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東方凡人記:20話
ザッザッザッザ、ダッダッダッ。

「ここをッ確か! こう曲がって、ここを突っ切れば!」

息を荒げながら俺は森の中を突っ走っていた。
妖怪の山があっちの方で……。確か人里は妖怪の山の方から……。
俺の脳内のとても詳しくマッピングされた地図を頼りにひたすら走る。

ザザッ!

「いよっしゃあーー!」

勢いよく飛び込み、さも高いところから着地したかのようにカッコつけて膝と手を地面につく。
やっと森の中を抜けた。俺はもう森を制覇したと言っても過言ではないだろう。
もう地形は把握したし、何より頼りになる地図(俺の脳内に記されている)がある。
無駄に得意げになった俺は顔を上げる。目の前には人里の風景が広がっていることであろう。

サーー。

春独特の暖かい日差しに、涼しい風が草を撫でる。
風が吹くと草同士が奏でる草原特有の心地よい音色がしていた。

俺は優雅な仕草で風で靡く髪の毛をかき上げ―――


「って草原に行きたいんじゃねえから!!!」

盛大に一人でつっこんだ。

どうやら俺の脳内地図にミスがあったらしい。
ミスを指摘して図書券を貰わなければ。どうでもいいけど図書券は本屋さんで出してもよく断られる――。
本屋で図書券1000円分で300円くらいの漫画を買おうとして断られた時の気分。
くそ、700円の小遣いが欲しかったんだよ。
だったら図書券お断りってでかでかと看板で出しやがれ。

本当にどうでもいい事をぶつくさと考えていると。

プツン。

「痛ぇッ!」

キャハハハと楽しそうに飛び回る虫ケ――妖精。
髪の毛を数本抜くという悪戯をされたらしい。

このモブ妖精が。略してモブ精。

今思えば良く飛び回って悪戯をしょっちゅうしてくる妖精達には本当に嫌がらせをされてきた。
初めて幻想郷に来たときは霊弾をバスバス撃ってきたり里にある俺の家でお茶を楽しんでいたらお茶に塩を入れられたり……。

ああ腹立ってきた!!!

怒りが腹の底からムカムカと湧き上がってくる。
ハゲたらどうすんだテメぇぇぇぇ!!

「死……喰らいやがれ!」

札をぶっきらぼうに取り出すと俺は散弾銃のように霊弾を撃ちだした。
妖精達に一発も当たらなかったものの、好戦的ではないらしく一目散に逃げ出していった。

……ちぇ、やっと弾幕らしい弾を出したのに当たらんか。
しかしフランドールと弾幕ごっこ(という名のリンチ)をしてから何だか調子がいい。
先程の散弾銃の様な弾の展開はできなかったのだが。

「これがレベルアップというモノか……!」

幻想郷に入りたての俺をレベル1とするなら今の俺は12程はあるはず!
……フランドール? あぁ、495レベル(成長中)じゃないの?

でも妖精の悪戯に困っていたし今の様なショットが出来るようになったのは嬉しい。
あれを上手く扱える事ができれば低級妖精くらいなら撃ち落とす事は容易だろう。

そういえばこないだはせっかく汲んだ井戸水をぶっかけられたっけ、悪戯されて。
だが妖精が悪戯する人間は注意力が散漫と聞く。注意深い人間には近寄らないとか。

知らないな、そんな事。だってあの妖精3匹1組で仕掛けてきたし。
言い訳乙ってか? やかましいわ!

「うん?」

頭の中で誰かに怒鳴り散らしていたらふと、様々な花が咲き誇っている花畑が目に映る。
外ではあんなに花が咲いている光景なんてそれこそテレビや写真でしか見た事は無かった。
特に花に興味がある訳では無い。でもこれは誰がどう見ても美しい。
こういう光景を見ると俺は本当に幻想郷に来て良かったと思える。
外での居場所と常識をかなぐり捨ててでも来たくなる正に幻想的な風景そのものだ。

「うは、俺超詩人」

……たった一言で台なしである。

もっと近付いてみようとスタスタと花畑に近寄る。

うむ、やはり近くで眺めるとより絶景よのう。こういう所で食事すると気持ちいいんだろうなぁ。
咲夜さんにサンドイッチでも作って貰えば良かったかなぁ。そうか、一旦帰っておにぎりでも握って持って来たらいいかな。
ここの場所だけしっかりと頭に刻んでおき、里を目指そう。

ふふん、俺も風流になったもんだ。さてと里はあちらの方かなと動き出そうとした時、

「あれは……?」

花畑の中心部に日傘をさした緑髪の女性がいた。

(里の人か? しかし里で彼女を見かけた覚えは一度もない)

そう。一応里に居着いてからは住んでる連中には挨拶して回ったのだ。
その際、人里の住人にはあのような人は見かけなかった筈。

……妖怪、だろうな。恐らく。
相手がどういったヤツか判断出来ない以上無駄な接触は避けたい。

息を止め身を屈めて視線を彼女に送らない様にして少しずつ離れる。
かくれんぼ等でも息を止める、視線を送らないといった行為をすると気配を殺せるのだ。
幸い花は腰の丈程あり身を隠すにはもってこいだ。

よし、結構離れたぞ。少しだけ腰を上げて日傘をさしている彼女の場所をこっそり確認する。

……なに!? い、いない?! そんなバナナ、と呟いたその時。

「さっきからこそこそと何をしているのかしら?」

笑顔で俺を見下ろした彼女がそこにいた。
そりゃあ、見つからないよな。背後にいるんじゃあな。

しかし、何時の間に……何らかの能力で後ろに回ったのか?

こいつは多分、いや確信して言える。俺では到底敵わないだろう。そんな雰囲気を相手は醸し出していた。
では、戦闘を回避するしかないね。仕方ないね。そもそも相手が俺を襲うとは限らないし。

「別にやましい事があってこそこそしてる訳じゃあないですよ」
「そう。なら此処で何をしているの?」

そう言ってにっこり笑顔を見せる彼女であるが、眼が全く笑ってません。
もしかして俺が何か仕掛けようとしていたと勘違いしてらっしゃる?

何だか何を言っても聞いて貰えそうにない空気だ。
俺は決心し、懐に手を伸ばし相手に見えない様に札を握った。

とは言え失敗したらどうしよう。今すぐゴメンなさいしたら許してくれるかな。
いやいや、俺何もしてないしする気も無いし。

ええい、ごちゃごちゃ悩んでいても仕方ない、ならば!

「くくく……」
「……?」
「ダァーハッハッハッハッ!!」

そう、フランドールの時に手に入れた特技。無理矢理テンションを高める。
だが相手はスマイルを維持したまんま。全く微動だにしていない。
よしッ! ならば文字通り目に物を見せてやるッ!

爆音と閃光を同時に放つイメージ。目を閉じ、札を構える。

「閃光『フラッシュバン』!!」

刹那、凄まじい爆音と光が札から放出される。
今だッ!!

ダダダダダダダ。

全力で戦略的撤退である。
逃げる事すら出来ない程に力量が離れているなら相手を封じればいい。
ただ、これの短所は俺の耳も数秒全く聞こえなくなる点だが。だが、これでヤツの動きは封じ込めたはず。

足を動かせつつ振り返ると。

「い、いない!?」

するとドン、と正面にいる何かにぶつかった。あ、何だか柔らかい。じゃなくて。
恐る恐る前を見ると……。

「素敵な挨拶ね坊や」

先程のお姉さんが。もう嫌だ家に帰りたい。

「たは、ははは……」

乾いた笑いだけが出て来る。
が、前以て妖怪に接近された時や捕まった時の対処方法は一時凌ぎ程度だが備えてあるのだ。

吹き飛ばすイメージ。

札を右手の小指から人差し指まで巻き付け、そのまま対象を殴り飛ばす。
ダメージは吹き飛ばす事を目的としているので皆無だ。(余談だが、小石や木を殴って試した)
当てるだけで良いので最小限の動きで拳を当てる。

予定だったが。

ガシッギリギリギリギリ。

「づっいででででッ!」

悍ましい力で腕を掴まれ、捻りあげられてしまった。

「なかなかイイ線行ってたわよ、後少しで目をやられて逃げられていたかもしれないわね」
「そ、うかよっ!」


今度は左手の札を自身の腹に当てる。
すると後方に吹き飛び、捕まっていた腕を振りほどき且つ距離をかなり置いた。
ズザザザ、と足で着地しそのまま慣性を使い後ろに逃げ出した。

……意外といけるじゃねえか俺!

「あら、色々な芸を持っているのね」

俺の機転は彼女にとっては芸程度らしい。こっちは必死なんだよこんちくしょう。

「それなら私も何かとっておきを見せないと罰が当たるわね」

何をする気だ!? そのまま逃がさないと罰が当たるぞ!
と思いながら後方を見るとスゥ……と日傘を俺の方に突き出し何かをしている。

バチバチバチバチ。

日傘の先端が何やらスパークしている。
もしかしなくてもアレだ。弾幕を放とうとしているのか。

「マスタースパーク……!」

なにぃ!? マスタースパークだってぇ?!
ヤツの放とうとしている弾幕の名前に驚きながら振り返る。

『ズゴゴゴゴォォォ!』

嘘だろおい……。明らかに左右どちらかに全力で方向転換しても間に合わない極太レーザーが今にも迫らんとしていた。

逃げ道はもう無い……ただ、ドラゴンボールを読んで空気の読める俺なら判る。
これは撃ち返して軽減すればいいんだ! 即座に札を取り出して構えた。

「かめはめ波ァァァァァ!」

オラに……! 力を分けてくれ!
人里の皆に慧音さん、霊夢、魔理沙、紅魔館の皆!

「はあああああああ!!」

ズオオオオオ!! と発射されるかめはめ波。が、競り合うまでもなく一瞬で掻き消された。

ピチューン。

謎の効果音と共に俺はレーザーに飲み込まれた。普通は勝利フラグだろ、空気読めよ。
蛇足ですけど流斗君は札を貰ってから色々と試して紙に書き込んでいます。どういった事が可能なのか、不可能なのか。勉強出来ない癖にそういう所だけ几帳面です。


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