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東方凡人記:23話
俺こと鈴木流斗はあまりに暇だったので白玉楼の宴会に参加する事にしました!
宴会というと前も言ったことがあると思いますけど楽しく騒いで酒を嗜むというものでしたよね?

「どうして私の新聞の購読数は少ないんですか!」

知るか。

「毎回見出しだって考えてますしネタだってきちんと仕入れているんですよ!?」

頼むからそれは身内の天狗達と相談してくれ。俺は記者じゃない。

「真面目に聞いているんですか!」

バン、と机を叩く射命丸さん。

「……どうしてこうなった」

俺は大して酒を飲んでいないのに頭がガンガンと痛くなってきた。
原因はこの鴉天狗さんに酒を勧め過ぎた事なんだが……。
そう。丁度射命丸さんと犬耳天狗さん(仮)がやってきた直後に他の妖怪達もぞくぞくと現れていた。
この時点で周りの連中は既に騒ぎ始め、もう宴と言えるモノとなっていたのだが。
予想しなくても分かるだろうけど俺はまた取材攻めに遭っていたのだ。

今ではただの愚痴になっているのだが。

〜少し前〜

「何故ここの宴会に……」
「空を飛べないのにどうやって白玉楼に……」
「魔理沙さんとの関係は……」
「まさか!? そういう密接な……」

ああああああうるせえええええええ!!!

「あーうー!! 聞こえない聞こえない!!」

俺は昔から伝わる『サイレント・イヤー』という必殺技を行使していた。
「あーあー!」と言いながら両耳をポンポンと両掌で塞ぐ。

「何子供みたいな事をしているんですか」

ダメだ、近所の知り合い(小学生)の奥義をもってしても長くは持ちそうもない。
俺はどうにか取材攻めを回避できないかと辺りを見渡してヒントを探していたのだが。

「そうか、わかったぞ!」

俺は某バーローの人みたいなセリフを言うと、頭の中でてけてん! と効果音が鳴って閃いた。

「分かりました、真面目に取材を受けましょう」
「本当ですか!」
「ええ、その前に少し待っていて下さい」

クックック。俺はほくそ笑むと席を立ち、ある人物(妖怪)を目指して移動した。
恐らく宴会ならば姿を現しているハズ……居た!
一升瓶をもう何本も空にして豪快に酒を飲んでいるロリ鬼だ。
本当は会いたくないが俺の作戦には必要なのだ。

「おっす! 確か伊吹萃香だったよな」
「んぁ〜? あぁ、あの時の人間かい」

呑んだくれながら返答する。どうやら覚えてくれていたらしい。この飲兵衛が。

「アルコールの強~い酒知らないかな?」
「どうして?」
「ちょっと飲んでみたいからさ」
「いいよーそういうことなら……」

と言うとロリ鬼こと萃香はガシッと酒瓶を掴むと俺にポイっと放ってきた。

「おっとっとと、サンキュー!」

俺は軽く礼を言うとすぐさま作戦を実行する事にした。
目の前には忌々しい取材バカ。今に見ていろ。
だがその前に味を見ておこう。少しだけ萃香から貰った酒を注ぐと、本当に少しだけ飲んだ。

「か、辛ッ!!」

んだこりゃ!? とうがらし酒かよ。
舌と喉がじんじんするのに耐えながら俺は酒の銘柄を確認した。

『妖怪殺し』

……納得の名前だ。だが丁度いい。俺はまたクククと笑うと元の席へと戻った。

「何をしていたんですか?」
「宴会と言ったら酒でしょう。ですからどうぞどうぞ」
「あややや、それもそうでした」

先程萃香から貰った酒を射命丸さんのグラスになみなみと注ぐ。そして俺はついでにそこら辺から取って来たアルコールの弱い酒を自身のグラスに注いだ。

「では乾杯しましょう!」

俺は高らかに言うと射命丸さんとカチンッと乾杯した。
そして……。

(飲んだッ!!)

ゴクゴクリと一気に飲み、くー! と言いながら中身を空にしてタン! といい音をたててグラスを置いていた。

「中々度数が強いですけど美味しいお酒ですねえ」

バ、バカな!? あの酒を一気だと……!

流石に妖怪を1杯で落とすのは無理か。そういえば天狗は酒に異常に強いと聞いた事があるぞ。

むむむ、ならば。

「では取材を」
「どうぞどうぞ」
「あややや、すいません」

また酌をする。酔い潰せばこちらのターンが回って来る。
いくら酒に強いとはいえこれほどの酒を飲み続ければ酔いつぶれようぞ。

「どうぞどうぞ」
「あややや」
「どうぞどうぞ」
「あややや」



……

………

よし、勝った。俺のアルコールハラスメントが功を奏した。
目の前には頬を酔いで紅潮させ、ぐでーっとなった鴉天狗が一匹。
弱い、弱すぎる。俺を楽しませる者はいないのか!
どこぞのありきたりなキャラの台詞を頭に思い浮かべながら違う場所に行こうと席を立とうとすると。

「ちょっと聞いて下さい」

ガッシリと肩を掴まれていた。射命丸さんに。ば、ばかな。ついさっき酔い潰した筈なのに



そして今に繋がる。
眼前には未だ熱く語る鴉天狗。すると彼女が引き連れた犬っ娘天狗(仮)がやってきた。

「文さん、一緒に飲みま……」
「いい所に来ましたね椛」

ドンマイ。俺は心の中でそう呟きながらも愚痴られる対象が増えて分散されたので助かったと思った。
どうやら犬っ娘天狗は椛と言うらしい。

椛さんの顔色を窺うと『しまった……』と言いたげな顔をしていた。
この人(妖怪)はなんとなく苦労してそうだ。俺の中での好感度が上昇中だ。

「そこに座りなさい」
「はい……」

と俺の隣に座らせ、何故か今にも説教されそうな空気になってしまった。
とりあえず隣に来た椛さんに耳打ちする。

(貴女の上司でしょう、早くなんとかして下さい)
(無茶言わないで下さい!)

そういえば前回の宴会でセクハラ受けてたもんね。見てる分には全然構わんが。

「何をそこでこそこそと話しているんですか」
「僕は文々。新聞の将来性について椛さんと相談していたのであります、そうですよね?」
「え、ええそうです」

危ない。今酔っている彼女が乱心したら何をやらかすか判らん。

「で、私の新聞はどうなんですか」

そこで俺は本日2度目の豆電球が頭上で輝いた。
椛さんには少々悪いが仕方あるまい。

「僕は面白いと思いますが椛さんが『駄目だこの新聞…早くなんとかしないと』と言っていました」
「ほう……?」
「私が文々。新聞を乗っ取り新たな新聞を発刊し、ゆくゆくは貴女を部下にしてやると」
「何壮大な嘘を吐いてるんですか!? そんな事言っていませんよ!」
「椛、何もしませんからちょ~っとこちらの方に来てくれませんか」
「信じて下さい文さん、私は何も……」
「ええ信じています」

ニコ~と笑っている射命丸さんであるが内心笑っていない事であろう。
俺は幻想郷で色々な妖怪に出会ったおかげで観察眼が上がっているようだ。
特に幻想郷の女性の笑顔は8割方胡散臭い。

「文さん眼が笑ってな……や、やめて下さい助けて!」

悲しいがこれは戦争なのだ。すぐさま俺は席を離れて彼女の安全を祈った……アーメン。

☆☆☆☆☆


さて現在は亥の刻……ごめん、かっこよく言いたかったんだ。確か午後9時~11時頃だったと思うよ。

とりあえず天狗の襲撃を見事回避した俺は一人で料理と酒をちまちまと食べていたんだけど、宴会なのに一人で飯くって酒飲むってなんだろうね。

別に全然それでもいいんだけどさ。

しかし、アルコール弱い酒を少しずつ呑んでいてもやっぱり酔ってくるなぁ。
少し散歩するかね。
両頬を掌で触ってみる。手が冷たくて気持ちいい。今酔いで顔赤いだろうなあ。
他愛もない事を考えながらとりあえず白玉楼を散歩する事にした。

……花見メインっぽい宴会なのに桜を見て楽しんでいる輩は少数派みたいだ。桜を見てゆっくりと酒をちびちび呑んでいる奴よりギャーギャー騒ぎながら料理を食べ、酒を呑んでいる奴の割合の方が多い。
幻想郷でも花より団子という風習は有ったらしい。
まぁ、俺も多数派の方なんだけどね。桜を見ながら静かに酒を嗜むのもいいが。
つーか酒は二十歳からという考えがどんどんと薄れてきている辺り俺も非常識になってきているかもしれない。
むしろ俺はまだ高校生なのに花見酒がどうのこうの言っててオッサン臭くなってきたのか。

大丈夫、俺は若い、ピチピチで水も滴るいい男。いつもの様にアホみたいな事考えながら人気(妖怪気?)の無い所へちょろちょろと向かっていった。

……

涼しい。春は昼は暖かい素晴らしい陽射しを提供してくれるが夜の空気はもっと好きだ。
アルコールで紅潮した頬を風が撫でてくれてとても気持ちいい。
幻想郷の空気は本当に澄んでるんだよなぁ。全く、現代と言ったら機械に頼りまくって環境を破壊しまくって。
俺も機械に頼りまくってる現代人だからケチつける権利等ないんだけどね――
またどうでもいい話題について脳内で色々考えていると。


~♪~~♪


「……うん?」

風に乗ってやってきたのか、楽器の音色が聴こえて来た……楽器?

誰かが演奏しているのだろうか。そういえばこちらに来てから音楽という物を楽しんでいないなぁ。ケータイの着メロなんてフル起動したら電池勿体無いし。Ipodなんて便利な物もないしね……。
あったとしても充電出来ないからただの荷物になるだろうけど、何時かはケータイもゴミ同然になるんdなろう。

音色の方向に向かってみる。近付く度音色が大きくなってくる。至極当然の事だけど。

「……お」

発見。そこには三人の少女がそれぞれ楽器を持って演奏していた。
えっと、ヴァイオリン、トンラペット、ピアノ……? いや、キーボードか。
キーボードってパソコンの付属品の叩き付ける打楽器の方じゃないぞ。

ううむ。何が頭の中で引っかかるな。何処かでというか何かで……。
そうだ! 幻想郷縁起で彼女達を見た気がする。

えっとえっと……『なんとかリバー三姉妹』だ。とりあえず楽器を持った三姉妹ってだけを覚えている。
確か彼女達は激しくノリの良い曲を演奏するんだってね。人里ではファンクラブがあるくらいに人気だと聞いた。
そこまで考えた時、演奏が止んでいたので訝しげに思って思考モードを終了すると。
三姉妹が全員演奏を停止して俺の方を無言でじーっと見ていた。

気まずい。非常に気まずい。誰か何でもいいから喋れよ! おい! おい!!

虚しい叫びである。頭では混乱しつつ体を硬直させてフリーズ状態に陥っていた。
が、3秒後に復帰すると頭をブンブンと左右に振り気絶状態(?)から復帰する。
そしてこの状況を打破しようと

「ごめんなさい……」

えらいしょげた声で謝った。いや、何で謝ってるの俺。

☆☆☆☆☆

気まずい空気も少しの間だけであったようで、彼女達は意外と友好的で俺の先程の不安も杞憂で終わった。

それで、彼女達は『プリズムリバー三姉妹』。先程も言ったように人里でも人気ある楽団だ。

さて、自己紹介も終えた事だし彼女達の事をざっと説明しよう。
長女は『ルナサ・プリズムリバー』。彼女はヴァイオリンを扱っている様だ。
幻想郷では珍しく口数は少なくちょっと暗めみたいだ。見た目はやっぱり少女。
ルナサの演奏を単独で聴くと気持ちが落ち着くらしい。聴き過ぎると欝になるとか。

次女は『メルラン・プリズムリバー』。彼女はトランペット担当。背は三姉妹の中で一番高い。
性格はとても……いや、異常に陽気でたまに何言ってるのか訳わからん。その元気を俺にも分けて欲しい。
メルランの演奏を単独で聴くと陽気になるらしい。自らのテンションを楽器で噴出させているのだろうか。こやつらは。
関係無いけど謝った時に大爆笑したのはこいつ。腹立つ。何かこういう展開ばかりな気がする。

三女は『リリカ・プリズムリバー』。彼女はキーボード担当。パソコン前で発狂して叩く打楽器ではないぞ。背は三姉妹中一番低い。
三姉妹中一番話がし易い。でもたまに黒い部分が垣間見えた気がした。リリカの演奏は唯一単独で聴いても何も起こらないそうだ。

とまぁ、こんなモンであろうか。

「リュートは何をしていたの?」

そう問いかけてきたのは一番会話し易いリリカである。
因みにルナサと会話してもしっかり成立すると思うのだが、メルランは……テンションに付いていけない。

「宴会でちょっと酔ってきたから夜風に当たってただけだ」
「それで散歩してたら音色につられて来たと」
「そうそう。そういう事」
「あの謝ってる時の顔が面白かったよね」

ぶり返す様にゲラゲラ笑うメルラン。ちょっと表でろ。表だけど。

「それで君達は何をしていたんだ?」

とりあえず俺の威厳(殆ど無い)を保とうと冷静に怒りを堪えながら問う。

「あー、ほら。宴会で演奏するからそれの予行演習してたの」

とリリカが答えた。

「なるほど」

まぁ実演前には練習するよね。うん。

「そしたらリュートが急にやってきてねぇ」
「じゃかましい」

会話にまた口を挟んでゲラゲラ笑うメルラン。
そろそろ殴る為のアップを始めたほうがいいかな、俺。

……しかし、リリカ、メルランは明るい(後者は特に)のだがルナサは本当に静かだ。
三姉妹それぞれに個性があっていいと思うけどさ。

ルナサの事を何の気なしに見ながら色々と考えていたら、やっぱり、うん。
眼が合っちゃうわけでさ。

「……」
「……」

2秒ほど眼が合った後逸らされた。どうすればいいんだ。
隣で幾ら騒がれていても「あーはいはい」で済むからいいんだけど無言は辛い。
幸いリリカとメルランがいるので話す相手をシフトすれば何の問題も無いが。

「な、なぁメルラン」
「何?」

空気に耐え切れず丁度近くに居たメルランに話しかけた。

「お前の演奏ってさ、単独で聴くと陽気になるんだったよな?」
「うん、そうだけど」
「じゃあ聴かせてくれないか?」
「いいよー」

なんというスムーズな流れ。運気は俺に付いてるとしか言いようが無い(根拠すら無い)
聴くだけでハイになるってちょっと試してみたいじゃない。悪いか。

「……やめておいた方がいいと思う」

忠告してくれたのはルナサ。やっと口を開いた。

「どうして?」
「妖怪や特別な人間ならまだしも普通の人間には負担が大きいから」

む、そうなのか。ただただテンションがハイになるだけと思っていた。

「まぁいいじゃん、いざとなったら姉さんが演奏すればいいんだし」
「でも……」
「リュートは私の演奏が聴きたいんだよね?」
「あぁ。まぁ、うん」

曖昧に返事をする。ちょっと先程の忠告で少しビビっているのは内緒だ。

「じゃあ決まりね!」

そう言ってトランペットを構えるメルラン。

ルナサを見ると少し心配そうな顔をしていた。あぁ、優しいんだなこの娘は。
リリカを見るとにやにや笑っていた。あぁ、少し黒いんだなこの娘は。

とかなんとかあれこれ考えていると――メルランの単独演奏が始まった。
トランペットのソロ演奏かと思いきや色んな吹奏楽器の音色が聴こえてくる。

(幻想郷だし何でもありか。)

勝手に納得することにした。

演奏を聴いている内にどんどんとステップを刻みたくなってくる。
なんだ、これは。これがメルランの陽気になる演奏か。

オラわくわくしてきたぞ! テンションの高揚と共に演奏も激しさを増してきた訳で。

「イヤッホゥゥゥゥ!!!」
「姉さんあれ……」
「……完全に出来上がってる」

出来上がっていた。これ以上に無い楽しさに俺自身も怖くなってきたが楽しさが恐怖を軽く超越しているのですぐに怖さは無くなった。

クスリ使ってハイになるってこういう気分なのか、しかし俺はハイになってる時でも思考はやめないらしい――

ふと、頭の中で何かが炸裂した。なんだこれ。テンション上がりすぎてヤバい。

そう。俺のテンションゲージはカンスト知らずでどんどんと上限値を突き破っていた。100/100がMAXとするなら2000/100くらい。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

バシュウウウウウ!!! 体中から噴き出る俺の霊力。
俺の特性をすっかり忘れていた。ハイになるほど霊力が上がるんだった。
スーパーサイヤ人と言ってもいいくらいにまでシュンシュン『気』っぽく出ていた。

「最高に『ハイ』ってヤツだ!!!」

気分は○IO様。時間は止められないけど今ならなんでも出来そうな気がした。
理性が吹き飛ぶってこういう事なのかもしれない。
気がつくとメルランは演奏を止めていてこちらを唖然として見ていた。

「お前が演奏を続けなければ俺はこの地球(ほし)を破壊し尽すだけだ!」

お前は本当に誰なんだと問いたくなるセリフを言う俺。

「姉さん、お願い」

メルランがそう言うと無言でヴァイオリンを取り出して演奏を始めるルナサ。

これは…! ち、力が抜ける……!
先程まで噴出していた霊力も一気に鎮まり、今度は打って変わってどんどんと欝になってきた。
冷静に考えると先程のセリフはまじで痛い。もしかして黒歴史更新したのか。ニューレコードなのか。
そう思うと更に欝になってきた。

「どうしてこうなった……」

2度目の言葉である。

急にくる虚脱感とアルコールのせいで急に眠くなってきたのかぼうっとしてくる。
そのまま膝から崩れ落ち――寝ました。はい。気絶ではないです。

これまでに何回彼が意識を手放したか皆考えてみよう!……嫌ですね。ごめんなさい。


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