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東方凡人記:10話
「ん……」

 清々しい朝の到来です。寝起きはッ! テンションを上げろ!
 まだ頭は靄がかかったようにボーっとしていたがこのままだと二度寝して無駄に時間を浪費する事になりそうなので起床した。

「ふぁぁぁー……」

 欠伸が出る。眠い。ちっくそう、あのロリ鬼め。尋常じゃないくらい一気飲みさせやがって。
 ……でも二日酔いにはなってないな。なんでだろ? あれだけ酔ったら次の日頭痛くなるはずなんだが。
 首をコキコキと鳴らしながらまた大きく欠伸をして立ち上がる。

「まぁ、あれ程度じゃ大丈夫……なのか?」

 つーか寒っ!? 地べたで寝てりゃそら寒いか。いくら春とはいえな。ついでに体も痛い。
 それにしても……。宴会に使われていた部屋を見渡す。

「部屋きったねえ」

 宴会で一番騒がれていた部屋を見て呆れた。もう皿やら食いカス、ゴミですごい惨状に。
 霊夢が荒すだけ荒して片付けていかないと言っていたがこれはひどい。そしてそれを片さないといけない本人は、

「すー、すー……」

 ……今の惨状を知っているか諦めているのかすやすやと寝ている。おーい、そんなカッコで寝てたら風邪ひくぞ。
 はて、どうしたものかと顎に手を添えて考える。掛け布団くらいはあるよな、よし、持ってこよう。
 そうと決めると博麗神社の母屋であろう部屋を探す。足元には食器やらなんやらが転がっているので躓かないよう気をつけなければ。

「うぉっとと」

 気をつけ始めた途端に何かに引っかかりそうになる。

「この黒白は……」

 丁度死角になっていた位置にモノクロ魔法使いが居た。……掛け布団2枚、ね。

「っと、この部屋かなあ……?」

 トントン、と早足で母屋に赴き、掛け布団が何処にあるか考える。ううむ。手当たり次第に探すか。
 とりあえず最初に目に入った箪笥に手を伸ばした。1番上の引き出しから順に、

「ガラッとな」

 ……これは替えの巫女服か?恐らくこの巫女服も袖が中途半端にあいており肩と腋が丸出しになる設計になっているのであろう。まぁ、この段には無いだろう。ガラリ。と2段目を開ける。

「うーん」

 サラシやら何やらがたくさん詰まっている。この段でもない。というかこれって下着ドロみたいじゃね?
 いや、俺は掛け布団を探していて断じて下着ドロじゃ。それに俺はあまり下着に興味は……。
 誰に弁解してんだ俺。ちゃっちゃと探してしまえばいいさ。取っ手を掴んでと……。箪笥の3段目を開けようとした。

「そこで何をしてるのかしら?」
「うひー!!!」

 静かだった部屋に突然声が響き、驚いて飛び跳ねる俺。今この状態を霊夢に見られたら弁解のしようがない。やましいことはしていないが。

「って何だ紫さんか」

 ぶはぁー、と安心の溜息を吐く。霊夢かと思ったじゃないか。下着ドロのレッテルを貼られるのは嫌だからな。

「まさか霊夢の下着を」
「ちげーよ!!」

 が、第三者から見てもやはり怪しいようで。

「あら、なら何故そこで衣服を漁っているのかしら?」
「掛け布団を探しにきたんですよ。霊夢と魔理沙、あのままじゃ風邪ひきますよ」

 やれやれ、と肩を大げさに竦める。すると納得したらしく訝しげな顔をしていた紫さんであったが素の表情に戻ってくれた。全く。善意が台なしになる所だったぜ

「掛け布団ならそこの押し入れに入ってるわよ」
「あ、これはどうも」

 あ、あったあった。ちゃんと2枚あるな。……何故そこまで把握しているんだ。貴女は。

「じゃあ私は帰って寝るから」
「……おやすみなさい」

 今から寝るのか……? という言葉は飲み込んでおく。ツッコんだら負けだと思う。ごちゃごちゃ気にしていても仕方がない、とりあえず運ぶか。

「よい、こら、せ!」

 掛け布団を抱えてよたよたと歩きながら2人組みが寝てる部屋へと向かう。後は布団をヤツらに掛ければよし。

「賽銭、うふ、うふふふふ」
「弾幕は……ぱうわぁーうにゃうにゃ」

 ……こいつらどんな夢みてんだ。ちゃんと肩まで掛けてと、よし。俺も帰るかな。今なら妖怪と遭遇せずに里に帰る事もできるだろうしね。

「……」

 ふと周りを見ると未だひどい惨状の部屋が。

「ま、俺には関係ないがな。精々頑張って掃除しなさいよ」

 未だ良い夢を見ているのか幸せそうに寝ている霊夢の顔を見る。 ま、俺には関係ない。うん。しかし俺は何故掃除用具を探しに行っているのだろうか。




……

………

…………

「掃除、完了……」

 なんで俺が掃除してるわけ? 無理もないさ、あれ程きたねぇ部屋を置いたまま立ち去るなんて俺にはできない。A型の血が騒いで騒いで仕方が無かったのだ。
 それにあんな幸せそうな寝顔を見たら動かざるを得なかった。
 それにしても今何時だろう。掃除に大体一時間以上は費やしたが……。大体お日様の場所からして8時くらいかな?
 霊夢達が起きるまで暇を潰すか。丁度色々と聞いてみたいこともあるし。と、ふと目に入った箒を見て掃き掃除でもしようと考えた。
 掃除は嫌いなのだがキレイになった場所を見ると気持ちがいい。ついでに見つけた賽銭箱に御利益があるようにと普段はギチギチに縛っている財布の紐を緩めて奮発して5円も入れた。昔の金で5円だぞー!
 というか俺金はケチるだけケチって食材やら家具は手伝う代わりに貰ってるお陰で軽く小金持ちだ。備えあれば嬉しいなってか。何かが違う気がする。
 でもこういう小さな社会では流通させたほうがいいって経済のテレビでやってた覚えがある。詳しい事は覚えていないが気には留めておこう。
 ふふふ、まぁ5円程度じゃ俺のサイフは……がま口財布の紐を解いて中を見る。

「アッーーー!」

 今思うと5円って、結構な値段じゃねぇか! くそ、現代の5円とじゃ釣りあう訳ねーだろ俺のバカ!
 賽銭箱から手を突っ込んで回収しようとした矢先。

「うーん……くぅぅぅ」

 霊夢達が起きたようで、ここまで欠伸の声が聞こえてきた。まずい、早く手を引っ込めないと、うがっ!? 手、手が引っかかって、

「朝っぱらから賽銭ドロとは罰当たりね」

 見事に見つかった。いや、ドロではない。ドロではないんだ。

「ち、違っ! ミスってお賽銭入れすぎたのぉ!」
「ご利益あるから、心配無いわ」

 遠まわしに絶対に返さないという宣告に畜生!! と膝を地につけて今の悲しみを体で表す。
 霊夢はどうでも良さそうにして宴会をやっていた部屋に戻る。俺も立ち上がって膝についた砂を払って立ち上がって何となしに霊夢についていく。

「……あら」

 周りを見渡してから眠そうに開いていた瞼が急に大きく開かれたので少しびっくりした。

「ど、どうした?」
「部屋がきれいに片付いてる」

 そこまで驚く事でもないだろう。

「あぁ、気になったから掃除したんだ」
「そうだったの。ありがとうね」
「それほどでもない」

 美少女に礼を言われたなら掃除した甲斐もあるってんだ。さっきのお賽銭の量と釣り合うさ、美少女のお礼だぜ?
 俺はすっぱいぶどうとあまいレモンの事を思い出したが手で払ってすぐに掻き消した。

「ところで」

 グゥゥゥゥ。
 ……弾幕の事を聞こうとしたが最初に俺の腹が抗議の声をあげたようで。

「どうしたの?」
「よければ掃除の礼として朝食をご馳走してくれないかね」

 さっきから俺の腹がF−1のスタート直前のエンジン音のように鳴り響いている。働いたもの食べるべきという名セリフを知らないのかよ。知りませんね。

「それくらいなら構わないわ。ちょっと待ってて」
「イェス!!」

 グッとガッツポーズ。朝から女の子の手作りの飯が食えるとは今日は良い日に違いない。ひゃっほうとしばらくドタバタと嬉しさからゴロゴロ転げ回る。
 今日こそ、今日こそはかめはめ波さえ出てきそうな気がする。両手を腰付近にやりエネルギーを溜める構えをとり、そのまま前に突き出した。

「かめはめ波ッ!!」

 でない。

「お前は何をやっているんだ」
「げぇっ関羽!!」
「魔理沙だぜ」

 かめはめ波の練習を見られるとは不覚。これからは家の電気のヒモでボクシングする程度に止めておこう。今の俺の住家には電気のヒモはないが。

「手からビームでも出そうな気がしてやってみた。後悔はしている」
「相変わらず変な奴だな」

 だから黒白よりマシだって。俺がそう言い返そうとすると朝食の香りが鼻腔をくすぐった。
 は……腹減った。これは匂いから推測するに焼き魚にみそ汁ってところだな! 後は知らん!

「できたわよー! 早く来ないと冷めても知らないわよ」

 そして次に朝食ができた事を告げる声が。お前は俺のお母さんか。

「「今いく(ぜ)!」」

☆☆☆☆☆


「ご馳走様でしたッ!!」
「お粗末様でした」

 パンッッと大きく手を鳴らして礼。朝食は何故か魔理沙の分も用意されてあった。どうやら魔理沙も朝食を懇願していたらしく仕方ないわねとばかりに作ってくれたそうな。ツンデレだな? ツンデレだな?
 メニューは焼き魚にみそ汁、ご飯に鰹節の乗ったひややっこに漬物各種。とてもおいしゅうございました。
 そして現在食後のお茶でも啜っているのだが、のほほんとしている内に弾幕の事を思い出した。

「そういえばさ霊夢、弾幕って俺にも出せるのかな」

 ハッ! と掌からエネルギーを出すように手を突き出した。

「知らない」

 あっさり斬って捨てられた。

「そんな事言わずに……」
「だって本当に知らないもの。そこらへんは魔理沙にでも聞いてみたら?」

 へーそうかい……。やっぱり無理なんじゃないか、と半ば諦め気味に魔理沙の方へ視線を送る。

「撃てるんじゃないか?」
「マジで!?」

 おいィ! それは本当なのか! 

「ああ。何故だかよく解らないが最初にリュートを森で見かけた時より霊力がかなり上がっているし、霊弾を撃ち出す媒体があれば可能かもしれない」

 かなり、と言ってもあくまで以前と比べるとの話だけどな、と手をヒラヒラしながら付け加える魔理沙。
 厨二病が現実となりつつあるのか!? 霊力ねぇ。俺にそんな隠しステータスがあったとは。
 で、疑問に思ったのが、

「媒体ってどんなの?」
「私の持ってるミニ八卦炉がそうだな」

 ミニ八卦炉? と言おうとしたらその前に小さい八角形の箱みたいな物を取り出す魔理沙。

「それで弾幕を撃ち出してるのか?」
「いや、これはいわゆる必殺技用だ」

 成る程、必殺技。素晴らしい響きである。他にお料理に使えるコンロにも早変りだぜ! と嬉しそうに言う。
 コ、焜炉?

「でもこんな物手に入るのか?」

 問題点はそこだ、取らぬ狸のなんとやら~ってのは嫌だぞ俺は。

「香霖堂ならあるかもしれないわね」
「ああ、そうだな」

 さっきから茶を啜っていただけの霊夢が口を開く。

「このミニ八卦炉も香霖がくれたんだ」
「なんと」

 香霖って何だ? と思ったがテンションが上がりに上がってそんな事はどうでも良かった。
 かめはめ波はすぐそこまで来ているのか!? SPARKINGできるのか!?

「じゃあそこまで道案内してくれないか!?」
「いいぜ」

 よっしゃコラ!! ここから俺の伝説が始まるかもしれない。期待して待っててくれよな。いや、誰に言ってるんだろう、俺。
やっと10話です。最近忙しいので更新が遅れる事になりそうです。


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