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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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世界を呪わない

 毎度、お義父さんは奴隷を使役する事に関して驚きの顔を致しますな。

「奴隷は奴隷紋という逆らうと痛みを覚えて、主人を裏切る事の出来ない紋様を刻まれているのですぞ」

 これは魔物紋も同じですな。
 まあ、フィロリアル様達は大抵、逆らう事はしない従順な方々達ですがな。
 豚を使役するには良いかもしれませんぞ?

「だ、だけどそんな酷い事を出来ないよ」
「前もこの会話はしましたな。ですが、最初の未来のお義父さんは信頼できる仲間が出来ずに奴隷を使役しておられました」

 お姉さんがお義父さんの奴隷一号でしたな。
 俺は赤豚に囁かれてお義父さんとお姉さんが絆を育んでいるのを理解せずに引き離そうとしてしまいましたぞ。

「そして奴隷達を使役して金銭を稼いでいましたな。魔物から守る代わりに退治を全て任せていましたぞ」
「攻撃が出来ずにこうして助けてくれた元康くんもいない状況で……やる事としたら確かにそうなんだろうけど……」

 お義父さんはサクラちゃんの卵を握りしめておりますな。

「ねえ、この子に売り子とか任せられないの?」
「それはフィロリアル様の個性がありますからなー……未来のサクラちゃんはお義父さんを守る事は得意ではありましたが、商売となるとどうかわかりませんな」

 俺の所でもみどり辺りしかお義父さんの商売に関して理解がある子はいませんでしたからな。
 フィロリアル様は総じて楽しい事はお好きですが、人間相手の商売は少々苦手だと俺は思いますぞ。

「うー……」
「何、心配せずとも良いですぞ?」
「どうして?」
「奴隷達が笑顔で魔物を倒すようにお義父さんは教えておりましたので、お義父さんの手腕さえあれば奴隷使役など容易い事でしょう。一つの村よりも多くの奴隷を使役しておりましたぞ」
「もっと不安になったよ!」

 お義父さんが立ち上がって声を張り叫びますぞ。

「何? 未来の俺ってどれだけ外道になってた訳? 奴隷達を無理やり戦わせて、しかも洗脳してるような感じで楽しげに魔物を殺させるって……」

 おや? お義父さんは少々勘違いをしているようですな。
 ここは真実をお伝えしなければいけません。

「違いますぞ、お義父さん」
「違うって何が?」
「みんな……お義父さんが波に挑むという使命を知って協力したいと願い出ていた者でもあったのです。お義父さんは人を惹きつける美味い料理で……胃袋を掴んで使命に目覚めさせたのですぞ」
「それって言い方を変えただけで内容は全く変わって無いように感じるんだけど」

 おかしいですな?
 俺は変な事を言ったのですかな?
 でもお義父さんの料理を奴隷の皆さまを初め、フィロリアル様達も所望しておられました。

 何よりフィーロたんはお義父さんの料理をとても楽しみにしておられた。
 食は活力ですぞ。
 お義父さんが築いたのは、みんながやりたい事が出来る場所を作る事だったのだと、俺は記憶しています。

「まあ……俺の仲間になってくれる人はいないらしいし、下手に亜人の国の人を仲間にしても危険が増すだけ……なら、しょうがないか」

 嫌そうにお義父さんは頷いて顔を上げますぞ。

「Lvや装備だけなら良いのかもしれないけど、行商でこの国での評判とか上げるのも目的なんじゃない?」
「そうですな。お義父さんが指名手配された時、お義父さんが各地で行った偉業のお陰で追跡が難しかったのもありますが、国の人達がお義父さんの事を信じている様でしたぞ」

 赤豚に騙されて追跡していた時を思い出しますな。
 あの時、お義父さんが何処へ逃げたのか、捜査は困難を極めましたぞ。
 各地の町で盾の勇者を見たと、国民が撹乱するのも然ることながら盾の勇者が神鳥の聖人と知って、聖人が盾の勇者であっても行った偉業は変わらないと国民が言っていた様でしたぞ。

 赤豚が苛立ちながら俺に愚痴っていたのを覚えています。
 洗脳の力で国民を操った!
 と赤豚と教皇、そしてクズが言っておりましたが、真相はお義父さんのたゆまぬ努力のお陰なのは、未来を知る俺が断言しましょう。

「なるほどね……行商して民衆の信頼を得れば……どうにか出来るかもしれないね」
「そうですぞ」
「わかったよ。奴隷を買うにしても、行商をするにしても、嫌だけど我慢してみるよ。俺が誰かの面倒を見れるか不安が無いわけじゃないけど」
「それでこそお義父さんですぞ」

 後はお義父さんと何を話せばよいですかな?
 考えているうちにお義父さんが口を開きました。

「それで俺は、まず何をしたらいいのかな? 強くなる方法とかコツがあるなら教えてほしいのだけど」
「そうでしたな! 強化方法を教えねばなりません」
「え? ヘルプにあるのを熟読すればいいんじゃないの?」
「ヘルプにある強化方法は極一部なのですぞ。勇者の武器にはそれぞれ強化方法が内包されていて、信頼する事によって複合して強くなるのですぞ」
「そ、そうなんだ? 結構複雑なシステムなんだね」

 俺はお義父さんに強化方法を教えて行きましたぞ。
 もちろん、全てを教えるには時間が掛りますから、軽くどのような物があるかを教えるに留まっております。
 試して行くにも色々と足りないでしょうからな。

「うん……がんばるしかなさそうだね」
「ただ、良く覚えていて欲しいのですぞ」
「何を?」
「出来る限り、最初の世界に近い様に私は行動はしましたが、お義父さんの味方をする事によって違いが出て来ているのですぞ。最初の世界でお義父さんは敵の刺客に襲われる事はあまり無かったようですが……」
「うん……それくらいなら、誰も味方がいないって世界を呪うよりは何倍も良い……耐えて見せるよ」

 お義父さんは静かに目をつぶってから俺を見つめて答えましたぞ。
 当面、行う事はお義父さんのLvを秘密裏に上げる事ですな。
 それを行うにはフィロリアル様の育成は必要不可欠であり……行商をする上でお義父さんの代わりに売り子の奴隷を確保する事ですな。

 お義父さん自身が売り子をしても良いのでしょうが、値引きやいらぬ風評被害がありそうですから仕方ありませんな。
 ……最初の世界でお義父さんが行商をしていたのを覚えているのですが……何かほかに問題があったような覚えもありますな。
 これは……何処かで尋ねるしかないですぞ。

「ではお義父さんの服……もしくは鎧を確保して行動開始ですぞ」
「そうだね」
「「ピイ!」」

 ユキちゃんとコウが元気よく鳴きましたぞ。
 さあ、ここからががんばり時ですな。


「お? 話は終わったのかアンちゃん達」
「はい。部屋を用意してもらってすいません」
「気にすんな。ところでその格好じゃ締りがねえだろ? 身ぐるみはがされたって事はくさりかたびらも盗られちまったんなら、タダで譲ってやろうか?」

 武器屋の親父さんはお義父さんが贔屓にしていたとても気の良い人物だと俺は知っております。
 俺が初めてループした時も同じようにお義父さんに気を利かせておりました。

「……いや、良いよ。くさりかたびらは」

 この問答もありましたな。

「とは言ってもインナー姿じゃもっとやばいだろ」
「未来のお義父さんはここで皮の鎧を買いましたな。ですからこのお金でどうかお義父さんに売って欲しいですぞ」

 俺は金袋を武器屋の親父さんに見せました。
 この為に残しておいたお金ですからな。
 必要な物を必要なだけ買う。
 それもまた戦いには必要な事なのですぞ。

「そんな! お金が無いなら安い服とかでも良いのに……」
「気にしてはいけませんぞ。格好は重要ですからな」
「そう……か。わかったよ」
「話は決まったかい、アンちゃん? 良い仲間がいるじゃねえか、ところで槍のアンちゃんは……着ないのかい?」
「俺は問題無いですぞ」
「え? 元康くんは鎧を買わないの?」
「お義父さんを優先するだけですぞ。金銭に余裕が出来たら俺も装備しますぞ」
「何から何まで、迷惑ばかりかけちゃって……ごめん」
「遠慮は私達の前にはありませんぞ」

 親父さんの言葉にお義父さんは半ベソを掻きながら涙を拭って頷きましたぞ。

「うん、元康くんや親父さんの信頼に応える為にがんばるよ」
「ハハハ、ちょっと頼りねえががんばれよ!」

 と、お義父さんに皮の鎧を見繕ってくださいました。
 少し安めの様ですな。

「さて、お義父さん。武器屋の親父さんにもう一つ頼むのですぞ」
「ん? まだあるのか?」
「実は……」
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