挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

512/835

「で、樹のあれ、どう思う?」

 どうやら樹は革命に参加した様ですが、政権を手にした革命軍は公約を破った様です。
 その後、樹は革命軍に任せて去った、という事でしょうな。
 結果、現在の状況がある訳ですか。

「色々と足りない様ですな。まあ、俺も人の事は言えませんが」
「元康くんがなんで胸を張っているか良くわからないんだけど」
「ブー……」

 怠け豚が何やら呟きましたぞ。

「エレナさん……元も子も無い事行っちゃダメだよ」
「なんて言ったのですかな?」
「何故、税が多いかわからず、目先の利益に飛び付いた結果。自業自得……だってさ」
「これは滑稽、確かにその通りですぞ」

 怠け豚の癖にうまい事を言いますな。
 俺がパチパチと拍手をして笑うとお義父さんが言いました。

「元康くん!」

 お義父さんに怒られてしまいました。
 非常に不服ですが、間違っていないと思いますぞ。

 つまり重税だった理由は王が贅沢をするのではなく国を維持するための最低限の出費を要求していたに過ぎないという事ですな。
 樹の事ですから良く確かめもせず革命に参加したのは容易く想像できますぞ。

「樹も革命に関わっていたとなると革命軍にも拍車が掛っただろうし、失敗のしようが無かった……って所かな? でも……その結果がこれじゃあ。樹の調査不足なのは一目でわかっちゃうね。俺の時と同じく弱者に見える方の話だけ聞いたんだろうね。四聖武器書にもそんな感じのエピソードがあったし」
「ブー」
「ああ、うん……多分、闇米……密入国だろうね。革命の所為で金も物も無いし、商売人の観点からしたら見捨てるのが良いかもしれない。だけどな……食べ物を積載した馬車を渡しても国境を超えるのは難しそうだよね」

 深く溜息を吐いたお義父さんは決断するように頷きました。
 怠け豚が呆れる様な目でお義父さんに向かって何か言いましたぞ。

「わかってるよ、甘いのは。未来への投資と思って諦めるよ」
「ブー……」
「うん、見返りはないだろうね」

 お義父さんは販売用のバイオプラントの種を客に渡しに行きましたぞ。

「これは?」
「さっき食べてもらった野菜がすぐに実る魔法の種なんだ。ただ、気を付けて欲しい。皆で心を込めて真面目に育てないとすぐに枯れちゃうんだ。これなら運びやすいでしょ?」
「え……あ……」

 お義父さんは内緒とばかりに指を立てました。

「もしもその種のお陰で豊かになったのなら、その時に助けられた分だけ、誰かを助けてあげて」
「は、はい!」

 お義父さんの真心に密入国者は感謝の言葉をずっと投げかけておりましたぞ。
 料理を配り終えたお義父さんは馬車に戻ってきましたぞ。
 俺達も後を追って馬車に乗り込みます。

「こんな所かな」
「ブー」
「はいはい。商売人としたらダメなのは知ってるから」
「兄ちゃんカッケー」
「キールくんは目を輝かせない。あんまり良い事じゃないんだし……本当は買って行って欲しいものなんだから」

 お義父さんは疲れた様な表情をしておりますな。

「俺、甘いのかな……うーん」
「ナオフミはーそこが良い所ー」
「そうですぞ! 何だかんだでみんなを守っていく、それがお義父さんですぞ」
「そう言われると助かるよ。さてと……物もある程度捌けたし、後はどうしようかな」
「次の波までまだ時間がありますな」

 何だかんだで次の波まで大分減ってはきましたな。
 それでも、まだ時間はありますぞ。
 婚約者の誘拐事件が起こるのは次の波を解決してすぐでしたからな。
 そこまで時間を稼げばクズも赤豚も、三勇教も終わりですぞ。
 やっと奴等に制裁を加える時が近付いて来ましたな。

「とりあえずは今まで通り、エレナさんの所で補給して行商を続けようか」
「それが良いと思いますぞ。お義父さん、財布は大分潤いましたかな?」
「一応はねー……」

 お義父さんが馬車の中にある金袋を指差しましたぞ。
 これまでの行商でかなり稼いだので、かなりの量があります。
 ちなみに怠け豚は現在の金額を完全に把握しているそうですぞ。

 金と怠ける事にだけは知恵が回りますな。
 敵であったら一撃で殺している所ですぞ。
 しかし、お義父さんの役に立っているのですから、今回は特別に見逃してやりましょう。

「キールくん達の武器や防具を新調するくらいはあると思うよ。ウィンディアちゃんやガエリオンちゃんにも装備を買い与えないとね」
「ガウ?」
「ガエリオンちゃんは何が欲しい?」
「ガウ!」

 助手が魔物の言葉を翻訳するようですぞ。
 ふん、ドラゴンの武器など爪程度でしょうな。
 ドラゴンは火を吹く事と爪で攻撃する事しか出来ませんからな。

 その点フィロリアル様は様々な攻撃方法を持っていますぞ。
 サクラちゃんは双剣、ユキちゃんとコウは爪、ルナちゃんはまだ決まっていません。
 尚、クーは火を吹き、マリンは魔法と羽、みどりは天使になって斧を使っていましたな。
 ドラゴンと比べて如何に素晴らしいか、一目でわかりますな。

「元康くん、何を考えているかわかるけど、きっとどっちも大して変わらないよ」
「そんな事はありません。どうせ、爪とか牙とか言うのですぞ」
「ううん、鞍が欲しいって」
「鞍って……なんで?」
「ガウ!」
「盾の勇者と私を安全に乗せられるように」
「ブー!」

 サクラちゃんが異議を唱えていますぞ。
 俺もサクラちゃんに加勢します。

「サクラも鞍ほしー」
「張り合わない。サクラちゃんは人を乗せるの上手だから手綱だけで良いでしょ?」
「でもほしーガエリオンには負けないー」
「俺も欲しいですぞ」
「元康くんが鞍を付けてどうするの!」
「四つん這いになり、お義父さんを運びましょう」
「元康くん、少し静かにしてようか」
「ガウガウ!」

 バチバチとサクラちゃんと魔物は睨み合いを始めましたぞ。
 俺も参加してみましょう。
 助手に眼を付けますぞ。
 さっと助手から視線を外されました。
 勝ちましたぞ。

「元康くんは張り合わない」
「では俺は縄をお義父さんからもらって体に巻きつけますかな? 亀甲縛りとかされて馬車に転がされるのですぞ」
「だれか! 元康くんに水を掛けてあげて。さっきからおかしな事を言ってる」

 おや? 何かおかしな事を言ってしまいましたかな?
 キールに水を掛けられて俺はムッとしますぞ。

「お義父さんへの忠誠ですぞ。自らを痛めつける事で、お義父さんへの贖罪になるのですぞ」
「ああはいはい、それは未来の俺にでも見せてあげてね。今はやらないで」

 おお、なんと。
 もはやありえない未来での話をお義父さんが言いましたぞ。
 なんと辛い事を言うのですかな?
 俺はもう、未来のお義父さんに謝罪する事が出来ないのですぞ。
 なので今のお義父さんに許してもらえるために自ら罰を与えるのですぞ。

「話は戻って鞍かー……ガエリオンちゃんに必要なのかな? 俺とウィンディアちゃんしか乗せてくれないし」
「ガウ?」
「ドラゴンに乗るにはあった方が良いと思う」
「うーん、じゃあ今度買おうか。ついでにツメか牙辺りを買えば波に備えられるし。ウィンディアちゃんはどんな武器が欲しい?」
「ガウ!」
「私? んー……魔法担当だから杖?」

 そういえば助手は魔法が得意でしたな。
 ちなみに魔法とは言っても龍脈法の方ですぞ。
 となると助手の武器は杖が無難でしょうな。
 しかし、最初の世界で助手は杖なんて持っていたでしょうか?

 思い出せませんな。
 いつもキャタピランドかガエリオンに乗っていましたぞ。
 もしや……素手?

「そうだね。じゃあ杖辺りを武器屋の親父さんにお願いしてみようか。いや、魔法屋に聞いた方が良いのかな?」
「よくわかんない」
「ブー……」
「ああ、魔法屋で頼むんだ? あの魔法屋のおばちゃんは気の良い人みたいだからお願いしてみようね」
「うん」

 決まりましたな。
 これで助手も多少は戦力になるでしょう。
 悔しいですが、ドラゴンはフィロリアル様のライバル。
 ライバルとなる以上、ライバルなりに能力があるのも事実。

「兄ちゃん! 俺は?」
「サクラはー?」
「二度目の波の次は、事件がきっと起こりますぞ。それも三勇教が裏に関わる事件ですぞ」
「なら……もう隠す必要も無いかも?」
「じゃああっちの方での武器を持ってきても良いのか?」

 二度目の波さえ乗り越えられれば武器や防具を誤魔化す必要がなくなりますからな。
 ちなみにシルトヴェルトで使っている装備は、あちらで長期に借り受けている宿に置いてあります。
 あちらでは金など腐る程ありますし、鍵の掛かった宿なので盗まれる心配もありませんぞ。

「サクラもあっちの武器が良い」
「そうだね。じゃあ波の前日にあっちの武器を取りに行っちゃおうか。親父さんには別に武器を作ってもらいたいけどね。巡回ついでにメルロマルクの城下町の方にも行ってみよう」

 方針が大分決まってきましたな。
 などと思いながら俺達は怠け豚の領地へと戻ったのでした。
 そこで……とある話を聞く事によって急遽、行くべき方角を変える事になるなど、この時は全く思ってもいませんでしたぞ。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ