東方凡人記:27話
人里から森に入り、そして霧の湖を過ぎると自然の風景と少し、いや。かなりアンマッチなあか~い建物が見えてくる。
言わずとも紅魔館である。あぁ……サボタージュというか具合が悪いので帰りますって通らないのか。
でも実際具合悪いや今胃がキリキリしてきたイテテテテテ。
「どうかしましたか?」
「何でもありません」
キリリとした表情で向き直る。口には出して言えないのである。
俺の寿命がストレスでマッハの意味を完全に理解できた気がする。
で、門番の守る門の前に来たわけで。
「美鈴、門を開けなさい」
「了解ですよっと」
咲夜さんが声をかけるとせっせと門を開ける美鈴さん。今思えば空飛べるアンタらには全く門の意味無いよね。
「お疲れっすキン肉マンさん」
手をひらひら振りながら入場する。背後から「リュートさんが書いたんですか!?」とか聞こえてくるけど気にしない。
はあ、和むなあ。美鈴さんみたいに皆が皆平和的な妖怪だけだったらやりやすいんだけれど。
とまぁ、そんなこんなで紅魔館に。
「すぐにフランドールの所に行けばいいんですか?」
「いえ、まずお嬢様と会って頂きます」
なんか通過儀礼みたいだ。咲夜さんに先導され着いて行く。
「お嬢様、リュート様をお連れしてきました」
ドアをこんこんとノックするとドア越しで話しかける彼女。
「入りなさい」
あれ。前よりエラそうじゃない。
咲夜さんがドアを開けてくれたのでどうも、と会釈をして入場。今回は注意したので頭をぶつけない。
我ながら完璧な入場だ。ククク……。すると足元のでっぱりに足を引っ掛け、
「あうん」
謎の悲鳴と共にバタリとこけた。
こけた体勢から顔を上げるとやはり偉そうにイスに座って文字通り上から目線で見ている吸血鬼お嬢が居るわけで。
「またお前は何をやっているのよ」
「バリアフリーに気をつけないこの館が悪い」
最近の住宅は結構バリアフリーに気をつかっていてだな、
こういうでっぱりには老人の方が転ぶ元となってそれで怪我をして……。
「それでフランの事だけれど」
どうやらバリアフリーについては検討してくれないようだ。
「フランドールの相手をしてやればいいんでしょう? じゃあ今からでも」
正直な所さっさと用事を済ませて帰りたい。死亡フラグ削減の為にだ。
「まだ寝ているのよ」
What? ちなみに現在の時刻はおよそ午後1時である。
呼び出しておいて寝ているとは失礼な。
「それは……中々朝が弱いようで」
「違うわよ、私達姉妹は吸血鬼よ」
「え? ……あ、うんそう! 吸血鬼は夜型ですね!」
そういえばヤツらは吸血鬼だった。この時点で俺の記憶力の無さが窺える。
するとレミリアさんは額に手を当ててゆっくりと首を振った。
「……はぁ」
何そのため息。
「フランにバカが伝染しそうで心配だわ」
失敬な。
「じゃあフランドールを起こしに行けばいいんですか」
「寝起きで機嫌が悪くて吹き飛ばされても知らないわよ」
「……御忠告どうも」
起こしに行く気マンマンであったのである。1つ死亡フラグを回避できた気がする。
後3日で帰らなければいけないのにバスターされてしまえば何もかも水泡と帰してしまう。
「かといって何もしないのも暇でしょうから紅魔館でも見て回るといいわ」
あれか。工場見学みたいなノリか。
「咲夜。このバカを案内してやりなさい」
「畏まりました」
バカってもう何なのお客様にこの仕打ち。訴えるぞバーカ!
でも俺は本人に面と向かってそういう言葉は言えないそんな優しい少年だからね。
……怖いからね。
「それじゃ、失礼しました」
最後に小さく『このアホ吸血鬼、幼女』と小声で呟く。少し気が晴れた。
「聞こえてるわよ」
早足で退出した。
☆☆☆☆☆
「それではどこか行きたい所はあります?」
「咲夜さんの部屋で」
「……」
「嘘です」
急に接客モードの笑顔から殺意の籠もった笑顔になり、懐からナイフを取り出そうとしていたので慌てて冗談と伝える。
やはり幻想郷では軽いジョークでさえ酷い制裁が待っているらしい。
「とは言え以前に紅魔館の中は軽く見ましたし、見て回れと言われても」
じゃあ、レミリアさんの部屋で。という冗談を思い付いたが今度こそ死にそうな気がしたのでやめておいた。
「図書館はまだ見てませんよね?」
「図書館?」
「ええ。紅魔館には大図書館があるのですよ」
へぇ、そりゃ初耳だ。フランドールが起きるまでのいい昼寝スポッ……読書して暇潰ができるかもしれない。
俺のスタイルは春夏秋冬全て読書だからな! 嘘じゃないぞ、ゼッタイだぞ!
「平成の芥川龍之助と言われた私にピッタリじゃあないか……フフフ」
「はあ」
返ってくるのは気の抜けた返事だけ。絶対信じてないだろ。まぁ、嘘だけど。
☆☆☆☆☆
「こちらです」
ギィィィィと大きい扉を開ける咲夜さん。
どうやらこの先が大図書館とやららしい。
「それじゃあ失礼して……」
ってカビ臭ッッ!
「ちょ、湿気高いしカビ臭くないですか?ちゃんと窓とか扉開けて換気しないと……いいか? カビってのはな、大体湿度75%温度20度以上、カビの繁殖する栄養源と3つの条件が揃うと発生してしまう。だが、1つでも条件を満たさなければ繁殖しない。つまり換気をしているだけでもカビの発生は……」
「パチュリー様、いらっしゃいますか?」
聞いてねえ。気がつくと咲夜さんは先に進んで『パチュリー様』とやらを探していた。
ふむ。この館には俺以外の客人が居たのか。
とりあえずささっと咲夜さんを追いかける。
何しろよく見なくてもこの図書館でっけえのだ。ヘタすりゃ迷子になってしまう。
というか今更感があるが外から見る紅魔館と内部とで敷地面積が違いすぎる気がする。
「ここにいらっしゃいましたか」
「何か用でもあるの?」
どうやら『パチュリー様』を見つけたらしい。この本棚の曲がり角か。
ヒョイと様子を伺う為に本棚から顔だけ出す。
すると紫の髪、そして何よりかなり白い肌が特徴のネグリジェを着た女性がやや不機嫌そうな表情で咲夜さんと話していた。
その手には広げられた分厚い、鈍器にすらなりそうな本が握られていた。読書の邪魔をしたから少しご機嫌ナナメなのだろか。
なんか気まずいな、この場は出ない方が得策……。
と思ったが急に視線をこちらに向け、
「あそこで覗き見してる奴は誰?」
バレバレらしい。俺は気まずそうに物陰から出た。
とりあえず一旦区切りませう。代替機すごい打ち辛い。予想以上に時間かかってしまう。
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