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お前みたいなヒロインがいてたまるか! 作者:白猫

本編

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これにて中等部編は終わりです。
1ヶ月間、毎日更新にお付き合い頂きましてありがとうございました。
それとネタバレありの高等部編の予定のことを活動報告に書きましたので、見てやってもいいぜ!という方は見てやって下さい。
高等部編と美緒のちょっとしたネタバレがございますので、ネタバレは嫌だと言う方はご注意下さい。

また、高等部は来年1月2日からのスタートとなります。
同日にアリアンローズ有志作家による新年短編企画のそれぞれの新年を投稿致します。
よろしくお願い致します!

それでは皆様、よいお年を。
 卒業式が終わって春休みになり、椿は杏奈と共に朝比奈の祖父母へのプレゼントを買いに来ていた。

「色々考えてはみましたが、プリザーブドフラワーが一番無難でしょうか」
「ペアのワイングラスも付ける? でもお祖父様はあまりワインは飲まないのよね」
「そこですわね。……あ、あれはどうかしら? 掛け時計にプリザーブドフラワーが飾られてるものです。あれなら日常で使えるのでは?」

 杏奈は椿が指差した先の飾られている時計を見る。

「あれなら一日に一回は見ることになるよね。じゃ、あれを買おう」

 店のスタッフに頼んで色々と見せて貰ったが、デザインその他諸々を見て椿達は祖父母に送るプレゼントを決めた。

「椿様、僭越ながらワイングラスですが、穣治様ご夫妻がワインと日本酒と共に贈られる予定となっております」
「では、ワイングラスは無理ですわね。被ってしまうもの」
「ちなみに時計は被ってる?」
「いえ、椿様と杏奈様だけでございます。すぐに使用人に情報が共有されますので、他の方が時計を選ばれることはないかと」

 志信からの説明を聞いた椿と杏奈はホッとした顔を見せる。

「では、時計だけにしておきましょう。お祖父様もお祖母様も喜んで下さるといいけど」
「お祖母様は花が好きだから大丈夫でしょう? お祖父様も喜んでくれるわよ」
「温室に花が溢れているから花が好きなのは間違いないわよね。これで安心して渡せそうです」

 こうしてあまり時間が掛からずに祖父母へのプレゼントが決まったことで、微妙に時間が空いてしまう。
 じゃあさよなら、というのもなんだかな、と思った椿は杏奈をティーサロンへと誘う。

「杏奈さん。この近くにティーサロンがあるのだけど良かったらどう?」
「いいけど。この辺りにもあるのね」
「前に鳴海さんとご一緒したことがございますの。紅茶のスイーツが有名なんですのよ?」
「へぇ、鳴海さんとね。いいよ。そこに行こうか」

 杏奈と共にティーサロンへと行き、さほど待つことも無く椿達は個室に案内された。
 志信に外で待っているように伝え、スタッフに紅茶とスイーツを頼み、椿は杏奈と話し始める。

「それにしてもあれだけ問題を起こしてた立花さんが高等部に進学できたことが驚きよね」
「学園側は他の学校を薦めたそうなんだけど、立花家と秋月家が出てきて騒いだみたいでそのまま進学になったって伯父さんから説明されたわ」

 椿はその内容までは知らなかったが、実際のところ立花家と秋月家が美緒の母親の時は進学させたのに今回はダメだとはどういうことだと学園側に詰め寄ったのだ。
 それを言われたら学園側も強くは出られず、また立花家の寄付金が無くなるのも痛い、ということで今後問題を起こさないのであれば進学させる、となったのである。

「まぁ、卒業式の時も見てるだけだったから問題はないかもしれないけどね。……ところで、椿は夏目さんが高等部に入学してくると思う?」
「……さぁ、どうだろ? 個人的には入学してきて欲しいけど。去年の夏に恭介が会ったという人が夏目さんだったとしたら、ある意味でイベントは起こってる訳だから、可能性としてはあるんじゃないかな」
「じゃあ、夏目さんが高等部に入学してきて、転生者じゃなくて『恋花』の性格をした夏目さんだったら椿はどうする?」
「別にどうもしない。それで恭介が彼女を好きになったのだとしたら、特に問題もないし、頑張ってくれとしか言いようがないよ」
「立花さんとは随分と対応に違いがあるのね」

 同じ主人公でヒロインなのに、と杏奈が続けた。
 椿の対応に差があるのは、そもそも美緒と透子とでは第一印象が違いすぎたためだ。
 おまけに美緒と美緒を取り巻く家庭環境が悪すぎたせいでもある。

「だって、私が立花さんを邪魔してたのは、恭介とくっつかれると彼女の母親と秋月家の人間が出てきて水嶋家も朝比奈家も滅茶苦茶にされる恐れがあったからってのと、お母様の心の平穏を守る為っていう理由があったんだもの」
「椿のお祖父様方が面倒なことしちゃったからねぇ」
「まったくよ。で、反対に夏目さんの場合は一回会って話した結果、良い人だったからってのが大きいかな。あとは、彼女に最後の希望を持ちたいのよ、切実に」
「でも、夏に水嶋様と会ったのが夏目さんだっていう確証はないんでしょう?」

 冷静な杏奈の突っ込みを受けた椿は頷いて下を向いた。 

「うん。ただ、最初に頭に思い浮かんだのが夏目さんだったからってだけなんだけど。あとは、そうであって欲しいっていう私の願望。一回会ったけど、ゲーム通りの明るくてちょっと抜けてるけど優しい子に見えたから。彼女に恭介を支えてもらいたいし、二人で幸せになって欲しいって思ってる」
「妄想するのは勝手だけど、夏目さんが入学してくるか分かってないからね。その上、水嶋様が会ったっていう人と夏目さんがイコールだとは判明してないからね。全ては来月に分かるのよ? 期待してたら裏切られた時に痛い目を見るわよ」
「それは考えたくない」

 そのまま椿は机に突っ伏した。
 希望に水を差すようなことを言った自覚があるのか、杏奈が注文したプリンを椿の方に差し出す。

「ほら、私のミルクティープリン一口あげるから元気出して」
「わーありがとう!」

 途端に元気になった椿はスプーンでこんもりとプリンをすくい口に入れる。

「ちょ! 一口の量じゃないでしょ! 出しなさいよ!」
「ひひほふひひはひっははふひへふー! (一度口に入ったら無理ですー!)」
「私の優しさを返せ!」

 杏奈に肩を掴まれガクンガクンと揺さぶられ、椿は自分の分のチーズケーキを彼女に差し出して許して貰ったのだった。


 杏奈との買い物からしばらくして朝比奈の本家で花見を兼ねた祖父母のお別れパーティーが開かれていた。
 椿は家族揃って出席し、桜の木の下にセッティングされたテーブルで他の家族は親族達と談笑しつつ、花見を楽しんでいる。

「賑やかね」
「お祖母様やお祖父様の人徳と子育ての結果よ。あの二人は理想の夫婦だと思うわ」
「だからこそ、来月から寂しくなるのよ」
「そうね」

 いつでも会える環境からたまにしか会えない環境になることに椿も杏奈も寂しく思っているのだ。

「椿ちゃんも杏奈もそんな隅っこでどうしたのかな? 家の桜は気に入らなかった?」

 椿と杏奈が隅っこにいるのを祖父が見つけて声を掛けてきた。
 本当に周囲をよく見ている人である。

「いえ、来月から寂しくなりますね、と話していたのです」
「あぁ、そのことか。前から決めていたことだからね。タリアの希望は出来る限り叶えてやりたいんだ」
「そうですか。お祖父様もお祖母様も互いを大切にしていらっしゃって、羨ましいです」

 椿が口にすると、祖父は背をかがめて彼女の耳元に顔を寄せる。

「最初はとんでもないプライドの高い令嬢だったんだよ? 何回罵倒されたか数えきれないぐらいだよ」

 椿は驚いて祖父の顔を凝視するが、彼はただ穏やかに微笑んでいるだけであった。

「人は見掛けによらないものですね」
「いや、見掛け通りだったよ。でもそれも可愛かったね。今も可愛いけど」
「……ご馳走様です」

 普段からキリッとした祖母を可愛いと評するのは恐らく祖父だけだろうが、孫にはその可愛らしい面を垣間見せていたので、椿も祖父の言葉に頷くしかない。

「椿ちゃん達もそういう人に出会えるといいね。じゃあ、タリアが呼んでいるから失礼するよ」

 祖父は頬を膨らませて腕を組んで仁王立ちしている祖母の元へと行ってしまう。
 祖父が去ったことで、杏奈が椿の隣へとやってくる。

「お祖父様とお祖母様は本当に仲が良いわね」
「ね? ところで、さっきからレオンがこっちを見てるんだけど、あんた何かした?」

 そう実はこのパーティー、レオン一家も招待されているのだ。
 バレンタインの時と同じくレオンは椿に話し掛けることはせず、周囲の人達と談笑している。

「何も。強いて言うなら、彼の中の価値観が覆る出来事があったというだけよ」
「ふーん。あ、こっちきた」

 途中で使用人から何かを受け取ったレオンが脇目も振らずに椿の元へとやってくる。

「ごきげんよう、レオン様」
「あぁ。一ヶ月ぶりだな。卒業おめでとう」
「ありがとうございます」
「これ、卒業祝い。ドイツのお菓子詰め合わせだ。色んな種類があるから、飽きないと思う」

 差し出された紙袋を椿は物凄い勢いで掴んだ。
 隣に居た杏奈は冷めた目を向けているが椿は気にしない。

「ありがとうございます。美味しく頂きます」
「あと、ナターリエさんに会いにドイツに来た時は、街を案内させて欲しい。椿に見せたい場所が沢山あるからな」
「えぇ。その時はよろしくお願いします」
「それじゃ、俺はこれで。今、穣治達とポーカーの最中なんだ」

 特に長話するわけでもなくレオンは伯父達が集まっているテーブルへと行ってしまう。

「産地直送宅配人」
「仮にもあんたのはとこでしょうが!」

 ポツリと呟いた杏奈のセリフにさすがに椿は突っ込みを入れる。

「それにしても、随分と大人しくなったものね。あのレオンが」
「そうね。こっちも拍子抜けしてしまったもの」
「まぁ、グイグイ言い寄って来られなくなったのは良かったんじゃない? 随分と気に病んでたみたいだし」

 それはそうなのだが、これもこれで善良なレオンを利用しているようで罪悪感がある。

「この関係も、三年間でなんとかなるものかしらね」
「三年間で問題を解決出来たら、椿はある意味で自由になるからね。そうなるといいわね」

 そう、全ては四月にある鳳峰学園高等部の入学式次第なのだ。
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