東方凡人記:12話
「ふう、着いた着いた」
結局何かにエンカウントもせず、真っ直ぐに人里に帰ってこれた。ちょうどお日様が沈んでいく。お疲れ様です、太陽さん。
酒屋に行って配達報酬貰って、ついでに少し良い酒買って家で飯食いながら一杯やるか! 少しテンション上がってきた。
テンションで思い出したけど中々俺の霊力の特性って強くないか? テンションさえ上げてしまえば霊力はかなり上がるらしいし。
ふふん、ついに俺にも主人公補正というものがついたか。
おっと、酒屋を通り過ぎてしまう所だった。ガラガラー、と俺入ります。
「酒屋のおっちゃーん、配達終わったぜー」
さあ早く金を出す作業に入るんだ。さあ! さあ!!
「おう、リュートか」
ってやけにトーンの低い声だな。俺なんてこんなにテンションが高いというのに。
「どうした酒屋よ」
「俺の息子がまだ帰ってきてないんだが、知らないか? 全く、何処ほっつき歩いてんだか」
「あのやんちゃボウズなら八百屋のガキんちょと遊びまわってるんじゃないすか?」
ちなみに酒屋のおっちゃんには息子がいるんだがこれまた悪戯好きなやんちゃなガキだ。
俺の小屋の戸をぶっ壊したり加減を知らないから慧音さん直伝(見様見真似)の頭突きをかましたもんだ。
いつも八百屋の所のこれまた悪戯ボウズと走りまわって遊んでいるのだが。
「それがよお、何時もなら暗くなってきたらすぐ帰ってくるんだが、ちょいと見てきてくんねぇか? 今仕込みで忙しいんだ」
「仕方ないね」
今の俺は三割増し優しいから行ってやろうじゃないか。
「すまねえな、後で酒おごってやるからよ」
「お安い御用ですよ」
簡単な仕事で酒とはラッキーだねぇ。さて、何処から捜すか。
探し始めた途端に八百屋の悪戯坊主がいたので酒屋のガキがどこにいるかを聞き込みをすることに。
「おーい! ガキんちょ!」
走って近寄る俺。が、俯いたまま何か思いつめた表情の八百屋の息子。何やら様子がおかしい。
「おい、どうした」
「リュート兄ちゃん、どうしよう」
と、今にも大泣きしそうな八百屋のガキである。
「落ち着け今泣くな。どうしたんだ、何かあったのか?」
「おれたち、さっきまで、すぐ近くの森で、たんけんしてたんだけど、ぅぅぅぅぅ」
……ついには泣き出してしまった。もしかしたら結構重大な事になっているかもしれない。
夜の森は妖怪が出て危険だ。大人でも危険なのにガキだったら……。
「もしかして酒屋のガキと森ではぐれたのか?」
泣きながら頭を上下に振って答える八百屋の息子。
「大丈夫だ、心配する必要はない。お兄ちゃんが見つけてきてやる。な? どっちの方角だ?」
「でも、森はこわい妖怪がいるから夜は近付いちゃだめって……」
「安心しろ、俺は何匹も妖怪を退治している。妖怪の方が俺を見るとビビッて逃げてしまうほどだ」
ビビって逃げてるのは俺の方だけどな!! が、その嘘を何故か信じたらしく少し泣き止んで希望を持った眼で俺を見る。
「あ、あっちの方」
「よっしゃ判った。行ってくる。後この事は誰にも言うな。俺がすぐ見つけてくりゃあ大事にはならんからな」
しかし簡単に見つかるだろうか……? ええい、考えている暇はない!
直ぐさま八百屋のガキが指した方向へ走った。
…
……
………
「おおーい! 酒屋のガキ! いるか!」
森で大声を出すのは中々の自殺行為かもしれんな、今思えば。運がいいのか妖怪どころか妖精も姿を見せないのだが。……見つけるなら今のうち、だ。早くしないと。
「おーい! ガキー!」
ガサガサッ。そこかっ!! ……なんだ、獣か。
うぅむ、このままではジリ貧だ。場所を少し変えてみるか。と、また走りだそうとしたのだが。
~……♪
「ん……? 何か聞こえる?」
♪~……♪
「歌声……? っ! やべえ!!」
ぎゅっと耳を塞ぐ。この歌声の主は確か夜雀だ。妖怪の事は人里の人達がちょくちょく話しているのでその時に小耳にはさんだのだが。
よく覚えていないが歌声で人を惑わせたりして自分の所におびき寄せて喰らうらしい。
確か相手を鳥目(暗い所では視力が大幅に下がる病気だっけ?)にする能力もあるそうだ。
全く、中々広範囲なゴキブリホイホイだなこりゃ。
さっさと離れよう。危ない危ない。先に情報を得ておいて良かったぜ、と安堵の溜息を吐く。が、離れようとした矢先、俺とは歌声に逆に近付いていく人影を発見。もしやあれは。
……うん、気のせいじゃない。
酒屋のガキだ。まーた厄介な場所に。しかも様子がおかしく、歌声に誘き寄せられている。このまま放っておくとエサになるのは確定しているだろう。
しゃあない。衣服を破って……と。あ、クソッ硬い。仕方ない、刀を使って切るか。
ビリ、ビリ。破った衣服の布をツバで湿らせ、そしてその布を耳に詰める。これで耳栓になる筈だけれど。
よし、いくぞ! ダッダッ、とガキの場所まで駆けて行く俺。そのままガッシと片手で攫うように持ち上げて逃げ去った。
☆☆☆☆☆
「おい、大丈夫か」
「目、目が見えないっ!?」
「大丈夫、俺だ、リュート」
「リュート兄ちゃん?」
どうやら大丈夫そうだ。さっさと帰るか。耳栓はもういらないな。捨てよう。
「なんだか周りが真っ暗なんだけどここ何処なの? 誰かが歌ってるからそっちにいって助けてもらおうとしたんだけど」
……歌声の方へいっちゃあダメでしょう。
しかし、こいつは鳥目にされたたのか? これってほっといたら治るのかな。
「いいから帰るぞ」
「今からどこに?」
「どこにって人里に……ッ!!」
自然すぎて気付かなかった。今の返答は酒屋のガキからと思っていたもんだったが見上げるとそこには夜雀がいた。
「駄目だよ、折角一人捕まえたのに」
「今日のところは見逃してくれないかな、こんなガキや俺食っても栄養にすらならないぞ」
「え!? 妖怪いるの!?」
いるよ目の前に!
「食べてみないとわからないじゃない」
「いんや、わかるね俺はゲロ以下の味がするから」
「でも、ネギはないみたいだけど折角ヒトがきたんだから味見しておかないとねっ!」
「ね、ネギ?」
何言ってんだこいつと思っていると、あらあ……? 弾幕が。
「うわあっ!」
チリチリヂリ。グレイズ成功。弾幕の存在をすっかり忘れていた。
ちぃっ、ガキを抱えて避けるのは厳しいモノがある。俺が赤子を抱えて600人斬りできる豪傑だったらなあ。とか考えている暇はないわけで。
「うわッ!? な、何だ!?」
突然元々薄暗かった森がすべて闇に包まれていく。正確に言えば俺の視力が大幅に低下した。これがと、鳥目か!?
やられた。鳥目にされた。やばい、今人生最大の危機を迎えている。ガキにリードして貰えれば百に一つは助かる可能性はあるかもしれんが、頼みの綱も鳥目状態だ。
いや、まてよ……鳥目って盲目じゃなくて単に暗い場所での視力が極端に落ちる病気だった筈……。確かポケットにケータイが。ポケットの上をポンポンと触り、ケータイの感触を確かめる。
うむ、確かに有る。今度は手をつっこんでケータイの起動ボタンを長押しした。
「すぐ目の前も見えないでしょ?」
「うるせえ、すぐに戻せ。さもないと焼鳥にして食うぞ」
電源切るんじゃなかった。早く起動しろ!!
「あはは、『助けて』なら聞いた事はあったけど人間に『食うぞ』って言われたのは初めてだなー」
「雀って確か小骨多いんだよな。やっぱり骨がうぜえからいいや。食わねえから早くどっかいってくれ」
「……あまり調子に乗りすぎない方がいいよ?」
おぉ、怖い怖い。よし、ついた。
ケータイの機能にはフラッシュライトがある。ライトを使えば視界の確保は最低限できるだろう。
しかしこれはまだ使わない。あくまで逃げる用だ。今ライト使って逃げても弾幕撃たれるだろうし、ケータイごときのライトじゃ視界が悪すぎる。
ならば、これを使う時がきた。霖之助さんから貰ったお札。つまりスペルカード。俺の必殺技の為の札。
鳥目になって油断した今ならぶちかませるかもしれない。香霖堂で試し撃ちした時のあの威力なら、倒すまでいかなくても油断しているから大ダメージを与えられる事だろう。
スタッ、ガサッガサッ
降りてきた。弾幕じゃなくて近接攻撃で殺して喰うのかね。好都合だ。
左腰に帯びている刀をスーッと抜き、突きつけるように構えた。
「そんな物使っても意味ないから大人しくしたほうがいいよ。暴れないほうが痛くないから」
「やかましいッうらあああッ!」
周りは暗くて良く状況判断が出来ないが相手の声を頼りに斬りかかった。
ヒュンヒュンッ!
袈裟懸けから斬り上げる。が、やはり手応えは無い。
「こっちだよー!」
背後から夜雀の声が聞こえたので振り向き様に刀を振り抜いた。
するとキィン!! といやに気持ちのいい金属音が響いた。ヒュンヒュン、ザクッと刀の折れた刃先が地面に突き刺さる。どうやら、夜雀に刀を折られたらしい。く、くそう! なまくらじゃねえかこの刀!!
「そんなに動いてたら外れるじゃない、狙いが」
ドンッ!
ぴかっと正面が光って一瞬辺りが見えたかと思えばすぐその後に腹部に強烈な痛みが襲ってくる。
腹に霊弾を叩き込まれたようだ。
「おえぇ、ゲホッゲホ、ぅぇぇ」
あまりの腹の衝撃に俺の胃は悲鳴をあげてしまったらしく、喉に何かがこみあげてきた。……吐きそう。
「おえ、ゲホッゲホッ」
「やっと大人しくなったね」
「ゲロ、体中に塗ったら見逃してくれるかな」
「やめてよ汚い!?」
俺の巧みなささやき戦術により夜雀は動揺を隠せない。懐にあるスペルカード――札――を握りしめる。
魔理沙が見せてくれた弾幕(と言うかスペルカード)の事を思い出す。
実は香霖堂に行った時にマスタースパークとやらを見せて貰ったのだが、それはもう凄まじく憧れた。この札を使って霊弾を撃つ時は何よりイメージ力が大事だと見せてくれたのだ。
そのお蔭様で頭にバッチリと焼き付いている。
――喰らえ。
バッと片手でスペルカードを前に出し、もう片方の手を反動を抑えるために手首を握る。八卦炉を構えた時の魔理沙の姿勢を真似したのだ。
「ッ!」
ババッと急に札を構えたので驚いて固まる夜雀。だが、この距離では避けられまい。
「真似スパーク!!」
「きゃあ!!」
ピシュン、と札から発射され見事命中したのだが……駄目だ、全然威力がない。魔理沙のソレは凄まじくでかかったのだが俺のソレはもうホント小さかった。
男の勲章の大きさじゃないぞ、彼女は女です。……じゃなくて。なんでだ、試し撃ちした時より小さい。
細いレーザーみたいな物が当たったのはいいのだが怯んでいる程度の威力しか出ていなかった。
……そうか、『テンション』だ。あの時の俺はハイだったんだ。かめはめ波が撃てて。
畜生、襲われている時にテンションなんて上がる訳がない。むしろ冷静に行動する俺の場合はダダ下がりだ。今思うとかなり不便だ、テンションに左右されるのは。
……四の五の考えている暇は無い、怯んでいる内に早く逃げねば。
ケータイのフラッシュライトを起動し、未だうずくまって耳を塞いでいる酒屋のガキを背負って逃げる。このまま真っ直ぐ走れば里のはずだ。ここからそうは遠くないはず。
ザッザッザッ
「ハアッ、ハアッ」
ザッザッザッ。
後少し、後少し。クソっ、ガキが重てーんだよ!!
「おーいつーいたー♪」
目の前にザッと降り立つ夜雀。
本格的に終わったかもしれない。……いや、まだだ。ガキを逃がして助けを呼んできてくれればまだ可能性はある。
「おい、これ持ってろ。助けを呼んできてくれ」
これ、とはケータイの事である。
「でも、これがないとリュート兄ちゃんの目が……」
「早く行かないとマジでぶん殴るぞ! 前にいる妖怪は俺が引き付けるから、行け!」
「わ、わかった呼んでくるよ!」
ダッと走り出すガキ。やべ、全然前見えねぇ。ライトあっても視界最悪なのに。でも、俺が囮にならないと。
「あらら、逃げちゃった。まあ貴方の方がおいしそうだしお腹いっぱいになりそうだから別にいいや」
ガキはアウトオブ眼中かよ。俺の方が量が多いからいっぱい食べれるってか、この野郎。やっぱり俺だけ逃げたら良かった。
二枚目のスペルカードを取り出す。これが最後の霊力をこめた札だ。
「あれ、ただの人間がスペルカードを使ったかと思えば二枚目もあったの」
「そうだ、俺は二枚目だ」
「誰もそんな事いってな「はあぁぁぁっ~!!」
何かを言おうとしていたが大声で遮る。両掌の間でエネルギーを溜めるイメージ。
バジッバヂバチッとエネルギーが充填され、徐々に霊力の球が大きくなってゆく。
「波○拳!!」
そして両掌を相手の方へ突き出して発射。くらいやがれ!
が、ヒョイと簡単に避けられた。あるぇ~? ま、まあ、そりゃぁ単発の弾を避けるなんて簡単だよなぁ、バカか俺は。今のが奥の手だったんだが。もう少し慎重になっておけばよかった。
そうして万策尽きた俺はギブアップとばかりに諸手を上げて立ち止まる。
「お手上げだ、降参。逃がすなり逃がすなりしてくれ」
「生き残る気まんまんじゃない」
ったりめーだドアホ。助けが来る事を信じて時間を稼がないと。
「いやー、しかし夜雀って歌で人を惑わせるっていうくらいだからそれはもうとても歌が上手いかと思っていたんだが気のせいだったかなあ」
という訳でフイッシングと洒落こもうじゃないか。……解り易過ぎる挑発ですけれど。釣り針が丸見えというか。
「なっ! オンチだって言いたいの!?」
釣れるのかよ。正直、上手くいきすぎじゃないか。
「ごめん、歌声で鳥目にされる~とか惑わされる~とか聞いたから耳塞いでて少ししか聴いてないんだよね。だけどあまり上手くはなかったような……」
「じゃあオンチじゃないって証明するからちゃんと聴いててよね!」
「頭イカれるヤダ」
「大丈夫だから!」
お、なんだか知らんが相当時間稼げそうだ。
「ほう、じゃあ歌ってみてくれよ」
「じゃあ歌うよ!」
お、歌い始めた。
「ラ~ラ~♪」
……でも普通に上手いぞ。でも歌が魅力的だから惑わされるって訳じゃないんだね。普通に上手いけどさ。
…
……
………
「ブラボー!!」
パチパチ、と拍手を送る。いや素晴らしい歌だった。感動した。
「オンチじゃなかったでしょ?」
「ああ、むしろとても上手かったよ。俺はここで休んどくから、またいつか歌聴かせてくれよ。じゃあな」
「じゃあ私は帰るよ……って何ごまかそうとしてるのよ」
チッ。
「歌のお代は頂かないとね」
「……300ペリカでいいですか?」
「どこのお金よ!お金の代わりに貴方を食べるから!」
「……性的な意味で?」
「違うよ!!」
なんだ、違うのか。残念。
「かくなる上はやっぱりゲロを体に~」
「やめて!? って、あれは里の守護者じゃない……運がよかったね」
バサッと飛んでいく音が聞こえる。どうやら夜雀は逃げていったらしい。
ということは慧音さんが来たのか!! きた! メイン守護者きた! これで勝つる!!
「大丈夫か!」
はあ、助かったぁ。
「割と大丈夫です」
言うなればただ腹がいてえ。究極奥義、口から胃酸攻撃をする為に少しスタンバってましたし。
「そうか、それは良かった。事情は後で聞く。とりあえず帰るぞ」
「すいません、鳥目になってるんでリードをお願いします」
「……仕方ないな」
☆☆☆☆☆
「そういえばあの妖怪の名前を聞いていないな」
「話を聞いているのかリュート!」
ひゃーっ!!
……只今少女絶賛説教中。
人里に戻った俺に待っていたのはお約束の頭突きでした。多分俺の頭の上ではひよこがくるくる回っているであろう。
「夜は妖怪が活発になると知っているだろう、それなのに何故外に出たんだ! 私が駆け付けて間に合ったから良かったが」
「……申し訳ないです」
やはりこの人は怒ると恐い。
「私は謝れと言ったんじゃない、どうして外に出たのかを聞いているんだ」
「QYK(急に妖怪がきたので)」
「ふざけるな!!」
「ひいいいい!!」
「ちょ、ちょっと待ってくだせえ!」
さ、酒屋と八百屋のおっちゃん……。
「……どうしたんだ?」
「リュートが外に出たのはウチのバカ息子のせいなんです、ほら、出てこい!」
「お前も来い!」
アチャー、あのガキ達森を探険したのバレたのか。そらバレるか。
「どういう事なんだ?」
「ウチの息子達が近くの森で遊んでたらしくてそれで迷子になって妖怪に襲われている所をリュートが助けてくれたんです」
「「ごめんなさい!」」
さっきまで鬼のような形相だった慧音さんがポカーンと口を開けている。
「リュート兄ちゃんが助けてくれたんです、だから兄ちゃんを怒らないで下さい、お願いします!」
ああ、やっぱり素は良い子なんだなあ、こいつら。悪戯は鬱陶しい事この上無いけど。
「どうして黙っていたんだ」
「いやあ、なんとなく」
説明しても必死に言い訳してるようにしか見えないだろうしね。
「……今回はこの子供達に免じてコレで許してやろう」
コレって、えーと。
「本日二度目ですかあ~!?」
ゴンッ!!
「っ……痛゛ぅ……」
威力もさっきより跳ね上がってやがる。
「じゃあウチのバカ息子もキツく叱っておきますんでコレで失礼します」
あ、八百屋と酒屋が苦笑いしながら逃げた。
「これに懲りたら軽率な行動は控えるようにする事、いいな?」
「把握しました」
涙目で頭を擦りながら返答する。これ絶対たんこぶできただろ。ジンジンする。
「だが……」
ん?
「里の者を助けてくれて有難う、この通りだ」
ふかぶかーと頭を下げる慧音さん。
「あ、頭を上げて下さい。結局俺が慧音さんに迷惑かけただけなんですから」
頭下げるのは俺の方だろう。今回もお世話になった、というか迷惑をかけてしまったし。
「だがリュートが早く捜しに行っていなければ子供の命は無かったかもしれない」
「ううむ、そうかもしれませんけど」
でも頭下げられてもただただ恐縮するしかないよなあ。この人には恩がありすぎる訳で。
「じ、じゃあ借りひとつ返したってことで! さらば!!」
「お、おい!」
ナイスエスケープ。実際何個借り作ってるんだろうね。返しても増える一方だしね。
慧音さんは多分貸し借りしてるなんて全く思っちゃいないだろうけどな。いい人だし。さて、今度こそ酒屋から報酬を貰いにいくぞ!
ガラーッ!
「おっさん! 酒配達の金!」
「お、悪いな。忘れちまってたわ」
忘れんなよコラ。
「それじゃこれが金で、これが今回のお礼の酒だ」
「あっざーす、ってこれなんだか高そうじゃないすか?」
なんだか見た目からして高価な匂いがプンプンする酒だ。
「ウチの秘蔵の酒だ、大切に飲めよ」
「……いくらですか?」
「タダだよ!!」
えー。嘘臭え。
「なんでまたそんな高価そうな物を」
怪しすぎる。と怪訝な顔をして横目で見た。
「息子の命の恩人だ、こんな物しかないが受け取ってくれ」
……恩人って大袈裟すぎないか?
「じゃあ遠慮なく」
「おう、それと今後とも息子とも遊んでやってくれ」
「度が過ぎた悪戯したらドツきますけどね」
頭突きとかいてドツき。誰がうまい事言えと。
「それじゃ、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
帰るか。お金を財布にしまうとお酒を抱えて歩き出した。
………
「ふぅ」
風呂入ってさっぱリーです。
「今日はなんだかすごく疲れたし晩飯はいいか」
体の節々が痛い。どうやら霊力の使いすぎは体に影響するらしい。
ううむ、あの札の使い方の応用もできるようになった方がいいかもしれん。ただレーザー出すだけじゃ逃げにも使えん。魔理沙みたいに威力でかいの出せれば別なんだが。
はっきり言うとテンションが高いと霊力が上がるっていう俺の特性は意外と使えん。現時点では。
俺自信が好戦的だったりドMだったら攻めてる時や守りに入っている時に霊力が上がって霊弾の威力も増すだろうが、残念ながら俺はノーマルだから不可能。
はっきり言うとさっき襲われた時だってすごく怖かったしさ。ビビってたら弱みに付け込まれるだけだからなんとか隠してたけど。
「だったら札の方をよく知るしかないよな」
バフン、と敷かれている布団の上に飛び込む。あぁ、考えてたら眠くなってきた。もう寝る、疲れた。
明日色々と試してみよう。
+注意+
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