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1 妖ヵ奇談 求

(もう一人の幽霊の話)

泣く子供。それをほほ笑んで見やるあの人。

何故、何故、どうして。どうしてそんなのに優しくするの。

あの人はあれが来てからわたしのもとに来なくなった。わたしを放っておくようになった。

「お前はもう大丈夫だろう?」
貴方がそう言うのなら大丈夫なのでしょう。私はもう大丈夫。
だってもう大人だもの。時は止まってしまったけれど、ずぅっとここに居たんだもの。もう自分で考える頭だってあるの。

子供は泣く。
何故泣くの。あの人が居るじゃない。なのに何を泣くことがあるの。
所詮、餓鬼の無い物ねだりだ。
自分が私より大人だっていうのなら、それなら我がままをいうんじゃない。私がずっと我慢してきたことを、何故、何故お前がそうやって泣いてほしがる。

それは私のものだ。

ワタシのものだったのに・・・・





「なぜ、彼女があなた達の言う、異端者だって言うのかしら?」

沼の淵、葦の上にしだれかかりながら至極楽しそうに、人魚は言った。時たまパシャリと尾が水面をはじく。

「簡単なことですよ」
「『筋書きに沿わないから』です。彼女はこの世界の筋書きの中心人物と言っていい。
原作に登場する『幽霊』と呼ばれる彼女は、『快活で明るく行動力のある、しかし幼い思考の少女』とあります」

兄の言葉を引き継いで言った無遠慮なビスの言葉に、人魚は水面を震わせて笑った。尾が激しく水の中を円を描くように動きまわった。

しかしビスとスティールは、無表情と笑顔という対照的な表情を変えない。

「ふふふっその通りですわね。・・・・確かに彼女は『明るく快活』とは言い難い」

身内を侮辱されたともとれる言葉にも、彼女は楽しそうに指をその長い髪に絡ませる。

「彼女は教員のくせして、うちの学級委員長の崇拝者ですわ。・・・・まぁ年齢としては学級委員長あのこのほうがずっと上ですけれど、」
人魚は僅かに瞳を伏せ、小さく呟くように言った。「所詮、生きた年月を合わせようと精々二十年ちょっとの小娘」

少女に見えるその姿に、貫禄と哀愁を漂わせて人魚は続ける。

「さて、それでは何故、あなた方はその『容疑者』ではなく、わたくしのところにいらっしゃったかしら?」

それはまるで、「すべてわかっている」と暗に告げているようだった。








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私は世界が恐ろしい。

でも、でも。


大好きな人たちが存在する、この世界がどうしようもなく愛しくも感じるのです。

もう帰れない生まれ育ったあの世界と同等か、それ以上に。

私は世界から弾かれました。けれど。

私は幽霊。
なのに可笑しいですね、私はここで生きています。

私の制服には胸元を飾るスカーフがありません。
けれど、私はあの世界よりもずっと、年上の生徒達と『青春』というものを謳歌しているのです。

『先生は生徒から学ぶ』といいますが。


私はここで生きています。
だから私はなかなか『油野朝子』を捨てられないのかもしれません。

死んでいるのに可笑しいですね。




私はここで生きたいと思ったのです。





三月中に二章に行けたら、いいな。
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