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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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クズとビッチ

「ちょっと待て!」

 いきなりとんでもない発言が飛び出したぞ。
 複数の国が勇者を呼ぶ? 順番がある?
 言葉の意味だけだと、この国、とんでもない事を仕出かしているぞ。

「詳しく説明しろ」
「ええ」

 女王の話はこうだ。
 世界中で波による被害が報告され、各国の王が集まって会議をすることになった。
 もちろん、メルロマルクとシルトヴェルトの様な犬猿の中にある国もあるが、今は予言が真実であり、世界が終焉へと向っているという問題を解決しなければいけない。争うのはその後で良いだろうと概ね話は決まった。
 その会議によって決定したのが、メルロマルク国は4番目に勇者召喚を行うと言うもの。

 ちなみに勇者召喚で出てくる勇者は統計一人らしい。多くの場合呼んでも出てこない。
 もちろん、召還された勇者は他の国へ出向することになる取り決めらしい。

「で、それがなんでこの国が呼んでしまったんだ?」
「勇者召喚には聖遺物の破片を使って行うのが通例で、定められた時間に定められた儀式によって呼び出されるのですが……」

 三勇教が勝手に女王が留守にしている間に独断専行で四聖勇者の召喚を行ってしまったのだという。

「昔からこの国の宗教として根付いており、私の知る限りでは三勇教会は比較的に保守的な組織でした。ですから見逃していたのですが、予想外に大きな策を取ってきました」
「それって相当な問題なんじゃないか?」

 世界を救う勇者を一箇所で呼んでしまったとか。

「ええ……ですからこの国に非難が大量に舞い込みましたよ。それの処理を行うのが一つ目の問題です」
「というかこんな戦争を起こしかねない奴に国を任すとか何考えているんだ」

 其処が大きな問題だろう。任せる相手が悪すぎる。

「こんなとは何じゃ!」
「黙らっしゃい!」

 女王の一喝でクズが黙る。

「そこにも大きな問題があったのですよ。波が起こる前も私は外交をし、内政が優秀で、右腕にしていた者に国を任せていたのですが」
「ですが?」
「波で亡くなってしまいまして……あの者は亜人からの人望も厚かったのですが……」

 運の悪い事で……残ったのはクズとか、役に立たない奴等ばかりだった訳か。
 ……さすがに無能ばかりというのは不自然だ。
 今までのポストに置かれた新たな人材には実績が無かったとか、憶測の範囲だとこんなもんだな。
 最悪、そいつより強い権力を持ったクズが黙らせたとか、そんな所だろう。

「その事実が私の所に舞い込んだのが勇者召喚を行ったという事実と一緒という始末!」

 女王はクズの頬を平手打ちする。

「ふぐう――」

 ああ、メッチャ怒っているのは数々の問題で国に帰る事が叶わなかった所為なのね。

「後任の頼れるものは愚かにもこのダメな夫が左遷させる始末! 他にも謎の変死とふざけた事件が続きましてね。犯人は三勇教会でしたが!」
「ぐふ!」
「しかも勇者を旅出させた翌日に、よりによって盾の勇者が犯罪疑惑! 陰謀を疑いなさい!」
「ぐは!」
「さらには盾の勇者を差別していると言う事実! その所為で何度戦争になりかけたのか理解なさい!」
「げほ!」
「そして第二の波の終結時、せっかく暗部に頼んで斡旋させた盾の勇者の奴隷を没収しようとはどういう了見です!」

 は!?
 今なんて言った。

「ちょっと待て、ラフタリアはお前等が斡旋させたのか?」
「それは後で説明しましょう。今はコイツの処分です」

 うわぁ……切れてるな。

「アナタの独断専行で国の貴族は王権を奪おうと画策する事件が起こるわ。シルトヴェルト、シルドフリーデンでは暴動が起こって戦争ムードになるわ!」

 なんか……女王に同情してきた。
 頼れる奴がどれも死んだり居なくなったりで、孤軍奮闘で国を守ったと。
 すげぇ。どんな話術を持ったらそんな真似できるんだ?
 タダのヒステリーで夫を殴ってる20代前半の女性にしか見えないのに。
 というか……ビッチとメルティの母親なんだよな。若作りだな。

「挙句の果てにメルティに会いたいとはどんな我がままですか! 私も我慢の限界です。ですから罠を仕掛けさせてもらいました!」
「な、なんじゃと!」
「あんなあからさまにアナタが要求するという事は近くに居る者に唆されたのでしょう? 万が一に備えて護衛を大量に派遣させました! それが今回の事件の始まりにして顛末です!」

 女王は激情しながら宣言する。

「三勇教は邪教と認定! メルロマルクは四聖教を国教とします!」
「な、なんじゃと!? 建国以来の伝統を放棄するのか!」
「問題ばかり起こす邪教に存在価値はありません!」

 四聖教?

「ってなんだ?」
「四聖勇者を平等に信仰している宗教よ」

 メルティが説明する。
 まあ普通に考えて世界を救う四勇者の伝説がある国が沢山あるんだから、あるよな。

「元々三勇教は四聖教から分離した過激派だったのだけど……続きはこの国の始まりから説明しなきゃいけなくなるわ」
「へー……」

 シルトヴェルトに盾の宗教があるのなら、別の国では四つの武器全部を信仰している方が自然だ。
 つまりメルロマルクは、昔から争っているシルトヴェルトの信仰する盾の勇者が嫌いと。
 それこそ敵の国が信仰している物は悪魔、アイツの宗教は邪教、自分達の宗教は正しい宗教ってな具合で三勇教会が生まれた感じか。
 となると、王族は穏健派とかそんなんだったのか?

「ふう……」

 一頻りクズを罵り、平手打ちをしてすっきりしたのか女王は扇で口元を隠して俺の方に振り返る。

「他にもいろいろと……ありますが、後でイワタニ様に教えましょう」
「いや……そんな武勇伝聞きたくない」
「聞いてもらわねばいけませんよ。イワタニ様が起こした問題も多々ありますので」

 う……なんだろう。聞いてはならない気がする。
 正直、良いとは言えない行いを俺は沢山やって来た。
 もちろん、反省していないし、するつもりもないが。

「例えば買取商へ魔物を嗾けた事件とか」
「ふん……」
「酒場で騒ぎを起こした事件とか」

 心当たりがありすぎる。

「それを夫の耳に入る前にもみ消したのは、誰でしょうね」
「俺も説教するのか? 残念だがコイツ等の様にはいかないぞ」
「まさか……聞いてもらいたいだけですよ」
「なんと言われようとも俺は自分のやったことを悪いとは思っていない」
「でしょうね。あちらにも落ち度があるので黙らせる事が他国に居るのに楽に出来ました。問題はそこじゃないのです」
「ふむ……」
「とりあえず、まだしなくていけない罰が山ほどあるという事です」

 クズとビッチの奴、真っ青だ。
 年貢の納め時とはこの事だな。

「不満ですか?」
「あ、当たり前じゃ!」
「そうよ! ママ! 私は悪くない!」
「……親子の縁は先ほど切りましたよ? 文字通り勘当です。何処へなりとも……いえ、国への罰金を払いなさい」

 衝動で追い出しそうになった女王は言葉を途中で止める。
 そして金額の書かれた紙をビッチに手渡す。するとビッチの奴、先ほどよりも更に青くさせた。
 ビッチでアバズレな分際で金遣いまで荒いのかよ。

「こんな金額、払えるわけ無いじゃない!」
「アナタが何かあるとギルドで要求した金銭の代金です。勝手に国庫から引き出して……逃げられるとは思わない事です。アナタはこれから奴隷の様に国へ奉仕するのですよ……」
「無理よ!」
「嫌なら勇者と共に世界を救って見なさい。ちゃんと活躍したら考えてあげましょう」

 女王はビッチを黙らせると、今度はクズの方を見て。

「何他人のような顔をしているのですか! アナタもですよ、オルトクレイ」

 ビクリとクズも仰け反る。
 本当、コイツは女王に頭が上がらないんだな。
 ならもっと上手に立ち回れよ。

「国の将として波の最前線で戦うか、冒険者業に身を落とすか選びなさい」
「く……妻よ、女王よ。ワシは騙されておっただけじゃ。どうか慈悲を」
「そうよ。ママ、猶予を頂戴」
「与える慈悲も猶予も過ぎました。……ああ、良い方法がありますね」

 女王は俺を手招きする。
 待ってましたと言わんばかりに俺は前へ出た。

「イワタニ様、この二人にどんな罰を与えましょうか? アナタにはその権利があります」
「死ね! 死刑だ」

 ほぼ脊髄反射で口から出た。無意識下でも嫌悪しているんだな、やっぱり。
 正直、殺す以外の選択肢が存在しない。
 お前等への恨みは死以外では解消されないんだ。

「ぐぬ! 貴様――」
「ふざけるんじゃないわよ――」

 女王が片手を上げて二人を黙らせる。

「本当に……殺す事で満足できますか?」

 女王の包む魔力の流れが怪しく俺に流れ込む。
 背筋が凍りつくとはこの事だ。禍々しいとは……こういう相手に言うのだと本能的に悟る。

「殺すのは前提ですよ。ですが存分に苦しめて、達成させ、解放された笑みを浮かべた瞬間に殺すと言うものを一興ですよ」
「お前……いや、話を続けろ」
「殺すのは生ぬるいと言っているのです。もしも役に立ったのなら犬を可愛がるように頭を撫で、飼い殺すと言うのも……楽しめますよ」

 身内であろうとも情は入れないとは……この国の深遠はもしかしたら女王にあるのかもしれない。

「というのは私からの最後の情だと思ってください」
「ああ……そういう事ね」

 つまり、殺すのはどうか勘弁して欲しい。それ以外はどんな事でも叶えると。

「三勇教会の不祥事に続いて、女王の強権によって元、とはいえ王家の者を安易に処刑にすれば、諸外国からの評価にも繋がります」
「世界を困らせた無能二人を磔にする方が外国に示しが付くんじゃないか?」
「盾ぇえええ……貴様ああぁぁ……!」

 唸っているクズを無視して女王は告げる。

「通常であればその通りでしょう。ですが、事オルトクレイには当てはまりません」
「何故だ?」
「この愚か者も昔は凄かったのです、昔は。……今や老害でしかありませんが、国外にも名が知れ渡ってしまっているので、殺すに殺せないという始末……」

 このクズが何をしたかは知らないが、概ね理解できた。
 知名度があり過ぎるんだ。
 そもそも、今まで王配にしては随分と権力を持ち過ぎていると思っていたんだ。
 過去に一派閥作れる程の実績があったのか。関係各所が黙っていないとか言っていたからな。

 そんな過去の栄光を奪われ、汚され、それでも生かされるこの男を上から眺めるのも面白いかもしれない。

「わかった。お前の案に乗ろう」
「ありがとうございます」
「ただし、この二人に生き地獄を味合わせろ。これは最低条件だ」
「ええ、もちろん……では、手始めに最初はどの様な罰がよろしいですか?」

 そうだな……殺しさえしなければ良いんだよな。

「手足をもぐという手もあるが……」

 ラフタリアが詰問するような目で見ている。
 確かにそれを出来るだけの権利も被害もあっているが、やりすぎだと思っているのだろう。
 ……どうするかなぁ。引くに引けなくなった。
 かと言って今を逃せば、やっと回ってきたチャンスを棒に振ってしまう。

「……ナオフミ様」

 ビッチが涙ぐみながら両手を合わせて懇願してくる。
 すげぇ演技入ってる。本質を知らない奴だったら絶対騙されるな。
 というかこの顔で元康に迫ったんだろうなぁ。
 つーか、初めてコイツに名前で呼ばれたんだが……。

「どうか復讐なんて馬鹿な真似はおやめください。復讐は復讐を生むだけです。ここでナオフミ様が我慢すれば良いだけの事なのです。出来れば、女王にもっと温情を」

 ……
 …………
 ………………
 ……………………ッフ。

「そうだな……」




 その日、メルロマルク国中に伝達兵が馬やフィロリアル、騎竜を走らせ、余す事無く村や町に巡ってこう告げた。

「此度の事件の責任を取り、メルロマルク国王オルトクレイと王女マルティは永遠に名をクズとビッチに改められた! 誤った名を口にする者は如何なる理由があろうとも厳罰に処する!」

 そうして急遽、看板が各地の都市、街、町、村に立てかけられ、文字でも同様の内容が記載されている。
 この状況に人々は身分や立場に関係無く、揃って同じ言葉を口にした。

「「「は!?」」」
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