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お前みたいなヒロインがいてたまるか! 作者:白猫

本編

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年が明け、新しい1年が始まった。

年明け早々に朝比奈家の面々は水嶋家に新年の挨拶に行き、祖父と伯父へ新年の挨拶を済ませた後で椿は恭介と羽子板で対戦する事になった。
互いに互いの顔面を狙い打つ様は醜いの一言に尽きた。
祖父も伯父も両親との会話であったり、弟妹の相手に夢中になっており、椿達が対戦している事を気にも留めていなかった。
その為、椿と恭介の罵り合いは聞かれずに済んだのが幸いであった。

羽子板の対戦結果は恭介の圧勝で終わった。
椿がどこに打っても恭介は必ず拾って打ち返して来るのだ。
ただの対戦で墨を塗る事はしなかったので、椿と恭介の顔面は無事であった。
負けた事で椿は悔しい気持ちでいっぱいになったが、相手が恭介だから仕方ないのだと思い直し、気持ちを浮上させた。

その後、使用人から話を聞き、椿を不憫に思った祖父と伯父がお年玉を弾んでくれた。
椿はラッキーと思いながら、貰ったお年玉を使う事はせず貯金に回す事にした。

新年の挨拶だけだったので、椿達は半日で水嶋家を後にする。
どこに行っても混んでいると言う事もあり、椿達はどこにも寄らず帰宅した。

そして本日は、朝比奈本家の新年会であった。
新年会と言う名を借りた、大人は昼間から酒を飲んで楽しもうぜ!子供は子供で遊んどけよ!な集まりである。
椿はこう言う朝比奈家のノリが割と好きであった。

実のところ、朝比奈本家は椿の住んでいる家から徒歩10分程度の距離にある。
用事が無ければ朝比奈の祖父母は椿の家に来る事はまず無いので、こう言うイベントでもなければ会う機会は少ないのだ。
しかし、応援が必要な時は本家の使用人が椿の家に短時間で来てくれると言うメリットもあった。

徒歩10分程度であっても、歩きで移動すると言う考えは両親と使用人には無いらしく、2台に別れて車での移動となった。
あっという間に車は朝比奈本家に到着し、椿達は車から降りる。
玄関に入り、待ち構えて居た朝比奈の祖父母に椿達は新年の挨拶をした。

「新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします」
「あけましておめでとう。よく来たね。譲治のところも志文のところももう来ているよ。恵美里はまだみたいだが」

祖父の言葉で、まだ杏奈が来ていない事を知らされて、椿は少しだけ残念な気持ちになった。
使用人からリビングへと案内されると、祖父母の言った通り伯父家族達がすでに到着していた。
長男である譲治じょうじは朝比奈陶器の副社長。次男の志文しもんはドイツにある支社の社長をしている。
譲治は妻と高校生の男子2人の4人家族で、男子2名と椿は年が離れて居る為、あまり交流はない。
志文は妻と高校生の女の子、中学生の男の子の4人家族で、ドイツ在住と言う事もあり、これまた椿とはあまり交流はない。
義理のいとこ同士、会えば会話はするが、一緒に遊んだりとか子供達だけでどこかに行くと言うほど親しくは無かった。
特に椿は血縁関係が無い事もあり、お互いに遠慮している為、当たり障りない関係になっているのだ。
それに4人は鳳峰学園に通っておらず、尚更椿とは共通点が無い。
鳳峰学園がどう言う学校か聞かれれば、会話も弾むのだろうが、いとこ達はさほど興味が無いらしく学校の事を聞かれた事は一度も無かった。

リビング内ではすでに大人達の酒盛りが始まっており、テーブルには料理とお酒が用意されていた。
子供達はリビングで料理をつまんだり、書庫に本を読みに行ったり、シアタールームで映画を見たりとマイペースに楽しんでいるようであった。
椿はと言えば、しばらくすれば杏奈が来ると思い、そのままリビングに留まっていた。

普段、ドイツに住んでいる次男夫妻は1年に数回しか帰国しない為、菫と樹の成長に驚いていた。
菫を膝の上に乗せたり、樹を抱っこさせてもらったりと、大人の話題の中心は幼い子供であった。
朝比奈家に数年ぶりに生まれた子供達に大人達はメロメロなのである。
特に杏奈と椿が大人びていて、子供らしい面があまりない事もあり、好奇心旺盛で純真無垢な菫と樹が大人達は新鮮でたまらないのだろう。
姉である椿が目に入れても痛くないほど可愛いと思っているほどだから尚更である。
ちやほやしてくれる大人達の中にいるのは居心地がいいのか、菫も樹も椿の事を気にする素振りすら見せない。
それに若干の淋しさを感じていたが、椿の心情を察したのか朝比奈の祖父が隣に静かに腰を下ろした。

「椿ちゃんは今年卒業だったかな」
「はい。春から中等部に進学する事が決まっています。杏奈さんも一緒なので心強いです」
「それはおめでとう。子供の成長は早いね。初めて会った時はあんなに小さかったのに」
「6年も経てば変わりますよ」

水嶋の祖父は他人に冷たそうな印象を与える容姿をしていたが、朝比奈の祖父は穏やかな印象で、気立てのよさそうな容姿をしていた。
見た目が正反対な2人だが、中身も正反対であった。
完璧主義で自分にも他人にも厳しい水嶋の祖父と情に厚く人との繋がりを重視する朝比奈の祖父。
どちらも人の上に立つ立場の人間として必要な考えと性格である。
椿としては付き合いやすいと感じるのは朝比奈の祖父の方であった。
決して、水嶋の祖父が嫌いだからと言う訳では無い。
可愛がられているとしても、水嶋の祖父の見た目と雰囲気に椿はどうしても苦手意識を持ってしまうのだ。
椿の素の姿など、あの祖父が受け入れてくれるはずもない。
ボロを出さない様にと椿は気を張ってしまうので、帰る頃にはクタクタになっている。
それを踏まえた上で、付き合いやすいと感じるのは朝比奈の祖父の方なのだ。

朝比奈の祖父と椿が話していると、母親と話していたはずの朝比奈の祖母が隣に座り、椿は祖父母に挟まれてしまった。

「シュウ、私を放っておいてお喋りですか?」
「百合子さんと楽しそうに話していたから、邪魔しちゃ悪いと思ってね」
「そうですか。……ツバキ、シュウと何を話していたんですか?」

矛先を椿に変えた祖母が顔を覗き込んで聞いてきた。
嫉妬、と言うよりはただの好奇心と言ったところだろう。
初めて会った時から椿は思っていたが、見た目外国人が流暢な日本語を喋っているのは慣れていても一瞬驚いてしまう。
祖母は半世紀近く日本に居る為、日本語が流暢で当たり前なのだが。

「今年、初等部を卒業して、中等部に進学する事を話していました」
「それはおめでとうございます。お祝いは何がいいですか?」
「…杏奈さんとお揃いの物をお願いします。なので杏奈さんにも希望を聞いて下さい」

と、椿は決定権を杏奈に投げた。

祖母が言っていた『シュウ』と言うのは、祖母だけが呼ぶ祖父の愛称だ。
祖父の名前は朝比奈修あさひなおさむで、海外ではサムと呼ばれる事が多い。
祖母はその他大勢と一緒の呼び名が嫌だからと音読みの方で呼んでいると言う訳だ。
ちなみに、祖母の名前はナターリエで、祖父からはタリアと呼ばれている。

元々、祖母の父親であるグロスクロイツ氏が朝比奈陶器の商品を気に入り、経営するレストランなどで使用した事がきっかけになり、ヨーロッパで朝比奈陶器の名前が広く知れ渡ったのである。
そのチャンスを掴もうと、ドイツに支社を置く計画が出た時に責任者となった祖父がドイツに赴いた際、朝比奈陶器のファンであったグロスクロイツ氏と出会い、流れで祖母とも交流を持つ事になった。
そうして恋仲になった2人は、祖父と一緒に日本へと帰国し、結婚した。

と言う馴れ初め話を事あるごとに椿を始めとする朝比奈家の面々は聞かされ続けて来た。
すでに耳にタコであるのだが、子供である椿の父親や伯父達は耳にタコなどと言う表現では済まされないだろう。
祖母の話が始まると、全員が遠い目をして、ひたすら話が終わるのを待っている姿を見るのは中々にシュールであった。
途中で話を遮る事をしなかったのかと椿が父親に訊ねると、『その場合、嫌味が100倍になって返ってくるからね』と諦めたように呟いていた。

「ところで、卒業のお話だけですか?他には、その…」

もじもじし出した祖母が何を言って欲しいのか見当が付かず、椿は首を傾げる。
すると、横から祖父が喋り始めた。

「他にもタリアは本当に美しいだろう。そんな美しい妻を持てる私は本当に幸せ者だと言う話をしてたんだ」
「そうでしょうとも!聞きましたかツバキ。シュウの方が私を強く愛してくれているのですよ。どうしても私でなければダメだと情熱的にプロポーズされて、私は日本に来たのですから」

スラスラと話していない事を事実のように語る祖父に椿は驚いた。
しかし、祖父の言葉に祖母は気を良くしたのか、さらに喋り続けている。

「初めて会った時も、私の目の色が綺麗だと宝石の様だと言っていました。どうしても私にドイツ語を教えてもらいたいと言われて仕方なく私が教える事になりました。それに私が他の男性と喋っているといつも邪魔をしてきたものです」

ねぇシュウと祖母が声に出し、祖父はニコニコと笑顔でそうだったね、その通りだよ、と答えた。
いつも通り、祖母は馴れ初めの一部を語っているのだが、実はこの話、目の色の下り以外は正反対なのである。

事実はこうであった。
素直になれない祖母がドイツ語を教えてあげる、と強引に祖父に承諾させた。
祖父が他の女性と喋っていると、祖母がむくれて邪魔をしてくる。
と言うものだ。

椿は上記の事を父親から聞いていたので、ツンデレをこじらせるとこうなるのかと妙に感心してしまった。

まだまだ話足りない様子の祖母であったが、伯父達に呼ばれて渋々席を離れた。
椿はそっと祖父の顔を見ると、穏やかな笑みを浮かべる祖父と目が合った。

「椿ちゃん、自分のプライドを傷つけられるような事で無い限り、奥さんの言う事が事実と違っていたとしても、うんうんと肯定する事が夫婦円満の秘訣なんだよ」

つまり嫁の尻に敷かれろと言う事ですね、と椿は納得した。
なんとなく、この夫婦の力関係が理解出来てしまった椿であった。
前々から勘付いてはいたが、祖父も中々にしたたかな人である。
そうでなければ、社長などやってこれなかったであろう。

そうして、祖父と喋っているとようやく八雲家が到着したと言う知らせが使用人からもたらされた。
祖父母は席を立ち、出迎えに向かい、椿はソファに座ってジュースを飲みながら杏奈がリビングに来るのを待った。

ほどなく、杏奈達がリビングへとやってきた。
椿が視線を杏奈に向けると、彼女も椿の方を見ていたらしく視線が合う。
祖父母や伯父家族達との挨拶を終えるのを待ち、椿は杏奈に近づいていく。

「あけましておめでとうございます、杏奈さん」
「あけましておめでとう、椿さん。料理はもう食べた?」
「まだです。杏奈さんが来るまでお祖父様とお話ししていましたから」
「まーた、お祖母様の惚気馴れ初め話に付き合わされたんでしょう?」

椿は肯定の意味を込めて杏奈に対し微笑んだ。
杏奈にはきちんと意味が伝わったらしく、椿の肩をポンと叩きお疲れ様と呟いていた。

椿と杏奈はテーブルに並べられた料理をいくつか皿に盛り、空腹を満たす。
腹八分目になったところで、椿と杏奈はリビングを出て書庫へと向かった。
静かに2人で話せる場所であればどこでも良かったのだが、邪魔が入らないだろうと言う事で書庫に行く事にしたのだ。

書庫には誰もおらず、これ幸いと2人は椅子に座り話し始めた。

「もう今年だねー」
「楽観的ね」
「準備終わってるからね。なるようにしかならないさ」

そう言った椿に杏奈は呆れた眼差しを向ける。
だが、椿は全く意に介さない様子を見せている。
こう言った態度の時の椿には何を言っても受け流されるだけだと杏奈は分かっていた。
なので、椿の態度に触れる事なく話を進めた。

「しかし本当に鳳峰を受験するとはね」

誰が、だなんて言わなくても分かる。
杏奈は美緒が本当に鳳峰を受験する事に対して驚いているのだ。

杏奈は実際に美緒を見たことがなく、椿の話で聞くぐらいしか美緒の情報を得る事が無い。
その為、美緒の性格云々に対しては椿の主観でしかない為、半信半疑の部分もあったのだ。
普通の常識を持っていれば、鳳峰を受験すると言う事は出来ないはずであった。
前世の記憶持ちであれば、実年齢よりも大分精神年齢が上なので、美緒の母親のした事がどれだけのものか理解出来るはずである。
どちらに非があるのかは明白であるはずなのに、美緒は鳳峰を受験すると言う。

それがあった事で杏奈は、椿が言った美緒の事が誇張されたものではないと理解した。
その美緒に対峙しなければならない椿は、今現在、暢気に本を読んでいた。
ただの余裕なのか、何も考えていないのか、杏奈は判別がつかない。
そんな杏奈の視線に気付いたのか、椿が本から顔を上げ杏奈と視線を合わせた。

「受験するな、なんて口出ししたら、こっちの評判が落ちるだけよ。相手が勝手に評判を下げる行為をしようとしているんだからほっとけばいいの」

矛盾しているかもしれないが、それが現実であると椿は続けた。
こちらが受験するなと言えば、自意識過剰だと陰で言われ、向こうが受験すれば恥知らずと言う。
第三者は発言に責任を持たない分勝手である。

「合格…すると思ってる?」
「するんじゃない?並々ならぬ執念を燃やしていたみたいだし」

またもや椿に軽い口調で答えられ、杏奈は肩を落とす。

「水嶋様が心配じゃないの?」

美緒の狙いは恭介である事は分かりきっていた。
だからこそ、杏奈は恭介に美緒の事を話さない椿の事を不思議に思っていた。
杏奈に聞かれた椿はキョトンとした顔をして、口を開いた。

「心配に決まってるじゃない」
「だったらどうして美緒の事を言わないのよ」

やや食い気味に杏奈が身を乗り出し口を開いた。
体を反らせた椿は杏奈の肩を押して、椅子に留める。

「美緒に恭介を渡すつもりは無いんだけど、恭介の選ぶ権利を勝手に剥奪するのもどうかと思ってね。悪い面ばっかり言って聞かせて印象悪くするのもアリだと思うんだけど、それやると美緒と同じになっちゃうでしょ」
「だから口を出さないって言うの?」
「恭介はそこまでバカじゃないよ。好きと言う感情だけで突き進むほど愚かじゃない。ちゃんと周囲がどう思うかを考えて行動する人だと私は思ってる」

しっかりとした眼差しの椿を見て、杏奈は何も言えなくなってしまった。
椿はこうと決めたら絶対に妥協しない事を杏奈は良く分かっていた。
この頑固者め、と杏奈は心の中で呟いた。

「それはそうとして、おば様は良く椿が中等部に進学するの許したね」
「未だに別の中学に行く気は無いのかって聞かれるわ。その度にお父様が宥めてるけど」

椿は苦笑して母親の様子を語る。
伯父や父親から説得され、一応は納得した母親であったが、やはり心配なのか椿に別の中学を勧めてくるのだ。
母親の心配も理解できる椿は無下にする事も出来ず困っているのだが、毎回父親が助け舟を出してくれる為なんとかなっている。
頭では納得出来ているが感情がついていっていないのだろう。
母親には心配をかけて申し訳ない気持ちでいっぱいだが、未来の為に我慢してもらいたい。

椿が杏奈と話し始めて30分が経過した頃、ノックも無しに書斎の扉が開いた。
扉の開いた音で誰かが来た事に気付いた2人は視線をそちらに向ける。
大人だと思っていたので視線を上に持っていったが誰も居らず、ならば子供かと思い、下に視線を向けると菫が開いた扉の間からこちらを覗き込んでいた。

「あら、菫。どうしたの?」
「おはなし、おわりましたか?」
「えぇ。もう終わったわ。こちらにいらっしゃい。姉様達とお話しましょうか」

遠慮がちに訊ねる菫に、椿は笑顔で答えた。
途端に菫は満面の笑みを浮かべて書庫へと入り、椿の隣の椅子に座った。
勿論、椿が抱き上げて座らせた。

「お久しぶりです!あんなちゃん」
「久しぶりね。ちょっと見ない間にまた可愛くなって」

そう言って、杏奈が椿越しに菫の頭を撫でようと手を伸ばしたのだが、即座に椿に阻止された。
杏奈は笑顔のまま視線を椿に向けると、無表情の椿と視線が合った。

「穢れがうつるから触らないでくれる?」
「あんた本当に弟妹の事になると心狭くなるよね!」

いっそ清々しいわ!と杏奈が続ける。
椿達の会話が理解できていない菫が首を傾げ、椿の服の裾を引っ張った。

「姉さま?杏奈ちゃんはおきれいですよ?」
「見た目に騙されちゃいけません。心の中は真っ黒なんだから」

椿の言葉を聞き、杏奈が身を乗り出して反論し始めた。

「それをあんたが言うか。腹黒さで言ったら私とタメ張る癖に」
「え?私はお腹の中に何も溜め込んでおりませんよ?」
「ダウト!ダウト!」

声を張り上げたせいか、杏奈は少し息を切らせていた。
菫は下を向いている杏奈が心配なのか、しきりに様子を窺っていた。
そんな菫を見ながら、椿は菫がここまで来た理由を聞こうと口を開いた。

「そう言えば、私か杏奈に用があったのではないの?」
「あ、そうでした。らいげつ、バレンタインデーがありますよね?バレンタインデーは好きな人にチョコをさしあげる行事だとさっきお祖母さまからおききしたのです」

まさかと椿は青ざめる。
椿の変化に気付かない菫はさらに話を続けた。

「それでですね。あの、…倖一さまにチョコをさしあげたいのですが、いっしょに買いにいってくれませんか?」
「カカオ豆でもあげればいいわ」

笑顔のまま椿は即答する。
カカオ豆が何なのか理解出来ない菫は、またもや首を傾げた。
そんな菫に杏奈が丁寧にカカオ豆の説明をする。

「ダメです!ちゃんとしたものをさしあげたいんです!」
「自分で言っといて何だけど、すごい心が痛む」
「じゃあ言わなきゃいいでしょ!」

杏奈のツッコミはごもっともである。
かと言って、椿は菫の恋に協力するのは嫌だ。
大人げないと言われようと嫌だ。
しかし、可愛い妹の願いを叶えてやりたいのも事実であった。

悩んでいる椿を見た杏奈が助け舟を出した。

「じゃあ、手作りすればいいんじゃない?」

杏奈としては、売り場であれこれと倖一の為に悩む菫を見たくないだろうと言う考えと、菫と一緒に楽しく手作りでもすれば椿の気も晴れるのではないかと思っての提案だった。

手作りと言う言葉に菫は興味を惹かれたようで、あれこれと杏奈に質問を投げかけている。
杏奈の返答を聞いて、菫は手作りの方が良いと考えたのか、椿に一緒に作ろうとお願いをした。

椿も菫と一緒にお菓子を作りたいと言う気持ちもあり、渋々と承諾した。
まぁ、初心者だし、上手く行くかなんて分からないよねと高を括っているが、下ごしらえをするのは朝比奈の料理人であると言う事を椿はすっかり忘れていた。
杏奈も忘れていた。

その後、椿達は何を作るかで盛り上がり、型抜きしたクッキーにチョコをコーティングした物を作る事に決まった。
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