長い指が心の臓を指す。
「貴方の血」
弓なりに細められた灰蒼の瞳。それが金に見えたのは錯覚だ。
「貴方の
系譜」
かつての子供が頭を持ち上げる。
(――――悲しい、寂しい、怖い、恐ろしい・・・・―――――)
「貴方の素晴らしいお祖母様の血」
当てられた指の先が胸を抉る。言葉は針か。否、刃か。
照朱郎はぶるぶると震えた。
開いたままの襖の影。そこに立っている者から目が離せない。
知らずのうち、後ろに手をつく。
「――――――おばあさまの、」
「ねぇ、どこを見てるんですか?」
(嗚呼、やはりあの人は性根が悪い―――――)
まさか今更、掘り返されることだとは思わなかった。
(いつから、あそこに・・・・)
ただの、使いならばこうはならなかっただろう。
耳は声を拾う。眼はそれに奪われたまま。
「貴方もまた異端」
まるで傷に刷り込まれる塩だ。体は動かない。
襖の向こうに立つ人間。ああ、あれは確かに人間だ。
(おばあさまの髪は私と同じ赤毛だった)髪は黒。
(おばあさまは白や淡い桃色が好きだった)纏うのは喪服の様な黒だ。
(おばあさまの目は、顔は―――――)決して大きいとは言えない人だった。背は彼女より頭一つよりも大きい。
大きな黒い目、血の気の失せた肌、薄い桃色の唇。
「・・・・・そっくりでしょう?」
そして、目の前の修道女の声に震える。
――――――久しく見ていなかった顔がそこにいる。久しく聴いていなかった声がすぐ傍でする。
月は天に差した。
沼の中心に光が差す。
映り込んだ月は、しばし定住し、やがてゆらりと揺れた。
じっとそれを見つめる兄弟は、波紋がやがて大きくなるのを待つ。
揺れる金の月
流れる波紋
きらきらと輝く金色の輪
(似てるな)
これは恐らく兄弟共通の思いだっただろう。感情の分かりにくい弟も、既視感を覚えるその光景に眼を奪われていた。
思い出すのは、父の瞳。
暗い水の底から手が現れる。
空をつかむように右往左往したその―――――左手らしき手は、水の表面、水面に手をついて、水の中から体を起こした。
緑の髪に月明りに照らされる青白い肌、水と同じ色の双眸。
「アラ」
驚いたように声を上げ首を傾げた『彼女』の腰から下は、間違うことなく、尾ひれが付いているのが見える。
「お待ちしていらしたの?」
「――――・・・・人魚」
ポツリとスティールは呟いた。
おまけ
垂れ目です。マフラーの色はオフホワイツ。
背後のパンダは作者の世をしのぶ仮の姿。