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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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煽り

 樹を生け捕りにし、そのまま離脱した俺達は行商時に討伐した盗賊のアジトを再利用して、樹をアジトに監禁したのですぞ。
 ポータルで樹を連れ去るにはパーティーに入れなければいけませんからな。
 この樹が勧誘を受け入れるとは決して思えませんぞ。
 なので念入りに眠らせた後、コウとユキちゃんに見張らせて俺はお義父さんを呼び寄せました。

「元康くん……」

 アジトの一室に転がされている樹を見て、お義父さんが呆れた様子で額に手を当てて呻きましたぞ。

「誰が樹を生け捕りにしろって言ったの?」
「おや? 前に言った様な気がしましたが気のせいでしたかな?」
「立場的に問題があるって言ったじゃないか! ああもう……それで? なんでガエリオンちゃんまで来るように頼んだわけ?」
「ガウ?」

 お義父さんと一緒にライバルと助手、そしてキールが来てますぞ。
 キールはこっそりと部屋を盗み見て『うわ!』とか呟いてますな。

「その件で不服ですがライバルにドラゴンの聖域魔法を唱えてもらいたいのですぞ」
「そうするとどうなるの?」
「転送スキルを妨害する事が出来るのですぞ。何分、俺でも出来なくは無いのですが何回か唱えられると突破されてしまいますぞ」

 辺りの魔力場に影響を及ぼす魔法ですからな。
 威力を上げるとか些細な魔法を強力にしただけなので、そこまで魔力場に影響が無いのですぞ。
 なので一時的に使用を阻止出来ても直ぐに使えるようになってしまいますな。

「なるほど、じゃあガエリオンちゃん、お願い出来る?」
「まかせてなの!」

 と、ライバルは喋りましたぞ。
 助手が内緒と指を立てておりましたな。

「……しゃべった?」

 既にライバルは喋れたと思いますが?
 ああ、体の方のライバルでしたかな?

「うん! ウィンディア姉さんと内緒にして驚かそうって話してたの」

 尻尾をふりふりさせてこれ見よがしに可愛らしさアピールをしていますぞ。
 反吐が出ますな。

「へ、へー……」
「なおふみ驚いたーなの?」
「驚いた驚いた」
「なのなの! やったの! これでお父様の――ダメ? なのー……残念なの」

 お義父さんはライバルが何を話そうとしたのか察した様に頷きました。
 助手は首を傾げていますな。

「じゃ、じゃあガエリオンちゃん、お願い」
「わかったの!」

 ライバルは聖域を生成する魔法を唱え始めましたぞ。
 本来はフィロリアル様達も唱える事が出来るようになるのですが、ユキちゃんを初め、みんなまだ使う事が出来ないのですぞ。
 なので止むなく樹が逃げられない様に聖域生成をしましたな。

「ドラゴンサンクチュアリなの!」

 ただ、この魔法はドラゴンの縄張りであると主張する物なのでフィロリアル様達はストレスになるのが難点ですぞ。

「これで樹はポータルで逃げる事が出来なくなりましたぞ」
「それは良いんだけど、これからどうするの? 潜伏場所をメルロマルクに移す訳にはいかないし……」
「樹を監禁して守ればよいのですぞ。こうすれば樹が死ぬ可能性は限りなく低くなりますな」

 仮にタクト共が襲いかかってきても返り討ちに出来ますぞ。

「何なら錬も一緒にぶちこみますかな?」
「錬まで入れたら余計拗れるでしょうが!」

 お義父さんに怒られてしまいました。
 名案だと思ったのですが。

「とりあえず……樹と話をしてみようか」
「そうですな」

 俺達はアジトの一室で転がされている樹の元へ行きました。
 まだ睡眠スキルの効果があるのか、樹は寝入っていますな。
 無様な顔ですぞ。

「とりあえず揺すって起こすかな」

 お義父さんは俺が縛り上げて、喋れない様に口輪をしておいた樹を椅子に座らせて、喋れるようにさせましたぞ。
 それから軽く揺すって起こします。

「こ……ここは……」

 ぼんやりとしていた樹は、意識がしっかりとしてくるとお義父さんを睨みつけましたぞ。

「尚文! ここは何処ですか! 僕に何をするつもりですか!」
「別に何もするつもりは無いよ。というか……起きていきなりそれか……」

 嘆く様にお義父さんは答えますぞ。
 お前に何かさせるつもりなどありませんぞ。
 していて欲しい事など、精々何もせずジッとしてろ、位ですな。

「こんな縄!」

 縛られている事に気付いた樹は魔法を唱えようとしますぞ。
 そこですかさず俺が妨害をします。

「おっと、魔法で縄を切れるなんて思わない方が良いですぞ」

 樹程度の魔法では妨害など容易いですからな。
 助手ですらこの程度の魔法は妨害できるでしょう。
 なんせ、樹の魔法は水晶から学んだ、性能の低い魔法ですからな。

「く……転送弓! アレ!? 転送できない!」
「それも無駄ですぞ。妨害など容易いですからな」
「く……」

 樹は俺達を思い切り睨みつけます。
 ハハハ、そんな顔をしても恐くもなんともないですぞ。
 そもそも対策を取っていないと思っていたのですかな?
 樹が無駄な状態異常の対策をしていた様に、俺達も行動しているのですぞ。
 敵がいつまでも同じ強さと考えるなど、愚かな発想ですな。

「僕を捕えたからといって、国や僕の仲間達が黙っているはずがありませんよ!」
「おや? 革命でボロボロの国がどうやって樹を助けるのですかな? ついでに樹の仲間達? ハハ、これはお笑いですぞ」

 前回の周回では進んで樹を殺そうとした連中を樹は信じているのですかな?
 これは滑稽ですな。
 あのような連中を仲間だと思っている樹が哀れですぞ。

「何が可笑しいんですか!」
「きっと今頃、樹の悪口を言っていますぞ。あの弓の勇者弱いな、偽者なんじゃねーの? ギャハハ! みたいな事を言っているに違いないですぞ」
「そんな事はありません! 僕達は堅い正義の絆で結ばれているんです!」
「ハッハッハーッ! 堅い正義の絆! それは凄いですな~?」

 パンパンと拍手をしながら笑ってやります。
 堅い正義の絆と来ましたか。
 まさしく正義の絆ですな。
 負ければ悪ですから、樹は殺されたのでしょう。
 などと俺がニヤニヤしていると、お義父さんが言いました。

「なんで樹を煽ってるの!」

 お義父さんに怒られてしまいました。
 言われて見れば、なんで俺は樹を挑発しているのですかな?
 ……今までのループを含め、何度もウザイ事をされてきたからでしょうか。

「とりあえず、俺達の話を聞いてくれない?」
「悪と話す口など持ちません! さあ! 僕を早く解放しなさい。そうすれば命だけは勘弁してあげます!」
「うわぁ……完全に俺達を悪と決め付けてるよ」

 自分の立場をまるで理解しておりませんな。
 ループしてなければ殺している所ですぞ。

「決まっているじゃないですか! 国民を洗脳し、メルティ王女を誘拐! 挙句、国家転覆を画策するなんて! マルティ王女と王様が涙ながらに僕に懇願したのです!」
「……自分達に非が無いと本気で思ってるの? 樹、君は正義感が満足できれば後の事なんて考えていなかったんじゃない?」
「何を言っているのですか! 僕がこの世界に来てやったのは全て善行です! 尚文! 元康! 貴方達のような国家転覆を扇動するような真似じゃありません」
「……はぁ」

 お義父さんは深く溜息をしますぞ。
 俺も同じ気分ですな。

「樹、君はこの事実が君の善行だと思っていた行動の結果だという発想に至らないんだね。不利な事は全部洗脳? ありがちで便利な言葉だね」
「当たり前じゃないですか! さあ! 早く洗脳の力を解除しなさい! この魔王め!」
「そんな力、俺達は持っていない。この革命は……君や錬が起こした不祥事の尻拭いと、俺達自身の行動が原因で起こっているんだよ。そもそも、波で世界が大変なのに進んで革命なんて事する訳ないでしょ」

 良く考えようよ。
 と、最後にお義父さんが締めくくりましたが、樹はどこ吹く風と言った感じで聞き入れないご様子。
 どうやらまだ、夢から覚めてないようですな。
 ここは一発、死なない程度に暴行でもしますかな?
 なーに、こんなガキ一人、数発殴れば夢から覚めますぞ。

「いいえ、ウソですね。じゃなきゃ事件を解決した僕達に向かって石を投げるなんて事を国民がするはずがありません!」

 さすがにお義父さんはムッとした表情になりましたぞ。

「君はちゃんと人と話をしていたの? 君が根本的な解決をしていない所為で、飢饉や重税に苦しむ人は減らなかったんだよ? 目に見える悪人を倒したら、そりゃあ気持ちいいだろうけど、頭を倒しても次の頭が生えてくるという事を考えなかった、君の浅はかな行動の結果だよ」
「さすがは悪の基軸、言う事は違いますね! ですが僕は騙されませんよ!」

 お義父さんと樹がバチバチと睨み合いを始めますぞ。
 面倒ですな。
 樹を死なない程度に……まさしくダルマにでもして監禁しますかな?
 死なない程度にしておけば下手に暴れないだけ楽かもしれませんぞ。

「樹、後でメルティちゃん……第二王女と話をさせるから少しは国のおかしい点を気付くべきだと思うよ」
「何を言おうと信じられませんね」
「では、またお休みですぞ!」

 俺も不快だったので樹にスリープランスを打ち込んでやりましたぞ。

「う……!」

 さすがのお義父さんも、樹が倒れる姿を黙って見ておりますな。
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