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MENT THE RIGHT ONE
作:葉稚恋



7.雷雨2


目の前にある古びた校舎。
〔ここに巧が通っているんだ…〕
私たちは昼休みの間、この校舎を見学することにした。
この市1のマンモス学校は、私たちが通っている学校と違った造りだった。
長い渡り廊下に4階建ての大きい校舎。
体育館は2つあった。
大人数に対応して運動場は学校側に1つと道路を挟んで向こう側にもう1つあった。
「そろそろ行ってみよっ?」
満月の一言から私たちは、横断歩道を渡り、今回体育祭を行っている会場へ向かった。

《…野球部の生徒は本部に集まって下さい》
会場に着くとアナウンスが聞こえた。
「野球部だって!巧クン居るんじゃない〜?」
南月がアナウンスに反応した。
〔どこだろ…?〕
辺りを見回すと野球部らしい人が、トラックの整理をしていた。
さっきの雨で水溜まりが増えたのだろう…
「ね、喉乾かない?」
歩がみんなに聞いてきた。
「そういえば喉乾いたね〜」
「うちら自販機探してくる〜」
行こっ!と言って歩と南月は行ってしまった。
〔巧どこだろ…?〕
「巧クンどこだろ〜ね!?」
「……!!!?」
顔を赤く染めた私は満月の方を見る。
しゃがんで頬杖した満月は私を見ている。
「心読んじゃった♪」
満月は楽しそうに笑っていた。
「も…もぅ…」
〔ハズイなぁ…!〕
「人に聞いてみたらいいのに〜」
「聞けるわけないじゃん!みんな知らない人なのに…」
「ふ〜ん…でも見つかるもんかなぁ?この大人数の中で!!」
〔分かってる…〕
何百人居るこの中で、たった1人の人を見つけることが難しいことぐらい分かっていた。
手がかりは“鮎川巧”という名前と黄色のハチマキをしていることだけだった。
それでも、自力で見つけたかった。
いや、自力で見つけることしか出来なかった。
「…これで見つかったら運命だね(笑)」
隣の満月は笑いながら言った。
〔運命か…〕
そんな事を思いながら人混みを見ている時だった。

「あ…!」
「何?どうしたの…」
「…見つけた…」
「見つけたって?…もしかして巧クン!?」
私は目の前に居る男子の集団を見ていた。
その集団の中に、“鮎川”と名前が書かれた体操服を来た男の子が居た。
肩には黄色のハチマキを掛けていた。
メールの時はチャラチャラしたカンジがあったから、巧はチャラ男だと思っていた。
でも空想の巧と現実の巧は全然違った。
大きくてゴツイ身体。
一目で男らしい人ということが分かった。
カッコイイ系という訳でもなく、カワイイ系という訳でもない。
パッと見、モテる…カンジもない。
この学校で見た目に拘らない私と満月は「あれか…」というようなカンジで彼を見ていた。
前の私だったら恋愛対象に入らない人。
でも、何故か私は彼に釘付けになっていた。
トクン…トクン…―――
鼓動が徐々に高鳴る。
顔はもちろん…熱い…
「たっだいまぁ♪」
南月と歩が買い出しから戻ってきた。
「亜弥ちゃん、顔赤いですぞ!?」
「ひゃ…冷たぁ…」
私がボ――としているのに気づいたのだろうか?
南月が手にしていたお茶のペットボトルを頬に当てた。
「亜弥、どうしたの?」
歩が尋ねてくる。
「運命だよ…」
私の代わりに満月がボソッと呟いた。
「「はぁ…?」」
歩と南月の声が珍しくハモった。
「だ〜か〜ら〜、亜弥が自力で巧クンを見つけたのォ!」
「「えぇ!!!!」」
また2人の声がハモる。
「どれどれ?亜弥の旦那は…!?」
歩が私の目線に合わせて巧を探し出した。

《これから午後の部を始めます。
プログラム18番、3年生全員によります“対抗リレー”です…》
午後の部開始のアナウンスが運動場中に響いた。
その後、巧を含んだ集団はトラック内へと消えてしまった。
「3年生出るみたいだよ?行ってみよ♪」
南月はテンションが上がっていた。
午後の部再開と共に、また雨が降りだした。
〔さっきまで晴れてたのに…〕
私たちはテントから、雨の中頑張って走っている生徒の姿を眺めていた。
その中で、必死だけど楽しそうに走っている姿があった。
〔巧だ…!!〕
速い訳でもなく、遅い訳でもない。
でも何故か楽しそうに走っている彼はキラキラしていた。
3年生のリレーが終わる頃、雨は土砂降りに戻っていた。
体操服を着ていた生徒は、数名が制服を着ていた。
アナウンスによると、応援合戦をした後、今日の体育祭を終了するらしい。
男子は学ラン、女子はセーラー服を身につけて、雨の中入場口にスタンバイした。
〔どんな応援をするんだろう…?〕
そう考えている時だった。
ガラ ガラ ガラ ガラ ドォ――ン…――
「きゃあ!!!?」
物凄い音と、光が襲った。
すぐ後ろに雷が落ちたのだ。
私は満月にしがみついていた。
怖くてビックリして、不意に涙が出た。
大粒の雨で、私の頬をつたっているのが雨なのか涙なのか分からない。
とにかく私はパニクっていた。

結局、その雷のせいで体育祭は延期。
その日に応援合戦が行われることはなかった。
私たち4人はパニック状態の私を連れて学校側の体育館に移動していた。
「亜弥、大丈夫…?」
パニクった私を歩が心配そうに見ていた。
「う…ん…」
「そっか」
「…?満月と南月は?」
「え?」
辺りを見回すと2人の姿がなかった。
「はぐれたのかなぁ?人多いし…」
体育祭が急遽中止になったので、学校周辺は大渋滞になっていた。
「雨、止んだし外に行く?」
歩が外へと誘った。
雨のせいでジメジメした体育館から出たかったのだろう。
「うん…」
私と歩は校門へ向かった。
Pi Pi Pi...
〔メール?〕
「誰ぇ?」
「双子…」
『うちらお父さんが迎えに来たから先帰るね!ごめん(汗)』
「なんて?今どこ!?」
「先に帰るから〜って。それからごめんって」
隣に居る歩は帰ったのかぁ〜と少し残念そうにして言った。
「ね、鮎川クンってどんな人だったぁ?」
歩が興味津々に聞いてくる。
〔歩と南月は巧を見てないんだよな…〕
「えっと…ゴツイ人?」
「なんで疑問系なの…?」
「まぁ、一言で言えば男らしい人だょ!うん」
「男らしい人かぁ…。じゃああ-ゆ-人とか!?」
歩が人混みの方へ指を指す。
椅子の片付けで、制服を着た生徒や体操服を着た生徒が大移動していた。
その中で歩が指差す人物は、体操服の上から学ランをはおり、濡れないようにズボンは膝まで曲げている男子生徒。
椅子を担いで隣の男子生徒と楽しそうに笑っていた。
〔…って、巧じゃん!!!!〕
「あれ?あんな人じゃないの…?」
歩が尋ねてくる。
その声が聞こえたのか、巧がこっちを見た。
私は何故か反射的に目を反らしてしまった。
「……」
「…巧?」
「ん?」
「どうかした?」
「いや、なんでも…」
遠くからそんな会話が聞こえたような気がした。
気がつけば巧の姿はなかった。
「ね、亜弥!どうしたのォ?」
顔が熱い…
鼓動が高鳴って止まらない。
〔ヤバイよぉ…〕
私の頭の中で浮かんだ2文字…
〔…スキ…〕












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