chapter 12
チャーリーが会社に出勤してこなくなってから一週間が経過しようとしていた。結局ウィルズは仕事が忙しかったせいもあり、見舞いに行ってやることができなかった。もう会社をやめてしまったのだろうか。電話をしても出ないところを見ると、田舎に引っ込んでしまったのだろうか。ウィルズは心配する一方で、実はその方が彼のためにも良かったのでは、と思うのだった。
「もう一週間が経ちますね」
モーリスはできたての書類をウィルズに手渡しながらそう言った。
「そうだな。そろそろ出勤してきてもいいと思うのだが」
「彼の仕事はみんなで分担して処理していますが、さすがにしんどくなってきましたね。彼でないとわからない部分もありますしね」
ウィルズは少し間を置き、ためらいながらこう言った。
「モーリス、もし今日暇があるなら会社が終わった後にでも様子を見に行ってくれないかな」
彼の顔は少し恥ずかしそうであり、またさみしそうだった。チャーリーはとっくの昔に私のことを嫌いになっているだろう。いつからだろう、彼との間柄が上司と部下以外の何ものでもなくなってしまったのは。入社当時は一緒に釣りに行ったり、キャンプに行ったりしたものだが。
「私が行ってもいいのだが、そのう…、少し行き辛いんでね」
「そのつもりでした。実は昨日、ドリスから電話がかかってきたんです」
「ドリス?本当か?」
ウィルズの顔がぱっと明るくなった。
「ええ。チャーリーとよりを戻したいらしいのですが、チャーリーが一向にとりあってくれないと相談を持ち掛けられました」
「そりゃ良い話だ。ドリスが戻ってくれば遅刻をすることもなくなるし、目覚まし時計からも逃げられる。万事解決じゃないか」
「そうなんですが、なにぶんチャーリー自身が嫌がってるんで少し難しいことになりそうなんです。かなりプライドが傷つけられたみたいで、今だに顔も見たくないと言ってたし」
「しかしチャーリーにとってはまたとないチャンスだぞ。ドリスと復縁することが最良の解決策だと思わんかね」
「ええ。とにかく今日ドリスの話も含めて見舞いに行ってみます」
「ぜひそうしてくれ」
ウィルズは初めて部下に握手を求めた。モーリスは彼の差し出された手を見て一瞬驚いた。その手にはよろしく頼む、という心からの切なる願いが込められていた。
「まかせてください」
モーリスはそう言い、固く握手をすると自分の席へと戻って行った。
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