東方凡人記:1話
おはようございます! 今日もさぁ面白くない朝がやって参りました! 俺は寝起きはハイテンションでいこうと決めている。言っている事は例えネガティヴであろうとも。ま、意味は無いんだけどね……って寒っ!?
おかしいな、俺は寒がりだから寝る前は暖房おもッきし効かせて寝るんだが。もう3月だというのに電気代にも環境にも優しくない漢とは俺の事だ。
はてさて、目も覚めてきたので大きく背伸びをして立ち上がる。ざざざ……風で靡いた木の葉が奏でる音が聴こえる。右を見る、木。左を見る、木。空を見る、大きな月。頭には木の葉が乗っていた様で、起き上がった際にかさりと音をたてて落ちた。
どう考えても森の中、しかも夜です。本当にありがとうございました。
落ち葉がベッドなワイルドな生活なんてしたこと覚えはねえぞ。良い子の皆は風邪ひくから真似すんなヨッ! ではなくて。異常だ、明らかに異常。一体何だこの状況は。
ええと、こういう時は素数……じゃなく落ちついて過去の行動を思い出せばいい。ドラ○エにもあったよな。『もっとおもいだす』とかいう特技。
えぇっと、母さんに買い物頼まれて……ジュース買ったらトマトジュースが出てきて路上で車にトマト踏まれたから激昂して車にトマトを投げつけたらえげつない程にイカツイおっさんが車から……。意味わかんねぇしなんでこんなにトマトに拘っているんだ俺は。
んーっと……そうだ、女の子が泣いていたんだ、道路のど真ん中で。そして車に轢かれそうになっていた女の子を俺が持ち前の正義感と底力を発揮して救い、一躍ヒーローに。そしてそれを見ていたカワイイ女子高生が頬を染めながら俺の様子を……。
いや、ないない。確か女の子を助けたのはあってるけど――っ! ――そうだ! その後俺トラックに轢かれて死んだんだ。
ついに俺は死ねたんだ! という事はここが死後の世界。三途の川と綺麗なお花畑を想像してたんだが、どうやら死後の世界とやらは真っ暗な森の中からスタートするらしい。
「そういえば死んだんだから空飛んだりできないのかな」
某格闘漫画みたいに瞬間移動はまだしもブクージュツとかさ。ブクージュツとか無しに幽霊って実体が無いから重力と言う鎖から縛られずにこう……。
「あら、起きたのね」
――だが、まて。今ならか○はめ波くらい出せる気がする。
「貴方「かー!!! めぇぇぇぇ!!! ぶげっ!!」
構えてエネルギーを溜めようとしている所にすっかーん、と急に後頭部に迫りくる衝撃。なんぞこれ、タライ……? 何でドリフ?
「話を聞かない人間。これで落ちついたかしら」
「ふへっ?」
……マヌケな声を無意識に出してしまった。こんな深そうな森の中でソッコー人に会うとは。タライがどこから落ちてきたなんてもはや気にしていない。いや、気にしたくない。振り向いて先程の声の主を確認したのだが。
すごく……美人な女性です……。ヘンな割れ目というか隙間みたいな物から上半身だけ身を乗り出しているのだが。
「わあああああ!!! 妖怪上半身! 「黙りなさい」げぶっ!!!」
パニクッていた所にもう一つタライが上から。落ちつけ、ビークールだ。英語でいうとBE KOOL。(誤字)
「やぁ可憐な美少女。この私に何か御用かな」
「足、震えてるわよ」
「……」
そう、お化けは苦手なのだ。小さい頃に両親と行ったお化け屋敷がトラウマになって。しかし! 美人なオバケならセーフじゃないか!?
「ま、このままで話すのも失礼かもしれないわね」
と、隙間から身をのりだしてスタッと地面におりた。なんだ、あるじゃん。足。と思ったつかの間、隙間の中の無数の目に気がついてしまった。
「あ!!!」
そういえば轢かれる前に変な空間が広がって目がいっぱいあって……! 手が出てきて……!!
「ぎゃああああああああ!!!」
☆☆☆☆☆
「落ちついたかしら」
「はい」
本当かしらねえ。と心底呆れたような表情な彼女。一体彼女は何者なんだ。先程の変な能力といい、この胡散臭ぇ立ち振る舞い。ココの事は彼女が詳しそうだし色々聞いてみよう。
「あの、色々質問したい事があるのですが」
「構わないわ、言ってみなさい」
「ええと……ではまず貴女の名前から」
あ。こちらから名乗るのが礼儀だったかもしれない。失礼だったかな。
「八雲紫、ですわ」
それは杞憂だったらしく彼女はすんなり答えた。ですわ口調なんて初めて聞いた。
「えっと、僕の名前は鈴……」
まて。せっかく異世界(?)に来たんだ。普通な苗字からグッバイしようじゃないか。
そう、流斗って名前はカッコいい。鈴木って苗字のせいで名前のカッコよさが失われていないか。全国の鈴木さんゴメンなさい。
しかし咄嗟に苗字なんて思いつかない……。さ、西郷隆盛? 何で名前まで出てるんだよ。しかも西郷どん。
や、八雲……目の前の人の名前パクってどうすんだ。ロ、ロムスカ・パロ・ウル・リュート。……下の名前だけ名乗ればいいか。
「リュートと呼んで下さい。八雲さん」
「リュートね。私のことは紫、と呼んでくれていいわ」
宜しく、と手を差し出す紫さん。こんな美人な手を握れるなんてそうそうねえぞ。しかもソッコー名前で呼んでいい、だぜ? これはフラグ……!?
「俺に限ってそんな事はありえない」
「?」
なんでもありません。がっしりと握手する。手、手ぇ柔らかっ! 何これ、マシュマロ!?
「それで、聞きたい事って? それと離して欲しいわ」
「あーばばば! 失礼!!」
慌てて手を離し、胸に手を当ててすぅ、と深呼吸。
「ここって何処ですか。ええと、僕が死んだって事は大体解るのですが。やっぱり霊界だとかそんな所ですか?」
と言うと何が面白いのか紫さんは急に笑いだした。
「なっ、何が可笑しいんですか!」
「ふふっ、悪かったわね。変な事言うから笑っちゃったわ」
やはり俺の脳は厨二全開なんですね。
「そうね。此処は何処、から説明しましょうか」
…
……
………
「という所よ」
――すみません、なんか壮大過ぎてここは幻想郷とかいう場所で、人間と妖怪が共存する場所。くらいしか話きいてなかった。
結界がどうのこうのとか色々言ってた気がするけど俺の耳の右から左へ通り抜けていっただけだった。
「そして、貴方の事だけれど」
紫さんは少し溜めてから続けた。
「死んでませんわ」
「えッ!?」
ワッツ? 俺が死んでない?
「トラックに轢かれたんじゃあ……」
「私がスキマに入れて助けたじゃない」
へえ、隙間であってたのか。とかそんなことどうでもよくて。
「肉体から出た魂を、その、スキマを使って送りだしたんじゃあ……」
また笑い出したよチクショウ、想像性豊かで悪いか。
「私は死神じゃあありません、河渡しもしませんわ。轢かれる前に私がこっちに送ってあげたのです」
「どうしてまた」
「冬眠してたんだけど少し早く起きたから暇を持て余していたのよ」
意味がわからない、冬眠ってなんだよ、アンタはクマか。
「そういう訳でね、貴方をこちらに招待したのよ」
どういう訳だよと訝しげな顔をしていると……。
「貴方、毎日暇そうに暮らしているでしょう」
まるで俺の心中なぞ全て読み通せているかのように告げてくるのである。しかしどうしてそれを……? 新手のストーカー?
「いつもと違った状況を貴方は異常なまでに楽しんでいるから」
と口に出すまでも無く答えられてしまった。
特に何の目的も、目標もなく学校に通い、中学はまだ友人とバカやってるだけで満足していたが、高校ではそうもいかなかった。何かに真剣に打ち込みたくて部活に入ったが続かなかったし、学校に行っても興味のない授業ばかり。勿論授業を受けてないのと同じ状態なので成績は悪くなるばかりの負のスパイラルだ。
定期テスト前は勉強するのだが、たかがしれているし両親もそんな息子を放っておくわけもなく、勉強しろ、勉強しろと毎日のように言う。そんな両親の気持ちを理解していたが反発するしかできなくて。
「五月蝿い、するっつってるだろ!」と怒鳴って父親に殴られるといった事もあった。テストがヒドい点で返ってきた時、父親は励まそうとして、
「父さんもな、最初は勉強ダメダメだったんだ。でもな、目標を見つけたら勉強なんて苦しく無い。だから諦めずに頑張れ、学生の時が肝心だぞ」と言われたのだが。
アンタには目標があったんだろうが。俺には何もない。将来役立ちそうな趣味も。特技も。
とマイナスで捉える事しか出来なかった。父親が自分もやればできると励ましているのはわかっていた。でも、何のやる気も目標も出来ないのが苦しくて。
「で、貴方はどうするの? なら元の世界に返してあげるわよ」
紫さんの言葉でハッと我に返る。
「幻想郷に留まるか、」
――またツマラナイ毎日に戻るのか。そんなのはゴメンだ。今思えば俺は今物凄い体験をしているんじゃあないか。人間と妖怪が共存する世界、すごく刺激的じゃないか!!
「――る」
体が震えて声が中々出ない。もしかして、俺は今新たなサクセスストーリー(苦笑)を歩み始めようとしている、と考えると、喜びで胸が一杯だ!
「聞こえないわ」
「留まる!!」
そういうと思ったわ、と言っているようにニヤリと笑うと紫さんは、
「じゃあ聞きたいことはそれだけかしら」
「え? ……はい」
「じゃあ私はもう行くわ」
そう言うとスキマを作りだし、中にすっぽりと入ると。
「あぁ、そうそう。妖怪は夜になると活発に行動するから。特に森の中とかキケンよ」
それじゃあ。とだけ告げてスキマは閉じてしまった。……ええと、忠告になってんの? それ。
俺のツッコミは心の中で虚しく響くだけであった。
物語の展開が遅い…!生暖かい目で見てくれると有り難いです
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