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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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継承

 助手の親であるドラゴンの死体……ドラゴンゾンビが動き出しました。

 その光景をお義父さんは元より助手やキールが唖然とした表情で見つめていますぞ。
 サクラちゃんを初めユキちゃん達は臨戦態勢に入り、羽毛を逆立たせて警戒の声を出しております。
 もはや戦闘に突入するのは一目でわかりますな。

「……前回来た時、ドラゴンゾンビの話をしたけどその通りになっちゃったよ」
「あ……ああ……」
「ウィンディアちゃん、落ちついて!」
「ガウ!」

 助手と魔物がお義父さんの制止を振り切って飛びだしましたぞ。

「元康くん!」
「わかりましたぞ。この元康、あのドラゴンを骨も残らず焼き払ってみせますぞ!」
「違うって! 頼むからウィンディアちゃんとガエリオンちゃんを巻きこまない様にね!」

 おや? お義父さんに注意されてしまいましたぞ。
 ですが、あのドラゴンゾンビを一発で仕留めるのは強力な魔法を使った方が早そうですな。

「では行きますぞー」
「だから、まずはウィンディアちゃん達を止めないと!」

 お義父さんが助手を追い掛けて走り出すとキールが後を付いて行き、サクラちゃんが追い抜いて行きますぞ。

「危ないよー」
「放して! お父さんが! お父さんが暴れ出して……やめさせないといけない」
「ガウガウ!」

 ドタドタと魔物がドラゴンゾンビへ先陣を切り、ドラゴンゾンビに噛みつきましたぞ。

「エイミングランサーⅤ!」

 久しぶりに力を込めて槍を投擲しましたぞ。
 幾重にも分裂した槍がドラゴンゾンビの主要器官を貫いて吹き飛ばしますぞ。
 ですが、エイミングランサーでは決定打に欠けますぞ。
 ええい、助手の魔物が邪魔ですぞ。

「行きますわ」

 ユキちゃんが走り出しますぞ。
 フィロリアル様達が駆け出し、魔物に手を伸ばすドラゴンゾンビにそれぞれ攻撃しました。
 それだけでかなりの肉片が飛びましたぞ。
 ドラゴンゾンビはそこまで強くは無い様ですな。
 これならすぐに決着がつきますぞ。

「GYAOOOOO……」

 それでもドラゴンゾンビは、まるでダメージを受けるのもいとわないとばかりに魔物に手を差し伸べます。

「やめて! お父さん!」

 助手はサクラちゃんに止められ、追いついたお義父さんに抱き寄せられて尚、叫ぶように言い放ちます。

「GURU……!?」

 そこで、ドラゴンゾンビが助手の方に顔を向けて止まりましたぞ。
 むむ? 何か様子が変ですな。

「元康くん、みんな! 攻撃をやめて!」
「わかりましたぞ!」

 俺達はお義父さんの指示で攻撃を一時中断しますぞ。

「もうやめよ……お父さん。お父さんは全てを奪った全てが憎いかもしれない。だけど、それで世界を、他の誰かに迷惑を掛けちゃ、ダメだよ……取り返しがつかない事をするのはもう、やめて! その子はお父さんの子で私の妹なのよ!」
「ガウ!」

 助手が必死にドラゴンゾンビに語りかけますぞ。
 もしやドラゴンというのは死んでも意識があるのですかな?
 それはとても強靭な生き物ですな。

 ゾンビフィロリアル様……俺はゾンビとなったフィロリアル様を愛おしく思う事が出来るでしょうか?
 腐りきり、光の宿さぬ瞳……抜け落ちた羽……折れ曲がった骨や足……それで尚、戦おうとするフィロリアル様を俺は想う事が出来ますかな?

 ……それでも俺は等しく愛してみせますぞ。
 絶対に。

「お父さん。私、今は盾の勇者に保護されて、いろんな事を学んでいるの。外の世界はお父さんの言っていた通り、いろんな発見で一杯。いずれ私が旅立つ事になるのを心配していたけど……私は今……幸せよ。だからお父さん、安らかに眠っていて!」
「GU! GURUuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuu!」

 ドラゴンゾンビは至近距離に居た魔物を素早く掴みましたぞ。

「ガウ!?」
「ガエリオン!」
「元康くん! みんな!」

 お義父さんの命令に俺たちは一斉に動き出しましたぞ。
 ドラゴンゾンビは胸の肉を弾けさせ、赤く輝く大きな核らしきものを……魔物に向けて弾き出しましたな。

「ガウ!」

 魔物はドラゴンゾンビの掴んだ腕から這い出し……その核に向けて突進しましたぞ。
 ズプっという音と共に赤い核が魔物をその身に入れたかと思うと閃光を放ちましたな。

「い、一体何が!?」

 それを見届けるとドラゴンゾンビは目玉すらない頭を助手とお義父さんの方に向けて……一言。

「これで……やっと……ウィンディア……ありがとう」

 と呟いてドロドロと崩れ落ちて行きましたぞ。
 後に残ったのは腐った液体と骨だけですぞ。
 閃光の中から魔物は目を瞑って、気持ち良さそうな表情で浮かんでおります。
 やがてその光は魔物の中に吸い込まれて消えて行きましたぞ。

「ガウ!」

 着地し振り返った魔物の背中には前よりも大きな……翼が生えており、パタパタと助手の元へと戻って行きますぞ。

「わかってくれた……のかな?」
「お父さん……」

 助手が両手で顔を押さえて涙を拭っているようでしたぞ。

「私……お父さんの分まで、絶対に生きてみせるから。見守っていて」
「倒せなくは無いと思っていたけど、こういう形なら、まだ良かったのかな? それよりもガエリオンちゃん」
「ガウ?」
「大丈夫なの?」
「ガウ!」

 魔物がこれ幸いにとお父さんにじゃれついて顔を舐めますぞ。

「わっと、とりあえずガエリオンちゃんの容体を確認しないとね。ウィンディアちゃん」
「うん!」

 お義父さんと助手が魔物に触診をしていますぞ。
 ついでにステータスも確認しているようですな。

「んー……全体的にパワーアップしてる? もしかしてさっきの攻撃だと思ったのはガエリオンちゃんにせめてもの置き土産をしようとしてくれた……のかな?」
「羽……大きくなったね」
「ガウ!」

 パタパタと飛んで魔物は助手とお義父さんの股下を潜って飛びあがりましたぞ。

「わ! こんなに飛べるようになったんだ?」
「凄い凄い! お父さんみたいになるのはもうすぐだね!」

 助手が大興奮で魔物を褒めたたえていますぞ。

「むー!」

 サクラちゃんが反面不機嫌ですぞ。

「お義父さん、それくらいにするのですぞ」
「ガーウ」

 助手の魔物がこれみよがしにサクラちゃんに挑発していますぞ。
 その態度、万死に値しますぞ!

「ガエリオンちゃん、落ちついて。飛べるのはわかったからサクラちゃんに挑発しないで……とにかくウィンディアちゃんのお父さんの骨や体液の処理をしないと」
「うん! ガエリオン!」
「ガウ……ギャウ」

 と、鳴いて魔物はお義父さん達を降ろし、ドラゴンゾンビの骨の方へ行きましたぞ。

「ウィンディアちゃん。どうする? この骨……」
「体液の方は地面に溶け込んじゃってるし……骨は……」
「ギャウ!」

 助手の魔物がポンポンと骨とお義父さんの盾を交互に叩きますぞ。
 ん? この鳴き方、覚えがありますな。
 最初の世界のガエリオンが似た様な鳴き方をしていた様な気がしますな。
 先程の核石が関係しているのでしょう。

「そうだね。じゃあ、そうした方が、良いのならお願いしようか」

 魔物との会話を終えた助手がお義父さんにお願いしていましたぞ。

「お父さんの骨は、盾の勇者が使って。これで世界の為になるのなら」
「本当に良いの? ここでお父さんを眠らせるんじゃなかったの?」
「ガエリオンが、ここでさみしく眠っているよりも盾の勇者の武具の一部となって見守っている方がお父さんは幸せなんじゃないかって言ってるの」

 お義父さんは助手の言葉にしばらく目を合わせ、静かに頷きましたぞ。

「わかったよ。じゃあ君のお父さんの骨、使わせてもらうね」
「お父さんを……よろしくお願いします」
「うん。じゃあみんな、この骨の一部は盾に入れるけど、残りは馬車に積んで」
「わかりましたぞ!」
「ブー……」
「エレナさん……今更になって馬車から出て来ないでよ」

 怠け豚が算盤のようなモノを弾きながら喋りましたぞ。
 また金ですか。
 もはや、金銭には困っておりませんぞ。

「売らない。売るのはダメ」
「ブー……」
「まったく……エレナさんったら、本当に怠ける事ばかりでお金の事には敏感なんだから」

 締めが台無しだとお義父さんが言いましたぞ。

「良かったな、ウィンディアちゃん。父ちゃんと最後に話が出来て」
「うん。盾の勇者……改めて、これからよろしくお願いします」

 ペコリと助手はお義父さんに深々と頭を下げましたぞ。
 魔物も一緒ですな。

「こちらからもよろしく。これでやっと正式にウィンディアちゃんは俺達の仲間だね」
「はい……」

 恥ずかしそうに助手は答えましたぞ。
 そうして俺達はドラゴンゾンビの骨を回収し、疫病の原因となっている死骸の処理を終えましたぞ。
 最後はお義父さんと助手の頼みで俺が腐った肉が溶けた土地の部分を魔法で焼き払いました。
 立ち上る炎をみんな見つめていましたぞ。
 こうして、疫病を駆逐する事に成功したのでした。
盾一行の善行値:30(10)
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