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お前みたいなヒロインがいてたまるか! 作者:白猫

本編

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先日、総合評価が6万ポイントを超えることが出来ました。
これも全て読んで下さる皆様のお蔭です。ありがとうございます!
現状に甘えることなく今まで以上に頑張って参りますので、これからもよろしくお願い致します!

また、書籍の1巻、2巻を手にとって頂きまして、ありがとうございます。
2巻の発売から1ヶ月ほど経ちまして、先日担当編集さんよりアンケートはがきの一部のデータを見せて頂きました。
ひとつひとつの感想を大事に読ませて頂きまして、温かい言葉の数々に胸がいっぱいになり、また明日から頑張っていこうという気持ちになりました。
本当に、本当にありがとうございます。

ちなみに送って頂いたはがきの個人情報はこちらには一切開示されておりませんので、ご安心下さい。
 花火大会が終わって夏休みも後半に差し掛かったある日、椿は志信の後を追いかけていた。

「ねぇ、志信さーん。お願い。コンビニに行こう?」

 コンビニに行くこと自体は全く問題は無いと事前に両親から了承を得ていた椿は、早速こうして志信にお願いしている訳である。
 志信もずっと反対していた手前どうしたものかと悩んでいたのだが、あまりに必死な椿のお願いについに首を縦に振った。

「やった!」
「無駄遣いしてはなりませんよ?」
「分かってるって。おやつは五百円までにしておくから」
「五百円でよろしいのですか!?」
「少ないかな?」
「お菓子ひとつで百円から三百円程度しますからね」
「そっか……。じゃあ千円で」
「……控え目なのは椿様の美点ではありますが、金銭感覚が少しばかり心配になります」

 志信はもっと高額を予想していたのか、椿の返答に珍しく驚いている。

「それってケチってこと? 無駄遣いしないように気を付けてるだけだよ」
「いえ、決してそのようなことはございません。椿様は好奇心旺盛な方ですので、珍しいものをお買い上げになるのではと思っていただけでございます」
「別に怒ってる訳じゃ無いから、フォローしなくても大丈夫なんだけど……。志信さんは真面目だよね」
「使用人として必要なことですので。それで、コンビニにはこれから出掛けますか?」
「あ、杏奈も一緒にコンビニに行く予定になってるの。明後日の十三時くらいにしようかって話しててね。それから、コンビニは前に行ったところでよろしくね」
「畏まりました」

 志信の了承を得られた椿はこれでコンビニに行ける! と上機嫌であった。
 コンビニで何を買おうかと考えながら、椿は当日を迎える。

 予定時刻よりも早く朝比奈家に杏奈が到着し、急かす二人に押される形で志信を連れて前に行ったことのあるコンビニへと向かう。

「夏休みもあとちょっとで終わりだね。杏奈はもう文化祭に展示する絵は描けたの?」
「とっくに描けてるわよ。後は部活に行くのは自由になってるから、こうして時間を作れたってわけ」
「夏休みまで部活って大変そうよね。遊べないし」
「そう? 学校に来てる他の部活の人と話したりするから友達も増えるし、たまにお裾分けを貰ったりするから楽しいわよ?」
「他の部活って運動部とか?」
「いや、料理研究部とか天文部とか」
「料理研究部はなんとなくお裾分けの内容が分かるけど、天文部って何を貰うのよ」
「夜空の写真」

 天文部なのだから夜空の写真くらいあるのは分かる。だが、それをお裾分けで貰うとはどういうことなのか椿にはさっぱり理解出来ず、彼女は「は?」と聞き返した。

「お裾分けじゃないんだけどね。文化祭用の絵で夜空を選択する人が居たのよ。それで天文部から写真を貰ったってわけ」
「ああ、そういうことね」
「まあね。それで今度天文部の子達と天体観測に行くんだけど、椿も来る?」
「場の空気が凍るだろうから止めとく」
「残念。面白い男子と友達になったから椿にも会わせようと思ったのに。それに夏目さんも来るし」
「夏目さんも来るなら尚更私が行かない方がいいんじゃない? 一人の私に気を使って色々と話し掛けてくれるだろうから、他の生徒とあまり喋れないだろうし」

 天体観測に興味はあったが友人同士の楽しい集まりに椿は水を差したくはない。

「ああ、椿が一人で居たらそうなるわよね。あと私以外は全員外部生だし、最近の椿は何もしてないから大丈夫かなって思ったんだけど」
「……無闇やたらと突っかかってくる人が居ないから何もしないだけで、丸くはなってないわよ」
「中等部までは大変だったものね」

 二人は中等部でのことを思い出して遠くを見つめていると、しばらくして杏奈が何かを思い出したように、あっと声に出した。

「そういえば聞こう聞こうと思って忘れてたんだけど、一学期の途中から何度か裏庭に行ってるところを見たんだけど何してたの?」
「見られてたの? ……まあ、杏奈だから大丈夫か。実はね。前にあそこら辺に猫がいて、ちょっと触らせてもらってね。で、またいないかなーって思ってたまに見に行ってるだけ」
「ふーん。野良猫?」
「首輪してなかったから多分ね。でも人懐っこくて良い子よ。大人しいし鳴かないし」
「椿様」

 椿の発言を受けて、これまで静かに二人の会話を聞いていた志信が咎めるような口調で椿に声を掛ける。

「あまり野良に構うのはお止め下さい。猫が欲しいのであれば旦那様に伝えますが」
「高価な家具やら美術品が置いてある屋敷で飼ったら、絶対に悲惨なことになるって分かってるから止めて」

 絶対に家具に飛び乗って壺を落としたり、爪研ぎをするに決まっている。椿は、とてもじゃないが恐ろしすぎて朝比奈家で猫を飼うことは出来ないと思っていた。

「触ったらちゃんと手を洗うし、本当にたまーにしか探さないから」
「もう触らないし探さないって嘘でも言っておけばいいのに」
「あ! 馬鹿正直に言っちゃった!」

 聞かなかったことにして! だの時間よ巻き戻れ! だの志信に言っていた椿であるが、ことごとく杏奈からツッコミを受けて普通に落ち込んでいた。
 結局、志信からは「ほどほどに」という言葉を頂戴しただけでそれ以上注意されることはなく、居心地の悪くなった椿は杏奈と当たり障り無い話をしている内にコンビニへと到着する。

「この入店音が懐かしいわ」
「本当にね」

 二人はコンビニへと入り、高ぶる気持ちを抑えつつお菓子売り場へと向かう。

「椿様、カゴをお持ち致します」
「あ、ありがとう」

 カゴを志信に渡し、椿と杏奈は自由にお菓子を選び始める。

「今まで佐伯君家のお菓子しか食べたことなかったから、他のメーカーのも色々と食べてみたかったのよね」
「ねぇ、椿はこれどっち派? 答えによっては私との間で戦争が起きるけど」
「美味しければなんでも良い派」
「チョコの面積とか関係ないの!?」
「面積が大きかろうと胃に入れば皆一緒でしょ」
「そのお腹が満たされればなんでもいいっていう思考はどうなのよ」

 杏奈から冷ややかな視線を送られている椿であったが、本人はまったく気にしていない。

「美味しい物はそれだけで正義よ。論争が起こること自体ナンセンスだわ」
「……じゃあ、目玉焼きには?」
「醤油一択」
「何がナンセンスよ! ちゃっかり派閥に属してるじゃない!」
「落ち着いてよ。私は胡椒派もソース派も塩派もそれ以外も否定はしてないわ。全てを試した結果、醤油が私の口に合った。ただそれだけのことよ」
「目玉焼きごときで何を格好いいこと言ってるのよ」
「でもね。私はレンジでチンした時の黄身の近くの白身が固まってなくてブヨブヨしている部分は許せないの。ついでに黄身が半熟じゃないと気分が落ち込むわ」
「あ、これ。極限に面倒臭いタイプだ」
「だって黄身が固まってると口がパッサパサになるじゃない! 口の水分が全部黄身に持っていかれるのよ! のどに詰まるし!」
「それは分かるけど……って、本当に面倒臭いわね!」

 お菓子売り場の前で言い合っていた二人であるが、お菓子選びは全く進んでいない。

「椿様、杏奈様。お話が止まらないのは分かりますが、あまり時間を掛けるのも他のお客様のご迷惑となりますので」

 会話に集中していた椿と杏奈は、志信の言葉に我に返り言い合いを止める。

「えーと、私は手羽先味のポテチとチョコクランチを買おうっと。杏奈はどれにする?」
「マンゴー味とココナッツ味のチョコにしようかな。あと、プリンも買うでしょ?」
「買う買う。それから、さきいかも買いたい」
「ビーフジャーキーも捨てがたいわね」

 楽しそうに話をしながら、椿と杏奈はカゴにお菓子を入れていく。
 お菓子売り場から移動し、おつまみを経由してデザート売り場に辿り着いた椿と杏奈はようやく全て選び終え、合計金額を計算し始める。

「えっと、これが二百円だから……。うん。ちゃんと千円以内になった」
「私はちょっと予算オーバーになったわ。やっぱりビーフジャーキーは高いわね。で、これ買ってどこで食べるの?」
「近くの公園でいいんじゃない?」

 言いながら椿は外で食べるのは大丈夫なのだろうかと志信の顔をチラリと窺うが、彼はいつも通り表情を変化させていない。

「ねぇ、志信さん。外で食べるのはダメ?」
「いえ、構いません」
「良かった。じゃあ、飲み物も買っていこう。志信さんも飲む?」
「お気遣いありがとうございます。ですが、仕事中ですので」
「そう」

 飲み物を選んだ後に会計を済ませ、椿達は近くの公園へと移動する。
 椿と杏奈は公園内のベンチに腰を下ろし、買ってきたばかりのお菓子を食べ始める。

「ポテチとチョコを一緒に食べると甘辛くて良い感じね」
「その味覚は良く分からないわね」
「何言ってるのよ。チョコでコーティングされたポテチだってあるんだから美味しいに決まってるじゃない」
「あれ、人によると思うんだけど」
「……じゃあ、杏奈もポテチとチョコを一緒に食べてみなよ」

 杏奈に向かって椿がお菓子を差し出すと、嫌そうな顔をした彼女はゆっくりと袋からポテチとチョコを取り出し、口に入れる。

「あ、悪くない」
「そこは美味しいって言ってよ!」
「私好みじゃなかったってだけよ」
「もー強情なんだから」

 思っていた反応を返して貰えず、椿は拗ねてポテチとチョコを独り占めした。
 脇目も振らずにポテチとチョコを食べている椿を杏奈は冷めた目で見つめている。

「……あんたって、本当に食べ物と弟妹に関しては心が狭くなるわよね」
「私の生死に関わるからね」
「そこまでじゃないでしょうよ!」
「私の生死に関わるからね」
「全然大事なことじゃないから二回も言わなくていいわよ!」

 なんであんたってそうなの! と言いながら、杏奈は自分のお菓子を食べていく。
 何だかんだ言って椿のボケに反応する辺り、彼女も人が良い。

「……そういえば、花火の時にも思ったけど、鳴海さん随分と夏目さんと仲が良いじゃない。友達の椿は寂しくなったりしない訳?」
「寂しくないって言ったら嘘になるけど、夏目さんの近くで私が率先してフォローできない以上、こっちの意を汲んでくれる鳴海さんが居てくれるのは助かるわ」
「あんまり夏目さんと椿が仲良くして、彼女を刺激することになるのも困るから?」

 "彼女"というのは勿論、美緒のことである。
 近くに志信が居る以上は当たり障りのない会話しか出来ないので、敢えて杏奈は美緒の名前を出さなかったのだ。

「まあ、それもあるわね。……それよりも杏奈。私が頭を悩ませているのは夏目さんのことだけじゃないわ。今、一番気に掛けているのは鳴海さんのことよ!」
「な、何がよ」
「鳴海さんが夏目さんと仲良くなるのは構わないの。むしろ良かったとすら思う。でもそれだけじゃないのよ! 私には果たさなければならない使命があるの」
「これまでの経験から、その使命とやらが大したこと無いっていうことは分かったわ」
「そう! 一緒に過ごす時間が減った以上、私はもっと鳴海さんと心の距離を縮めなければならない!」
「聞きなさいよ。本当にスルー能力が高いわね」
「そこで私は作戦名を考えました! その名もSNS作戦!」
「ソーシャル・ネットワーキング・サービス?」

 フッと笑った椿はベンチから立ち上がり、杏奈の目の前に立つ。

「見下ろさないでくれる? ちょと屈辱」
「SNS作戦の説明をさせてよ!」
「はいはい。で、何よ」
「SNS、つまりS=さりげなく、N=鳴海さんを、S=下の名前で呼ぼう、作戦!」
「……すごい」
「でしょ!」
「失敗する未来しか見えない」
「失敗したりしない!」
「作戦名考えてる時点で失敗フラグしか立ってないって気付きなさいよ!」

 失敗する未来なんて考えたくない椿は目を瞑り耳を塞ぐ。
 杏奈はそんな椿を見て、本当にこいつ馬鹿だ、などと考えていた。

「私は失敗したりしない。絶対に鳴海さんを下の名前で呼んでみせる」
「じゃ、練習ね。はい、鳴海さんの下の名前を言ってみてよ」
「き、き、きよ、きよ……かさん」
「今の時点でそれ!? 絶対無理じゃない! 不可能じゃない!」
「今は不意打ちだから言えなかっただけよ! 本番はちゃんと出来るもん!」
「練習で失敗してる人間が本番で上手くやれる訳ないでしょうよ!」

 その後も出来る! 出来ない! という二人の言い合いは志信が止めるまで続いた。
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