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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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フィーロの秘密

 パチパチと音を立ててその日は野宿をする事になった。
 まだ見ぬ敵に察知される危険性が上がるが中途半端に警戒していては休息が取れない。
 そもそも、こちらは変装しているのだ。盾の勇者一行だと一目で分かるはずも無い。
 そのはずなんだけど。

「あはははははフィーロちゃーん」
「あははははは」

 人型のフィーロと第二王女は野宿だと言うのにテンション高く駆け回っている。
 仲の良い友人と寝食を共にするというのは楽しい物だ。
 俺も学校行事で何度も修学旅行や臨海学校、自然教室と参加したのでわからなくもない。
 それに大学生にもなれば友人の家に泊まったり、自分の家に泊める事だってある。

 しかし……コイツ等仲良いな。
 フィーロの方は、生まれてから気心の許せる同格の相手がいなかったから理解できる。
 いや、身分的には家畜と飼い主って感じだが。
 第二王女の方は少し意外だな。
 この手の純粋培養は動物とか苦手だと思っていた。
 案外旅が長い所為もあって抵抗がないのかもしれない。

「あんまり騒ぐな! 見つかるかもしれないだろ」
「はーい」

 とか言いつつ、やっぱり二人して遊んでいる。
 まったく、やかましいフィーロに友人ができるとここまでうるさくなるのか。

「メルちゃんには、フィーロの宝物を見せてあげるね」
「うん!」

 そう言ってフィーロは何時も大事に馬車に隠していた袋を第二王女に広げて見せる。
 何が入っているのだろう。微妙に気になるな。
 あの鳥の宝物か。どうせガラクタだろうとは思うけど、俺の所持品からちょろまかしていたら没収するか。

「ごしゅじんさまも見るー?」
「あ、ああ」

 手招きするフィーロに俺は近づいて中を覗き込んだ。
 えっと、折れた剣の破片。俺がアクセサリー作りに失敗して捨てたクズ宝石。空きビン。ビー玉っぽいガラス片。

「キラキラして綺麗でしょ」
「ええ、綺麗ね」

 第二王女の奴、ちょっとだけ微妙な顔をしている。
 ま、ゴミばかりだからなぁ。
 光物が多いのは鳥だからだろうか。烏が光物を盗んで騒動を起こした、なんて話を聞いた事がある。それに近いのかもしれない。
 ん?

「なんだこれ?」

 袋の中に妙な物が混じっていたので取り出して見る。
 茶色の……大きな毛玉? ボールのようで、微妙な柔らかさ……中には固いものがバラバラになって混じっている。
 何処と無く異臭がするような気がしなくも無い。
 とてつもなく嫌な予感がする。

「それはねー……フィーロの口から出てきたの」

 口から出てきた……鳥の。
 猫で例えると毛玉。人間で例えるならゲロ。
 鳥の嘔吐物=ペリット。
 つまりこの硬いバラバラになった物体は魔物の骨やフィーロ自身の羽の残骸。

「きったね!」

 何考えてんだ。触っちまったじゃねえか!
 俺はペリットを投げ捨てた。

「あーフィーロの宝物!」
「宝物じゃない! それは排泄物だ! 次にそれを袋に入れていたらお前の宝物を全部捨てるからな!」
「ぶー……」

 第二王女の奴、俺とフィーロのやり取りを見て微妙な顔をしている。

「そういえば第二王女」
「ん?」
「フィーロが人の姿になっても驚かなかったな」
「うん。だって昨日には見せてもらっていたもん」
「そうか」

 既に知っていたか。
 ま、それなら良いのだけどな。
 今日の晩飯は遭遇した魔物の肉を串を刺して焼いた串焼きだ。

「ごしゅじんさまご飯作るの上手なんだよ」
「ただ串で焼いただけなのに凄く美味しい! どうなってるの!?」

 何でも臆する事無く食べる第二王女。てっきりこんな野蛮な料理は食べられないとか言い張るかと思ったけど杞憂だったようだ。
 これは長い馬車の旅で色々と回っていたから臆することが無いのか?
 尽く予想を裏切る。こいつと一緒にいた女王ってのはなんなんだ。

「ナオフミ様と一緒に居ると毎日食べられますよ」
「わーい!」
「そうか、よかったな」

 さて、暇な時間だ。野宿も大分慣れてきたけど。
 とりあえず初級魔法書を読んで新しい魔法を覚えるよう勉強するか。
 しばらくして、フィーロと第二王女は静かになった。
 大方疲れて眠っただろう。
 ラフタリアには先に仮眠を取ってもらっている。
 フィーロと第二王女が火の番をするのは些か不安が拭えない。
 夜襲に備えるのは常だろう。

「ふむ……」

 初級とはいえ、色々な種類の魔法がある。
 ファストガードやファストヒールの範囲版がそれだ。
 まだ読み解いていないが初級最後の習得魔法のようだ。
 今は攻撃力や速度の上昇の魔法を読んでいる。
 早く覚えたいのは山々だけど、難しい文法や概念の説明があって、厳しい。
 焚き火に薪をくべつつ、時間が過ぎていく。
 薬の調合をしないで居るのは何か落ち着かない。毒の調合はまだ進んでいないが毒草と毒薬レシピは読んでいる。
 材料を探している暇が無い。

「ん……」

 ラフタリアが寝ぼけ眼で目を覚ました。

「お? 起こしてしまったか?」
「いえ……交代しますか?」
「ラフタリアが良いのなら」
「はい」

 ラフタリアが起きてキリが良いので寝かせてもらうことにした。

「あの、ナオフミ様?」
「なんだ?」
「フィーロとメルティ王女が……」

 何やら震える指を押さえながらラフタリアは静かになったフィロリアル・クイーンの姿のフィーロの方を指差す。
 そこには第二王女に着せていた服が脱ぎ散らかしてあって、魔物の姿のフィーロが何故か一人で座って船を漕ぎながら寝ている。

「えっと」

 状況証拠を推察するに……第二王女はどこだ?
 フィーロの背中に半裸で寝ているのかと後ろの方を見るが居ない。
 靴まで転がっていて……本体は何処だよ。

「まさかね……」

 幾ら食いしん坊だからって……。

「ナオフミ様、さすがに脅しだからと言って人間を餌にしようとしたからフィーロは……」
「いやいやいや! まさか!」
「でも……フィーロですよ」
「う……」

 ありうる。友達=何時でも食べれる相手とか認識していたのか? 助けたいと言うのは別の誰かに取られたくないとかそんな意味で言っていたとか?

「本格的に逃亡生活になりそうだなラフタリア」
「そうですね。これで私達の罪は確実の物に……」

 まったく、このデブ鳥はとんでもない事をしてくれる。

「ふにゃ?」

 カクンと頭を強く下げすぎてフィーロが目を覚ます。

「どうしたの? ごしゅじんさまにラフタリアお姉ちゃん」
「メルティ王女はどうしたのフィーロ?」
「メルちゃん? メルちゃんならフィーロの羽毛の中で寝てるよ?」
「は? いないじゃないか」

 先ほど確認したのだから間違いない。

「メルちゃん。起きて」

 フィーロが背中の羽毛を逆立たせる。

「ん~?」

 もさもさと羽毛が奇妙に逆立ち、なんと第二王女がフィーロの背中から顔を出す。

「な!?」

 いやいや、フィーロの体積から女の子一人分が入るほど羽毛の余裕は無いだろ。なのに変な所から第二王女が出ている。

「どうしたのフィーロちゃん?」
「ごしゅじんさまがメルちゃんは何処? って聞くから起こしたの」
「何処ってフィーロちゃんの背中……とってもあったかいの」
「……服を脱いだのは?」
「暑いから」

 はぁ……驚かせるな。

「というかどうやってそんな深く入り込んでいるんだ?」
「フィーロちゃんの羽毛って不思議な位ふかふかで分厚いんだよ? 手を入れてみる?」
「あ、ああ」

 この際だ。フィーロの体はどうなっているのか確かめてみるか。
 王女が手招きするので俺は手を伸ばす。
 俺の手を王女は掴んでフィーロの羽毛の中へと入れる。

「うわ……不自然に深い」

 腕の奥まで入ってやっと地肌っぽいのにぶつかる。
 やっぱコイツの体温は高いな。
 これなら王女が寄り添って寝ていたら気付かないかもしれない。
 よくよく確かめてみると少しだけ膨らんでいる。

「どんな構造しているんだこの鳥」
「ですねぇ……」
「一度全部羽をむしって調べてみるか。ついでに羽を売れば儲かるかもしれないぞ」
「やー!」
「フィーロちゃんに乱暴しちゃダメ!」

 ううむ……また鳥の変な生態を垣間見てしまった。
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