東方凡人記:9話
俺は魔理沙に誘われてホイホイと宴会に参加したのだが宴会という言葉に見事釣られた。一本釣り。
宴会っていったら呑んで(未成年は酒禁止なんて知らぬ)楽しく騒ぐというものだが。確かに宴会という目的には沿っている。ただ周りが、な。
「魔理沙、どういうことだこれは」
「どうしたんだ」
「周りの連中、どう見ても妖怪にしか見えないのだが」
そう、妖怪だらけなのだ。完全に萎縮しきっている俺に対し魔理沙はふつーに酒を呑んでいた。
「そりゃ妖怪だからな」
「謀ったな貴様!! 妖怪くるなんて聞いてねーぞ!」
「心配するなって、宴会に参加してる奴を襲う無粋な輩なんていないから」
「宴会が終わったら俺がメインデイッシュの食事会が始まるなんてことは?」
「大丈夫だぜ……多分」
多分ってなんだおいコラ。
「まあまあ一杯飲めよ」
更に非難の声をあげようとしたら急に酌をされたのでとりあえず受け取る。
「こりゃどうも」
酒をくいっと口に含む。
「くぅー」
未成年で人目を憚らず飲む酒はうまいぜ!
「もっと豪快に呑めよー」
「すぐ顔まっかっかになるから嫌」
下戸ではないが酒にはあまり強くないのだ。
「いよっ!! リュート君のちょっといい所見てみたいぜ!」
お前は何処の会社の酔っ払った上司だ。
「ところでさ、この中で人間っていないのか?」
鬱陶しいので話題変更。
「あぁ、いるぜ」
「本当か!? 例えば誰?」
知り合いは一人でも多く作っておくに限る。ほら、人間ならまだ付き合いを広げられそうだし。
「ほら……あそこにメイドがいるじゃないか」
「メイド?」
あ、本当だいた。蝙蝠の羽がついた女の子にワインを注いでいる……。リアルメイドって初めて見たんだが。でも、俺はメイドフェチじゃないし。それは違うか。
それよりもあの羽の生えた女の子の方の正体を気にするのが普通だと思うが、そこら辺の感覚はもう麻痺してしまっているらしい。
「彼女も魔理沙みたいに何か使うのか? 魔法みたいなのさ」
手でばっと魔法を使うようなジェスチャーをする。俺の勘ではここにいるヤツ俺以外全員異能力持ってるね。だって幻想郷だし。
「ナイフを使うな」
あら。意外とショボい。
「ナイフ使うのなら時間くらい停止できないとな」
某吸血鬼みたいにな、ハハハ。と酒をちびりと口に含んだ。
「なんで咲夜が時を操れるって知ってるんだ?」
へぇ、咲夜さんって言うんだ。ナイフと時を操るのか。……え?
「ぶーーーっ!!」
驚愕の余り酒を霧状に噴出す俺。
「汚いぜ」
「けほ、けほ……時間操れるって何のチートだよおい!D○Oじゃねーんだぞ○IOじゃ」
「私に聞かれても知るかよ」
そしてDI○って何処のどいつだよ、と続ける魔理沙。
ま、まぁ、ですよねー。
「じゃあ隣にいる羽ついた女の子は?」
「レミリアか、あいつはあのメイド……咲夜の主で吸血鬼。紅魔館の領主だ」
吸血鬼て。あんなちっこいのに。
「因みに能力は?」
「運命を操る程度の能力」
う、運命を操る……? 何処のチートキャラだよ。頼むから幻想郷を運営している人はバグキャラ出さないようにちゃんとデバッグしてくれ。汚いにも程がある。
つーかアイツらが好戦的で尚且つ、もし森で遭遇したのがルーミアでなくアイツらだったら……? うん、無理。絶対死ぬ。ルーミアでも危ないのに。
吸血鬼とか身体能力自体未知数なのに運命操るってなんだよ。咲夜っていうメイドさんは身体能力云々の前に能力で殺される。妖怪(人間含む)を少し舐めていたかもしれん。面識を改めなければ。
「じゃあもういいか? 私はアリスの所に行ってくるぜ」
「あッちょ、おま」
待って……! クッ、行ってしまった。アリスって不思議の国の人ですか!? くそう。話す人魔理沙くらいしかいないのに。
そうだ、霊夢はどこだ!? 宴会の準備を手伝った時に少しだが会話したし……一緒に酒呑むくらいいいだろう。
素早く縁起の良い紅白カラーを探すが、
「霊夢、また私の妹と遊んであげて頂戴」
「嫌よ面倒臭い」
会話の内容は良く解らないがチート吸血鬼の所に誘われていたみたいだ。気まずくて、というか怖くて乱入は無理。ついーと左を見る。
「幽々子様! 流石に食べすぎです!!」
「こんなの食べた内に入らないわよ~」
……ものすごい勢いで料理を平らげている緩そうな女性が。某大食いギャルってレベルじゃない。
今度は右を。
「椛もみもみ~!!」
「文さん酔いすぎです!! やめて下さい!!」
セクハラ烏女と犬女。これに限らず周りがカオスすぎる。俺にはまだ幻想郷の宴会は早すぎた。
もう一人酒でいいよ。宴会に来てるのに一人酒と言うのも変な話だが。やいやい近くにある酒瓶を引っ掴むと枝豆をつまんだ。
これをつまみに酒をちまちま呑むのが漢っていうもんよ。
「そーなのかー」
そうなんだよルーミア。
「ってぎゃああああああ!!」
なんでお前までいるんだよ!!
「どうしたの?」
「どうしたもこうしたもあるか! また俺を食いにきたのか!」
「食べていいの?」
「ダメ。絶対」
俺を喰うのは麻薬を使う以上にダメ。
「でもお兄さんおいしそうだなあ」
「ダメ、絶対!! ほらこっちのから揚げ美味そうだろ!? 美味いに違いないほら口開けろアーン!」
必死すぎる俺である。せめて食べるのはもっと見た目的に成長してから別の意味でお願いしたい。とりあえず目に入ったから揚げを箸で掴んで食わせると。
「んぐ」
むぐむぐから揚げを頬張っているルーミア。不覚にもかわいいと思ってしまった。いや、ロリィじゃなくて妹を可愛がる的な、な? ……俺は誰に言い訳をしているんだ。
「ほらもう一個食え、あーん」
「あーん、むぐ……」
いかん、くせになる。自分が喰われるかもしれない危機なのに気楽なもんだ。
でもさっき魔理沙が宴会中は大丈夫って言ってたか。保証はどこにもないけど。そりゃそうじゃ。しかし今思えばから揚げなくなったら俺の番なんじゃあないかな。
残機ゼロでボム(から揚げ)数個。……何のゲームに例えているんだ俺は。
それと、今思えば。
「びっくりする程周り女しかいねえ」
独り頭を抱える。気まずい要因の一つであった。何故か妖怪ってのは女が多いらしくこの宴会の場では見渡す限り女、女、女。
別に知り合い数人と一緒にいたら話ながら過ごす事ができるのだが知り合いなんて魔理沙と霊夢くらいしかいない。
しかもこの二人も今日知り合ったばかりだし、会話が弾むかと言えば微妙な線だ。
女だらけ!? 俺と代われ! とか思ってるヤツは女しかいねえ飲み会に参加しろ。俺の気持ちがわかるから。勿論全員知らないやつとな。俺は女と会話するの得意とかほざいてるリア充はガチホモだけの飲み会に放り込むぞ。
「……なあ、ルーミア」
「ふぁに?」
さっさと口にあるものを飲み込め。詰め込んだのは俺だが。
「お前の友達に男の妖怪とかいないのか?」
「いない」
「あっそう……」
男の妖怪いるかどうか自体が怪しくなってきた。と、いうかそもそも。
「お前友達いるの?」
「いるよ! 失礼だなあ!」
いるらしい。
「たとえば誰さ」
「ほら! あそこにいるよ、おーい!」
するとぎゃーぎゃー騒いでる中からバカそうな妖精がひゅーと飛んできたのだが。チルノっておい馬鹿やめろ来るな、この宴会は早くも終了ですね。
くるな、くるなと呟いても効果は皆無でした。
「何?」
「お前友達いるかとか失礼なこと聞かれちゃったからさー。友達だよね私達」
「「ねー」」
ハモってんじゃねえよ。さっさと帰れ。
「どうしたの? さっきから違う方向いて」
「首がフルスロットル」
焦ってまたもや意味不明な事を口走る。チルノに見られたら面倒臭いことになるんだよ!
「誰よコイツ」
「人間」
「あっそう」
頼む! そのままスルーしていってくれ。
「から揚げとってよお兄さん」
「仕方ないなあ……ほらあーん」
「あーん……もぐ」
「あ! あの時の生意気な人間じゃない!」
しまった!! つい!! くそっ、これはこっちに顔を向けさせる為の巧妙な罠……無いか、こいつに限って。
「俺に何か用か」
「白黒とつるんでアタイに攻撃したのは忘れてないわよ!」
左手は腰に、残った手で俺を指差してプンプン怒っている。おバカだから俺の事を忘れてくれたらよかったのに、どうやら記憶力はちゃんとあるらしい。
「残念だが俺は魔理沙と知り合ったのは今日だ。そういった作戦を練るなんてできんよ」
そもそもここの連中は策を練る以前に力押しで弾幕撃って終わりだろうが。多分だけど。
「でもでも、アンタが石投げてきたり湖にほうり込んだのは言い訳できないかんね!」
「石を投げたのは謝るさ。ただ湖に入れた事をそう思われていたのは心外だな。俺の住んでいた地方で天才を讃える風習なんだけどなあ」
「そ……そうなの? いや、知ってたわよ!」
「そーなのかー」
んな風習あるかボケ。
「悪意があってやった訳じゃあないんだ。許してくれ、天才のチルノさん」
次も機会があれば放り込んでやるからさ。
「ま、まあそこまで言うんなら許してやってもいいわ」
こいつバカだから扱い易い! 一人しめた、とガッツポーズをする。
「ありがとう。じゃあ俺はここでゆっくりしておくからルーミアとそこら辺で遊んでこいよ」
そして戻ってくんな。
「アンタ友達いなさそうな顔してるから付き合ってあげるわよ。アタイったらかんだいな心の持ち主だから」
余計なお世話だ。俺を気遣うなら一人にしてくれ。
「友達いないの?」
何故かルーミアに言われた言葉にぐさっときた。いるんだけどな人里に数人。この場所ではいないが。魔理沙と霊夢は友達というより知り合いレベルだし。
「まあ、今はいないかな」
「ほらアタイの言った通りじゃん! 友達いなさそうな顔してるって!」
この野郎。
「まあアタイがなってあげてもいいけどね! 何たってアタイは天才だから!」
「ルーミア、友達になってくれないか?」
「いいよー」
「ありがとう。俺リュートな、よろしく」
なんだか変な流れになってきたが気にしない方がいいだろう。あ、友達なんだから俺喰うの禁止な。
「アタイも友達になってやるわよ」
ルーミアは(危ないけど)まだかわいらしいのにこいつときたら。
「嫌だったら無理矢理ならなくていいさ」
「なってやるって天才が言ってるんじゃない」
「だから、『なってやる』って言うんだったらならなくていいよ。友達ってそうやって作るもんじゃないだろ?」
「ぬぐく……」
こいつはやはり弄りやすい。
「友達いないんだから少しでも増やした方がいいじゃない」
「ルーミアがなってくれたよ、な?」
「うん」
「だからアタイもなってやるって言ってるじゃない」
「……友達になりたいのか?」
素直じゃないやつめ。
「アンタみたいなのとなりたい訳ないじゃない!」
「そうか、残念だな。お前とならいい友達になれそうだったのにな」
「でも可哀相だからなってやってもいいわよ」
「でも嫌なんだろ? だったらやめた方がいいって」
このまま話をループさせて疲れさせてやる。
…
……
………
…………
と考えていた俺が甘かったらしい。
「友達になって下さい。お願いします」
「最初からそう言えばいいのよ」
何故俺が頼んでいる状況になっているかというとあの会話が結局何回もループし、俺の頭がクラッシュしそうになった。『いいえ』を選択するとそんな事言わずに助けてくれよ的な会話が延々と行われるイベントってあるじゃないか。RPGゲームで。それが現実で行われる事によって俺の精神がヤバくなった。ゲシュタルト崩壊寸前である。
無限ループって怖くね……? ていうか、今思えばどういう流れでコイツらと友達になるっていう話になってんだ。あ、友達なんだからお前ら俺が妖怪に襲われてたら助けろよ。
「つーかお前よく食べるな……」
さっきから引っ切り無しに料理を平らげているルーミア。太るぞ、自重しとけ。
「ひゃってふぉいひいんらもん」
日本語でおk。それにしても……。
「暇だ」
ルーミアとチルノに襲われる危機を回避できたのはいいのだが、相手が相手なだけに何を話していいのかもわからない。
ルーミアに何か言っても「そーなのかー」しか返って来ない気がするしチルノは、まあ、バカだしなあ。でも何か話題を振らないと俺が退屈だ。あ、そうだ、あの事を訊いて見よう。
「そういえばさ、お前ら弾幕撃ってるじゃないか。どうやって撃つんだ?」
ひとさし指と親指だけを立て、BANG! と銃を撃つようにジェスチャーした。
「へひほうに「まずお前は全部飲み込め。チルノはどうやって撃ってるんだ?」
「教えてもらう時はお願いしますでしょ!」
一々ムカつく。が、そこは大人な俺。なんなりと対応してやる。
「教えて下さいお願いしますチルノさん」
「しかたないなあ、本当リュートはバカなんだから」
御託はいいからちゃっちゃとせんかいアホ。
「こうやって」
「ふむ」
チルノはぎゅーっと握りこぶしを作ると。
「ぐっとしてバーっと出すの!」
「日本語でおk」
人間には理解出来ない説明である。ま、元々期待してなかったけどさ。
「なによ! こんな感じだよね、ルーミア」
「うん」
話し聞かずにメシ食ってんじゃねーか。
「ほら!」
ほらって言われても。
「あー、もう! バカだからわからないのよ!」
「そんな説明で弾幕出せたら邪気眼とかも存在しないだろうし部屋で一人かめはめ波の練習して親に見られて気まずい思いもしねーんだよ」
かめはめ波云々は俺の事だが。あの時は本当に恥ずかしさでエネルギー弾が出てもおかしくなかった。
「ジャキガンってなによ」
「厨二病の末期患者がなる病だ」
「そーなのかー」
「ちゅーにびょーってなによ」
「男なら一度は誰もがかかる病だ」
多分。
中学時代厨二病末期患者の友人が腕に包帯を巻いて登校してきたな。
怪我でもしたのか? って聞いたら、『俺には第3の眼がある』とか言い出してきて。それをネタにからかいに来たヤンキーに対して『やめろ……お前達を傷つけたくない』と更に続け、からかいがエスカレートして邪気眼見せてみろよ! とかヤンキーに間接技キメられてたら
『キサマラ……! っぐわ! 静まれ 俺……!』
とか言って包帯を押さえてた。後の事は覚えていないその友人とは同じ高校に行ったのだが邪気眼の話をすると殴られた。黒歴史掘り返しただけで怒るなよな。
「ふーん」
そんな真剣に考えるような顔されても困るんだけど。
「じゃあ、あたい大ちゃんの所行ってくるよ」
「あ、私も行くー」
「誰だか知らんが行ってらっしゃい」
じゃあねー、と言いながら大ちゃんとやらの所に行ってしまった二人。はあ、これからどうするかね。ちびちび呑んで食べてたら時間はすぐに経つか……。
ルーミアが残した料理を箸でつつく。……げっ、あいつ器用に美味い部分しか食ってねえ。
「ヤッホー! 宴会楽しんでるかい?」
また何か来た。今度は角生えたロリっ子だよ。瓢箪片手に、酔っているらしく顔が赤い。どうやら幻想郷に酒は未成年禁止とかないらしい。でも妖怪だと余裕で二十歳を越えるのだろう。ていうかなんでさっきから来る奴ら幼女オンリーなんだよもっと色っぽい女性は来ないのか畜生。もとい、おっぱいプリーズ。
「……別に」
もう相手にするのが面倒くさい。
「あらら。それはいけないねえ。私は伊吹萃香。鬼だよ」
「鬼……?」
あぁ、そうだね。角生えてるね。
「そう、鬼。アンタ名前は?」
「リュート。僕に何か用ですか」
何故か敬語を使う時や初対面の相手には一人称が僕になる俺。どうでもいいけどね。
「リュート、アンタ全然呑んでないじゃないか。男なんだからもっと呑まないと」
「ちびちびがいいんだよ」
イッキ飲みはダメ! それに、男なんだからというのは今の時期差別になってだね、と薀蓄を語ろうとしたら。
「そんなセコい飲み方しなくてもさ、ほら、口開けて」
ガシっと一升瓶と俺の顔を掴む萃香。やめろ! やめなさい!! 人の話を聞け! 幼女の癖に力強っ!?
「ほーらグイっと」
「ごぼっ、ぐぇっ」
非難する暇も無く俺の胃にどぼどぼと酒が流し込まれる。おうっぷ、気持ち悪い。
「まあ、こんなもんでいいか」
「ふらけんなこら」
呂律が回らない。そんな俺を見てケラケラ笑う萃香。
「まあ、そうやってたら酒に強くなるよ。多分」
「は、はるかほけぇ!(なるかボケ!)」
いかん、頭がポーッとしてきた。き、気持ち悪いし、眠たい。
「何してるのよ萃香」
「あ、紫。新入りの人間がちびちび呑んでるからちょっと手伝ってやっただけだよ」
紫って紫さんか? そういえばちょうどこの人には色々と聞きたい事が。
「あ。貴方」
久しぶりです。しゅたっと片手をあげて挨拶をしたら。
「生きてたの」
ってなんでやねーん! あげた手はそのままツッコミの方へ転換され、その拍子にぶっ倒れた。勝手に、殺すな。
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