東方凡人記:24話
太陽が存在し、昼、夜がある限り必ず朝という物もやってくる。
日曜日の夜にいくら神様に願い倒しても月曜日の朝がやってくるように。
哲学的なことを考えてみたかっただけで他意はないです。はい。
それはそうと俺は現在夢を見ている。
はてさてどんな夢かというと、外で普通に自分が生活しているのを第三者視点で見ている夢だった。
『夢を見ている俺』はこれは夢だと気付いている。そりゃ、現在は幻想郷で暮らしているし。
でも『夢の中の俺』は夢だと気付いていないみたいで、普通に外界で暮らしていた。
ごめん、ちょっとややこしい言い方だけれど察して欲しい。
「あああああああああ!!!! 始業式始まっちまうじゃねえかあああああ」
「朝からうるさいぞ流!!」
因みに今のは父さんである。
「サーセン!! 朝飯はいらん、行ってきます!!」
ガッチャバタン、と忙しくドアを閉める音が聞こえる。
どうやら夢の中では春休みは終了してこれから始業式が始まるらしい。
様子から見て判る様に遅刻するかしないかのギリギリの境界線のようだ。
ガチャッ! ……ん? 何で戻ってきたんだ?
「自転車のカギ忘れたァァァァァ」
間違いない。こいつはバカだ。自分だけど。
…
……
………
さて、夢の中の俺は始終立ちこぎで学校へと向かっていたみたいで現在はもう着いてしまった。
あまりスタミナないだろうにこういう時だけ速い。そういったピンチの局面では人間は力が出るので不思議だ。
俺の学校は自分の家から大体自転車で30分程かかるのだが。
「ゼェ、ゼェ。よし、15分短縮……ギリギリ間に合った」
肩で息をしながら一人呟く俺。15分も短縮できたらしい。お前やっぱりバカだろ。
そして自転車を学校専用の駐輪所に置き、教室へと向かう。
そこで前にも話が少しだけ出てきた友人の佐藤と鉢合わせていた。
「よう、部活リア充。部活で休み中充実してたんだろ死ね」
「お前は休み明け早々にその挨拶か」
佐藤は野球部所属。顔立ちは整っていてそこそこイケメンだ。彼女もいるらしい。シバく。
こいつとは中学から一緒で中学時代は邪気眼使……なんでもない。
佐藤も鈴木同様よくある苗字だからかしらないけど仲がいい。どうでもいいけど田中ってやつもいる。地味苗字トリオだ。
「鈴木は宿題終わったか?」
「終わってる訳ねぇだろ、お前は?」
「宿題は提出日ギリギリに出す物だ」
「流石は佐藤だ……! 見直したぜ」
ダメだこいつら……早くなんとかしないと。
人のふり見て我がふり直せという言葉があるが自分自身を見て生活態度を改めようと思ったのは初めてだ。
俺は今幻想郷に住んでるし宿題とか関係ないんだけど。
「それはそうとだ、鈴木。彼女は出来たか?休み中に」
これだからリア充は。ハッ倒せ! 夢の中の俺! そいつを張り倒せ!!
夢の中の俺が佐藤に向けて拳骨でもヘッドバッドでもコークスクリューパンチでもなんでもいいから殴る事を期待した。
「とんでもない、女は大概恐ろしい生き物でな。すぐに弾幕を放ってきたり恐ろしい事に……」
「はぁ?」
「え? いや、何でもない」
夢の中でも俺は軽く女性不信らしい。妖怪的な意味で。
そして急に意識が覚醒する。
「……変な夢だった」
夢は本当に唐突に終わる。自分がいい思いをしている夢であって終わって欲しくないと願いつつも急に終わる。
何故か続きが気になる夢だ。内容がリアルすぎて実際に起こってる事なんじゃないかと錯覚してしまう。
とりあえずもそもそと布団から這い出て現状を確認する。
夢の中で色々と突っ込みまくってたせいか嫌に頭が冴えている。
確かメルランの演奏を聴いて異常にハイになった後にルナサの演奏を聴いて寝たんだっけ。
とするとここは白玉楼か。多分そうだ、この部屋も和風チックだし。
戸をスススと開けて部屋出てみる。整った庭、満開の桜。白玉楼で間違いない。
プリズムリバー三姉妹がここまで運んできてくれたのだろうか。
宴会の跡は残っていない。どうやら既に片付けはされたらしい。
だが、ふと思いだす。
「貰った酒一滴すら飲んでねえ」
そう。勿体ぶって飲んでなかったのだ。
勿論飲むつもりではあったのだがあんな事があったからな……。
酒好きな連中が多いし残っているとしたら瓶だけだろう。
……大事に呑めませんでした。勿体ない。
宴会の参加料と考えれば安いのだろうか。タダ飯とタダ酒飲み食いしたし。
それと幻想郷の人達はなんだかんだ言って優しい人が多いのかもしれない。他人に布団まで用意してくれてさ。
さて、白玉楼の人にお礼を言って帰るか。妖夢さんとか何処にいるのかな。
スススとさっき居た部屋の戸を閉める。さてと。
「…… ……」
「…… …………」
どうやら少し先の部屋に誰か居るらしく話し声が聞こえる。
さっさとお礼を言ってさっさと帰ろう、長居してても迷惑なだけだ。
話し声が聞こえる部屋の前に立ち、できる限り身嗜みを整える。
寝癖よし、服の乱れよし、俺つよし。
「すみません、失礼します」
一言声をかけてから入室。よし、完璧。
中に居たのは妖夢さんに、この前の宴会で桃色の髪の毛が特徴的な大食いギャル顔負けのフードファイトしてた人がいた。
そして何故か、
「お早う、リュート」
「なんで紫さんがいるんすか」
「私がいたらいけないかしら」
「全然構いませんけど」
最近やけに会うな。
「あら紫。この子がさっき貴女が話してた?」
「ええ」
どうやら俺の事を話していたらしい。一体何を話していたのやら。
リュートくんイケメン! とかそういう話なら大歓迎ですよ……フフフ……。
おっと、いけねぇ! 俺は紳士なんだ。
先ず顔をパシッと叩き煩悩を弾きとばす。
そしてバッバッと着ている服で軽く手を払い、手を伸ばす。
「リュートです、宜しく」
とりあえず俺の知らない目の前にいる桃色の毛の彼女に握手を求める。
帽子のマークがドリームキャストのロゴに見える。至極どうでもいい。
「あらぁ、丁寧にどうも。西行寺幽々子よ」
返事をして握手に応じてくれる幽々子さん。握った手がとても柔らかい。なんだか緩そうな人だ。
この人も妖怪なんだろうか? 恐らく妖怪の類だろうけどさ。
今に始まった事ではないが妖怪は美人さんや美少女多過ぎる。現代のアイドル達が俺の中で霞んでゆく、まじパネぇ。
「リュート」
「はい?」
急に紫さんに声をかけられた。なんだろうか。
「何時まで手を握っているのよ」
「え? す、すいません」
ばばっと素早く手を離す。握手した状態で思考モードに入ったせいでそのまま硬直していたらしい。恥ずかしい。
「俺の一種の病気みたいなモンなんで気にしないで下さい」
「紫が言ってた様に面白い子ねぇ」
幽々子さんはからかう様子で微笑む。俺は何処に行ってもネタキャラらしい。それはともかく、
「何か俺の事でも話してたんですか」
俺は陰口とかに敏感なんだぞ。
「ええ、そうね。そろそろ言っておくべきかしら」
何か面白い事があったかの様にニヤりと笑いながらこちらの方へ向く紫さん。
彼女の眼を見ると俺がどう反応するか楽しみで仕方がないといった風にも感じとれた。
何か忠告でもあるのだろうか。嫌な予感を感じつつも次の言葉を待つ。
「リュート」
「……はい」
ごくり、と唾を飲み込む。
「貴方、『妖怪』として幻想郷に住むか『人』として外界に帰るかどうするつもり?」
「なっ――」
「何を言っているんだアンタは?」とは驚きで震えて言えなかった。
急展開且つ理解し難い事を言われて混乱したのだ。仕方ないだろう。普通こんな事を言われて驚かない奴はいない。
数秒間の静寂の末、紫さんは俺の事をからかっているのではないか。と思い未だ嫌な笑みを作っている彼女の眼を見るが――
彼女の眼からは何も読み取る事は出来なかった。
急展開。そろそろまとめに掛かろうかなと思ってきました無法マツです。伏線全て回収できるかあばばばばばば…。必死になってこれからご都合設定とか出るかもしれませんがその時は広い心で許して下さい。回収しきれない時も然りです。
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