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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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中学時代の友人

「ブ? ブブー」

 ポータルで馬車へ戻ってくると、やる気なさそうに読書をしていた怠け豚が顔を上げてこちらに声を出しました。
 コイツはいつ見ても横になっていますな。
 そのまま豚の丸焼きにでもしてやろうか、本気で悩みますぞ。

「ただいま。何かおかしな事とかあった?」

 お義父さんの問いにユキちゃんが答えますぞ。

「特に問題はありませんでしたわ。この方もおかしな素振りはしませんでした。ただ……やる気が微塵も感じられませんでしたが」
「ブブー」
「あはは……特に何もないなら良いんだけど。盗賊の襲撃とかも無かったんだ?」
「はい」
「さすがにそこまで警戒はされていないと見て良いのかな? 元康くんの作戦が実を結んだと見て良いね」
「ありがたきお言葉ですぞ!」
「とりあえずはー……こんな感じで行商をしつつ裏でLv上げや強化を進めていこう。そうすれば順調に俺達は強くなれる。もちろん警戒は怠ったらダメだけどね」

 そうですな。
 お義父さんの指示通り明日はユキちゃん達の底上げをした方が良いでしょう。
 結果的にサクラちゃんやお義父さん、そしてキールや豚のLvが上がって行くのですぞ。
 クラスアップを目的にしましょう。

 問題は大きなフィロリアル様から特別なクラスアップ補助をして頂けない点ですな。
 何処かで出会えればよいのですが……フィロリアル様達と上手く遭遇する状況の再現が難しいですな。
 俺が最初に出会った時はクー達と峠をしている時でしたな。
 あの辺りを走って居たら出会えるですかな?
 どうも難しい気がしますぞ。

 次に出会えそうなのは……シルトヴェルトへの道の途中ですな……。
 探すのは良いですがポータルで定期的に帰る事を考えるとやはり出会う手間が掛ります。
 でー……未来のお義父さんは大きなフィロリアル様に出会った時の事をおっしゃっていたような覚えがありますぞ。

 フィーロたんが劇的に強くなったあの時……お義父さんが本格的に指名手配される出来事、婚約者と共にメルロマルクに潜伏していた時かと思われますぞ。
 だとするとまだまだ先になりますな。
 まあ……クラスアップのボーナスは優秀ではありますが資質向上で誤魔化しが出来ない範囲ではありませんぞ。
 最悪、Lvリセットをして頂ければどうとでもなりますな。

 資質強化自体はリセットしても残りますから、Lv40程度、強力な魔物を倒していれば勇者なら容易く稼げる領域ですぞ。
 こうして俺達のLv上げ作業は問題なく進んで行ったのですぞ。


 メルロマルクで使えるのは行商で稼いだ金銭とお義父さんが定め、シルトヴェルトで集めたドロップ類は未使用にしてますぞ。
 ただ、キールやサクラちゃんが使う武器は別ですな。
 狩りでの効率に関わりますぞ。
 ですが、見知らぬ武器を振り回していたら怪しまれるからこちらもシルトヴェルト限定で使っております。

 そんな日々が一週間程過ぎ去りましたぞ。
 その間にもお義父さんは盾の技能を使って各地で薬を売り歩いております。
 病状や傷が深い者には正体が分からない様に深々とローブを羽織り、薬を服用させました。
 俺もその協力者として治療を手伝いましたぞ。

 最近では口コミで神鳥の奇跡を振りまく馬車と呼ばれている様ですな。
 町に到着すると治療して欲しいと頭を下げる人や祈る人が出てくる程ですぞ。
 お義父さんは笑顔でそれに応えると、可能な範囲で治療していきました。
 基本的にはお金を頂いているのですが、時には貧しい人に無償で治療を施す事もありましたな。

 まあ、行商して二週間になろうとしている程度なので、極一部の地域だけですが。
 メルロマルク中を回り切るには時間が足りませんぞ。
 まあ二ヶ月もあるのですから、その間に回っていけば良いでしょう。

「召喚されて、そろそろ三週間になったね」
「そうですな。最初の波まで残り一週間になりますぞ」
「みたいだね。お金も着実に集まってるけど……いい加減、薬以外の商売も考えないとね。あまり儲けにはなって無いし」

 何分、お義父さんは優しい方ですからな。
 安めで薬を販売し、治療までしている始末。
 お金が足りず、藁にも縋る思いでお義父さんに頼りに来る患者も増えて来ているそうですぞ。
 そこでお義父さんは後で……余裕のある時にで良いからと支払いを後回しにしている事が多くなってきています。

「自分達の状況ではもっと守銭奴の様に集めないといけないのはわかっているんだよ? ただ……ね? シルトヴェルトの方じゃお金があると思うと自然と甘くなっちゃって……ごめんね。元康くん」
「気にしなくて良いですぞ」

 最初の世界でもお義父さんは神鳥の聖人と呼ばれていました。
 きっと未来のお義父さんも似たような事をしていたのでしょう。
 お義父さんが俺達に追われる事になった際に、人々がお義父さん達を逃がそうとしていたのは、この様に恩があったからでしょうな。
 その為に必要な経費だと考えれば安いものですぞ。

「問題はクラスアップですな」
「そうだねー……資質向上でどうにか誤魔化して来てはいるけど、いい加減行った方が良いんじゃないかとは思う」
「ブブー!」
「うん。元康くんの話じゃキールくんはクラスアップすると獣化出来るようになるらしいからやった方がいいね」
「ブー!」

 キールが興奮気味に前のめりになってますぞ。
 そんなにクラスアップをしたいのですか。

「俺もいい加減、シルトヴェルトの方で話をしたらいいと思っていたし、行こうか? エレナさんはどうする?」
「ブー……」
「え? 面倒な手続きがありそうだから今回は馬車で待ってる?」

 コクリと豚が頷きました。
 何処まで面倒臭がりなのですかな?
 まあ、良いでしょう。どちらにしても姿を隠す必要がありますからな。

 盗賊に偽装した三勇教徒も安易な奇襲では装備を奪われてお義父さん陣営の強化に繋がると察したのか、最近ではあまり出てきませんぞ。
 その代わり、各地で盾の勇者を名乗る犯罪者が出ていると噂が飛び交っている程度ですがな。
 俺もこの噂を……二度目の波に出る少し前に聞きましたがな。

 ですが彼等の偽装は無意味。
 現在のお義父さんは盾の勇者として有名になっておりません。
 ですが、姿を隠して神鳥の聖人として有名になりつつあるのです。

 さて、一度目の波以降で余裕があった時、俺は赤豚達を連れてゼルトブルへ装備を固めに行ったのでしたな。
 その前に何度かフィーロたんに蹴られたりしましたが。
 今ではとても懐かしいですな。

 フィーロたん……。
 そうでした。
 暇な時、俺は最近、中断していたフィーロたんの絵を描いて暇をつぶしているのですぞ。
 馬車で待機している時は暇ですからな。

「元康くん? また絵を描いているの?」
「そうですぞ? 準備は出来たのですかな?」
「あ、うん」

 お義父さんは俺が描いたフィーロたんを見てくださいます。

「上手だね。これが元康くんの好きな子?」
「そうですぞ」
「フィロリアル姿の絵はサクラちゃんに似てるけど……色合いが違うね」
「そうなのですぞ。サクラちゃんとなんとなく似ているのですぞ」
「んー? サクラがどうしたの?」

 サクラちゃんがこちらに来て俺の描いた絵を見ますぞ。

「元康くんの好きな子がサクラちゃんと似た感じの色をしているんだって」
「そうなんだ? ふーん」
「こっちが天使の姿ですぞ」
「白黒だけど、うん。ゲームとかで見た事がある様な外見してるね。素直そうな可愛らしい子だと思うよ」

 ああ、フィーロたん……アナタは今、何処にいらっしゃるのですか?

「んー?」

 サクラちゃんが首を傾げて俺の描いたフィーロたんの絵を見ておりますな。

「この子の飼い主が俺なんだって」
「ナオフミはサクラがこうなって欲しかった?」

 お義父さんにサクラちゃんは聞いておりますな。
 はは、微笑ましい光景ですぞ。

「違う違う。サクラちゃんに負けず劣らずの女の子だなって思っただけ」
「ナオフミは女の子好きー?」
「そりゃあ人並みには好きだよ。だけど今は恋愛よりもやらなきゃいけない事があるしね」
「サクラ可愛い?」
「可愛い可愛い」
「ブー!」
「そうだね。サクラちゃんは美少女だね。キールくんも負けない様にがんばって」
「ブ!? ブブブ!」
「あはは、ごめんごめん。キールくんは男の子だったね」

 お義父さん達のそんな他愛も無い会話を余所に、ユキちゃんが俺の描いたフィーロたんの絵を見ています。
 どうですかな。素晴らしいお姿でしょう。

「これが未来の元康様の意中の子ですの?」
「みたいだね。あ、ユキちゃん、もしかしてやきもち?」
「違いますわ!」

 ユキちゃんがブンブンと首を横に振っておられます。
 お義父さんは楽しげにそんな様子のユキちゃんを見ていますぞ。

「そう?」
「私は元康様の力になりたいだけですわ」
「そうなの? てっきりユキちゃんは元康くんの事を好きだとばかり思ってたんだけど」

 と、何故かお義父さんは俺の方にワザとらしい感じで視線を送りました。
 中学時代に友達面で近づいてきた男と似た反応ですぞ。

 妙に豚について詳しい男でした。
 俺も不思議と気が合い、良く話をする男でしたな。
 そもそも俺は男の友人が極端に少ないタイプだったので彼以外の男友達はほとんどいません。

 その男ですが、豚を俺に押し付けようとしていましたな。
 豚の趣味や行動などに詳しく、写真なども所持していました。
 まあ高校に進級する時に別の学校へ行って会わなくなりましたが。
 思い起こせば珍しい男でしたな。

 そんなに豚が欲しいのでしたら、その情報を使って自分で声を掛ければ良いのでは?
 今思うと本当に不思議な男でしたな。
 ですが不思議と嫌悪感はありませんでした。

 あの男程、潔癖という言葉が似合う存在を俺は知りません。
 豚の事に詳しい癖に、本人は豚と一切交友を持っていませんでした。
 まるで俺に豚を押し付ける為に情報を収集している様な男でしたな。

「前にも言いましたが、お義父さんは御冗談が上手ですな。フィロリアル様は等しく私の子供の様な存在ですぞ」
「へ?」
「どんな子も、可愛い子供なのですぞ。子供と恋愛や結婚などするはずないではありませんか。私が焦がれる方はフィーロたんただ一人ですぞ」
「あー……うん。ユキちゃん、がんばってね」
「だから私はそのような感情持ち合わせておりませんわ!」

 何やらプンスカと怒るユキちゃんをお義父さんが宥めておりますぞ。 

「じゃあ元康くん、そろそろ行こうか」
「わかりましたぞ」

 ポータルスピアを作動させて俺達はシルトヴェルトに移動しましたぞ。
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