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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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取り寄せ

 勇気を振り絞るように胸の前で拳を握ったお義父さんと共に魔物商のテントの中に入ると、魔物商が出迎えてくれましたぞ。

「これはこれは勇者様方、よくぞ私共の店に来て下さいましたです。ハイ」
「ああ、それで? 頼んだ奴隷は取り寄せられそうか?」
「はいはい。幸いにして同業者が買い取った直後でしたので、すぐに用意出来ましたです。ハイ」

 と、魔物商は見覚えのある様な子豚を配下の者に命じて連れてきたのですぞ。

「ブブブブ!」

 キールだと思われる子豚が嫌がるように抵抗しておりますな。
 何分、俺は子犬になったキールしか見分けが付かないので良くわかりませんな。
 子犬になれば会話する事も可能なのですが……。

「こちらの者でよろしいですか? ハイ」
「あ、ああ……じゃあ幾らだ?」
「盾の勇者様の人柄を考慮して奴隷登録の儀式込みで銀貨45枚で手を打つとしましょうです。ハイ」

 お義父さんが微妙に目を泳がせて息を飲んでおりますな。
 そうでしたぞ。
 俺はお義父さんに耳打ちします。

「お義父さん。奴隷登録に使うインクもついでに少しだけ譲ってもらうと良いですぞ。その素材で奴隷の能力と成長補正を引き上げる武器が出るのですぞ」

 俺は奴隷を使役した事はありませんが、インクを素材にして槍は出しておりますぞ。
 まあ、お義父さんよりは揃えられていないとは思いますが。

「う、うん」

 お義父さんは一歩前に出て魔物商の方へ歩いて行きますな。
 そして高圧的な態度を見せてから口を開きました。

「ふむ……コイツがキールか」
「ブブブブブブー!」

 この時、キールは。

『なんだよ! また俺を虐待する気だな! ぜってぇ負けねえぞ!』

 と、気の強い事を言っていたとお義父さんが教えてくれましたぞ。

「少々気性に問題があるようですが、本当によろしいのですね? ハイ」

 念の為にと魔物商が聞いてきますが、お義父さんは俺だからこそ分かる、小さな狼狽を見せていましたな。
 もちろん魔物商に悟られる様なミスを犯さずに、お義父さんは告げますぞ。

「これくらいの方が調教した時、面白くなるんだ。奴隷とは、そういう物だろ?」

 お義父さんの返答に魔物商は興奮気味に頷きますぞ。

「さすがは偉大なる盾の勇者様! それでは奴隷登録をしますです。ハイ!」
「ああ、ついでに奴隷登録に使うインクを少し寄越せ。勇者の武器の素材に使う」
「わかりましたです。ハイ!」

 気前が良いですな。俺の時とは雲泥の差ですな。
 どうやったらこの魔物商が色々とサービスしてくれるのか、目の前で見ていた俺でも理解できないですぞ。
 高圧的に話す事が重要なのですかな?
 お義父さんはこの魔物商と交渉事で波長があうのでしょう。

 魔物商が奴隷登録のインクを小皿に移して、お義父さんに登録の為に血を入れるのを説明しましたぞ。
 昨日、サクラちゃんを登録する時に行った傷跡のかさぶたを剥いでお義父さんは血をインクに流し込みました。
 そして魔物商の配下がキールと思わしき豚を抑えつけて奴隷紋の登録をしますぞ。

「ブヒィイイイ!」

 登録時の痛みにキールと思わしき豚が悲鳴を上げますな。
 さながら屠殺をしているように見えなくもないですが、キールは途中から痛みを堪えるように鳴くのを堪えていましたな。
 腐ってもお姉さんの同郷ですな。

「ブィ……ブ……」

 息を荒げてキールの登録は終わりましたぞ。
 お義父さんは魔物紋の登録と同じように目で何かを追って色々とチェックをしているようでしたぞ。

「さて……じゃあここでの用は済んだな」

 チャラチャラとお義父さんは魔物商に銀貨を渡し、キールを見下げます。

「さ、これから存分にお前を使ってやる。精々生き残れるようにがんばるんだな」
「ブ!」

 キッとキールがお義父さんに敵意を向けていますが、何処まで持ちますかな?
 未来のキールを思い出すと、お義父さんの人柄で何処まで懐くか見物ですな。

「じゃあな。また用が出来たら来る」
「またのご来場、楽しみにしていますです。ハイ」

 お義父さんが振り返り、キールの手を強引に引いてきますぞ。

「さ、行こうか」
「はいですぞ!」

 俺はお義父さんの後姿を追ってテントを出たのですぞ。

「「ピヨ!」」

 ユキちゃん達がテントの外で出迎えてくれましたぞ。

「ただいま」
「「ピヨ!」」
「良い子に留守番していて私は嬉しいですぞ」

 俺はユキちゃん達を撫でてから抱擁しますぞ。
 ユキちゃん達は成長期に差しかかっていてグーッとお腹を鳴らしております。
 その様子を見てキールが目をぱちくりさせているようですな。
 ですが、すぐにそっぽを向きましたぞ。

「これからどうするかな……? 元康くんがこの子を連れてLv上げに行ってもらう?」
「そうですな」

 どうせサクラちゃんのLvを上げる為に、何食わぬ顔で今日も夜まで待つ必要がありますぞ。
 あまり一緒に行動している所を目撃されるのも問題があります。
 ただ、キールが何を言っているのか俺には分かりませんからな。せめてユキちゃん達が言葉を話せませんと色々と面倒なのも事実ですぞ。

「お義父さん。俺は豚の言葉は理解できないので現状、キールの面倒をみるのは無理ですぞ」
「そういえば良く豚って女性を罵ってるけど……元康くんって何かあるの?」
「豚は豚ですぞ。ブヒブヒと鳴き喚く最低外道自分勝手な下衆な生き物なのですぞ」
「はぁ……つまり元康くんは何が原因かは知らないけど女性が豚に見えるのね。ループの影響? って、この子女の子なの!?」
「ブヒ!?」

 キールが何かユキちゃん達にちょっかいをしていたかと思うと、ビクッとお義父さんに顔を向けますぞ。

「美少年とかで営業が上手になるのかと思ったけど、この子女の子なんだー……へー……」
「ブヒ! ブヒブブブブブ!」

 何やらキールが握り拳を作って抗議していますな。
 知りませんぞ。
 お義父さんの為に馬車馬のように働くのですぞ!
 それが俺達、お義父さんの家来の仕事ですからな。

「まあ……本人がそう思うなら、良いんじゃないの? これからよろしくね」
「ブ、ブヒ……?」

 お義父さんの言葉に首を傾げたキールが呆けておりますぞ。
 豚の反応ですが、なんとなくわかりました。
 それ位、態度に出ております。

「さて、じゃあ当面は俺がキールちゃんの――」
「ブヒ!」
「――くんの面倒をみるから元康くんはサクラちゃんをよろしくね。俺はコウとキールくんと一緒に少しLv上げに挑戦してみるから」
「わかりましたぞ」
「その為には装備が必要だね」

 ああ、そうでしたなまずは武器屋に行ってキールに必要な装備を買う必要がありますぞ。
 この点、フィロリアル様はそこまで装備が重要ではないのが最高に良い所ですな。
 やはり豚に装備を買うのは理解に苦しみますが、お義父さんの考えなので文句は言わないのですぞ。


 武器屋に行くとお義父さんとキールを見た親父さんが眉間のしわに指を当てて考え込んでますぞ。

「アンちゃん……」
「いや、俺が悪いわけじゃないよ! そんな目で見ないで欲しい!」

 うろたえる様にお義父さんが親父さんを説得していますぞ。
 親父さんはどうやら豚……ではなく、奴隷を買ってきた事に嘆いている様ですな。

「国が悪いのか、それともアンちゃんが汚れちまったのか……」
「国が悪いのは認めるけど俺は別に汚れてなんかないって! これも色々と理由があるの!」
「はぁ……まあ、そういう事にしておいてやるぜ。今日は何の用で来たんだ?」

 お義父さんはキールにチラッと視線を移しましたぞ。

「この子に良さそうな装備を見繕って欲しいんだ。これから一緒に戦う間柄になるから」
「ブヒ!?」

 お義父さんは膝を地面に付け、キールに視線を合わせてから言いました。

「まだ自己紹介をしていなかったね。俺の名前は岩谷尚文、盾の勇者としてこの世界に召喚されたんだ」
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