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東方凡人記:18話
「くっ……ッ……」

 体が重い。瞼も錘を付けているかのように開かない。ここが冥界なのか? ――はたまた別の場所なのか。

「ふぬぬぬぬ」

 とりあえず体だけ起こそうとしたのだが、力が全然入らない。まるで生まれたての動物が立とうと必死にもがいてるかの様だ。
 どうやら俺は仰向けに寝ているみたいだ。とりあえずうつ伏せになって腕立て(膝は使っているが)の要領でようやく立ち上がった。
 そして重かった瞼もようやく枷が取れたかのように軽くなる。

パチッ!

「……」

 新世界はどのように広がっているのか。と期待して目を開けた俺だったが。絶句した。
 冥界とやらは絶景でも広がっているのか、若しくはじめじめして怖い空間なのか色々と想像していたが……。うん、見間違えではないな。

「ここってさっき……」

 そう。フランドールと弾幕ごっこ(という名の処刑)をしただだっ広い部屋である。俺はうつ伏せにドサりと倒れ込む様に寝転がり、頭を抱えて足をバタバタさせた。

(恥ずかしいッ!! 俺もあそこまで厨二妄想が広がっていたなんてッ!!)

 死神って!! 閻魔って!! どこの厨二でありきたりなパターンなんだよ!!
 先程までのはどうやら夢だったらしい。夢ってレベルじゃねーぞ!やたらリアルだったんで信じるしかねえだろドアホ!! ……知らない誰かに脳内で怒鳴りつけても仕方がない。
 再びすっくと立ちあがり、辺りを見回した。……フランドールはいないようだ。長い間気絶していたみたいだが。
 ハッと今重要な事を思い出し、足元を見てみる。

「うへぇっ」

 そう、足元にはフランドールの弾幕が直撃した時の血がダラダラ流れていた。血が乾きかけてるじゃねえか……。
 後頭部も手で触ってみると血が固まって髪の毛がパリパリになっていた。気持ち悪い。
 いや! おかしいだろ! 髪がパリパリとかこの際どうでもいい!
 明らかにこの血の量は素人目に見ても致死量だ。出血多量と言っても大げさではない。
 自分が幽霊になってるのではないかと思い、左胸に手を当てたり手首の脈、体温を調べてみる。

「うむ、心臓よし、体温よし、脈が……ない……!」

 正常に測れていないだけである。2、3回違う場所で試した結果、きちんと脈もある事が判り明らかに生きている事も確かめられた。
 どうやら人間っていうのは意外と丈夫に出来ているらしい。
 すごいね、人体!! 俺は死に掛けたのだから一度はやっておかないといけない事に気づいた。

「復ッッ活ッッ!! 流斗復活ッッ鈴木流斗復活ッッ鈴木流斗復活ッッ!(以下略)」

 ……飯食いてェ〜。俺も某漫画の中国拳法の人みたいに強かったらあの危機を回避する事ができたのだろうか。とか考えていると、

「誰かいるの?」
「っ!?」

 フランドールが戻ってきたらしい。アホか、俺は。あれほど叫んだらそりゃもう戻ってくるでしょう常識的に考えて。無駄な抵抗かもしれんが部屋の隅で縮こまっておこう。と、ババッとダッシュして隠れようとしたのだが

へにゃり。ゴチンッ

「いてッ!」

 力が抜けてこけてしまった。

 どうやら体は未だに思うように動いてくれないらしい。あ! 死んだフリすればいいのか! あかん、倒れてた場所から明らかに遠すぎるわ。
 いやまて、死後硬直という物があってだな、死体が硬直で跳ね上がって移動したという説はありえる(ありえません)

 というわけで……。

「まだ壊れてなかったんだ!」

 もう目の前には彼女がいました。サイドテール幼女が。見つかったオワタ。本格的にオワタ。俺の妄想の中の死神さん、閻魔様再びお願いしますね。

「壊れて、って……俺はお前の玩具じゃない」

 一先ず冷静になって対応してみる。いつだって紳士は冷静でなくてはならないのだ。

「お姉様が私の為に持ってきてくれた玩具でしょ?」

 ……どうやら生物として見られているかも微妙な様子だ。

「さ、弾幕ごっこの続きをしましょ?」

 絶対にやるかバカ。とは口に出さない。言った瞬間弾幕の嵐が飛んでくるであろう。あの時に受けた弾幕が脳内でリフレインされる。
 禁忌『クランベリートラップ』だったか。あの弾幕でさえ俺には無理ゲーなのにあのスペルカードはしかも初っ端で出した。恐らくまだ懐には別のもっと凶悪なスペルカードがあるだろう。
 ……これは文字通り俺のラストチャンスだ。絶対に弾幕ごっこを受けてはならない。フランドールと弾幕ごっこをして勝つのはスペランカーを初見でプレイして死ぬなというくらいに無理だ。
 ふと閃く。ちと無理矢理感は否めないが……。

「フランドール」
「何?」
「お前は……弱いな」
「っ!?」

 まさかの弱い発言。あ、だめだ。整った顔が眉間に皺がよってすげえ怖い顔になってる。

「私が……弱いって?」
「あ、ああ」

 すいませんすごく強いですリアルに小便漏らしそうで大変です。というか少しチビった。バレないように股間に手を当てて確認する。

「あの程度の弾幕も避けれない人間が」

 あれって程度で表現される弾幕なんだ。弾幕ごっこはやっぱ世界が広すぎるね。皮肉無しで人類には早過ぎるスポーツだぜ。
 突っ込む所を間違えた。やはりレミリアさんの妹だ。プライドは高いらしい。冷静に状況判断すると――すごくキレてらっしゃる。

『ガッ!! バゴッゴガガッ!』

 俺の背面から物凄い爆破音が聞こえてきた。壁を爆破して誰かが助けに来てくれたのかとかそんな考えが脳内を一瞬だけ過ったのだがそれは違ったらしい。
 壁の一部が抉り取られたかの様に爆破(?)されていた。フランドールの方を見ると手を前に突き出して握っていた。いわばジャンケンのグーである。
 あまり想像したくないがアレはフランドールが壁を爆破したようだった。

「……次は」

――リュート『の』を『握る』よ?

 ゾクゾクゾク。言っている意味は良く解らない。が、本能で自分が殺されるという危険を察知した。
 能力であろう。俺は今すぐ逃げ出したい衝動に駆られた。しかし背面は壁、正面の出口はフランドールがふさいでいるので無理だ。(どうせ背面に逃げ道があったとて逃げれはしないだろうが)
 目の前のフランドールは俺の方へ手を(かざ)していた。能力を使う気だ。

「ギュッとして――」
「だから弱ぇつってんだよガキがっ」

 ピタリ、とフランドールは何かを握ろうとする手を止めていた。
 大口叩いたものの、口内は極度の緊張でカラカラで足はガタガタと震えている。

『ギリリッ』

 歯軋りの音がここまで聞こえてくる。すごいキレてる。最早諦めモードに入ってきた。もう好きにして。
 ――と思ったが最後の最期、死ぬときは格好いい言葉を吐いて死のうじゃないか。厨2病を拗らせた結果がコレである。

「さっきも言ったけど、あの程度の弾幕も避けれない人間が私に向かって弱い?」
「あぁ、お前は弾幕ごっこでは強いだろうな」
「どういう意味……?」
「自分より弱い相手を圧倒してさぞ楽しかっただろうな」
「何が言いたいのッ!?」
「自分より弱い者を相手にして楽しむ……それはどう見ても強者のする事ではない」
「……」

 あ、あかん。翳した手が今にも更にギュッと握りそうになっている。ちょっ! ちょっと待って! このセリフだけは言わせてくれ!

「まだわからぬか!!」
「!!」
「心じゃよ!!!」
「!!!」

 よし、もう握るとやらをしていいよ。某ゲームのセリフをシリアスなシチュエーションで叫べただけで俺はもう満足さ。
 諦めの境地に達した俺は目をギュッと瞑って能力を使うのを待っていたのだが……。



……

………

……あれ? まだっすかフランドールさん? パチリと目を開けて見ると。

「心……」

 何かさっきのセリフに感じるモノがあったのだろうか、肩を震わせて呟いていた。
 あかん、どうしよう。ゲームのセリフで感動されても俺としては逆に複雑な気持ちなんですけど。でも様子を見るからに明らかに感動ではないな。うん。

「そうよ、だから私は」

 ん?

「だから私はお姉様……アイツに495年間も暗い部屋で閉じ込められているの」

 お姉様をアイツ扱いか……つーか495年間も!?

「私が少し癇癪を起こせば皆壊れた。『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』で」

 あの姉の能力にしてこの妹の能力ありだ。チートは姉だけでなく妹もらしい。

「私はどうせ気がふれているもん! だからアイツは私の能力を恐れて暗い地下室に閉じ込めるの!!!」

 俺はフランドールの事を何も知らずにテキトーな言葉を選んでしまった事を少し後悔した。多分、フランドールは本当に『遊ぶ』感覚で俺と弾幕ごっこをしたのだろう。
 495年間閉じ込められっぱなしで、そんな危険な能力を持ってれば誰も近寄らないだろうし、常識なんて知ろう筈もない。
 ただ俺にとっては簡単にじゃれ付かれただけでも軽く死ねるのだが。

「外にでようとしても雨を降らされるし」

 雨? 吸血鬼は雨が弱点なのか?

「アイツも!! お前も!! 大嫌いッ!!」

 うおっすごい剣幕!! ……と思ったのだが。フランドールは泣いていた。
 495歳(?)とはいえ、何も知らずにずっと閉じ込められていたら成長なんてする筈もない。年齢だけ見ると俺より遥かに年上だが、頭脳はまだまだ子供だ。
 俺はこんな子供に張り合っていたのか。情けない、と同時に申し訳ないとも思った。
 泣きながら俺を睨むフランドールに近付き「ごめん、何も知らなかった」とだけ言って、彼女を抱きしめた。
 ……やらしい目的じゃない。俺はロリコンじゃないし。それによく考えるんだ、相手は495歳だ。俺より年上だからロリコンでは――

「う、うわぁぁぁぁぁぁん」

 どうでもいいことを考えるな、俺。とりあえず本格的に泣き始めたフランドールの背中をさすってやった。


☆☆☆☆☆


「どうすっかな、これ」

 俺の服(かなり血塗れ)をギュッと握り締めて寝ているフランドール。泣きつかれて寝てしまったのだ。
 俺もかなり力が抜けた。生きた心地がしなかった。これからは好奇心は抑えることにしよう……ま、無理だろうけど。
 それにしても……。
 すーすーと寝息をたてて寝ているフランドール。その様子は人間の子供と全く同じである。

「こんな幼女が危険ってんだから恐ろしい……」

 一先ずフランドールを服からはがし、おんぶをする。彼女の部屋にベッドは……あるだろうな、うん。
 2、3歩歩くとふと気づいた。

「力が入らへん……」

 俺が1番ボロボロであった。


☆☆☆☆☆


 あの後気合でフランドールをあの部屋で寝かせ、とにかく休息したい……とフラフラとした足取りで自分の部屋を目指していた。
 妖精が通りかかるたびに「うわっ」とか「ひぃっ」とか聞こえてくるので恥ずかしい。というかそんなに見た目そこまで酷いんだったら助けてくれよ。
やっとこさ俺の部屋の前に着いたのだが部屋の前には咲夜さんがいた。
コンコンとノックをして「リュート様、食事の用意が出来ました。いますか?」等と言っていた。
 俺はここですよ。咲夜さん。あぁ、メシか。腹も減ったけどその前に寝たい……。

とりあえずここにいる事を伝える為にとんとんと咲夜さんの肩を叩くと。

「メシは今はいいんで今は寝かせ「ッ!!」

 グシャッ! その言葉を告げる前に痛恨のストレートを鼻っ柱に叩き込まれた。

「ぐはァッ」

ドサリ。

「なっリュート様!?」
「ナイスストレート……! そして俺が何をしたと言うんだ……」
「も、申し訳ありません」

 ギリギリだった俺の意識は完全に咲夜さんのストレートで刈り取られた。本日で3回目の気絶だなァと考えながら。本当に俺が何をしたと言うんだ。
厨二病展開でごめんなさい。もう主人公の能力は気絶する程度の能力でいいっすよね?


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