挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

71/835

複製品

「さて、では試し撃ちはこれくらいにして本気で行かせて貰いましょう」

 教皇は剣を前に向ける。
 すると形状が槍に変わった。形状こそ変わったが、何とも豪華な作りは変わらない。
 同じ人物の作った武器だと言えば頷ける。

「変化するのか!?」
「ええ、伝説の武器ですからねぇ。剣、槍、弓……どれで浄化してしまいましょうかね」

 三勇教の神具か……?
 伝承を信じている過去の三勇教が総力を掛けて作り上げた武器が盾の勇者である俺に牙を向く。
 そんな構図だ。
 逃げても良いが……あんな武器を振り回す奴を相手に逃げ切れるか?
 現にあの衝撃波は避ける余裕が無い程の速度で俺に到達した。
 手加減していたっぽいし、本気で……弓のスキルとかを放たれたらフィーロでも避けて逃げ切るのは無理かもしれない。

「教徒たちの力も限度がありますからねぇ。一撃で沈めさせて貰いましょう」

 教皇は応援する教徒と騎士達の期待を一心に背負い。
 武器を俺達に向ける。
 槍の形状をした複製品が光り輝き、三又の光の槍を作り出す。

「……上級スキル、ブリューナク!?」

 槍の勇者である元康が叫ぶ。
 おそらく、元康がやっていたゲームのスキル名だ。
 という事は相当上位のスキルみたいだな。
 普通に振りかぶって大ダメージ。スキルなんて受けたら死ぬかも……。
 逃げるのは不可能、耐えるのも……元康や他の勇者の理屈だと盾では無理。
 八方塞とはこの事か。
 だが、諦めるつもりは無い。

「フィーロ!」
「うん!」

 俺の意図を完全に掴んだフィーロは俺を掴んで教皇の方へ思いっきり投げ飛ばす。
 教皇が俺のスキルの範囲に入った瞬間。俺は大きくスキルを唱えた。

「シールドプリズン!」

 教皇を囲むように盾の檻が出現する。
 後はチェンジシールド(攻)をしてから必殺のアイアンメイデンを使えば――。

「……なんの真似ですかな?」

 奴は構えを解く必要すらなく、スキルの余波だけでプリズンが破壊された。
 馬鹿な!?
 いや、それよりも冷静に考えろ。
 アイアンメイデンを発動させることは叶わない。ともすれば俺の攻撃手段は一つしかない。
 セルフカースバーニングで焼き払う。
 だけど行うには接近戦に持ち込んであの槍の攻撃を……。
 いや、そうじゃない。

「フィーロ、元康を俺に投げつけろ!」
「え!?」
「うん!」

 俺の指示通りにフィーロは元康を、まだ着地していない俺に向って投げつける。

「どわぁああああああああああああ!」

 俺は飛んでくる元康に向って叫ぶ。

「俺に攻撃しろ元康!」
「あああ!? なるほど、分かったぞ!」

 元康の奴、何だかんだで頭の回転が速いな。
 振り向いた俺に元康は槍を伸ばす。
 ガツンと音を立てて、盾に元康の槍が当たった。
 そうだ。
 それで良い。

「流星槍!」

 ついでに元康が教皇に向けてスキルを放つ。

「愚かな」

 しかし、元康の流星槍は教皇が纏う謎の結界のようなモノによって阻まれた。

「何!?」
「今度はコッチだ!」

 セルフカースバーニングが俺を中心に巻き起こり、元康もろとも教皇に呪いの炎が広がって行く。
 教皇を守っていた結界が消し飛び、炎は――

「無駄です!」

 教皇に従う教徒たちが一斉に何かを歌い始める。

『『『力の根源たる私達の神が命ずる。真理を今一度読み解き、奇跡として呪いを浄化してください』』』
「高等集団浄化魔法『聖域』!」

 辺りが純白の光に染まり、俺の放ったセルフカースバーニングが一瞬で取り払われた。
 馬鹿な!?
 確かに相性的には神聖な力に呪いの力が相反するのは分かっている。
 もしかしたら俺が買った聖水は目利きを誤魔化すほどの品を渡されたのか? 十分にありうる。
 だけどこの呪いは完治させるのに高い聖水が必要だったんだぞ。
 それを一瞬で……。

「エアストシールド! セカンドシールド!」

 教皇に届く前に足場として盾を呼び出し、元康と一緒に後ずさる。
 見ると元康を焦がしていた呪いも一緒に浄化されてしまっている。
 利用しない手はない。

「おい。元康の仲間、早く回復魔法を掛けてやれ」
「は、はい! ツヴァイト・ヒール!」

 元康の傷が大分治る。
 これで多少は役に立つだろう。
 まったく、何が悲しくて元康と共闘しなくちゃいけないんだ。

「さて、茶番はこれくらいにしてもらいましょうか。そろそろ発動できそうなのでね」

 教皇の持つ槍の先がスパークし、スキルの発動が可能になった事を告げる。

「ではこれまでです。さようなら悪魔と偽者たち」

 一際、槍が輝き、俺達に向けて教皇は微笑む。まるで悪魔祓いを完了したかのような態度で。

「メルちゃん!」

 フィーロは咄嗟にメルティを庇い。ラフタリアは俺の手を握る。

「これまでか……」

 元康に至っては諦めたかのように呟き。

「わ、私はこの国の女王になるのよ。こんな無礼をして――」

 ビッチは死を前に喚き散らしている。
 元康の配下達はそれぞれ冷静を失って失って泣き喚いていた。
 あれに耐えられる可能性が万が一にもあるのは俺だけか……。
 一か八か、俺が前に出て耐えるしかない。

 もちろんコイツ等を守る為なんかじゃない。
 ラフタリアを、フィーロを、メルティを、俺を信じてくれた奴等を守る為だ。
 盾を構えて前に出る。

「お供します」

 ラフタリアは前に出た俺に付き従い。手を添える。
 今まで良く付いて来てくれた。
 知らなかったとはいえ、盾の悪魔なんぞの奴隷として買われ、無理矢理戦いの世界へ巻き込んだ。
 もちろん今だって、その事への罪悪感は無い。
 それでも、今日までの日々、俺を信じてくれた。

「すまない……こんな所に連れて来てしまって……」
「いえ、ナオフミ様なら全てを守れると私は信じています」
「……そうだな。前の槍の勇者がどうだったかは知らないが、槍の勇者の技だからな」

 まだだ。まだこんな所では終われない。
 やっと全ての黒幕、そして反撃の機会が目の前に見えてきたんだ。
 ブリューナク……ケルト神話だかなんだか知らないが、防いでみせる。

 教皇が槍を天に掲げ――


「ハンドレッドソード!」
「流星弓!」

 突如上空から大量の剣と一筋の矢が教皇に向けて降り注いだ。

「何だ!?」

 教皇の奴、結界が俺によって壊されているのでスキルを中断して槍のスキル、大風車だったかを放って迎撃した。
 声の方向に視線を向ける。そこには――

「おや? 貴方達は神の裁きによって浄化されたはず、何故居るのですかな?」

 錬一行と樹一行が立っていた。

「勝手に殺してもらっては困るな。俺達の死体を確認したか?」
「危機一髪でしたね。どうにか間に合いました」

 臨戦態勢で錬と樹は俺たちに声を掛ける。

「まあ、あんな魔法を放ったら死体なんて確認する気は起きないだろうが、それが命取りだったな」

 俺は最初の攻撃の跡地を見る。
 確かにこんなクレーターができるような攻撃では死体なんて見つかる可能性の方が低い。
 跡形も残らないとも思える。
 俺は耐え切ったけど。
 と、錬を見ているとズシリと体が重くなったように感じる。
 盾が憎むべき敵を見つけたかのように騒ぎ立てる。
 竜の憤怒が錬に向けて怒りを発生させているのだろう。
 耐えろ……今は暴れるべきじゃない。

「お前等、どうやって……」

 元康が死人でも見る様な目で錬と樹に語りかける。
 元康の疑問とは違うが、確かに都合良く、こんな僻地に勇者全員がそろっているのはおかしいな。
 少なくとも俺はシルトヴェルトの間逆である南西の村にいるはずなんだが。

「影とか言う集団に助けられてな」
「ええ、危機一髪でした」
「え? 影って俺達に尚文の居場所を教えてくれた奴等だろ? 教会側のはずだぞ」

 妙に俺達の逃走経路を察知して先回りされていると思ったら、やっぱりそんな所か。
 つまり元康達が俺の居場所を特定できたのも、三勇教派の影から教わっていたという事か。
 何故なら俺達は逃亡中に一度、影と遭遇している。
 そういえば……。

「……影も一枚岩じゃないとか言っていたな」
「ええ、僕達を助けてくれた影達は女王の命だと言っていました」

 なるほど、影の奴等も協力してくれているという事か。
 だとすると錬と樹を助けたのは女王派の影か。
 となると女王は教皇とは敵対関係にいると見て良いんだろうか。
 少なくとも四人の勇者全員が三勇教会と敵対関係にいる今、女王が教皇と組んでいる可能性は低くなってきた。

 しかし……コイツ等、登場が昔の週間マンガみたいだな。
 出てくるタイミングを狙っていたんじゃないかと疑いたくなるぞ。
 元康に至っては主人公面してやがる。
 となると俺は、ポジション的に宿敵キャラ……? 冗談じゃない。
 良く扱っても誤解を受けている、実は仲間キャラって所か。マンガ的に。
 残念だが、元康の仲間になるつもりは微塵も無いんだが……。

「もうすぐ討伐隊が到着する! 神妙にお縄に付け!」

 錬が勝利宣言をするかのように言い放った。
 しかし、教皇の奴、微塵も焦りを見せない。

「何人来ようと私達の勝利は揺るぎませんよ。今ならどんな軍隊が来ようと数など無意味!」

 またも教皇はスキルを放つ体勢に入る。

「どうかな?」
「ええ」

 二人の勇者一行は教皇に向けて駆け出し、各々のスキルを放つ。

「流星剣!」
「流星弓!」

 光の剣閃と矢が一斉に教皇へと降り注ぎ――
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ