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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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悪魔の所業

 数日後。
 昼間は普通のフィロリアルの姿をしたフィーロに荷車を引かせて街道を進み、村や町は避けて北東を目指す。
 夜は野宿というのを繰り返していた。
 そんな、国境までもう少しという所だった。

「グエエエ!」

 フィーロがけたたましく鳴いた。
 敵か!?
 俺と第二王女は藁の中に隠れながら様子を見る。

「へへへ、有り金を置いて行け」

 聞き覚えのある声。
 見ると前にアクセサリー商を乗せた時、ボコボコにした盗賊連中だった。
 なんだ……コイツ等か。
 藁しか乗せていない荷車を襲うって……何を考えているんだ?

「おら! 早く金目の物を寄越せって言ってんだよ! お? コイツ、意外とじょうだ――」

 変装しているラフタリアの顔を見ていた盗賊の顔色が見る見る青くなっていく。

「相変わらずだな、お前等」

 隠れる必要も無いだろ。俺は藁から出て荷車から飛び降りる。
 変装する必要が無いと察知したフィーロはフィロリアル・クイーンの姿に戻った。

「戦うの?」

 第二王女が心配そうに藁の中から尋ねてくる。

「ああ、多分な。大丈夫だ」
「なんだ? どうしたんだお前等?」

 盗賊の仲間に俺達と戦ったときには居なかった連中が三分の二ほど混じっていて、仲間の盗賊の顔色が青い事のに首を傾げている。

「う、う、うろたえるな。こ、こいつは今じゃ賞金首だ。た、倒せばえい、ゆうだ」

 声が裏返り、ガクガクと震えながら先頭にいた盗賊は言い放つ。
 めっちゃドモってるぞ。

「もう復活したのか? 全財産没収したのに、復活早いな」

 俺の返答に首を傾げていた盗賊仲間も臨戦態勢に入る。

「う、うるさい! お前の所為で、今じゃ対抗勢力だった盗賊団の下っ端だよ!」
「ああ、盗賊団が吸収合併したのか」
「親方は田舎に帰っちまった!」
「よかったな。こんな職種から足を洗えたようで」
「う、うるせえ! やっちまうぞお前等!」

 各々が武器を出して俺達の方へ突撃してくる。

「フィーロ! ラフタリア!」
「はい!」
「はーい!」

 俺は第二王女を守るように後方に構える。
 フィーロもラフタリアも盗賊程度に遅れを取るような奴じゃない。

「喰らえ!」

 フィーロに向けて剣を振りかぶる盗賊。

「フィーロちゃん!」

 藁を掻き分けて第二王女が飛び出し、両手を前に出して詠唱を始める。
 は? 第二王女も戦えるのか?

『力の根源足るわたしが命ずる。理を今一度読み解き、彼の者等に水の塊を射出せよ!』
「アル・ツヴァイト・アクアショット!」

 は?
 第二王女の両手から大きな水の塊が高速で複数飛び出し、盗賊たちを吹き飛ばした。
 ツヴァイト。確か中級系列の魔法に入る形容詞だ。で、アルは複数系。

「うげ!」
「がは!」
「うぐ!」

 フィーロの近くに居た盗賊たちが吹き飛ばされる。
 威力はかなりの物だ。

『力の根源足るわたしが命ずる。理を今一度読み解き、彼の者を水の刃の如き一撃で切断せよ!』
「ツヴァイト・アクアスラッシュ!」

 そして即座に第二王女は次の魔法を唱えた。
 第二王女の両手の先に生み出された魔法の水の玉から一閃の水の刃が盗賊たちの間を通り過ぎる。
 なんか、シュンとか良い音がした。
 命中こそしなかったけど、その先にあった木が縦に真っ二つになっている。

「次は……当てる」

 肩で息をしている。やはり連続で唱えるには難しいようだ。

「な、魔法使いが居やがるぞ! しかもかなりの使い手だ!」
「フィーロちゃん!」
「はーい!」

 第二王女に驚いて余所見をしている盗賊達をフィーロはおもちゃのように蹴り飛ばして沈黙させる。

「こっちも終わりました」
「まだ終わってねぇ!」

 見ると青い顔をしていた盗賊が乱戦の混乱に乗じて俺達の後ろに周りこみ、荷車の上から第二王女に向けて飛びかかろうとしていた。

「エアストシールド」
「あぐ!」

 跳躍し、第二王女に飛び掛る軌道の間に盾を呼び出す。

「まだだ!」

 その隙を残った盗賊が一番弱そうな第二王女に向けて駆け出す。

「セカンドシールド、チェンジシールド」

 二つ目の盾を呼び出し、行動を阻害、ついでにチェンジシールドで変化させた盾にぶつける。
 今回はビーニードルシールドだ。毒系統では持続効果で殺しかねない。麻痺の方で抑える。

「うぐ、がは……」

 二つ目の盾にぶつかった奴は麻痺して痙攣している。

「ま、だだ」

 這うように第二王女に近づく不意打ち盗賊。

「いや、終わりだ」
「あ……」

 その盗賊の上に大きな影。盗賊も気付いたのだろう。何か泣いてる。
 多分、走馬灯とか、諦めの句とか心に描いているのだろう。

「メルちゃんは助ける!」

 ドッスンとフィーロが圧し掛かるのだった。


「陽も沈みかけているから丁度良い。お前等のアジトを教えろ」

 全員、縛り上げてから尋ねる。

「俺達が話すと――」
「フィーロ」
「こちらです!」
「お、おい!」

 盗賊内でも事情に疎い奴は居るんだなぁ。

「どうしたんだよ」

 盗賊の中で前回遭遇した奴は必死の形相で説得を始める。

「素直に応じないとあの鳥の餌にされるぞ!」
「な、冗談だろ?」
「あいつが冗談を言うと思うのか?」

 不意打ち盗賊の奴、俺を見て言い放つ。

「アイツは何者だよ。なんか変な魔法って言うかスキル使ってたけど」
「分からないのか!? 盾だよ!」
「い!?」

 盗賊の連中やっと相手が分かったのか全員顔が青くなった。

「あの人食い鳥を連れた悪魔!?」
「そうだ! あの鳥は人間を頭から食うんだぞ! あんなのけしかけられたらおしまいだ!」
「命あってのモノ種だろ! 全財産と大将を捧げれば俺達は助かるんだ!」

 噂が噂を呼んで俺の悪名はうなぎ登りみたいだなー……。
 ラフタリアが嘆かわしいと言うかのように額に手を当ててる。

「嘘を吐いたら――」
「分かっている! だから命だけは助けてくれ!」

 言い切る前に盗賊の奴、アジトへと案内する。もちろん、圧倒的戦闘力で俺達はアジトを占拠した。


 その日は、占拠した盗賊のアジトを宿代わりに一泊し、盗賊達が溜め込んだ物資で豪遊した。
 主に食べ物の類だ。ここ最近は逃亡生活もあって食事は魔物の肉など、貧相だったからな。
 入った当初こそ怯えていた第二王女だが、しばらくしたら慣れたようだ。
 アジト内にあった金目の物は、主に金銭だけを徴収し、他は処分に困ったので一箇所にかき集めて焼き払う。
 下手に捨てて盗賊が回収したら目も当てられない。
 縛り上げた盗賊の奴等、半笑いで絶望していたな。
 アジトの外に転がしてある。

「そういえば、第二王女、お前は魔法が使えるんだな」
「うん。護身術にって覚えたの」
「どれくらい使えるんだ?」

 今後の事を考えて第二王女が戦えるのならパーティーに入れておいた方が良いだろう。

「ついでにLvは?」
「えっと、Lvは18……中級の水の魔法までなら殆ど使える」

 思いのほか低い。まあ、外見年齢からして高かったから驚いたけど。
 しかし中級魔法か。

「水が得意なのか」
「うん」

 髪が青いからなぁ。その辺りが関係しているのかも。

「後、土の魔法が少し」
「へー……」

 意外とレパートリーが広いなぁ。

「そういやお前の姉は風の魔法を使っていたな」

 思い出したくもない。
 決闘中に背後から飛んできた風の魔法。
 む、考えていたらイライラしてきた。この思考は止めて置こう。

「姉上? 姉上は火が得意で風が少し」

 まあ、髪の色からしてそんな感じだよな。

「母上は火と水が得意なの」
「ふうん」

 どうでも良い。

「まあ良いや。一応パーティーの申請を送るから入っておけ」
「うん」

 別に頼りにするつもりはない。
 だけど、いざという時の保険だ。戦えるのなら無いよりはマシだろう。
 逃亡は死の危険性を向上させるし。
 第二王女を頼りにすることは出来る限り無い方向で行きたい。

「ねえ。何で盾の勇者様は父上をそんなに怒らせたの?」
「そういえば話していなかったな。お前の姉が俺を嵌めた出来事から発覚するのだが――」

 その日の晩、俺は今までクズとビッチから受けた苦痛をこれでもかと第二王女に教え込んだ。
 隣で何故か紙芝居を聞くような顔つきでフィーロが俺の話を聞いていたが、概ね間違ったことは話していない。
 嘘も偽りも無い、真実だけを話したつもりだ。
 若干俺の心情や恨み辛みも混じったが、それを含めての教育と思えば良い。

「父上と姉上ったら酷い! そんなんじゃ盾の勇者様が酷い事を言っても文句なんて言えないじゃない!」
「そうだろう、そうだろう」
「母上は盾の勇者様は出来る限り大切にしろってずっと言ってたのに」
「は?」

 何を言っているんだ? この国の宗教は盾を悪魔としているのだろう?
 女王は違うのか?

「どうしたの?」
「いや、お前の母親って俺をどう思っているんだろうとな」
「うーん……わかんない。でも他の勇者と同じに扱いなさいって父上に手紙を出してた」

 第二王女の話だけではいまいち良く分からないが、どうも女王は俺の事も気にかけていたみたいだな。
 まあ、庇いきれなかったのだから、クズと同罪だけど。

「ごしゅじんさま、フィーロが生まれる前には色々あったんだね」
「そうだな」
「へ?」

 第二王女の奴、何か呆気に取られた表情をしている。

「えっとフィーロちゃんって何歳?」
「一ヶ月と三週間だな」
「ええ!?」

 ま、驚くよな。魔物であっても急成長だろうし。

「フィーロちゃん早熟なんだね」
「えへへー……褒められちゃった」
「褒めてるのか?」
「じゃあわたしの方がお姉ちゃんなんだ」
「まあ、年齢というカテゴリーならな。そこのラフタリアはお前と同じくらいだぞ」
「ラフタリアお姉ちゃんはなー……」

 フィーロが若干ガッカリした表情でラフタリアを見ている。
 その視線が嫌なのかラフタリアは微妙な顔だ。
 この鳥は突飛な事しか言わないから気持ちはわかる。

「な、なんですか」
「亜人だし……同い年でも年上って感じ」
「うう……なんか負けてないのに負けたような気分にさせられました」

 なんか微妙な空気だなぁ。

「ま、これでラフタリアが年齢相応の外見をしていたら俺は変態のレッテルを貼られていそうだけどな」

 ロリコンと言うレッテルをな。
 フィーロに第二王女は両方とも子供だからな。これでラフタリアが子供だと幼女を侍らせている事になってしまう。

「そういう事だから良いんじゃないか」
「ナオフミ様……」

 三人もロリがいたらロリハーレムとか言われそうだ。
 あの勇者共が何て俺を糾弾することか。

「とにかく、今日はゆっくりここで休んで、国境を越えるぞ」
「「おー!」」
「はい!」
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