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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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論より証拠

 俺は自分が泊まる予定の宿の受け付けを済ませ、今度はお義父さんの宿を確認に行きました。
 意外とお義父さんの宿は近くにありました。
 酒場とかで大声を出したら届きそうですぞ。

 お義父さんが泊まる宿を確認した俺は普通に城下町を歩いて錬の所へ向かいます。
 すると何処からか豚共が嗅ぎ付けてきました。
 適当な事を言って誤魔化しましょう。

「何処へ行っていたのですかな? 探したのですぞ」
「「「ブブブー!」」」

 何やら言っておりますが、まったくわかりませんな。
 まあ1ミリたりとも探していませんが。

 ともあれ、準備は出来てきました。
 俺が取った宿の情報はすぐに赤豚に届くはずですぞ。
 なので備え付けの酒場に赤豚はきっと来るでしょう。

 後は錬ですぞ。
 前回の錬は城下町ではなく、二つ隣の村に宿を取っていると言ってましたな。
 少し距離がありますな。急いで向かった方が良いでしょう。
 俺は付いてくる豚共を振り切って、二つ隣の村に向かいました。


「やっと見つけたのですぞ!」
「ん? 元康?」

 日が落ちて、少し経った頃になってやっと俺は錬を見つけました。
 錬が泊ったという宿に行ったのですがいなかったのですぞ。
 騙されたかと思ったのですが、錬の仲間らしき連中と燻製が宿に居たので錬の居場所を尋ねました。
 少々強めの植物型の魔物と日が落ちても戦い続けている錬に呆れましたな。

「どうしたんだ? こんな所まで来て」
「その理由を説明するには色々と手順を踏む必要があるのですぞ」
「何を言っているんだ?」
「まずは」

 俺は錬にパーティーの勧誘を飛ばしますぞ。

「いきなりどうしたんだ? 勇者同士は一緒に戦うと反発するんだろ?」
「狩りをするつもりはないですぞ。それよりも錬には一緒に来てほしいのですぞ」
「何故だ?」
「知っていた方が……良い情報なのですぞ」

 ここで真実を話すのも手ではありますが、論より証拠ですな。
 自分の目で確かめて欲しいですぞ。

「まあ良い。何をしたいか知らないが、俺もそろそろ休もうかと思っていた所だ」

 錬は快く勧誘を受け取ってくれました。
 よし! ですぞ。

「では行きますぞ。ポータルスピア!」
「は?」

 一瞬にして登録していたメルロマルクの樹が泊っていた宿の前に飛びました。

「転移スキル? 習得するにはまだまだ先のはずなのに何故使えるんだ?」
「必ず後で話しますが、今はまだ話す時ではないのですぞ。少しここで待っていて欲しいのです」
「まあ、それ位なら……」

 俺は宿に備え付けの酒場に顔を出して樹がいる事を確認します。
 どのようにして呼び出しますかな?
 と思った所で樹と目が合いました。

 とりあえず手招きします。
 すると樹はノコノコと一人でやってきました。
 これは幸運ですな。

「おや? 元康さん、それに錬さんまで。どうしたんですか?」
「いや、俺も元康にここに連れて来られて驚いているんだ」
「はあ……ところで錬さんか元康さん。僕が狩りをしていた近くの森にいませんでしたか?」
「俺は昨日決めた通りに狩りをしてたから知らないな」
「そんな事よりも、ちょっと付いて来てほしいですぞ」

 俺の返答に樹は若干ムッとした様な表情をしましたがそれ以上の騒ぎはしませんでした。
 前回の樹なら怒ってそうな気もします。
 やはり錬も樹も最初の頃は話が通じる様ですな。
 おや、樹の仲間がこちらに来ますぞ。

「勇者だけで内密に話がしたいのですぞ」
「何を話すのですか?」
「そうだ。ここで話が出来ない事なのか?」
「論より証拠と言います。錬も樹も見た方が早いと思い、呼んだのですぞ」
「はぁ?」
「何をしたいのか知らないが、転移スキルをどうやって習得したかを説明してくれるなら良いだろう」
「転移スキル?」

 この頃の錬と樹は素直ですな。
 錬が樹に俺が転移スキルでここに来た事を囁いています。
 樹も俺が現段階でポータルスキルを使えると聞くと目の色を変えました。

「付いて来たら教えますぞ」
「わかった」
「そうですね。悪い話じゃなさそうですし」

 樹は仲間達に少しだけ勇者同士で親睦を深めてくると告げて酒場から出ました。


「さて、で?」

 俺はお義父さんから教わった、お義父さんが宿泊した宿まで遠回りをして行きますぞ。
 お義父さんの泊った宿にも酒場はありますが狙いはそこではありませんし、赤豚に出会ったら危険ですから注意しないといけません。

「後少しですぞ」
「一体どこへ連れて行くのですか」

 一応、裏通りを通ってからそれとなく隠れた者をおびき出して焼き尽くすリベレイション・ファイアフラッシャーを唱えておきます。
 監視の目をこれで物理的に消すことが出来るでしょう。

「なんだ? 何か光ったようだが……」

 近付いてきた連中が燃え盛ったのでしょうな。
 やはり俺達を監視している者がいましたか。
 ですが、今は錬と樹に余計な情報を与えたくないですぞ。

「裏路地というのもありそうですが、世界の危機なんですから治安が悪いのではないですか?」
「なるほど、異世界らしく物騒なんだな」
「ゲームでの街は平穏ですよね?」
「安全エリアだからな。……いや、現実的に考えて治安が悪いと柄の悪い連中も出てくるもんな」
「大丈夫ですぞ」

 何かあったら俺が仕留めますからな。
 などと話しながら俺達はお義父さんが泊っている宿に近付きました。
 ……国の兵士が不自然に巡回してますな。
 アレでは不審がられますぞ。

「錬、樹、少し失礼しますぞ」
「え? うわ」
「な――」

 錬と樹の胸元を掴んで俺は思い切り飛び上がり、建物の屋根に飛び乗ります。
 怪我をしない様に錬と樹を降ろしました。

「なんだ!?」
「しー……ですぞ。じゃないと見張りに気付かれますぞ」
「気付かれるって、何を警戒しているんだ? この先に何があるんだ?」
「おと――尚文が泊っている宿ですぞ」
「は? 尚文も呼ぶのか?」
「まあ……勇者同士なんですから当たり前ですよね。そんな事よりも僕達を掴んで屋根まで飛びあがるなんて、どうやったんですか?」
「それも順を追って説明して行きますぞ」

 怪訝な目をする二人ですが、俺がウソを言っていないのを察したのか、それとも何か秘密があるのかを察して黙って付いてきました。
 そして……お義父さんが泊っている宿の屋上に辿り付いたのですぞ。
 ここから先は、色々と面倒な手順が必要ですな。
 屋上に槍で音を立てない様に穴を開けます。

「ここから屋根裏に入るのですぞ」
「なんでこんな真似をしなきゃいけないんだ?」
「いい加減話してください。尚文さんと話をするならこんな事をする必要は無いですよね?」
「おと――尚文とは話をしません」
「は?」

 樹が眉をよせます。
 確かに、一見すると犯罪行為を手伝わされているように見えるでしょうが、これも必要な手順なんですぞ。

「樹、元康が何をしたいのかわからないが付いて行こう。何か意味がありそうだ」
「……わかりました」

 錬と樹が素直に宿の天井裏に入ってくれました。
 俺は蓋をするように入ってから天井を被せたのですぞ。

「ファスト・ファイア」

 軽く火の魔法で天井裏を照らしながら、お義父さんが宿泊しているはずの部屋の天井まで静かに移動しました。
 若干中腰なので錬と樹は物音を立てそうになっていますな。
 余裕があるのでアル・リベレイション・ファイアミラージュⅩを唱えてどうにか音を消しました。

「さて……」

 俺は天井裏から三つ程、小さな穴を開けて室内の様子を見れるようにしますぞ。
 室内では、お義父さんがくさりかたびらを脱いで寛いでおりますな。

「尚文さんが休んでいるだけじゃないですか」

 樹が小声で俺に言いました。
 錬も同様の感想の様です。少々早かったですかな?
 かなりギリギリかと思ったのですが。

「もう少し待っていると良いですぞ」
「あのですね……僕達は元康さんの忍者ごっこに付き合うつもりはないんですよ?」

 などと言っていると、お義父さんが盾の裏に銀貨を入れてからベッドで眠り始めました。
 そういえば最初の世界でお義父さんが俺に銀貨を投げ付けましたし、前回でも持っていましたな。
 さすがお義父さん、盾に隠して持っていたのですな。

「もう、尚文さんが寝てしまったじゃないですか」
「俺もそろそろ休みたいんだが……」
「僕だって仲間と一緒にもう少し騒ぐ予定だったんですよ」
「……あんまり騒ぐと痺れさせてでもここにいてもらいますぞ」

 いい加減、二人の不満な態度にイラっとしたので殺気と共に言いますぞ。
 ビクッと二人は声を失いました。
 まあ、これまでの経緯で俺が強いのではないかと思ってくださっていると良いのですがな。
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