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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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黒幕疑惑

「だとしても、俺は元康が未来から来たという話は信じられないな」

 錬がいつも通りの態度で言いました。
 まあ錬と樹が俺の言葉を信じた事の方が珍しいですがな。

「何故ですかな?」
「余計な事をし過ぎだ。国の陰謀? ならどうして早く国を出ずにまどろっこしい行動をした? もっとやる事はあっただろう。国の陰謀を暴くなり、余計な飛び火をする前に他国に亡命したり、手は腐るほどある」
「それも前に話しましたな。そうすると戦争になるからですぞ。メルロマルクはお義父さん以外の勇者を手に入れて調子に乗っていましたからな」
「元康くんの言い方が悪くて二人は勘違いしているけど、元康くんはループ……何回かこの世界を繰り返しているんだ」

 ふむ……俺の説明が下手な所為でお義父さんの手を煩わせてしまいましたな。
 では俺もお義父さんに倣って、聞かれた事を全て話すとしましょう。

「そうですぞ。俺は既に何度もループして、ここにいますぞ」
「で、どうにも色々と複雑で難しいらしくて、持っている知識が不足しているみたいなんだ。実際、俺が冒険初日に泊まっていた宿を知らなかったし」
「俺も聞かれたな」
「僕は聞かれていませんね。元康さんは僕をどうでもいいと思っているという事ですか?」
「確かに樹からは聞いていませんな。丁度良いから教えて欲しいですぞ」
「嫌です!」

 断られてしまいました。
 ですが、その情報は知っておいた方が良いはずですぞ。
 しかし、今の樹が素直に教えてくれるとは思えませんな。
 しょうがないですな。諦めましょう。

「では、もしも次があったら樹をストーキングしてどこに泊まったか調べるとしましょう」
「うっ……やめてください。気持ち悪い!」
「別に疚しい事が無いなら教えておけばいい。そう思い込んでいるみたいだしな」
「はぁ……しょうがないですね」

 そう言って樹はどこに泊まっていたか教えてくれました。
 ですが、樹は嘘が得意ですからな。嘘の宿を言ったかもしれません。
 次回のループでは樹をストーキングする事にしましょう。
 最初二日間はお義父さんに接触しなければ、比較的自由に行動出来ますからな。
 俺を殺した豚共から習得したストーキング技術が役に立ちますぞ!

「そもそも一人の人間が知り得る情報なんてたかが知れているよ。元康くんだって神じゃないんだからさ。三人も居たら知らない情報くらいあるでしょ。大体あっちを立てたらこっちが立たない、なんてループモノの王道だしね」
「ふん、どうだかな。ペテン師は大抵そういう事を言うんだ」
「ループしているなんて言い張るペテン師は才能無いと思うよ……」
「調子の良い事を言っても僕は騙されませんよ」

 どうやら錬も樹も俺の話を信じていない様ですぞ。
 しかし樹、三勇教に調子の良い事を言われて騙されたから今があるのではないのですかな?
 ……ここで前回の樹が仲間に殺された事でループしたと教えても良いのですが、信じる所か話が進まない可能性が高いですぞ。
 面倒なのでその話は言わない様にしておきましょう。

「で、大方、尚文が前に説明した強化方法を実践したから、とか言う気だろ? 前にも言ったが勇者の武器毎の仕様違いで俺のは出来ないと言っただろうが」
「つまり錬の武器は俺よりも遥かに弱い劣化品であるという事ですかな?」
「なんだと!? 俺の武器が一番強いに決まっているだろう! 実際この世界の元になったゲームであるブレイブスターオンラインで最強の武器だ!」
「何を言っているんですか! 元になったゲームはディメンションウェーブですよ! 剣なんて盾が装備出来る以外に長所の無い雑魚武器よりも、弓の方が強いに決まっているじゃないですか!」
「弓が最強? ハッ! 魔法にすら劣るじゃないか」
「貫通性や秒間ダメージ、飛行属性にも対応している最強武器じゃないですか」
「何言ってるんだ。剣のダメージの方が上だし、汎用性だって遥かに上だぞ。弓は火力に問題があるだろう。そもそも盾を装備したら回避力と攻撃速度が落ちる。意味がわからん」

 錬と樹が最強談義を始めました。
 まあ勇者である俺達は特定の武器以外装備できないので、錬が盾を付ける事はできませんが。
 これはきっと自身がプレイしていたゲームの話でしょうな。
 おや? お義父さんが不思議そうな顔をしていますぞ。

「ねぇ? 二人のゲーム知識に齟齬が無い?」

 お義父さんがそれに気付きましたか。
 いや、前に話しましたが。

 俺も最初の世界では槍が最強の武器だと信じていましたな。
 攻撃範囲や攻撃速度、威力、汎用性など……全てにおいて上位でしたからな。
 特化武器の作れるエメラルドオンラインでは相性抜群ですぞ。
 まあ、それは間違いだったわけですが。

「だからさっきからゲーム毎に仕様が違うと言っているだろう! それが武器に反映されているんだ!」
「なるほど、つまり元康さんの武器は最初からチート性能だった訳ですね! この卑怯者! 未来から来たというのも信じられません! 貴方が全ての黒幕だったんですね!」
「そういう事か! 確かに元康が黒幕なら全て説明が出来る」
「落ちついて! 錬と樹を騙して何の得があるんだよ」

 お義父さんが錬と樹を宥めるように言いますぞ。
 それにしても俺が黒幕と来ましたか。
 だとしたら随分と楽なんですがな。

 お義父さんの言葉通り、樹や錬を騙しても何の得にもなりませんぞ。
 こやつ等は自分を過大評価し過ぎですな。
 俺はLvと武器が強化されている影響で人より強いだけですぞ。

「尚文、お前も元康に助けてもらったからといって盲信していたら痛い目を見るぞ。実は勇者の一人が全ての黒幕で恩を感じている勇者に自分の代わりに世界を支配させようとしている……なんて可能性もあるんだぞ!」
「元康くんが?」

 お義父さんが俺を見つめますぞ。
 俺はニコッと笑い返しました。

「ほら! 片鱗を見せましたよ!」

 おかしいですな。
 笑顔で違うという事を見せたのですが、確信を持たれてしまいました。

「いや、無いでしょ……これは完全に何にも考えてない顔だよ。普段の元康くんが何をしてるか知ってる? 俺が頼み事をしていない時はユキちゃん達、フィロリアルとずーっと一緒に遊んでいるだけなんだよ?」
「それが演技なんですよ! そしてここぞとばかりに本性を出して尚文さんを殺すんですよ」
「多分無いと思うよ。むしろ元康くんの手綱を握る方が大変だし……黒幕がこんな面倒臭い事する方が不自然だよ」
「どちらにしても元康が多少強いのは噂から知っているが、それも程度が知れるだろ」

 そういえば錬には直接見せた事がありませんな。
 まあ樹はパーティーを一瞬で壊滅させたり、ボコボコにしてやったので理解しているでしょうが。

「化け物みたいに強いのは確かです! 僕が手も足も出なかったんですから!」
「それは樹、お前が弱いんだ。盾職の尚文に勝てないんだからな」
「僕は弱くなんかありません! なんですか! 錬さんまで僕を馬鹿にするつもりですか!」
「俺は事実を言っただけだ。樹、お前は弱いんだ」
「なんですって! 僕が弱い訳無いじゃないか! 女の子に負けた口だけの錬さんこそ弱いんじゃないですか?」
「なんだと!?」
「決闘でもしてみますか!」
「剣の勇者様、弓の勇者様、落ち付いてください!」

 本気で喧嘩をしようとしている錬と樹を婚約者が止めようとしています。
 しょうがないですな。
 錬が俺を知りたいと言うのなら、実際に見せてやりましょう。

「では実践してみせますかな?」
「元康くん何をするの?」
「まあ、見ていて欲しいですぞ」

 立ち上がって部屋の窓を開けますぞ。
 夜の海が城の様なホテルから一望できます。
 俺はそこで意識を集中して魔法を紡ぎますぞ。

『我、愛の狩人が天に命じ、地に命じ、理を切除し、繋げ、膿みを吐き出させよう。龍脈の力よ。我が魔力と勇者の力と共に力を成せ、力の根源足る愛の狩人が命ずる。森羅万象を今一度読み解き、偽りの太陽を生み出せ!』
「リベレイション・プロミネンスⅩ!」

 俺の手の上に炎の玉が生成されました。
 そして俺は窓の外に思い切り投げます。
 俺が投げた炎の玉は真っ直ぐに飛んで行って島の先……海岸を超えて海の先まで飛んで行き、花火の様に炸裂しました。
 水平線にもう一つの太陽を作り出しました。

「な――」
「な……そ、そんな……」
「これでどうですかな?」
「なるほど、確かに実践して見せるのが一番早いよね」

 錬と樹だけ唖然とした表情で空を眺めました。
 お義父さんも婚約者もリベレイション系の魔法を見た事がありますからな。
 煌々と水平線に新たな太陽が数分出現し続けます。
 島の住民が外の様子に気づいてざわざわと騒ぎ始めたのが窓から覗くと分かりますな。

「アレは元康くんの魅せ魔法だと思って。本気になったらどうなるかくらいわかるよね?」

 これで俺の強さが分かったのではないですかな?
 考えてみれば錬と樹の前では地味めのスキルしか使っていませんでしたからな。
 下手に注目されると歴史通りにならないかもしれないという理由でしたが、もう警戒する必要も無いでしょう。
 むしろ歴史通りにさせない様にしなくてはいけませんからな。

「ま、まあ、話半分で聞くとしても元康が不自然に強い理由か……」
「未来から来たからですぞ。錬や樹の強化方法だけでなく、全ての武器の情報を知っていますぞ」
「ふん。だから俺や樹の強化方法は共有出来ないと言っているだろうが。お前はそこで不自然に強い……おかしな武器に選ばれただけなんだと言っているだろ! この卑怯者!」

 無理やり錬と樹は納得しようとしていませんかな?
 俺を含め最初の世界でもこんな感じでしたが、同じ人間なのか疑いたくなる程、話が通じませんな。

「じゃあ俺はどうなのかな?」

 お義父さんが自身を指差して言いますぞ。

「尚文? まあ、お前は善戦をしているだろうがLvでのごり押しだな。盾職が強い訳無いだろ」
「あのねぇ……」

 お義父さんは疲れた様な表情をしておりますな。
 錬と樹がこれでは疲れるのも無理はないですな。

「いや、強化方法は元康くんから教わった奴が出来て、強靭な防御力を得たんだけど……」
「確かに硬くはあるようですが、それが強さに結び付くのですか? 守るだけでは何にも出来ませんよ。すぐに僕が防御を突破してみせます。いえ、防御など最初から必要ありません! 防御貫通攻撃があるのを知らないんですか?」

 何を矛盾した台詞を言っているのですかな?
 お義父さんが強固なのは確かですぞ。
 現に今のお義父さんの防御を俺は突破する事は難しいでしょうな。

 そもそもお義父さんは貫通攻撃の対策も習得しようとしています。
 未来のお義父さんはこれを完全に習得していて、無効化していました。
 この辺りはエネルギーブーストの応用ですぞ。

 尚、未来のお義父さんはエネルギーブーストの補正なしに無効化を習得していました。
 なんたらとか言う流派の応用だとか言っていましたな。
 下手をすると貫通攻撃がそのまま跳ね返ってきますぞ。

 ですが、悲しいかな。
 お義父さんの戦闘能力は全て防御に割り振られているので、攻撃の手段がありません。
 反撃能力のある盾であっても相手を即座に戦闘不能にさせるのは難しいですからな。

 確かカースシリーズの盾で俺を焼き焦がした事は有りましたが、カースシリーズはそれ相応のリスクが付きまといますぞ。
 現にお義父さんは何度か瀕死の重傷を負いましたし、今のお義父さんはカースシリーズを所持しておりません。

 そう、お義父さんの強さを証明するのは耐えるしかないのですぞ。
 これは目に見える強さの証明にし辛いのは確かですな。
 まさしく目の前に錬や樹が絶対に勝てないと思う様な化け物でも出て来ない限り難しいですぞ。

「俺が出来て錬や樹が出来ないって事は無いんじゃないの? まずは聞いてよ。元康くんから聞いた樹の強化方法は――」

 と、お義父さんは必死に樹と錬に向けて強化方法を説明して行きました。
 二人が言わずに隠している強化方法をこちらが知っている事で俺が未来から来たという信憑性を上げようとしてくれているのですぞ。
 が、錬と樹は微動だにしていませんな。

「元康の強化方法が全ての強化方法を内包しているだけだ。いや、尚文にさえ使えない強化方法が無いとも限らない」
「ありえませんぞ。四聖勇者の武器の能力は、方向性こそ違いますが同じ位だと俺は聞きましたな。そして、それを実感していますぞ」

 現にお義父さんは俺の知る全ての強化方法が実践出来ていて、今では俺でもお義父さんを倒す事は出来ないと思いますぞ。
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