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東方凡人記:13話
 ふゥーッ……。札を後ろ手に構えて集中。

「おおおおおおッ!! ギャリック砲ーーッ!!!」

 ズオオオと音を出して発射される俺のギャリック砲。駄目だ、こんな威力では。今の俺は中々『ハイ』なはずなのだが。

「もうダメだ……おしまいだぁ!」

 言いたかっただけである。さて、俺は今何をしているかというと、まぁ修行……とまではいかないが必殺技探しである。
 いかに俺がイメージしやすく、テンションが上がりそうな技名、モーション等をアニメやゲームからピックアップしているのだが、一番イメージしやすいのは昨日夜雀に放った『波動拳』であった。
 シンプルイズベストとは言ったもんだ。しかしこの波動拳、単発でしか出ないので非常に使えない。
 他にも色々やったんだがなんかダメだった。
 エターナルフォースブリザード、相手は死ぬ。とかやった時点でなんだか虚しくなってやる気が失せてきたし。

「……氷?」

 む、ブリザードで閃いたぞ。炎とか風とか氷、雷とかイメージして霊力を放出してみてはどうだろうか。
 4属性ってか。テラ厨2病、病院が来いよ。でも、やってみる価値はあるだろう――よし。
 そうと決めたら札を取り出して強く握る。

「しゃぁぁおらあああああああっっ!!」

 あ、そうそう。霊力を札にチャージしてる時もテンションが関係するんだよね。

 よりでかい霊弾を出せたり、2回続けて使えたりするしよりお得(?)だ。
 一人で叫びながら札を握ってる人なんていたら誰も近寄ってこないと思うが。……畜生、眼から汗が。
 よし、チャージ完了。やってみるか、炎、炎と。

「汚物は消毒だァァァァーッ!!」

 我ながら咄嗟に何故この台詞が出たのかわからない。だが火はでたぜ、今にも燃え盛る火炎が俺の小屋を焼きかねん勢いでな……。

「って燃えるがな!!」

 やっべぇ!! 火事なんておこしたら慧音さんの頭突きじゃすむすまない以前に住家すら失くなるわ!

「お、リュート何してるのさ、キャンプファイヤーか」

 その声は!

「いい時に来た天才妖精! この火を天才の氷で消し去ってしまえー!」

 そう、チルノであった。なんというタイミング、俺は今日星座占いで一位であろう。多分。

「任せろ! 天才のアタイならばこんなのイチコロよ!」

 両手を前に出しいかにも冷気的な物を放ちかねんチルノ。心強いじゃないか。持つべき友は人外ってか。
 火は簡単に消えてむしろビキビキ、と凍り付く心地よい音まで聞こえてくるよ。

「いやオイオイオイ!! 俺ん家凍らすなストップ!!」
「いいじゃん、涼しくなって」
「寒いわ!!」

 いつから俺はツッコミ役になったんだろうか……。俺って結構ボケ役と思っていたんだが。別にそれはどうでも良いんだけど、ガチガチに凍ってるけどこれどうすんの。

「でも入口付近は凍ってないや」

 普通に戸開いたし。

「すごいでしょ、やっぱりアタイったら最強ね」

 こいつは口開いたら天才と最強しか言わないのか。

「まあ、鎮火してくれた事には感謝する」

 力を使ったら腹減ったなあ、お昼ご飯でも作ろうかな。

「じゃ、ありがとな、俺は昼飯でも食べるわ」

 家に入ってと……寒っ!? ……さて、今日は何作るかな。
 和食ばっかりだったし久しぶりに洋食でも食べるか。

「なんでお前はそこに鎮座してるんだ」
「涼しくてちょうどいい場所ね……」
「俺は寒いんだが」

 いつの間に入ってきやがった。全く気付かなかった。
 コイツにとっては春は暑いんだろうか、すごいくつろいでる……。ま、いっか。飯だ飯。
 確かここに小麦粉で作った生緬が……。日にち少し経ってるけど湯がけば大丈夫だろう。
 肉、肉……できれば脂身の多い部位がいい。本当はベーコンがいいんだけどねえ。
 竃に火をつけてと。未だに竃には慣れないです。火をつける作業から調理まで。グシャグシャ、と要らない新聞紙を竈の中に放り込みマッチを擦る。

 が。

 シュッ、シュッバキッ。しけってて点かず更に折れた。凍らせたせいか。この野郎。
 仕方なく、札を構えてさっきの要領で炎を放って見ることにした。

「さっきの二の舞にはならんように……お、出た出た」

 思ったより上手くいき、点火に成功。フライパンに肉を入れて塩胡椒……。
 脂身が多いので油はいらない。そしてバター投入して肉と絡め合わせるようにする。そして春キャベツと人参を入れてまた少しだけ塩胡椒。うん、これだけでいい香りするよなー。

「何作ってるの?」

 匂いに釣られたのかひょっこりと顔を出す氷妖精。

「言ってもわからんだろうさ」
「教えてよケチ」
「ケチですよーだ」

 ふふん、ケチは褒め言葉だぜ。って痛い痛い足踏むな。痛いというかむしろ冷たい。

「後で教えるからやめてくれ」
「しかたないわね、広い心を持ったアタイに感謝しなさい」

 心広いヤツはすぐ足踏んだりしません。よし、そろそろ牛乳を入れて……。

「げぇーッ! マズそーッ!」

 ……外野は引っ込んでろ。

「折角おいしそうだったのにどうして牛乳とか入れるの!?」
「そういう料理だから」
「リュートの食べる物はゲテモノね! バカだから!」
「……」

 腹立つこの子……!
 牛乳が少し沸騰してきたら粉チーズを入れてひたすら混ぜる。なんだか俺の作っているモノが気になるのかチルノはじーっとフライパンの中を凝視している。
 ……正直作りづらい。寒いし。
 そして混ぜ続けた甲斐があって牛乳がトロトロのクリーム状になっている。

「おお!」

 ゲテモノとか言ってたくせに目が輝いている。これに湯がいた生緬……生パスタを入れて絡める。
 もうわかるだろうがカルボナーラだ。うん、カルボナーラもどきかな。
 いい具合に完成したかな? 少し摘んで味見をしてみる。

「うん、美味い」

 ただパスタは俺がうろ覚えで作ったもんで少し食感が悪いが気にならない。よし。皿に盛りつけるか。

「どうしたチルノ」

 皿に盛りつけるられているカルボナーラをじーッと見つめている。散々ゲテモノ扱いしたくせに食いたいのか?

「別になんでもないわよ」

 グゥゥゥゥゥ。体は正直である。見ている内に腹が減ったらしい。

「……食べるか? 少し多めに作ったし」

 と、言うと顔を赤くしてこくり、と頷く。ま、さっきの礼があるしな。


………

「いただきますッ!」

 クルクルとフォークで緬を巻き込んで食べる。うん、美味いけどやっぱり肉はベーコンじゃないと駄目だ。
 正直合ってない。

「これどうやって食べるのよ」

 ん、飯に夢中でチルノの事を忘れていた。

「こうやってフォークでクルクルしてだな……こうやって食う……熱ッ!」

 舌火傷するじゃねえかクソッ!

「こ……こう?」

 覚束ない手つきでフォークを回すチルノを見てなんとなくほほえましくなってくる。

「よくできました、んで巻いたヤツを口に入れればいい」

 チルノがパクりと食べる様子を見ていてマズイと言われないか少しハラハラする。

 いや、ショックでしょ? 子供であろうが大人であろうが作った物をマズイと言われるのは。
 だがそんな不安になる必要もなかったらしくパクパクと緬を食べているようで。どうやらお気に召したらしい。

「美味いか?」
「まあまあね」

 でも腹立つ。素直に美味いって言えば可愛いのに。


☆☆☆☆☆


「ごちそうさまでしたッ! お粗末様でしたッ!!」

 一人でやってて虚しい。ああ、料理を作るのはいいが皿洗いが面倒臭い……。

「で、なんだったのよ」
「何が?」

 主語もなしに理解できる訳がないだろう。

「さっき食べたもの」
「あぁ。カルボナーラだ」
「かるぼなーら?」
「そう、カルボナーラだ」

 何だか知らんけどぶつぶつとカルボナーラカルボナーラ呟いているチルノだが、気に入ったのだろうか。

「かるぼなーら、ね」
「また機会があったら作ってやるよ」
「本当!? 約束だかんね!」

 チルノがすごい剣幕で詰め寄ってくる。恐るべきは食い物への執着。

「あ、ああ。了解しました」

 何故敬語になる、俺よ。

「じゃあアタイ遊んでくるよ!」

 と言うとジェットのようにビューンと外に飛んでいってしまったのであった。元気なヤツだ、少しはその元気を分けてほしいね。
 とりあえず皿は水に浸けておいて後で洗うか。
 さあて、なんだか霊力使うのもしんどくなってきたし何処かに散歩してこようかなあ。うむ、中々良い天気だ。森に散歩でも行こうかなあ。
 昼だし妖怪もでないだろ。多分。いざとなれば俺の奥義で……逃げればいい。

「財布と刀っと」

 出かける時は常に財布と刀は所持しておく。お金は手元に置いておきたい。里の人が盗むなんて事は多分しないだろうけど俺が通ってた学校では財布の盗難とか結構あってだな……。
 まあ、クセですね。財布に括りつけてあるヒモを首にかけてと、後は刀……。

「折れて捨てたんだった」

 うう、結構気に入ってたのに……。仕方ない、札を10枚くらい懐に入れてと、準備完了。
 この歳で森探険とか。うはテンション上がってきた。

「行ってきます!」

 返事は勿論かえってこない。虚しい。


☆☆☆☆☆


 いやー、全部木ですよこれ! 力強いよねぇ! はい、少し迷いました。
 え? 迷ったに少しもないって? そんな事気にする人は将来ハゲるぜ?
 ……れれれ冷静になれ俺。確かここらへんが……魔法の森だっけ? そんでもって多分あっちらへんが人里。
 あれ、魔法の森って瘴気がでてたり、幻覚効果とかある茸とかが生えていて普通の人間には色々と辛いらしいが意外とそうでもない。
 だが長く居て何の影響も無いとは限らないので早めに撤収する事にした。よし、とりあえず人里に一旦帰ろう!



……

………

 あるぇー? ここ何処?
 あれから一時間くらい走ると歩くを繰り返してから気がついた、こっち人里方面じゃない。

「迷っちまったよ、アッハッハッハッハッハ!!」

 まだまだ夜じゃないしさ、余裕シャクシャインさ! テキトーに歩いていればいつかは出られるだろうなんて死亡フラグ乱立しそうな考えなのは気にしない。
 ……よくよく考えたら妖怪出てきたらすごい危ないじゃない。こういう時は気分を高陽させるために歌をだな……。
 世紀末を生きる漢をイメージしながら歌いだす。ジャララーン。ホアッチャア! おおぉぉぉぉ、ほあたぁ!

 なんて歌いながらシャドウ拳法(シャドーボクシングの様な物)をやっていると変な人を見る眼で人形を持った少女がじっと見つめていた訳で。……やめて! 俺、わりと普通な人間だからそんな眼で見ないで! 

「変な妖怪が来たかと思えば……里の人間?」
「え、あ、確か君は……」

 里に時々来て人形劇をしてる(最近知った)今も傍らに人形を連れている人形使い……。

「アリス・マーガロイドさん」

 と言うと頭を小突かれた。人形に。

「何するんスか急に!」

 変人に名前を呼ばれたくないって事ですか! そうですか!

「私の名前はアリス・マーガ『ト』ロイドよ」

 と言うとどうして皆間違えるのかしら、とぶつぶつ呟いている。
 どうやら名前を間違えて覚えていたらしい。マーガロイドの方が語呂いいじゃん、と言う本音を噛み潰して謝っておく。

「失礼、間違えて覚えていた。アリス・マーガ『ト』ロイドさん」
「なんだかバカにされている気しかしないのだけれど」

 気のせいっすよ。

「それで、何故貴方はなんでこんな森の中で奇妙な歌を歌いながら彷徨っているのかしら」

 奇妙って言うな。

「俺は森の中に自分探しの旅に出かけ……そしてこの森の広大さに感動し
「つまり迷ったのね」
「そうとも言う」

 ヤレヤレと言いたげに肩を竦めるアリスさん。仕方ないだろ、広い森が悪い。
 ……それにしてもさっきからアリスさんの近くに浮いている人形が気になる。

「この人形どういう原理で動いてんの? やっぱり魔法的な何か?」

 そっとその人形に触れようとしたのだが。

「シャンハーイ」

 喋った!?

「こ、怖え! 喋った!」
「……別に怖くはないでしょう」

 今思えばそうかも。どちらかと言えばかわいい。

「この人形って自分の意思を持ってんの?」
「持ってないわ」
「じゃあアリスさんが操っているのか」
「まあ、そうね」

 ううむ、生きてるようにしか見えんぞ……。

「完全自立の人形を造ろうとしているのだけれど、ね」
「完全自立……」

 なんだか俺の頭の中に人間が造ったロボット達が一斉に復讐してくる内容の映画が思い浮かんだ。

「頼むから一体だけにして下さい」
「どうしてよ」
「どうしてもだ」

 人形の復讐劇……想像するだけで怖いんだが。そうなるとは限らないんだけどさ。

「まだ一体も完成してないからなんとも言えないのだけれど」
「大変だろうが頑張りなよ、良く分かんないけど。ところで、人里までの道を教えてほしいんだけど」

 森で迷っていい経験した覚えがないので早く出たいのです。

「あっちの方へ真っ直ぐ行ってから……」
「あっちだな! 有難う!」
「待ちなさい、ちょっと!」

 何か聞こえた気がするが気にしない! このまま真っ直ぐだな!



……

………

ガサ、ザッザッザッ。

「やあっと森から出れた……」

 まさか数時間かけてやっとこさ森から出られるとは……。マーガロイドさんには感謝せねばなるまい。
 でもさ、人里の付近にこんな紅くて立派な館ってあったっけ? ……ていうかここどこ? 里……は明らかにここらへんにはない。見渡しても形すら見えないし。
 このあっかい館の人にでも方角を聞けばいいかなあ。

「うむ、聞いてくるか」

 そうと決まれば行ってきますだ。しかし紅くて目に悪い建物である。建築者の性格が垣間見える。
 でっかい門発見。と、よく見ると門の横には人がいた。お、門番さん……かな? あの人に聞いてみればいいだろう。
 スタスタと近付いて見る。この人は中国人か? チャイナドレスみたいな服着てるしそうに違いない。というかやっぱり女性なんだな。
 困ったな、中国語なんて知らないぞ。今思えばこの館もチャイニーズ風な館なんだろう。だから真っ赤な館なんだ。
 でもジェスチャーで人里の方角くらいは教えて貰うくらいはいけそうな気がする。当たって砕けろだ。

「ニ、ニーハオ!」

 気さくに話し掛ければ大丈夫だ! ……返事がない。
 ふと、門番の顔を見てみると目を閉じたまま腕を組み、そこに仁王立ちしている。駄目だ、こいつはエリートな門番だ。恐らくこの館には鼠一匹通さないように領主からは言い聞かせられてるのであろう。俺みたいな人間の話しなんて聞くまでもないってか……!

「……すぴー」
「って立ったまま寝とるんかい!!」

 俺は手の甲を相手に突き出し、突っ込みの定番ポーズを取った。さっきまでの思考が恥ずかしいわドアホ!

「ね、寝てませんよ!」

 パチッと目を開けてピシッと立つ門番。

「いや、さっき寝て……ムグッ!」

 寝てたんじゃねえか、と言おうとしたら急に口元を押さえられ、何故か身動きが出来ない状態にされていた。
 胸が当たって……! うへへへへとか考えている場合じゃなくて。本気で苦しい。

「咲夜さんにバレたら怒られるんですよ……内密にお願いします」

 咲夜さん……? どっかで聞いた気が……。それはともかく、

「立ったまま寝、ムグ!! ムグ!!」

 立ったまま寝るとか器用ですねと言おうとした所で押さえられていた場所にかけられていた力が強くなって……冷静に思考してるけど苦しい、タップタップ! ギブギブ!
 むぐぐぐ、頭に霧がかかったような感覚になってきた。ギブ、ギブ……! ギブアーップ……っ!!

「ふー、咲夜さんは近くにいないみたいですね……って大丈夫ですか!?」

 それが最後に聞いた言葉であった。


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