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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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改竄

「これはマインさんからいただいた物です」
「だからそれが盗品だと言っているのですぞ」
「適当な事を言わないでください。証拠はあるんですか!」
「この国の武器や防具には銘と管理番号がある。そのくさりかたびらが何処で誰が買ったか――」
「ブー! ブヒブヒ!」

 俺が証拠を提示しようとした途端、赤豚が間に入って大きな声で遮りましたぞ。

「邪魔をするな赤豚!」

 ドンと突き飛ばして俺は樹に言います。

「わかるようになっているのですぞ」
「……本当なのですか?」

 樹がクズと赤豚にそう尋ねる。
 するとクズは顎を一度だけ撫でると。

「ではカワスミ殿、そのくさりかたびらを見せてもらえませぬか? 照合してみましょう」

 兵士がお盆を持って樹の前に持っていきますぞ。
 樹は渋々くさりかたびらを脱いでお盆に載せます。
 その後……兵士が一度クズの元へ行き、照合を始めましたぞ。

「どうやら資料によればこのくさりかたびらは我が城の倉庫にあったものであるようじゃ!」

 このクズ! 資料の捏造をしたようですな!
 そういう事を考える知恵だけは回る様ですぞ。

「城から盗んだのは変わりませんな」
「ブヒー! ブヒブヒ!」

 そこで赤豚がスタッと立ち上がって優雅を気取った愚かな歩調で歩きながら何やら騒ぎましたぞ。

「ブヒ! ブヒブヒブヒブヒ……」
「なるほど……マインさんは王女だったのですか、それなら城の物は確かにマインさんの物になりますね」

 くっ……証拠の捏造と、自身の身分を開示して泥棒では無いと主張したのでしょう。
 樹は完全に赤豚とクズの妄言を信じてしまったようですな。
 ですが……錬はこのやり取りに関して疑問を持つような目をしているご様子。

「……腑に落ちない点は多いが、俺には関係ないな。どっちが正しいかを判断するには早い」

 とはいえ、錬はここでお義父さんの味方はしないでしょうな。

「ですから元康さん! 彼女は豚ではありませんし、悪でもありません。城の物を善意で元康さんにあげようとしただけでは無いですか。それに対してこの行い、許される物ではありませんよ」
「なんと言おうと豚は豚ですぞ。そもそも豚の親が照合したのでは信用に足りえませんな」
「なんですって!」
「王女と自供したのが尚の事性質が悪いですぞ。王女ならば証拠の改竄など容易いですからな」

 よくあるではありませんか。
 金持ちの子供が犯罪を犯した時に、親が権力を使って揉み消すという話が。
 まさにそれですな。
 それに現代の法律では家族の証言は証拠として薄いと聞きますぞ。
 まあ、この世界で適用するかは存じませんが。

「……元康の言い分にも一理あるな」
「錬さんはどっちの味方なんですか!」
「ふん、俺はどっちの味方でもない。だが、元康の言い分にも筋がある。一介の冒険者だったのなら王様の言葉も信用できるが、娘となれば話は別だ。それに本当に国や王女が尚文を陥れているとしたら、さっきの証拠は改竄されるだろうな」

 と、錬が答えるとクズが口を挟みました。

「ふむ、槍の勇者殿、此度の謁見は終わりじゃ。どうかお引き取り願おう」
「お断りしますぞ」

 錬の言葉を受けたクズは焦りを感じたのか、俺を追い出す方向に持って行こうとしているようですぞ。
 もちろん出て行くつもりなどありません。
 この後、何があるのか知っていますからな。

「お引き取り願います!」

 兵士共が俺に群がってきて追い出そうとしてますな。

「触るな。下衆共」

 槍で軽く薙ぎ払って散らしますぞ。

「元康さん! いい加減にしないと――」

 などとやり取りをしているとインナー姿のお義父さんが兵士に連行されてきましたぞ。
 やはり黙っているとこうなってしまうのですな。
 早くこんな気分の悪い茶番から救い出さねば!

「マイン!」

 クズや樹がお義父さんを睨む。
 錬は沈黙を貫いておりますな。

「な、なんだよ。その態度」

 今すぐにでもお義父さんを助けたいと思います。
 ですが、タイミングを計らねばなりません。

「……元康さんと話が終わってませんが、しょうがありません。本当に身に覚えが無いのですか?」
「身に覚えってなんだよ……って、あー!」

 お義父さんが樹を指差しましたぞ。
 察する能力はやはり高いですな。
 この光景、何度見ても心が張り裂けそうになりますぞ。

 兵士共が必ず邪魔をしますな。
 いい加減にしないと殺しますぞ?
 あの燻製のように!

「お前が枕荒らしだったのか!」
「誰が枕荒らしですか! 尚文さん。まさかこんな外道だったとは思いもしませんでした!」
「外道? 何のことだ?」
「邪魔ですな」

 兵士を薙ぎ払うと一瞬だけ錬と樹がこちらを向きますぞ。
 ですが、お義父さんは頭が真っ白になっているのか見えていないご様子。

「して、盾の勇者の罪状は?」

 お義父さんの味方をしようとしているのを理解したのか兵士が薙ぎ払われても即座に立ちあがって邪魔をしますな。
 加減しているのを理解しているのですかな?

「罪状? 何のことだ?」
「ブブブ……ブブ……ブブブブブブブ」
「は?」
「ブブブブブブブブブブ!」

 まあ、どんなにお前等がお義父さんを地獄に落とす計画を立てようとも、この元康が阻止して見せます。

 俺は知っております。
 本当のお義父さんがどれだけ優しい方か。

 俺は知っております。
 例え辛い経験をなさっても、その優しさが損なわれる事は無い事を。

 俺は知っております。
 知らずにお義父さんに冤罪を被せ、弾劾して追い詰めた俺を口では拒んでも受け入れてくれたその海の様な大きな度量を持っている事を。

 そう、俺は返さねばなりません。
 何度ループしようとも、お義父さんから受けたこのご恩を返すのが我が使命。

「ブブブブブブブブブブ!」
「え?」
「何言ってんだ? 昨日、飯を食い終わった後は部屋で寝てただけだぞ」
「嘘です! じゃあなんでマインさんはこんなに泣いているのですか!」

 そんなの決まっているではありませんか。
 自分の事しか考えていないからですぞ。

「豚ですからな。嘘泣きでしょう」
「あなたは黙っていてください!」

 む、怒られてしまいました。
 樹の言葉などまるで耳に入ってきませんがな。
 お義父さんの怒りに比べれば樹の憤慨などゴミも同然。

「何故お前がマインを庇ってるんだ? というかそのくさりかたびらは何処で手に入れた」
「ああ、昨日、みんなで酒を飲んでいるとマインさんが酒場に顔を出したんです。しばらく飲み交わしていると、僕にプレゼントってこのくさりかたびらをくれました。それに……このくさりかたびらは城にあったものです」
「そんな……」

 お義父さんが言葉に迷っている様ですな。
 確かに同じ品だと言われたら、ありえるかもしれないと思うのも事実。

「そうだ! 王様! 俺、枕荒らし、寝込みに全財産と盾以外の装備品を全部盗まれてしまいました! どうか犯人を捕まえてください」

「黙れ外道! 嫌がる我が国民に性行為を強要するとは許されざる蛮行、勇者でなければ即刻処刑物だ!」
「……」

 錬が何かを理解したように目をつむりましたぞ。

「だから誤解だって言ってるじゃないですか! 俺はやってない!」

 そして……お義父さんの表情が怒りに染まりました。

「お前! まさか支度金と装備が目当てで有らぬ罪を擦り付けたんだな!」
「はっ! 性犯罪者が何を言っているんですか」
「ふざけんじゃねえ! どうせ最初から俺の金が目当てだったんだろ、仲間の装備を行き渡らせる為に打ち合わせしたんだ!」

 さて、そろそろでしょうかね。
 まるでお義父さんが陥れられるのを、俺が待っていたかの様な不快な気分になりますが、今助けますぞ。
 俺は両手に持っている槍に力を込めました。

「……茶番にしか見えないな」

 錬がそう呟くと同時に俺が邪魔をする兵士達を薙ぎ払いますぞ。

「邪魔ですぞ! ブリューナク!」

 ここで消し炭にするのは印象の面で悪いからしょうがありませんな。
 今回だけ特別に手加減してあげましょう。

「「ぐはあああああああああああああ!」」

 薙ぎ払って俺はお義父さんを捕える兵士を槍の柄で突き飛ばしますぞ。

「……え?」
「俺はお義父さんを信じています。お義父さんはやっていません。これは陰謀です」

 槍をくるくると旋回させて、俺はクズと樹達に向けます。

「鬼の居ぬ間にやりたい放題なのでしょうが、今のこの国を見て、女王がなんと言いますかな?」
「く……貴様!」

 陰謀を邪魔されて怒りのクズは俺を睨みます。
 直後、俺の耳に疑問系の言葉を発する人物の声が響きました。

「……女王?」

 振り返ると錬でした。
 ふむ、今回の錬は何故だか知りませんが、俺の話を拾ってくれている様子。
 もしかしたら説得できるかもしれませんな。
 ですが、今はお義父さんを助けるのが先決。

「ここでお義父さんを庇うのは、二度目ですな。なので、同じ言葉を使いましょう……」

 お義父さんが呆気に取られる様に顔を上げます。

「未来からあなたに恩を返しに来ました。お義父さん」 
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