1 妖ヵ奇談 質
やさしいやさしい人。
あまいまいそれは、いつまでもいつまでも欲しいもの。
それを敢えて与える者は、さて、愛ある母か、それとも考えなしの愚か者か、それとも狡猾な策師か・・・・。
・・・・・さて、さて、さて。
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「いつまでこうしていればいいのかしら」
エリカはぽつりと言った。となりのニルはそれに重なるように欠伸をする。「今、何時くらいだろ」
エリカはチラリとポケットから出した時計を見た。
「・・・・九時三十九、イヤ、四十分ね」
「えっ、もうそんな時間!?」
会話に割り込む声。
エリカは身をひるがえし、二メートル後ろにさがった。本はすでに腕の中だ。
先には驚いたように灰蒼の眼を見開いた修道女が立っている。その後ろには影のように、ひょろり背の高い人物が従っていた。
「・・・・あれ?」
戦闘に構える体制に入ったエリカを見て、心なしか焦ったように修道女はタラリと汗を垂らして声をこぼす。
「――――ごっ、ごめん!まさかそんな驚くとは思ってなくて」
ぶんぶんと両腕を突き出すように振り、敵意のないことを示しながら修道女は言った。
「僕、エルディアっていいます」
こっちはリュー。後ろの影を差し、にこやかにエルは自己紹介した。
(妖には国籍なんて関係ないのかしら)
エリカはじっと、二人を観察するような視線を残したまま、思考を巡らせた。
夢人と呼ばれる職業の者達は、物語の世界に飛び込むのだからして、『原作』をある程度知ることになる。
当然、エリカもひいてはニルも、この世界の世界観、登場人物等も頭に入れていた。
しかしこの世界はファンタジー、妖怪の世と人の世、二つの世界の混在する世界。登場する要素と言えば妖達を筆頭に人の想いの具現化である幽霊、異能者、異界と呼ばれる異世界の存在も認められている。
いわば、『何でもアリ』の世界観だ。
それに加え、物語にはその世界に居る全ての人間が事細かに登場されるわけではない。
いわゆる、『モブ』とよばれる描写されない登場人物も存在する。
これ全てを踏まえ、一瞬で思考を終わらせたエリカはゆるやかに唇を釣り上げた。
「ごめんなさい今職務中で。ちょっとピリピリしてたわ、気にしないで」
エリカ=クロックフォードです。
人当たりのいい仕事に真面目な少女を装い、柔らかく彼女も自己紹介を返した。
評価・感想してくださると嬉しいです。
さて、書き上げたらすぐ上げるべきか、計画的に書き溜めて上げるべきか・・・・
(櫻)
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