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お前みたいなヒロインがいてたまるか! 作者:白猫

本編

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89-1

 文化祭が終わって十一月になり、ついに鳳峰学園中等部の修学旅行が始まった。
 飛行機内では鳴海と観光の話で盛り上がり、翌日の午前中にカナダ・バンクーバーへと到着する。

 そのまま、二クラスずつに別れ、昼食後に市内の観光へと向かう。
 椿のクラスは州議事堂、美術館を周り、ホテルへと移動して終了である。

「朝比奈様、部屋へ参りましょう」
「えぇ。参りましょう」

 椿がボーッとロビーに飾られている絵画を眺めていると鳴海に声を掛けられたことで我に返り、部屋へと移動する。
 部屋に入った途端に椿はソファに座ってホッと一息入れた。
 さすがに長時間飛行機に乗った後に観光だと疲れてしまう。

「鳴海さんも座られたら? 疲れましたでしょう?」
「疲れました。足がむくんでパンパンですよ。あ、お茶飲みますか?」

 ソファに座った鳴海がすぐに立ち上がろうとしているのを椿が手で制止する。

「疲れているのでしょう? 喉が渇いたら自分で用意しますから、ゆっくりなさって」
「そうですね。……あ、朝比奈様は明日の自由行動で何を買う予定なんですか?」
「私ですか? 家族用にチョコレートと自分用に日用品やコスメなどを購入予定ですわ。鳴海さんは購入する物は決まっておりますの?」
「私は母から頼まれた物を買うくらいですね。あとは自分用に日用品を買う予定です」

 椿は親族用にもお土産を買う予定ではあったのだが、恭介や杏奈と相談して被らないようにしなければならない。
 杏奈とは自由行動の時に一緒に買い物に行く予定になっているので、その時に話すとして、恭介とは携帯で連絡を取ろうと決め、彼にメールを送る。
 少しして、恭介からメールが返ってきた。
 彼は伯父と祖父に万年筆を買う予定らしいので、椿は名刺入れかネクタイピンで悩んだ結果、ネクタイピンをお土産にしようと決める。

 翌日、午前中は宿泊ホテル前の通りで自由時間である。早速、椿は杏奈と共に店へ繰り出した。
 すぐ側には学校側が用意したSPが付いているが、今更側に誰が付こうが椿も杏奈も気にしない程度にはこの生活に慣れきっている。

「さて、最初はどこに行こうか」
「チョコレートは後の方でよろしいかしら? 最初にネクタイピンを忘れない内に購入したいのだけれど」
「じゃ、ネクタイピン買いに行きましょう。その後でボディケア用品を売ってるお店でいい? 評判の良いブランドなら心当たりがあるから、そこに行こう」
「お任せしますわ」

 海外旅行をほとんどしない椿にとっては、海外に慣れている杏奈に付いて行った方が楽である。
 杏奈に付いて行く形であるブランド店に入り、店員に頼んで何種類かネクタイピンを見せて貰う。

「やはり、ブランド名があるよりはモチーフが付いたものの方がよろしいかしら?」
「むしろ何も書かれてないシンプルなものの方が良いんじゃない?」

 杏奈の意見も聞きつつ、椿はモチーフ付きの物とシンプルな物の二点を購入した。

「薫伯父様には何も買わなくていいの? 拗ねない?」
「後でちゃんと買いますわ。父には手袋と母には膝掛けを考えておりますの。色やデザインを似たものにすればお揃いっぽいでしょう?」
「考えたわね。手袋と膝掛けはここの通りのデパートにあると思うから最後でいいでしょ?」
「よろしくお願いします」

 杏奈との会話を終わらせ、会計を済ませた椿達は、次の目的地であるボディケア用品のお店へと向かう。

「色々とあり過ぎて目移りしてしまいますわね」
「時間もあまり無いんだから、悩んでる暇ないわよ」

 杏奈の言葉に椿は腕時計で時間を確認するが、自由時間終了までまだ一時間半はある。
 けれど、買いたい物は沢山ある為、椿は悩むのも程ほどに、バニラとローズの香りのリキッドソープと同じ香りのボディオイルとクリームを購入した後でチョコレートの店へと向かい何点か購入する。

 杏奈が親から頼まれたワインを買いたいと言い出したが、さすがに未成年がお酒を買うことは出来ない。
 どうしたものかと悩んでいると、タイミングよく養護教諭の護谷晃が通りがかった。

「あ、護谷先生。ちょうど良かった。ちょっと頼まれてくれませんか?」
「これは杏奈様。頼み事ですか? 何なりとお申し付け下さい」
「実はワインを買いに行きたいんだけど、未成年だからどうしようかと思ってたんです。代わりに買ってきてもらえませんか?」
「お安いご用です。ところで、どなたから頼まれたのですか?」
「母よ」

 でしたら好みを熟知しております。と口にした護谷はものの十分程度でワインを買ってきた。

「では、帰国後にご自宅まで持って参りますので」
「えぇ。お願いします。ところで椿さんは頼まなくて大丈夫?」

 不意に杏奈から話を振られたが、椿はすぐに頭を横に振る。

「お父様はあまり自宅でお酒を嗜まれませんからね。記念日くらいですわ。お母様も一杯だけ付き合いで飲まれる程度ですし」
「そうですか。では、杏奈様。しばらくワインをお預かり致しますね」

 椿が最後まで言い切る前に護谷は被せ気味に話し始め、ワインを手に立ち去って行く。
 相変わらず態度の差が激しい人である。 

 護谷と別れた後、デパートで手袋と膝掛けを購入し、あぁ良い買い物が出来たと満足して通りを散策していた椿達の目に千弦と美緒達が何やら話をしている姿が飛び込んできた。
 カナダに来てまで何をしているのかと思い、椿は集団に近寄る。

「千弦さん。往来で何をなさっておりますの?」

 椿が声を掛けると渋い顔をした千弦が振り返り、美緒はばつの悪そうな顔をしている。

「立花さんが道の往来で班の生徒に対して癇癪を起こしておりましたので、止めたのです」
「別にあんたに迷惑掛けてないじゃない」
「そのような問題ではございませんわ」

 再び言い合いを始めそうな雰囲気に椿が待ったをかける。

「千弦さん。とりあえず落ち着いて下さいな。それと立花さんは……まぁ、制服ではありませんのでここで癇癪を起こしたとしても鳳峰の恥にはなりませんわね。日本人の恥にはなりますが。どうぞ道の往来で恥を晒してくださいませ」
「っな!」
「これ以上私に醜態を晒して弱みを握られたくありませんでしょう?」

 美緒は他人から下に見られることを嫌っている。とりわけ椿は別格だ。
 彼女のプライドを上手く逆撫でした結果、椿の思った通りの反応を返してくる。

「ふんっ!」

 椿から顔を背けた美緒は早足でその場から立ち去って行った。
 美緒が立ち去るとそれまで千弦に止められていた彼女の友人達が駆け寄ってくる。

「千弦様! だから放っておいた方が良いと申し上げたではありませんか」
「このような場で大声を上げる立花さんに問題がお有りでしょう? どなたも注意なさらずに遠巻きにしていらっしゃったので、私が出るしかないじゃありませんか」

 何も間違ったことは言ってないという自信があるのか、千弦は冷静な声で口にした。

「それでもです! 何が起こるか分からないんですよ」
「……今回は上手く椿さんが収めて下さいましたから、それでよろしいでしょう?」

 これでこの話はお終いだと千弦は会話を切り上げた。

「あぁ、椿さん。ちょうど良いタイミングでいらっしゃったので助かりました」

 千弦はそう言い残すと友人を連れて立ち去って行く。
 去り際、蓮見がチラリと椿に視線を向けたが、あれは恐らく美緒が千弦に手を出すようなことがあれば覚悟をしておけ、という視線である。
 椿という防壁がある以上、美緒は千弦に手を出せない状況な訳であるが、彼女のことだから何かしらあるかもしれない。これまでもそうであった。
 などと椿が考えていると杏奈に腕を掴まれる。

「自由時間は限られてるんだから、ジッとしていられないのよ。親から頼まれてる物もあるんだから、さっさと移動するわよ」

 杏奈に腕を引かれ、椿は彼女の目的の為に集合時間まで連れ回されることになった。
 およそ二時間の自由行動を終えた椿は集合場所まで向かい、ホッケーの試合会場へと移動するためバスへと乗り込んだ。 
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