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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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不公平

「やったな兄ちゃん!」
「やったね。サクラもナオフミを助けたかった」
「ありがとう、キールくん、サクラちゃん。さ、なんか空気悪いから今日は早めに失礼するとしようか」

 お義父さんはキールとサクラちゃんと親しげに話をしてから俺に声を掛けましたぞ。
 これ以上、ここに居る必要はありませんな。
 お義父さんは立ち去る途中でクズと赤豚に向けて不敵にニヤリと笑って去りましたぞ。
 そう……お前等の策略は悪い結果で終わったのですぞ。

「まったく、あの様子を見てどうして無理やり戦わさせていると思ったのか……」

 先ほどの戦いを興奮気味に称賛するキールを見て、錬がお義父さんとキールの仲の良さを認識した様ですな。

「樹はかなり正義感が強いようだが、道理を無視する傾向があるな……」
「そうでしょうとも」
「元康は……」

 錬が何やら視線を逸らしていますぞ。
 俺に何があるのですかな?

「尚文」
「ん?」
「弱い盾職ではあったが、善戦したと思う。あんな風に戦えるとは思わなかった。よくがんばったな」
「え、あ……うん」
「それに比べて樹は精進が足りないな……盾職に負けるとは」

 錬が続ける言葉にお義父さんが若干イラっとした様に眉を寄せましたぞ。

「兄ちゃんは強いんだぞ!」
「うん、ナオフミは強い」

 キールとサクラちゃんが錬に抗議しますが、お義父さんが止めますぞ。
 余計な騒ぎはもうごめんという感じですな。

「パーティーも白けちゃったし、帰ろうか」
「そうですな。では明日、城にまた来ますぞ」

 城内ではこの後に何をされるかわかった物ではありませんからな。
 俺達は颯爽と、お義父さんに負けて白けたムードを醸し出す会場を後にしましたぞ。
 後の話では不機嫌なクズと赤豚がずいぶん暴れたそうですが、知りませんな。


 翌朝。
 城の外の宿で休んでいた俺達は、朝に城の門を潜りましたぞ。
 玉座の間に案内されて、クズがやってくるのを待ちます。

「このままでは奴隷廃止が出来ない……」

 樹は昨夜、お義父さんに負けた事実を根に持って負けていないとグチグチと呟いています。
 なんでもお義父さんの話では、樹が勝った場合、奴隷廃止の方向へ持って行く予定だったんじゃないか、との話。
 勇者の中で奴隷を使っている者が居るとそれが難しくなる、みたいな話でした。

 その為、樹はお義父さんを親の敵の様に睨んでおります。
 尚、その様子を錬が不快そうに見ておりました。

 クズも強引にお義父さんから戦力を奪うのは無理ですぞ。
 今のキールやサクラちゃん、他にユキちゃんやコウだって、この城の兵士が何人束になったとしても勝てる事は無いでしょうな。
 ハハハッ!

 ただ、お義父さんは若干警戒を強めております。
 さすがにイラっとしたから勝ってしまったけれど、本来はワザと負けた方が良かったかもしれない、と寝る前に呟いておりました。
 変に陰謀を張り巡らせたりして俺の未来の知識外の行動をされると対処に困る、と。

 次の波まで一ヶ月半ありますからな。
 未来でお義父さんの無実が証明される時期を考えるに、後一ヶ月半の間は国内で活動しているように見せかけるのが重要ですぞ。

「……では今回の波までに対する報奨金と援助金を渡すとしよう」

 クズが玉座に偉そうに座ってお義父さんと俺をゴミを見る様な目をしてから言いましたぞ。
 側近の者が金袋を持ってきますな。大きさはさまざまな様ですが、最低でも銀貨500枚は確定していますぞ。

 昨日の件が原因で因縁をつけて没収などをされる可能性は無いわけではないとお義父さんは言っていましたがな。
 問題はこれ以上の不遇な行いは錬が持っている国への不信感を加速させますぞ。
 まあ、既に振りきっているようにも見えますがな。

「ではそれぞれの勇者達に」

 袋を確認するとジャラジャラと見た感じ銀貨500枚位ありますな。
 お義父さんも同様ですぞ。
 今回の収入で何を買いましょうか?

 時期的に……フィーロたん!

 そうですぞ。
 お義父さんはこの頃にフィーロたんを手に入れたのですぞ。
 前回もこの時期に合わせて俺は魔物商にフィロリアル様の卵を買占めに走ったのです。
 ですが、全く手に入れる事は出来ませんでした。

 さて……お義父さんは未来でフィーロたんを手に入れる時にどのような事を言っていましたかな?
 魔物商から購入した……だったかと思いますが詳しい詳細は曖昧ですぞ。
 魔物商自身から聞いたのでしたかな?
 お義父さんの口から直接聞いたか自信がありませんぞ。

 どちらにしても時期的にはこの頃ですぞ。
 奴隷を購入したお得意様を考えるに、次にするのはお義父さんにフィーロたんを購入させる事ですぞ。
 これはお義父さんに直接聞いて、誰も信じられない状態ならどうするかを聞く必要がありますな。

「まずはイツキ殿……貴殿の活躍は国に響いている。よくあの困難な仕事を達成し、国の為に戦ってくれている。銀貨7600枚だ」

 お義父さんがポカーンと樹の方を見つめていますぞ。
 銀貨7600枚! 金貨で換算するに76枚相当!
 これは俺が本来もらうはずだった銀貨の殆どが樹に回っていて尚プラスされていると見て良いですな。
 きっとお義父さんが勝った事に対するクズなりの嫌がらせでしょう。
 証拠にジャラジャラと大きな金袋をこれ見よがしに俺達に見せつけていますぞ。

「悪い事をしているから評価されないんですよ」

 本当にイラっとしますな。
 ループさせない為に見逃しているのですが、この際ですから死なない程度に四肢を飛ばしてやりますかな?
 お前を援助しているクズと赤豚は悪の化身のような権力を持った外道ですぞ。

「次にレン殿、やはり波に対する活躍と我が依頼を達成してくれた報酬をプラスして銀貨3800枚じゃ」
「……半分」

 錬は特に大きな変化はありませんな。
 ですが錬はクズや赤豚に対して疑心が募っているのか、静かに受け取っております。
 きっと内心では自分と樹の依頼達成量を比べて、理不尽を感じているのでしょう。

 なんせ樹はコレといった活躍が耳に入ってきませんからな。
 正直言えば、現在メルロマルクで噂になっているのは剣の勇者と謎の聖人ばかりですからな。
 仲間も錬が不機嫌なのを察して話しかけられずにいるようです。

「次にモトヤス殿は……特にめぼしい活躍をしているようでは無いから銀貨600枚だ」

 なんと、俺の分は若干多めのようですな。
 まあ、クズからしたらお義父さんを擁護はしているが、どうにか出来ると踏んでいるのでしょうかな?

 残念ながら大きく出る前にお義父さんが止めているだけですぞ。
 時と場合によっては消し去りたい所ですが我慢ですな。
 後一ヵ月半の辛抱です。
 赤豚が何やらクズの隣で営業スマイルを取っているように見えて不愉快ですぞ。

 最後はお義父さんですな。

「ふん、盾にはもう少しがんばってもらわねばならんな。援助金だけだ。いや、イツキ殿を毒で昏倒させた治療費として銀貨200枚を差し引いている」

 ……つまりお義父さんは銀貨300枚だと?
 この分が樹に加算されているのでしょうか?
 茶番も限度を知れですぞ。

「……治療費で銀貨200枚? 強引に勝負をさせた挙句これか? 尚文は波である程度仕事はしたはずだぞ?」

 錬はクズを睨みつけます。
 もはや錬の疑心は限界を超えていますな。
 これは危険な兆候でもありますぞ。
 下手に錬が暴走してクズや三勇教に干渉されたら未来の知識が役に立ちませんぞ。
 それ所か錬単体では教皇の武器に敵いません。

「見た感じギルドの仕事を尚文達はやっていないようだが、知っているのか?」
「えっと……」

 お義父さんが俺に目を向けますぞ。
 仕事などクズの権力で回されるはずはありませんからな。
 しかしどう答えるのが良いですかな?

 少々、錬の疑心を刺激し過ぎました。
 返答次第で大変な事態になるのは想像に容易いですな。
 このままここで暴れてしまっても錬は俺達を信じてくれるような気がしますが、反対に樹との関係は完全に決裂するでしょう。

 歯痒い物ですな。
 そもそも……なんとなくですが手遅れになりつつあるような気がしてきました。

「ギルドはあったのでしょうが仕事を斡旋してもらえなかったのですぞ」
「なるほど、まあこの国のギルドならしょうがないな……」

 ですが、ここで錬を騙す事は難しいですぞ。
 変な嘘を吐けば今まで積み上げてきた物を無意味にしてしまうかもしれません。
 ギルドの事も知らなかったと言うのは無理があるでしょうな。

 既に賽は投げられているのですぞ。
 ここからどう動くかは分かりませんが、錬の命もある程度は気に掛けねばなりません。
 前回ループする事の原因となった樹に目が行きがちですが、錬の命も守らなければいけませんからな。
 仮に錬を逃がすとして、考えられるのはゼルトブルでしょうか?

 目を付けられているでしょうが、この段階の錬ならある程度は自由な行動が出来ると思いますぞ。
 疑心であって、まだ完全に敵対では無い手前、お義父さんが国内で暴れている犯罪者として報告などをして敵対させる可能性は十分ありえます。
 前回の樹の様に、錬の仲間を殺す、などする場合も考えておきましょう。

 そういえば、ここ一ヵ月を振り返ってみると三勇教らしき連中の強引な行動は鳴りを潜めていますな。
 おそらくは下手な襲撃は逆効果であるのと、女王からの密かな援護が効果を発揮していると見て良いでしょう。
 クズも立場的に追いやられているのですな。
 となれば、する事に変化はありませんな。
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