冒険の書〜シゲルは行く〜 PDFで表示縦書き表示RDF


冒険の書〜シゲルは行く〜
作:M吉


 タイYO!系に属す惑星
「TQ」。物語はここで始まる。主人公はこの俺、シゲール・タナカ、15歳だ。そろそろ旅に出たい年頃、つまり反抗期を迎えている。
 俺はある朝、ついに母親に旅立ち、いわば家出宣言をかました。

「母さん、俺魔王を倒すために旅に出ようと思うんだ…」

 魔王は名をソーリと言い、トウキョウシティに君臨し、この俺が住まう国、ニホンを支配しているのだ。

「何馬鹿なこと言っているの!とにかく朝ごはんを食べなさい」
 俺は母に言われるままに、朝ごはんを食べた。そして…

「母さん、俺…」
「早くしないと、遅刻するでしょう、急ぎなさい」

 母は攻撃の手を緩めず、俺に反撃の余地を与えなかった。魔王を倒す前から、とんだ手ごわい敵に遭遇したものだ。俺は今朝に永遠の好敵手、メザマシ・ド・Kを倒してきたと言うのに、それでもまだ駄目だと言うのか…くそ、無念。
 とりあえず、俺はガッコーに行くことにした。そこなら人も多い。きっと共に魔王を倒す仲間も見つかるはずだ。

「よし…」

 俺はボディにガクランを装備した。

「行ってきます」

 かくして俺の冒険の書は始まった。序盤だから、遠くにも行けないし、敵もまだまだ弱いはず。加えて所持金は昨日貰ったお小遣いが千円のみだ。
 ガッコーまでは片道10分。いつもはなんてことのない、わずかな道のり。 しかし今日に限っては長く感じた。いや、実際に長かったのかもしれない。たかだかガッコーに向かう間、シゲールには数々の試練が待ち受けていた。
 実は、何だかんだやっている間に、遅刻まであと10分に迫っている。はっきり言ってギリギリだ。さっき俺は見栄をはってしまった。本当はガッコーまで10分ではたどりつけない。正確には10分と46秒を要す。嘘を言ってしまってすまない…。だから、本当のところ、普通にガッコーに向かうとこのままではアウトなのである。

マズイ…。

 カウントダウンは既に始まっている。
しかしこんな時に限って、俺は雑魚キャラに足止めをくった。普段は気にならないはずのシンゴーは、この時とばかりに、赤く光って俺の前に立ち塞がった。あざ笑うかのように上から見下ろすシンゴー。俺は手を出すことが出来ず、硬直する。一分一秒を争うこんな時に…俺は焦っていた。
 奴に構っている暇などない。かくなるうえは…逃走!
 俺は信号無視を決め込んだ。

「…はぁ…はぁ。逃げ切れたか…?」

 後ろを振り返っても、シンゴーが追いかけてくる様子はなかった。

―よし…。

 一難は去ったものの、まだ安心は出来ない。俺は額から流れる汗を拭い、慎重かつ最速で歩いた。
 ガッコーまではあと少しだ。そんな時、俺の目に飛び込んできたものは予想外の光景だった。 む、サブイベントの予感!!   

 目前には昨日までは存在しなかった立て札と、赤い三角のコーンが、路上でフォーメーションAをとりながら待ち構えているではないか。

「しまった!待ち伏せされた」

 既にガッコーは視界に入っていると言うのに…そう易々とは通らせてはもらえないということか?………いいだろう、この挑戦受けてたとう!俺はこの場を全力で通り抜ける覚悟だ。

シゲール・タナカ、行きます!

「ちょっと君、この看板が見えないのか?ここは工事中だ。危ないから今すぐ出ていきなさい」
「大丈夫です。この程度、僕にはなんてことありません。僕、勇者ですから」
「そういう問題じゃないよ、君。悪いが今日は回り道してくれ」

 今ここを通れば間に合うはずなのに…神は俺に試練を与えようと言うのか?何て出来すぎたストーリだ。
 しかし俺は譲れない。
 冒険の書がスタートしたこの記念すべき日に、主人公のこの俺が、試練などに屈するわけにはいかないのだ。

「お願いします、ここを通してください」
「お願いしますと言われても…困るよ」
「お願いします。駄目と言われても、意地でも通らせていただきます」

 暫く攻防が続いた。そしてついに…

「君にはまいったよ。そこまで言うのなら通りたまえ」

 勝った!俺はついにこの戦いを制した。所要時間15分。 実は素直に遠回りした方が早かったという…。
 俺は勝利の高揚感からスキップしながらガッコーの校門の前までやってきた。

「あ…」

 遅刻決定。


 1人遅れて教室に入った俺を、さらなる試練が待ち受けていた。


「田中〜、そんなんではソーリなんて倒せないぞ?」

 何でタンニンが知っているんだ!?そしてクラス中が爆笑の渦になっている。俺は恥ずかしさのあまり赤面した。

「あ、田中君顔が赤―い」

 イジメか?俺はイジメにあっていたのか!?軽くショックだ。 折角数々の苦難を乗り越えてまで、仲間を求めてここまでやってきたというのに。
 はっ!仲間…?いいや違うな…。俺は確信し、1人頷いた。

 こいつらはみんな敵だ!何故なら俺が通うこの高校は国立。つまり魔王ソーリの管轄下にあるのだ。タンニンはコッカコームイン…。コッカコームインはソーリの忠実な僕たち。俺のように謀反を企てるものを取り締まったりするのだ。

 だがしかし俺は屈しない。


 倒す。

 全てこの俺が―――っ!


「先生ーっ、田中君が暴れだしました!」
















ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




◆BACK
小説家になろう