挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

608/835

魔王の研究

「え!? また僕ですか!?」

 樹が呆れ返ったかの様に、驚いておりますぞ。
 確かそうですな。
 フィロリアル様の話を聞くとそうですぞ。

「赤豚と燻製が黒幕となり、樹を研究の素体にして計画を実行したのだとか聞きました」
「……またあの王女か」
「なんなんですか、あの人は!? ラスボスか何かですか!」
「というか燻製って誰だ」
「最終的に樹の仲間になる、あの派手な鎧を着ていた奴ですぞ」
「ああ、俺の仲間だったアイツか。しかし何故燻製……?」

 ついにその話をする時が来ましたな。
 奴の哀れな最後を語るとしましょう。

「燻製は処刑される時、燻製になったから燻製なのですぞ」
「「「……」」」

 お義父さん達が絶句しています。
 おかしいですな。ここは笑う所だと思うのですが。

「わ、訳がわからん」
「そうですね。というかわかりたくないです」
「説明が下手なのが唯一の救いだね……」

 などと青い顔で話し合っています。
 エクレアは誰の事かわかった様で、遠い目をしてますな。
 なんだかんだで騎士仲間という事でしょう。
 やがてお義父さんが誤魔化す様に言いました。

「えっと……というか、ちょっと待って。話が脱線気味だから戻すけど……」

 お義父さんが額に指をあてて考えておりますぞ。

「もしかしてその魔王って……元々勇者なんじゃないの? 呪いの武器とかで暴れた」
「なるほど、その責任として他の勇者が召喚されたと」
「僕はそんな事をしませんよ」
「最初の世界は相当厄介な状況だったらしいからな。樹も道を踏み外したんだろう」
「ちなみに操られた人はどんな感じだったの?」

 俺は記憶を紐解いて、あの時の事を思い出しますぞ。
 メルロマルクの城下町で、城門を破壊しようと躍起になっている連中でしたな。

「正義正義と連呼しながら、他者の悪い所を指摘し続けて襲ってました。自分の事は棚に上げているように見えましたな」
「凄くウザイ連中だな……」
「海外とかの略奪テロみたいな感じだったのかな?」
「話通り洗脳能力のある武器の可能性が高いな」
「それの主犯というか、利用されていたのが僕ですか……完全に僕が魔王じゃないですか」
「最終的にどうやって解決したの?」
「城下町で暴れている者達は俺が仕留め、お義父さん達が黒幕と樹を倒して一緒に捕まえたそうですぞ」
「……僕は処刑されそうですね」
「利用されていただけなのと、呪いの代償でボーっとしてる樹が村におりましたな。その後は普通にお義父さんの配下として働いていたと思いますぞ」

 間違いないですな。
 いつもボーッとしていてストーカー豚が一緒におりました。
 樹は首を傾げておりますな。

「自分で言うのもなんですが、処分が甘いですね……」
「そう、だね。何か理由があったんじゃないかな? 元康くん、何か知ってる?」
「良く覚えておりませんな」

 何か理由があったのは俺も覚えがあるのですが、お義父さん達は俺に碌に教えてくださいませんでした。
 俺も、そんな事よりも世界平和の為に誠心誠意戦う事を誓っていたので、意味を見いだせなかったのですぞ。
 実際その事件以降、俺はフィロリアル様とLv上げなどをしていただけですからな。
 ああ、その前に赤豚をフォーブレイに送りつけましたな。

「ふむ……元康がループする条件となっている、俺達が死ぬことに関わり合いがあるんじゃないか?」
「と言うと?」
「四聖勇者が死ぬと未来の尚文達にとって都合の悪い事がある、とかだな」
「どちらにしても未来の僕は運良く事無きを得たと言う事ですね」
「尚文の監視付きで処分を許されたと見て良いだろう」

 と言う話をしているとエクレアは頷きました。

「なるほど、もしその話が事実なら三勇教に壊滅的な打撃を与えられるかも知れん。キタムラ殿は未来のカワスミ殿が捕えられていた施設を知っているか?」
「それは覚えていますぞ。お義父さんの命令でフィロリアル様が物資の徴収に行った場所ですからな。もちろん俺も同行していました」

 何やら研究機材や抱え込んだ資源を没収した時に行きましたな。
 こう……隠された砦のような場所でした。
 まあそこまで詳しくは知りません。
 お義父さんの命令で、すぐに赤豚をフォーブレイに連行する事になったので。

「過去の……よりにもよって魔王の研究をしていたとなれば決定的な証拠となる。女王に話せば上手く立ち回って頂けるだろう」
「その女王が協力してくれるか怪しいがな」

 という言葉と共に辺りの空気が重くなりましたぞ。
 外ではユキちゃん達の楽しげな声とは完全に逆ですな。

「結果的に僕達が夫と娘を虐殺してしまいましたからね」
「い、いや! 諦めてはならん! 女王は聡明な方。非はオルトクレイ王とマルティ王女にある事は理解してくださるはずだ。せめてこの情報によって三勇教こそが黒幕であり、メルロマルクも被害者であると立ちまわってくださる筈だ」

 何やらエクレアが信じ込むように言いましたぞ。
 まあ、あの女王の事ですから上手く立ち回るのでは無いですかな?
 なーに、例え発狂して襲ってきても、返り討ちですぞ。

「どちらにしても、シルトヴェルトから出る事を優先した方が良いね」
「尚文さんの言う通りにこの世界の常識、何が正しくて何が悪いのか、利用されない為に世界を見ることで見極めるしかないんですね」
「被害者を主張する連中が隣国の侵攻を退かせてほしいとか言ってくるかもしれないしね」
「そうだな。幸いにして今の私達は一冒険者……という扱いで済んでいる。出来る限り穏便に行動して、勇者である事は隠す様にしたい」
「武器を人の目の前で変化させたり、素材を武器に入れるとかはしない様にしないとね」
「思いっきりシルトヴェルトの城下町でやってましたよね。僕達」
「気を付けるべきだな」

 などと話をしながら俺達はシルトヴェルトの国境へと辿り着いたのですぞ。
 前々回とは完全に逆の道のりですな。


 国境は思ったよりもアッサリと通り過ぎる事が出来ましたな。
 お義父さんが国境沿いの町で知り合った冒険者の方を相乗りさせる事で、容易く通過出来ましたぞ。
 いえ、正確には冒険者を装った協力者と言うべきですかな?
 お義父さんやエクレアはわかっていた様ですぞ。

「シルトヴェルトから出る事は出来たな」
「最悪、馬車を乗り捨てて元康くんに国境を強引に越えてもらえばどうにかなるしね。姿を隠してポータルを使って全員で転移って奴」
「何処かで通行証を発行してもらうべきだな。幸いにしてもうシルトヴェルトでは無い。フォーブレイの使者を探してもらい受けると良い」
「そういえば、色んな国が使者を派遣させているみたいだけどフォーブレイの使者は来て無いね」
「腰の重い国でもあるのだ。時期的にはそろそろ来るかも知れん。最悪、ギルドの方に連絡をすれば即日発行をしてくれるだろう」
「あー……尚文さんの案である元康さんに任せて密入国をするかと思っていました」
「むしろ使者を待って待機するかと思った所をイワタニ殿のお陰で、すんなり進めて助かった」
「あっちも俺達に声を掛けたかったみたいだからね。話だけでもと思って聞いたら何をさせたいのかわかってね」

 さすがお義父さんですな。
 どんどんこの世界の事情に詳しくなっているようですぞ。

「さすがにシルトヴェルト内では許可を出すのは難しかったんだと思うよ。あの冒険者の人もギルドで発行してもらってくれと言ってたからね」

 様々な者達の思惑が渦巻いているのですぞ。
 とりあえず、俺はこの事を記憶しておきましょう。
 次の周回があるとしたら冒険開始のその日に他国へ行ける通行証を受け取りに行きましょう。
 槍を見せればどうにかなるでしょうからな。

 次など考えない様にすべきなのですが、念には念を、ですぞ。
 そんなこんなで迂回路である小国を俺達は順調に進んで行っております。


 ギルドで勇者を名乗ると通行証を即日発行してもらえましたな。
 一応、俺達の顔は知られていると見て良いのですかな?

「そういえば波とかを警戒しなくて良いのか?」
「確か一ヶ月後に来るんでしたっけ?」

 すっかり忘れ気味の波に関する問題ですな。
 当然ながら俺達も最終的には参加しなくてはいけません。

「世界中に砂時計がありますからな。場所によっては起こっているでしょうな」
「大丈夫なのか?」
「そこは七星勇者やフィロリアル様達がフォローしてくださっているとかなんとか」

 もちろん最初の世界で聞いた話です。
 大きなフィロリアル様が密かに波と戦っているのですぞ。

「四聖勇者である俺達は、まずフォーブレイへ行って正しく使命を受けなきゃいけない訳か……」
「ですね。不正な方法で呼び出されてしまったのですから僕達を正しく運用出来る国へ行くべき、なんですね」
「大国らしいし、なんか元康くんの話じゃ結構黒い所はあっても、諸外国の関係で抱え込んで悪事を働かせるとかはしない……のかな?」
「その点に関しては前回のお義父さんに聞いておりますぞ。上手く立ちまわれば無意味に利用される事は無いそうですな」
「そうか」
「エクレールさんは何か知ってる?」
「フォーブレイか? あの国は代々召喚された勇者を血族に取り入れた、言わばこの世界の代表と言うべき国だ」

 エクレアはフォーブレイの歴史に関して説明し始めました。
 俺も行った事はありますが、舗装された道がありましたな。
 なんと言いますか。
 ゲーム時代でも割と発展した国という覚えのある国ですぞ。

「技術の最先端を行く国でな。それでいて勇者達への信仰も深い。間違っても三勇教のような特定の勇者を差別する様な事は無い」
「錬も樹もゲームで覚えている国では無いですかな?」
「ゲーム知識を引き出しても良いのか?」
「概ね間違いは無いので、安心して良いですぞ」
「じゃあずいぶんと発展した国なんだな。信用は出来そうだ」
「クエストとかじゃ政治争いに巻き込まれるとかありますけどね」
「ああ、確かにな」
「その辺りはしょうがないんじゃない? ユーザーを楽しませないといけない訳だし」

 錬と樹はゲームだった頃のフォーブレイに関して再確認しておりますぞ。
 懐かしいですな。
 俺も当事はネットゲームにハマっていたので、楽しい記憶が思い出されます。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ