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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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戦争回避

 俺とお義父さんを睨みつけてくるクズと赤豚、そして樹と国の兵士共。
 さて……どうしますかな?
 お義父さんを罠に掛ける不届き者達ではありますが、下手に手を出しては戦争になりかねませんぞ。
 それでは元の木阿弥ですな。

「お義父さん、どうか嘆かないで欲しいのですぞ。貴方は一人ではありません。例え世界が敵に回ったとしてもこの元康、お義父さんの味方ですぞ」
「き、北村くん……?」

 俺はお義父さんを立たせてからクズ達を睨みつけます。

「くだらないな」

 そこで淡々と……興味なさげに錬が玉座の間から立ち去ろうとしています。

「錬さん! どういう意味ですか?」
「元康の意見にも一理あると思っただけだ……王女とはいえ女一人の証言で尚文を罰するのは限度がある。昨日のやり取りを見ていると城の連中が最初から決まっていた事をなぞっている様にも見えるしな」

 ポカーンとお義父さんが俺と錬を見つめます。

「勘違いするなよ。俺は別に尚文が正しいとは言ってない。それでも盾の勇者が弱いのは事実とか、元康が尚文に優しくしようとする度に遮られたら疑いたくもなる」
「ぐぬ……」
「ブブー! ブブブブブ!」

 赤豚が何か喚きながらお義父さんを指差します。
 そして樹と錬に向かって何やら懇願しているようでした。
 樹はお義父さんの方を見て怒りをあらわにし、錬は淡々と見つめているだけに留まります。

「俺はしていない!」
「……どちらにしても尚文を罰するには証拠が足りない。騒ぎたいなら勝手にやっていればいい。時間の無駄だ。くだらない事で呼ぶんじゃない」

 不愉快そうに、錬は立ち去って行きました。
 仲間達は錬の後を追います。

「ブブブブブブ!」

 赤豚が喚いていますな。
 思い通りにならずにキレているのですかな?
 正体を現した、という事でしょう。
 醜い、実に醜い姿ですな。
 こんな下品な物体をお義父さんに長く見せてはいられません。

「さ、お義父さん、ここから出ましょう。ここでは何を言っても無意味ですぞ」

 お義父さんの手を取って、俺達は玉座の間から出ます。

「あ……うん」

 問答によって半信半疑だった錬がどちらに非があるのかなんとなく察した様ですな。
 良い傾向ですが、少々危険にも感じますぞ。
 慎重に動かねば錬が暗殺されかねないのは変わりませんな。
 まあ、錬の事ですし……まだ問題は無いと思う事にしましょう。


 城を出るまでの間に兵士共が不快そうに俺達を睨んでいましたが、俺が睨み返すとサッと視線を逸らしますぞ。

「えっと……助けてくれてありがとう北村……いや、元康くん」
「どうってことはありませんぞ。俺はお義父さんを信じているだけですぞ」
「うん……俺はやって無い。昨日は酒なんて飲んでないし宿で休んでいただけだ」

 インナー姿のお義父さんと城下町の広場で話をします。
 これも前にありましたな。
 俺はお義父さんを救ってあげる事が出来たのでしょうか?
 肩を持つ事で却って命の危険を増やす羽目になっているのではないかと心配になってしまいます。

「元康くん?」
「少し、人のいない場所で話を聞いて欲しいのですぞ」
「え? うん……良いけど、どうせ俺だけじゃ戦えないし」
「そうですな。ついでに服……が良いですな。お義父さんが一人では無いのを俺は知っていますぞ」

 出来る限り弱そうに見せるためにお義父さんには安く見える服を着て頂いた方が良いかもしれません。

「何処へ行くの?」
「インナー姿ではいけませんぞ。今すぐ装備を買いに行くのですぞ。何、金は俺が持つので安心して良いですぞ」
「お金ならあるから大丈夫!」

 おや? 前々回とは違ってお義父さんはお金を持っているのですかな?
 盾の内側の方に手を入れたお義父さんが銀貨を見せてくださいます。
 これは……確か最初の世界で俺に銀貨を投げた事がありました。
 そのお金ですぞ。
 念には念をと準備しているお義父さんの思慮深さに脱帽です。

「元康くん。な、なんで泣いてるの?」
「色々とあるのですぞ。ささ、行きましょう! お義父さんの防具を買うのですぞ」
「う、うん」

 こうして俺は朝早く開店した、お義父さんが贔屓にしていたらしい武器屋に顔を出したのですぞ。

 店に入った後のやり取りは前々回と大きな変化はありませんな。
 店の親父さんがお義父さんに詰め寄り、お義父さんの人柄からお義父さんを信じてくださいます。

「そんで? アンちゃんは何を着るんだ?」
「それよりもまず、店の奥でも良いのでお義父さんと話がしたいのですぞ」
「ん? まあ、良いが……」

 親父さんが店の奥へと案内してくださいました。
 そして奥の部屋で椅子を準備してくださいましたぞ。

「話が終わったら店の方に来てくれよ」

 親父さんが気を利かせて出て行かれました。

「どうしたの元康くん?」
「まずはお義父さんに色々と事情、武器の強化方法、今後の方針を話そうと思いますぞ」
「あ? あ……うん」

 きょとんとした表情でお義父さんは頷きます。

「まずはお義父さんに大事な話をするのですぞ」
「何? 未来からループしたって話は……俄かに信じがたいけど」
「本当の事なのですぞ」
「じゃあ! なんで俺が冤罪の罪を被せられるって教えてくれなかったの!?」

 お義父さんが叫ぶように俺に詰め寄ってきました。
 俺は……そのお義父さんの怒りをそのまま受け止めます。

「それは……すいません。前回のループでは召喚された直後に言いました。お義父さんを罠に嵌めて無一文で追い出すと……そして国の事情……盾の勇者はこの国メルロマルクの敵国で信仰されている勇者であると言ったのですぞ」
「え?」

 お義父さんは呆気に取られるようにポカーンとしておられます。
 そういえばそうですな。
 この時点のお義父さんではメルロマルクが人間の国で亜人達を差別している事を知りません。
 そして亜人達が盾の勇者を崇拝している事も知っているはずがないのですぞ。

「なんで教えてくれなかったんだ!」
「この話には続きがあるのですぞ……そう騒いだ夜……俺は城で罠に掛けられ、お義父さんは馬車で騙されて連れ去られたのですぞ」
「……」
「やっとの事で追いついた時にお義父さんはメルロマルクの兵に殺される寸前でした。それが召喚された初日に起こった出来事ですぞ」
「初日……うん、考えてみれば元康くんは最初からずっと俺に気を掛けてくれていたよね。仲間が出来なかった時も、俺に自分の仲間を押しつけようとしていたり……武器の強化方法を教えてくれようとしたり、強くなる方法を教えようともしてくれたね。女性が親しげに話しかけて来ているのに凄く不快そうだったのは意味があったんだね」

 さすがお義父さん。
 俺の言葉から何もかも察してくださりました。
 それにしても女性ですか。

「アレは豚ですぞ」
「豚って……」
「豚は豚なのですぞ。自分最優先で、人を利用する事しか考えず用が済んだらポイ捨てする下劣な生命体共ですぞ」
「あー……うん。元康くんが女性を豚と言う意味がなんとなくわかったよ。それで?」
「翌日から定期的にお義父さんには刺客がやってきて、俺達はお義父さんを信仰する亜人の国シルトヴェルトの使者の勧誘を受け入れて進んで行ったのですぞ」

 俺はお義父さんに前回での出来事を細かく説明して行ったのですぞ。
 国境の砦を越えた事、刺客を倒した事、立ち寄った町が襲われた事。
 短い旅でしたが色々な事がありました。

「で……? シルトヴェルトって国に着いた俺はどうしたの? この国に復讐しようとかした訳?」
「お義父さんはそのような真似はしなかったのですぞ。信じてくれる人がいるからと、水に流したのですぞ」
「……凄いね。まあ、今の俺も諦めに近い感情だから……どちらかと言えば、少しでもアイツ等に関わりたくないって思うよ」
「最初にループした時も、俺はお義父さんをこうして守ったのですぞ。その時、俺はお義父さんが幸せになるようにシルトヴェルトの使者にお義父さんを預けて……」

 おそらく、メルロマルクの国境で殺されたのだろうという経緯を説明しました。
 先にシルトヴェルトに行った時の出来事で補足していたので、お義父さんもすんなりのみ込めた様です。

「そりゃあそうだよね。都合がとても悪いから……そこを突破してシルトヴェルトって国に行ったのが前回なんだね」
「そうですぞ」
「じゃあなんで今回は俺に殆ど何も……というか変な話ばかりしたの?」
「変な話とはなんですかな?」
「未来の奥さんが男とか鳥の子供がいるとか」
「それは……俺がループする前の出来事なのですぞ」
「どういう事?」

 俺は深々と頭を下げますぞ。
 そう、幾ら謝罪しても俺が犯した罪は消える事は無いのですぞ。

「元康くん?」
「お義父さんが冤罪に掛けられた時、お義父さんを赤豚と共に責めた樹がいたあの場所は俺だったのですぞ」
「え……?」
「その後、お義父さんは無一文で、誰も味方がおらずに追い出され、コツコツと努力して自らの無実を証明する偉業を成し遂げ、あのクズとこの国の宗教を潰す事に成功するのですぞ」
「話が飛んでる! 変な話をしてる所が全然出て来ない!」
「その後お義父さんは豚は信じれないと男をボディガードにして寝ておりました」
「じゃあ娘ってのは?」
「お義父さんが育てたフィロリアル様、フィーロたんですぞ」

 俺の言葉を聞いて、お義父さんががっくりと力を弱め、すぐに口を開きました。

「実の子じゃないの!? しかも魔物って事はそれってペットだよね! そんな風に言われたら勘違いするよ!」

 お義父さんが呆れた様子で言いました。
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