。

「さっさと諦めればこの苦しみから開放されるのに」

上方から声がするので見上げると咲夜さんが宙に浮いてこちらを見下ろしていた。

「やかましい」

そう言い放ちながら腕に刺さったナイフを抜き、投擲。元々当てる気は無いが単なる挑発だ。
どうせまたふっと消えて避けられるんだろう、と思っていたが少し甘かったようだ。

「撃ち返しっ!?」

投げたナイフが当たる直前に姿を消したかと思えば咲夜さんがいた場所はナイフの束とすり替わっていた。
そしてやはりこちらへ向かってくるナイフの束。この速度と数はとても避けきれそうにない。

……やっぱりこういう時は札に頼らざるを得ない。一か八か札に霊力を込めて即座に相殺せんと撃つ。

「かめはめ波っ!!」

バシュン。

かめはめ波と言うよりエネルギー弾と言った方が正しい、弾幕に混じっていたらほんの少し目立つ程度の霊弾が発射された。

(あんなちっこいのじゃあ相殺出来ないっ……!)

飛んでくるナイフの束を見るのは恐ろしいのでもう駄目だ……おしまいだぁ!!と目を瞑る。



……

あれ?飛んでこない?

頭上にたくさんの疑問符を浮かべながら怖々と目を開ける。すると地に転がるナイフの束が見えた。
あるぇー? 何がどうなったの?




簡単に説明すると霊弾で弾いたナイフが他のナイフを巻き込んで全て叩き落としてしまったのだ。
よく理解出来なかった方はボウリングでストライクをとった時の事を思い出してほしい。
ボールが霊弾で、ピンがナイフだと思って貰えれば理解できるだろう。
……何とも悪運だけは強い男である。



目を瞑っている俺はそんな事を知る由もなくただ疑問符を更に浮かべながら体勢を整える。
しっかし、遠距離からチマチマと撃ってきやがって。接近戦じゃないと分が悪いぜ……。

妖怪化が始まったせいか身体能力は結構強化されて『人間相手』なら接近戦で負ける気はしない。
このメイド長が人間にカテゴライズされるかは微妙だが彼女は接近戦より中〜遠距離でナイフを投げる戦法のが得意であろう。
いかに近づいて一発を当てるかに賭かっている。彼女が人間であれば必殺の一撃を当てる事が出来れば倒れる筈なのだから。

腕、肩は痛むがまだまだ動く。よし、ならば頑張って接近して一発当ててやろうじゃないか。
と考えて無謀な作戦を実行に移そうとした時に不意に疑問がいくつか浮かび上がった。
かなり今更感があるがどうして咲夜さんは『時を止めている最中』に俺を攻撃しないんだ?
俺を殺しにかかっているなら時を止めてナイフを急所に刺す、で終いじゃないのか。

殺すつもりが無いか手加減しているから?

前者であって欲しいがこの可能性は無いだろう。後者の場合は殺すつもりなら手加減もクソもない。なのでこの考えは却下。

とすると……?

(時を止めている最中に俺を殺す事は何らかの理由で不可能?)

一見完璧な能力にも何処か穴があるのか? 時間停止……どう考えても無敵じゃあ……。
そういえば以前に興味本意で学校の図書室にあった時間停止に関するオカルト本があって読んだ事があったが……。

「あっ!!!」

俺に電流走る。そうだ。これに違いない。
俺の予想が正しければ打開策はまだある。それでもまだまだ厳しい事には変わりはないが。

「腑抜けた声を出して何か小細工でも思い付いたのかしら?」

小細工? そんな上等なモンじゃねえよ。キッと相手を睨むと俺は叫んだ。

「ただの悪あがきだ!」
次話、自己解釈設定炸裂。ついでに厨2病は現在進行形で炸裂中。
後書きは甘え(キリッ)


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