挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

87/835

槍の勇者と仲間達

「あ、ごしゅじんさまー!」

 本島の宿に戻ってきた所でフィーロが何故か魔物の姿で俺を出迎える。
 宿では人型でいろと言ったはずなのだが。

「じゃあね。言っとくけど馴れ馴れしくしないでよ」
「分かってる」

 女1はビッチ達と合流する為に別れた。

「何かあったのか?」
「えっとね。ラフタリアお姉ちゃんが怒ってるの」
「怒ってるって……」

 元康の奴、等々問題を起こしたな。
 そう思っていると元康本人が何か、頬をすぼめて放心して座っていた。
 なんだろう。心ここにあらずって感じだ。

「モトヤス様?」

 女1も元康を見つけてなんか唖然としている。
 ……状況が理解できん。どうしたんだ?

「フィーロ、何があったんだ?」
「ん~? フィーロわかんない」

 だよな。
 フィーロに聞いた俺が馬鹿だった。
 しょうがないので元康は女1に任せて、ラフタリアを探す。
 居た。後ろを向いているけどラフタリアだと分かる……のだが、遠めでも分かる位ラフタリアが怒っている。
 尻尾の毛が逆立って膨れ上がっていて、体から放出される魔力が空気を振動させている。

「た、ただいま」

 俺が声を掛けるとラフタリアは振り返り、怒気を四散させた。

「お待ちしていました!」

 今にも泣きそうな表情でラフタリアが俺に向って駆け寄る。

「な、何があったんだ?」

 強姦されたとかじゃないことを祈る。
 元康の反応から無いとは思うが、何があったのか全く見当が付かない。

「それが――」

 ラフタリアが事情を説明した。
 この先の出来事はラフタリアの視点で俺が話すとしよう。


「なにが始まるの?」

 俺が出て行った後、フィーロは不安そうにラフタリアに尋ねた。

「大丈夫ですよ。明日の夕方まで別の勇者様と一緒に魔物を倒しに行くだけですよ」
「ふーん。ごしゅじんさまとは?」
「もう少し先よ」

 と、フィーロに説明しつつ、ラフタリアは元康がやってくるのを、腕立てしながら待っていた。
 俺が普段。当たり前のように見ているから忘れがちだけど、ラフタリアは暇さえあると体を鍛えているんだよな。
 馬車の旅とかでも魔物の皮をなめすとかの作業をさせていない時は、腕立てや懸垂とかをしている。
 最近だと、腕力が上がった所為で片手の指一つでも腕立てが出来るようになってしまったらしい。
 こう言った肉体強化は地味にステータスに影響を及ぼす。僅かずつだけどステータスが伸びるのだ。

「お待たせー!」

 元康が花束片手に部屋に入ってきた。

「むにゃ……」

 そのとき、フィーロは昼寝をし。

「677……678……」

 ラフタリアは腕立て伏せに無心していた所だったらしい。
 パサッと元康はその光景に花束を落とした。
 ま、女の子が待つ部屋に入ったら、待っていないかのように寝ていて、腕立てなんかしていたら絶句するよな。

「えっと……」
「680……あ」

 ラフタリアは腕立てをやめて元康に顔を向けたそうだ。

「ようこそ。ほら、フィーロ起きなさい。来ましたよ」
「むー……フィーロ眠い」
「あ、ああ……」

 花束を拾いなおし、元康は部屋に入ってきたそうだ。

「明日までよろしくお願いしますね」
「よろしくー!」
「ああ、会った事はあるけど改めて自己紹介をしよう。俺は北村元康! 槍の勇者をしている。よろしく」
「ラフタリアです」
「フィーロ」

 元康はキザったらしくラフタリア達に花束を渡した。

「可愛い君達には花がよく似合う」
「はぁ……」

 花を受け取ったラフタリアだけど考えていたことは、何に使えるか、どれ位で売れるか、だったそうだ。
 女の子としてはアレだが、効率主義に育てた俺が悪いのか?
 尚、ラフタリアが花は薬になるでしょうか、と聞いて来た。
 芳香剤位にはなると思う。

「あんまり美味しくないね」

 フィーロは花を口に入れた。
 ま、フィーロは花より団子だよな。

「では早速Lv上げに行きましょうか?」
「その前に市場で買出しに行こう」
「そうですね」

 こうして元康と一緒にラフタリア達は市場へ向かった。


「ここの店……閉まってますね」
「おかしいなぁ。さっき見た時はアクセサリーが売っていたのに」

 元康の奴、見ようと思っていた店が閉まっていたらしい。
 というか、来るのが遅かったのは下見をしていたのが後に明らかになる。

「まあいっか、他にも色々と回ろうよ」
「あ、はい」

 こうして元康と一緒に様々な店に入っては物色を繰り返した。
 市場で数時間。
 しかも可愛い女の子が居ると話しかけ。

「えー! 槍の勇者様なんですかー!」
「ああそうだよ。君達、俺に聞きたい事はないかい?」

 ワザとらしく槍を見せ付けて勇者アピールをして話に花を咲かせていたそうだ。
 で、結果、女の子達が泊まっている宿の名前を一々メモしていた。
 ナンパだな。
 優しい男アピールをしていたんだろうが、ラフタリアの元康に対する評価は確実に低下中っぽい。
 そして、買い物……もうショッピングで良いだろう。
 ショッピングがやっと終わったと思ったら元康は市場を抜けて、船着場とは間逆の方向に歩き出した。

「あの……市場を抜けてしまいましたが」
「良いの良いの、見て回ろう」
「え? でも、今回はLv上げが……」
「所でフィーロちゃん。天使の姿になってくれないか?」
「や!」

 フィーロは宿から出ると魔物の姿で付いてきていた。
 その後、カルミラ本島の観光地を次々と巡り、夕日が出始めた頃になってやっと別の島に移動した。
 夕日の出ている海を小船で渡る最中。

「さっき店で良いものを見つけたんだ」

 貝殻で作られた観光土産をラフタリアに手渡した。

「あの……」
「気にしないで、ちょっとしたプレゼントさ」

 ちなみにフィーロは船の隣を魔物の姿で泳いでいたらしい。
 安易に想像できる状況だな。
 俺はその話を微妙な表情で聞いている。
 最初のビッチの暴挙を除けば、俺達は静かだったからな。フィーロがいなくてよかった。

「ほら、夕日が綺麗だろう」
「ええ、綺麗ですね」

 大海原の夕日というのはラフタリアにとっても綺麗だと思う景色だった。水生の魔物が夕日に重なるように海から飛び出し、ムードは若干あった。
 ぼんやりと夕日を見つめていると元康がラフタリアの手を握る。
 バッと拒絶するかの如く、ラフタリアは手を離した。
 元康は気にしないで良いよと言うかのように肩を竦ませた。
 ラフタリアはこの時、頭に青筋が浮かぶくらいにイラっとしたそうだ。
 一応、笑顔で対応したが、その後元康に手を握らせなかった。

 島に着いた後。
 夕日も落ちきってしまい。これから魔物を倒すとなると夜間戦闘だとラフタリアが準備をしていると元康の奴、颯爽と宿に入った。

「あの……」
「ん? どうしたんだい?」
「Lv上げに行かないのですか?」
「もう日が落ちてるじゃないか。そんな危険な状況で戦ったら危ないだろ」
「ま、まあ……ですが」
「さ、今日は宿でゆっくりと休んで食事を取ろう。晩御飯は俺が作るから楽しみにしていてくれ」

 市場で何か色々と買い込んでいたのは料理をするためだったのかとラフタリアは納得した。
 それまでラフタリアはヒール軟膏などの軽い薬を買い込んでいるのかと思っていた。

「ごはん?」
「そうだよフィーロちゃん。だから天使の姿に」
「や!」

 元康の奴、魔物の姿のフィーロに警戒していた。
 股間を何度も蹴っ飛ばしたからな。
 それから元康は宿の厨房で料理をする所を見せ付けるかのように二人を厨房の片隅で待たせた。
 ラフタリアは俺なら宿の料理を食べるだろうな、と考えていたらしい。
 まあ料理は野外じゃないとしないな。宿なら薬かアクセサリー。最近だと魔法の勉強だったな。

「俺って料理も出来るんだ」
「へ、へぇ……」

 じゅうじゅうと音を立てて、元康は沢山の料理をラフタリア達に披露した。
 ラフタリアは少しずつ元康の料理をついばみ、フィーロは豪快に食べた。

「ごしゅじんさまのより美味しくないね!」
「しっ! 槍の勇者様が気にするでしょ……」

 元康の奴が頬を引きつらせて笑みを浮かべたそうだ。

「そんなに、美味しそうに食べられたら作った方も嬉しいよ。所でフィーロちゃん、天使の姿に」
「やー!」

 どんだけ、天使好きなんだよ。
 それから別々の部屋に入る。その頃になってようやくフィーロは人型になっていた。
 まあ、宿の中限定でフィーロは人の姿になれと命令したが、理由は床が抜けるからだからなぁ。

「もう寝るのかい?」
「いえ……」

 寝る前にラフタリアは魔法の勉強とストレッチをする。

「わ! フィーロちゃん、天使の姿可愛いね」
「ちかづかないで!」

 フィーロの奴、元康の事嫌ってるなぁ。
 元康、何かフィーロに嫌われる様な事したか……している。
 以前、フィーロが成長途中の頃、大爆笑しながらダサイを連呼した。
 更にその後、デブ鳥と罵り、ブサイクとも言っていた。嫌われない方がおかしい。

「大丈夫、何もしないよ」
「ほんと?」
「ほんとほんと」
「むー……」

 疑いながらフィーロはベットに横になり、寝息を立てる。
 しかし頭のアホ毛は逆立っており、熟睡はしていなかったらしい。

「……」

 元康が無言でフィーロに近づく。

「……何をするつもりですか?」
「フィーロちゃんの寝顔を見るだけさ」

 元康の行動に不信感を抱きつつあるラフタリアは眉を寄せる。

「じゃあさ、フィーロちゃんが寝ている間に酒場で少し酒を飲まないかい?」
「は?」
「ああ、酒を飲んだことがないんだね。大丈夫、少しくらい嗜んだ方が大人の魅力があるよ」
「魅力……ですか」

 フッとラフタリアは魅力という言葉に釣られて元康と酒場に行ってしまった。
 酒場の席に座り、元康は酒を注文する。
 しばらくして酒が届いた。
 ラフタリアにとって初めての酒だ。赤い酒だったそうだ。
 元康がコップに酒を注ぐ。

「君の瞳に乾杯」
「……」

 キザったらしくウィンクをした所でラフタリアの中で何かがプツンと切れた。

「明日があるので帰りますね」

 酒を飲まず、怒りを押し殺し、笑顔で言うが、体内から放出する魔力でコップが微弱に振動する。

「え? あ――」

 そのまま宿に帰って部屋の鍵を掛けて寝たそうだ。


 で、翌朝。

「おはようございます」

 一応、昨日の事は忘れたつもりでラフタリアは元康へ挨拶に行った。

「あ、おはよう。ラフタリアちゃん。フィーロちゃんも」
「おはよー」

 若干眠そうにフィーロはあくびをしながら挨拶をする。
 それから軽めに宿の朝食を取り、やっと魔物退治へ出かけたのだという。
 だが……。

「君達の強さは分かったよ」

 魔物退治をして暫くした時だったという。
 あまり魔物も強くなく、奥へ行けば行くほど強くなるならもっと奥へ行きたいと思っていた所で元康が呼び止める。

「はい?」
「可愛い君達に血生臭くて汚いLv上げの戦いは似合わない。俺が戦っているから見ていてくれないか?」
「はぁ!?」

 現れた魔物を相手に元康が一人で戦うと告げて走り出す。
 ちなみにフィーロなら秒殺出来る程度の雑魚だったという。
 そりゃあ元康なら一撃レベルの雑魚だろうよ。

「流星槍!」

 確かに、元康は強かった。
 だけど何かあるとカッコを付け、色目を送り、汗を煌かせ、ウィンクをしてキザったらしく魔物を屠っていった。

「どうだい?」
「――――――っ!」

 ついにラフタリアは我慢の限界に達した。

「知りませんし、いい加減にしてください!」

 その後の事は頭が真っ白になっていて覚えてなく、気が付いたら元康が怯える子羊の様な瞳で震えていたという。
 湧き上がる怒りを押し殺しつつ、本島の宿に戻ったのが丁度、昼になる少し前くらいだったそうだ。

 ちなみにラフタリアとフィーロのLvは2しか上がらず、現在42だ。
 おいおい、俺は昨日今日で6Lv上がって44なんだが。
 なんで俺よりラフタリア達がLv低いんだよ……。

 元康……期待をしていなかったのにそれを下回るとかどういう事だよ。
 何か陰謀を感じる様な気もするが、話を聞く限りはそういうのは無いと思う。

 ともあれ、ラフタリアの中で槍の勇者は致命的に評価が下がったという。 
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ