クリスマス。
聖なるイエス・キリストのおめでたい誕生日。
キリスト教でもない人々も、やれサンタだのプレゼントだの騒いでいる。
バカバカしい・・・。
我らが少年探偵団たちは、クリスマス会をやろうとしていた。
1週間前、放課後・・・。
「哀ちゃん!コナン君!クリスマス会やろうよ♪」
吉田さんの突然の問いに戸惑う。
「え?クリスマス会?」
円谷君が咳ばらいをし、笑って言った。
「歩美ちゃんたちと僕らで計画したんです!楽しいですよ〜プレゼント交換とか!」
「うまいモンもあるしな!」
チラリと横の彼を見る。
なんと彼は大人げなく、口の端を上げ嬉しそうに笑っていた。
「ああ、いいじゃねーか!楽しそうで。やろうぜ!」
いきなりの返事に慌てる。
別にやりたくないわけではなかったが、子どもっぽい彼の笑いに戸惑う。
「あら何?名探偵さんも長い間、子どものままだと精神も幼くなっちゃうのかしら?」
「ったく・・・。どうしてそんなこと言うんだよ、かわいげねーな・・・。たまにはいいかなって思っただけだよ!」
呆れ顔で見てくる。
こっちの方が呆れたわよ、まったく・・・。
そんなことでクリスマス会となってしまった。
「ねぇー!プレゼント交換やるから集まってよー!」
吉田さんが大きな声を出して、いつまでもケーキを食べ続けている小嶋君を呼ぶ。
現在の出席者は、小嶋君、円谷君、吉田さん、博士・・・そして工藤君。
博士がラジカセを持ってきて言った。
「じゃあわしは音楽を鳴らすから抜けることにしよう。とまったら回す手も止めるんじゃぞ。
じゃあスイッチON!」
明るい音楽が流れてきた。
どんなプレゼントでも良かった。
少年探偵団のみんなが、一人一人考えて買ってきてくれたのだから。
音楽が鳴り止み、私のところに回ってきたのはいくぶん小さな箱。
なにかしら・・・。
「うわぁー!これ、なんだぁ!」
小嶋くんが手にしていたのは、なんとファッション雑誌。
『今年の着こなしポイント』と書かれていた。
「あーそれ歩美のプレゼントだよ?元太君は使わないと思うからお母さんにあげたら?」
吉田さんが小嶋君に向かって、にこっと笑っていた。
無邪気に本当にきついこと言うのね・・・。
思わずクスリと笑ってしまった。
「歩美はこれ!なんかステキなバック♪」
フサエ・ブランド・・・もどきのバックだった。
「あ〜それ俺から。歩美ちゃんに当たってよかったよ。元太や光彦だったら使い道ないもんな。そうそう!俺の当たったもの・・・新名作の推理小説だぜ!」
「あら・・・それ、私からのプレゼントだわ。感謝してね、残り1冊だったんだから・・・。」
そう、それは誰にあたっても良いように買ったつもりだがやっぱりこの人に当たるのが一番ね。
喜んでいる彼を見て、そういう気持ちになった。
「何ですかこれ?ビック大阪のストラップですか!」
へ〜ここは東京なのに、そんなもの買う人もいるようね。
でも私じゃないとすれば残るは・・・
「ああ、それ俺から!前に母ちゃんが大阪言った時、お土産に買って来てくれたんだけどよぉやっぱ東京ファンだから!」
ふ〜ん小嶋君らしいわ。
食べ物かと思ってたけど、意外と気が利くものよね。
そして私のプレゼントは・・・
開けてみると、小さなかわいい動物のマスコットが入っていた。
思わず感嘆の声をあげる。
とてもかわいらしかった。
「あ、それ僕からです!その・・・気に入ってくれたでしょうか?」
円谷君が、顔を紅潮させながら言ってくれた。
照れているのだ。
「ええ、とっても嬉しいわ。ありがと!」
本当に嬉しかった。
横からは満足そうに、工藤君が笑っていた。
しかし・・・
「博士ー!ケーキ、作ったの。コナン君も食べない?あれ?みんなそろってるんだ!」
も・・・毛利さん・・・・。
自分が一番苦手な人物。
いつしかあの人に恋心を持ってからそう感じていた。
それと同時に姉と似ている人として、見ているだけで辛くなる。
「あれ?哀ちゃんどうしたの?みんなで一緒にケーキ食べようよ!」
思わず身体が震える。
みんな楽しそうに料理を食べては会話をしている・・・。
幸せそうだ。
じゃあ・・・・じゃあ私は?
1日1日、のんびり楽しく過ごせるなんて考えていなかった。
いつ命がなくなるか、分からない。
そう感じた。
幸せとなる人、不幸せとなる人・・・引き離さなければならない。
危ない目にあわせないためにも・・・
もうこれで最後のクリスマスになるかもしれないわね・・・。
そう思った瞬間、涙が一滴・・・
あわてて家を飛び出す。
「あっ哀ちゃん!」
「灰原さん!」「灰原!」
毛利さんと彼らの声が響く。
「灰原ァ!!」
あの人の声も聞こえた。
私はそのまま、走り続けた。
気がついたら、あたりは完全に真っ暗。
星が輝いていた。
『毛利探偵事務所』
見上げた窓にはそう書いてある。
もう、ずっと一人ぼっちかもしれない。
仲間をおいて、逃げ出したのだから。
なぜか笑ってしまった。
自分自身に冷笑した。
「何やってんだよ、バーロ。」
・・・え?
工藤君?
「どっどうしてここに居るって・・・」
「分かるさ。蘭が来てから、お前すごくおかしかったからさ。蘭が苦手なのは分かってたけど・・・そこまで嫌いかよ。」
「きっ嫌いじゃない・・・でも・・・ま、これはあなたには言えないわ。」
そう、嫌いではなかった。
身体が勝手に拒否反応を起こしてしまう。
もって生まれた場所が違うのだから。
「・・・なぁ光彦たちがいきなりクリスマス会やろうって言った理由、知ってるか?」
「え?」
「おめーのためだよ。最近元気なかった灰原に、クリスマスプレゼントとして祝ったんだ。」
知らなかった。気づかなかった。
そんなに私のことを心配してくれるなんて、思いもしなかった。
「だからプレゼント交換の時のプレゼントが、私好みの物ばかりだったのね・・・。」
「そういうこと。おめー最近心配しすぎじゃねーか?灰原は絶対一人じゃない。仲間がいるだろ?」
そうだ。
仲間がいる。信じられる人がいるのだから・・・・。
純粋で・・・逞しくなったわよね。少年探偵団。
「それと・・・」
「え?」
彼の手から出てきたのは、サンタの格好をした私の人形。
手のひらサイズの私の人形。
ずいぶん下手だが、心がこもっている感じがした。
輝いている・・・。
「おっ俺が作ったんだよ!ちょっと上手く出来なかったけど・・・そのおめーが喜ぶかと思って・・・。」
私の人形は明るい笑顔をしていた。
一生懸命、私のために作ってくれた彼を浮かべると顔がほてる。
本当に嬉しかった。
「あら・・・私の人形でも作って呪いでもするつもり?」
さすがにムッとしたのか、彼の顔が歪む。
「おめーこんなところで茶化したりするなよ。」
ふふっと笑ってみた。
本音を言う。
きっと初めてだ。
「でも・・・あなたが一番最初にくれたものだから・・・大切にする。ありがと・・・。」
彼の顔が一気に赤くなる。
照れてるんだ。
こんなこともあるのね。
「コナンくーん!哀ちゃん!」
毛利さんの声が響いてくる。
今度は振り向いていられた。
震えはもう無い。
逃げなくてもいい。
そう考えるだけで楽だった。
空には綺麗な星が輝いている。
聖なるキリストさんやニコラスさんにも感謝しなきゃね。
3人は雪振る空をずっと、眺めていた。
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