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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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ドラゴンの娘

「ガウ!」

 それからしばらくして助手はやっと泣くのをやめました。
 助手の魔物が巨大なドラゴンの死骸に近寄ろうとしております。

「ダメだよ。今、あそこに近づいたら君も怪我じゃ済まされない」
「お願い……いかないで」

 助手が魔物の尻尾を掴んでいるので魔物は巨大ドラゴンの元へ行くのを諦めた様ですぞ。
 泣き止みはしましたが、それでも悲しみを乗り越えた訳では無い様ですな。
 魔物に擦り寄って、悲しみを共感している様でしたぞ。

「君はこの山の魔物とは仲がいいのかな?」
「お父さんの巣穴の近くはそうだけど……」
「そう……ここは今、人の手が入りすぎているから……旅立った方が良いだろうね」
「……」
「もしよかったら、俺達と一緒に来ない?」
「面倒を見るのですかな?」
「このまま、はいさようならとか出来ないでしょ!」
「そうですな」

 俺とお義父さんの問答を見ながら助手は迷った様な表情をしております。
 せっかくお義父さんが伸ばしている手に迷うとは、やはり子供ですな。

「それに……俺は君にとって憎むべき相手でもある」
「……え?」
「君のお父さんを倒したのは、剣の四聖と呼ばれる勇者なんだ。俺はその勇者仲間の一人、盾の勇者である岩谷尚文」

 助手が警戒の色を強くしてお義父さんを睨みますぞ。

「そんな話をしてよろしいのですかな?」
「このまま死に場所を求めて彷徨ったりされるよりは良いと思う」
「兄ちゃんカッケー」
「キールくんは茶々を入れないでね」
「お父さんは、我が死ぬことがあってもその仇を討とうと考えるなって……でも……その相手は貴方じゃない!」

 助手は巨大ドラゴンに群がる冒険者や村人を思い切り睨みつけている様ですぞ。
 気持ちは……わからなくもないですな。
 調子の良い時だけ勇者を崇めて、都合が悪くなると罵倒して石を投げてきた連中など皆殺しにしても鬱憤は晴れないと思えるほどの怒りがありますからな。

「もう……私に行く場所なんて無い……」
「ガウ!」

 そこに魔物が自己主張して助手に声を掛けますぞ。

「ガウ、ガウガウ!」
「そう……うん、そうよね」

 助手は魔物の言葉を理解できる能力を持っているのでしたな。
 人語を喋る事の出来ないフィロリアル様達の声を訳する事が出来る希少な存在だったのを俺は知っていますぞ。

「その子はなんて言っているんだい?」
「強くなりたいって。今度こそ、お父さんみたいに負けないくらいに。だから私も……強くなりたい。もう誰にも奪われない様に……」
「俺と同じだな! ウィンディアちゃん!」
「うん!」
「それなら方法はいくらでもある。勇者の技能には魔物を強くさせる事だって出来るんだ。君が望めば……俺は君の力になれるよ。どうする?」

 お義父さんが助手に手を差し伸べます。
 助手はその手を見つめ、静かに目を瞑ってから伸ばしました。

「私は……どんな手段を持ってしても強くなりたい。その為なら悪魔にだって魂を売ってみせる!」
「悪魔って……まあ、これからよろしくね。えっと、君も来るよね?」
「ガウ!」

 ドラゴンの混ざった魔物もお義父さんに手を差しだしましたぞ。

「よろしくね。君の名前は?」
「ガウ?」
「その子はまだ名前は無いの」
「そうなんだ?」
「うん、だから」

 助手は妹分と呼んでいた魔物の両手を掴んで祈るように目を瞑ってから答えますぞ。

「お父さんと同じく……それでいて強いドラゴンに育って欲しいから、お父さんの名前を継承して欲しいの」
「……ガウ!」

 助手の言葉に魔物は呼応するように強く頷いて鳴きましたぞ。

「うん、これからよろしくね。ガエリオン」
「ガウ!!」
「あのドラゴン、ガエリオンって名前だったんだ」

 お義父さんは助手達に向けてパーティーの勧誘を飛ばした様ですぞ。

「あれ? ガエリオンちゃんをパーティーに入れられない」
「ルールが違うって魔物達が言ってた。人が飼いならすには魔物紋が必要なんだって」
「魔物って魔物紋で縛らないといけないんだ?」
「普通は卵からじゃないと懐かないそうですぞ」
「ウィンディアちゃんのお陰で同意は得られるから……キールくんと同じく仮面奴隷にした方が強くなれるのかな? じゃあ移動開始しよう。奴隷商の所か、エレナさんのコネとかで出来るかな?」
「これからよろしくですぞ」
「……よろしく」

 俺が助手に言葉を投げ掛けるとお義父さんが不思議そうな表情を浮かべました。
 何かおかしな事でもありましたかな?

「……? 元康くん、さっきから静かというか普通に受け答えしてるけど、ウィンディアちゃんの事、どう見えているの?」
「ドラゴン臭い小娘ですな。それがどうしたのですかな?」
「どうしたのですかなって……もしかしてこの子、未来で会った事があるの?」
「そうですぞ。未来ではフィーロたんの主治医の助手をしていましたな。お義父さんが経営する村で魔物の世話をしていたんですぞ」
「……?」

 助手が首を傾げております。
 お義父さんの気を引こうとでもしているのでしょう。
 俺は騙されませんぞ。

「そしてお義父さんがもらったというドラゴンの育ての親をしていましたぞ。名前も先ほどと同じ物を付けていましたな」
「どう言った経緯で未来の俺と知り合ったか知ってる?」
「また聞きなので詳しくは知りませんな」
「えっと……そのフィーロちゃんという子とはどういう関係なの?」
「それはですな――」

 と、俺が説明を始めようとした所を助手が割り込んできました。
 お前はお呼びでないですぞ。

「なんの話をしているの?」
「えっとね。この人は元康くんって言って俺と同じく四聖の槍の勇者なんだけど……未来から来たんだ。で、未来で俺とウィンディアちゃんは出会っているらしいんだ」

 とても信じられないという顔をしていますな。
 まあドラゴンの手が掛かった者に信じてもらいたいとは思いませんが。

「おい! なんでウィンディアちゃんは槍の兄ちゃんに普通に相手してもらえんだ! 俺はこの姿じゃないと話を聞いてもらえないのに!」
「フィーロって子と親しい関係者じゃないと難しいみたいだからねー……それで元康くん、どんな関係だったの?」
「フィーロたんのライバルであるガエリオンの育ての親ですぞ! 絶対にフィーロたんは負けませんぞ!」
「えっと……ドラゴンの娘で、魔物の管理をしていて、元康くんの好きな子の主治医の助手で、ライバルの育ての親、役職多いな……実は凄い子なんじゃないの?」
「……?」

 いまひとつピンとこないと言う様な表情で助手は首を傾げておりますな。
 とぼけたって俺は知っていますぞ。
 コイツが大事にしていた最初の世界のガエリオンがフィーロたんが飛べない事をバカにしていた事を。

「この人が何を言ってるかわからない……」
「ガウ?」
「ああ……うん、あんまり気にしないで良いよ。本来、女の子は元康くんに認識してもらえないんだけど、ウィンディアちゃんは特別に見てもらえているってだけだから」
「意味がわからない」

 お義父さんは複雑な笑みを浮かべました。
 それにしても……。

「ドラゴン臭いですな。よく体を洗うのですぞ」
「なんですって! ドラゴンの何処が悪いのよ! 貴方はフィロリアル臭いじゃない! 鼻が曲がりそうだわ!」
「ハッ! フィロリアル様の高貴な香りが理解出来ないとは、所詮はドラゴンの娘」

 助手の顔が若干綻びました。
 ドラゴンの娘である事が嬉しいとは……狂っていますな。
 何が楽しいのかさっぱりわかりませんな。

「ふん、魔物の中でドラゴンは最強なんだから!」
「最強はフィロリアル様ですぞ!」
「フィロリアルなんて、ただの飛べない鳥じゃない! 馬と何が違うのよ! 騎竜の方が何倍もかっこいいわ!」
「……どうやら死にたいようですな」

 お義父さんが止めるでしょうから、加減してやりましょう。
 何が騎竜ですかな。
 フィロリアル様達の足元にも及ばない、精々空を蚊トンボの様に飛び回っている程度しか出来ない雑魚の分際で。
 空ならフィーロたんも飛べますぞ!

「ああ……水と油みたいな関係だったのか……」

 お義父さんが頭を抱えましたぞ。
 そんなにも大変な出来事ですかな?

 こうしてまた馬車の中が騒がしくなったのですぞ。
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