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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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主治医の助手

 そうして巨大なドラゴンの死骸が見える開けた場所に辿り着きましたぞ。

「完全に見世物だね。錬が知ったらどんな顔するんだろう……」

 現在、巨大なドラゴンの死骸の前には冒険者が列を作っております。
 剣の勇者様が倒したドラゴン! 鱗一枚につき……とプラカードを持った村人がおりますな。

「もうゼルトブルへ移動中なのでは?」
「そうかもね。陸路と海路があるんだっけ?」
「錬の足では海路の方が早そうですな」

 なんて話をしながらドラゴンの死骸を眺めました。
 角や目玉は既に無い様ですぞ。
 歯も無いですな。
 無残に食い散らかした残骸に見えなくは無いですぞ。

「うわ……心臓とかはくり抜かれて無いみたいだけど、臓物はそのままっぽくない?」
「そうですな」
「……臭う」
「うう……兄ちゃん、ここすげーくせーぞ」

 鼻の良いキールやフィロリアル様は不快そうにしております。

「うわぁ……まあ、倒されて一週間も経てば腐り始めるよね。注意した方が良いかもしれない」

 そう呟いたお義父さんはローブを羽織ったまま村人に向けて注意しに行きましたぞ。
 盾の勇者とばれてはいけませんからな。

「失礼ですが、このドラゴンの死骸……内蔵辺りが腐敗し始めているので早めに解体した方が良いと思いますよ? 変な風土病の原因になるかもしれませんし」
「……何を言っているんだ。そんな事をしたら冒険者が来なくなるだろ」
「ですが……」

 お義父さんの説得を、因縁と認識したのか村人は不快そうな表情で邪険に睨んできましたぞ。
 何度かお義父さんは説得を続けたのですが、しばらくして肩を落として帰ってきました。

「ダメだね。お金に目が眩んで全然聞きいれてくれないよ。衛生管理の意識が甘いのかな? 無理に排除したら何言われるかわからないし……」
「では俺が焼き払って見せますぞ!」
「いや、それはダメだから!」

 お義父さんに怒られてしまいました。
 ですが、放置して良いのですかな?
 まあ、お義父さんは注意致しましたからな。
 問題が起こっても自業自得でしょう。

「念の為に村の方でも警告はしておくとして……何かあっちの方が騒がしくない?」

 冒険者がぞろぞろと歩いて行く方角がありますぞ。
 見た感じだと、一般冒険者よりも身なりは良さそうですな。
 クラスアップ経験済みと見て良いでしょうか?

「酒場で聞いたドラゴンの財宝を探してる冒険者かな?」
「でしょうな」
「ドラゴンの財宝かー……」
「兄ちゃん前に見つけたよな」
「そうだね。結構ザクザク見つかって、メルロマルクに持ってこれないのが残念だったね。ラーサさんに預かってもらったけど」
「カッコいい姉ちゃん、目が金になってた気がすっぞ」

 なんと、お義父さんも最近ではいろんな所に行くようになっているのですな。
 まあ、ドラゴンもピンからキリまでありますから、時々宝は見つかるでしょう。

「俺達も探してみようか?」
「あの感じじゃ見つかってんじゃねえの?」
「そうかもね」

 ぞろぞろと冒険者が歩いて行く方角をお義父さんは見ていますぞ。

「まあ、どんな感じか見に行ってみようか。せっかく来たんだし」
「おう! なんか変な感じだけど、見に行こうぜ、兄ちゃん!」
「行きますぞ」

 こうして俺達は巨大ドラゴンの死骸のある場所から奥の方へと行きましたぞ。


 で、行った先で俺達は冒険者が……巣穴を守ろうと戦い続けるドラゴンの眷属と呼べる魔物達と、冒険者との戦いに遭遇しました。
 さすがに大分奥地に差しかかっている事もあって、平凡な冒険者は来られないようですが。
 ここに来るまでに、何度か魔物と遭遇しましたからな。

「く……連日、これだけ戦って親玉が居なくても財宝の守りを突破出来ないのか」

 などと遠くで呟いています。
 俺やお義父さんからしたらそこまで強力には見えないのですが……。
 ただ、魔物の方は相当疲労しているようですな。
 一匹、また一匹と数が減っております。
 最後の一匹と思わしき洞窟を守護する魔物が冒険者数人によって討ち取られました。

「よし! みんな! ドラゴンの財宝は目の前だ! 行くぞ! 我が村の財源にするんだ!」

 冒険者のリーダーは……近くの村の青年冒険者の様ですぞ。
 鎧や剣の所々に村の印が付けてあり、先ほどの言葉もあって村の為に戦ったと言うのが明らかですぞ。
 おおー! と一緒に戦った冒険者達と共にドラゴンの巣穴に入って行きます。

 周りには危険な魔物がそれなりにいるので、俺たちの周りにはもう冒険者は居ませんぞ。
 お義父さん達と共にドラゴンの巣穴の方へ行きました。
 すると最後の守りとばかりに巣穴の中で魔物達が卵や財宝を守ろうとしているようですな。
 ですが、巣穴の外に居た魔物よりは強くないのか、冒険者達に駆逐されて行っていますぞ。

「おお! ドラゴンの卵だ! 高く売れるぜ!」
「やっぱり宝を隠し持っていたか。剣の勇者はこれに気付かないとは、抜けてんな」

 などと、それぞれ欲望を滾らせた目で物色して行っております。
 そうですな。錬は色々抜けていますな。

「兄ちゃん……俺、アイツ等の目付き、嫌だ」

 キールがお義父さんの方に擦り寄ってマントをギュッと握りましたぞ。

「もしかして村が蹂躙される光景を思い出しちゃった?」
「……うん」
「そうだね。魔物とはいえ……ちょっと酷いかな。自分達でボスのドラゴンを倒した訳でもないのに……」

 お義父さんの言う事は頷けますぞ。
 自分で親玉を倒した訳でもないのに宝は独占しようとする魂胆、見ていて反吐が出ますな。
 これは豚共と同じ発想ですぞ。
 コイツ等は男ですが、俺には豚に見えてくるような気がしてきましたぞ。

「や、やめてー!」

 そんな風に思っていると、宝を物色しながら生き残りの魔物を惨殺する連中よりも奥。
 巣穴の奥から声がしましたぞ。

「もうやめて……お願い! みんなを……みんなを殺さないで! お父さん……助けて……」

 とても悲痛な声でしたぞ。
 ピクリとキールの耳が声の方に過敏に反応し、お義父さんのマントに顔を埋めていたのをやめて振り向きました。

「おい、ドラゴンの巣穴に亜人のガキがいるぜ」
「犯す為に育ててたとかだろ。コイツも捕まえて売り払おうぜ」

 などと、不快な笑みを浮かべながら冒険者達は一歩ずつ声の方へ魔物を屠りながら近づいて行きます。

「ガウウウウウウ!」

 まだ魔物が生き残っているのか、どこかから唸り声が聞こえてきます。

「させないぞ! 今度こそ……俺は守って見せるんだ!」
「あ、キールくん!」

 キールがお義父さんの制止を振り切って巣穴に入って突撃して行きましたぞ。

「ああもう……不快だったけど行くしかないか! 元康くんも来て! サクラちゃん達も!」
「わかりましたぞ」
「うん」
「キールくん!」

 キールを追い掛けてお義父さん、俺、サクラちゃんにルナちゃんが巣穴に入ります。

「わ、なんだこの犬っころ!」
「ワンワン!」

 キールが冒険者達の方に向けて吠えかかりながら先頭に居る冒険者から、何かを守るように立ちはだかりましたぞ。
 俺達の方は後ろの冒険者共が邪魔で確認し辛いですが……どうやらキールは魔物とその後ろのいる声の主を守ろうとしている様ですな。

「この子は絶対に奪わせねえ! ワンワン!」
「え……?」

 助けを求める声の主はポツリと声を漏らしている様ですぞ。

「なんだこの犬っころ! 獣人か!? こんな所に汚れた獣人がなんでいる!」
「待て、後ろのガキもヌイ種っぽいぞ……ワーヌイ種がいるとなると関係者だろ。ついでに捕まえて売り飛ばすか!」
「させねえって言ってんだろ!」

 キールが手を伸ばす冒険者の腕を掴んで投げ飛ばした様ですぞ。
 俺達の方に一人、冒険者が投げられてきました。

「おい……!」

 ここでお義父さんが大きな声で叫びます。
 すると後ろにいた冒険者が振り返り。

「なんだ? 今、変な犬が俺達の邪魔をしてんだ。これ以上余計な騒ぎを起こすんじゃ――」
「そいつは俺の物だ。俺が、お前等に嗾けたんだよ」

 ドスの利いた声でお義父さんはローブを羽織ったまま言い放ちました。
 冒険者の殆どが振り返って確認します。

「なんだ? この狂犬を嗾けた、だと!?」
「ああ、お前等は非道にしか見えない行為をしようとしたようだからな」
「何が非道だってんだ! 汚れた亜人を捕えようと――」

 振り返って睨みつけようとした所で、冒険者達はフィロリアルクイーン形態のサクラちゃんとルナちゃんに目が行きますぞ。
 現在、フィロリアルクイーン形態のフィロリアル様を連れているのは神鳥の聖人しかいませんからな。
 メルロマルクで話題になっている俺達を知らない冒険者は居ませんぞ。
 現に登山する前に薬を買って行った者は多数存在しますし、食料を購入した者もいるでしょう。

「よ、良く見たら神鳥の聖人の馬車で売り子をしてる犬じゃねえか!」
「そうだ! 俺は、お前等がやろうとしている事を許せねえんだ! ワンワン! ウー……」

 キールが今まで無いくらい唸っていますな。

「という訳だ。俺はここでお前達の搾取……冒険者だからドラゴンの巣穴の財宝を手に入れることには文句は言わない。だけど、その財宝の中に人がいるなら保護するのが人の道でしょ? それを売り飛ばす? 状況次第じゃこの辺りには薬や食料を売らない方が良いかもしれないね」
「せ、聖人様! 聞き間違いでは無いですか? 保護しようと思ったんですよ。それに魔物に捕えられていますし」

 バッと冒険者はお義父さんに声の主とキールが見えるように道を開けました。
 俺はそこでキールが守るように立っている先を見ましたぞ。

 そこには……フィーロたんの主治医の助手がおりました!
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