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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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「流星弓!」

 矢を放つと星が後に続く、範囲にもなるスキルを樹はお義父さんに向けて放ちます。
 ですが、お義父さんはガツンと樹のスキルを受け止め、平然としていますな。
 ここは少し樹も弱らせねばなりませんぞ。

「エイミングランサー!」

 クールタイムが終了した直後、強化せずに最低限の火力で樹達を貫きましたぞ。

「うわぁあああああああ!」

 樹とその仲間達が痛みで呻きながら倒れました。
 後は……。

「パラライズランスですぞ」

 下手に暴れられては面倒ですからな。
 樹に麻痺の槍を突き刺してやりましたぞ。
 これでしばらく動く事はできないでしょう。

 それにしても、パラライズランスを刺される直前の樹の顔ですが、おかしな表情でしたな。
 まるでイベント戦闘だよね? とでも言いたげな顔でした。
 残念ながら現実なので勝敗こそあれど、ゲームのイベントではありませんな。

「うぐ……」

 エクレアが馬でクズの元へ行きましたぞ。
 既に兵士達は薙ぎ払われてますぞ。

「さて、英知の賢王を騙る偽者よ……女王の命によって、我が国へ連行する」
「ぐぬ……ワシは、ワシは負けておらん!」
「確かに……英知の賢王がこんなにアッサリと捕まるなどありえない話……」

 シュサク種の代表が、エクレールを見つめて呟いていますな。
 おや? 赤豚はおりませんな?
 と思っていると、不利を悟ったのかクズも樹も見捨てて逃げようとしてますな。
 何処へ逃げるつもりですかな?

「逃がしませんぞ! エアストジャベリン!」

 その後ろ姿を走って追いかけ、後ろから貫いてやりましたぞ。
 エクレアはおっしゃったではないではありませんか。
 クズだけを捕まえると。
 つまり赤豚は保護の管轄から離れているのですぞ。

「ブヒ――!?」

 俺の槍に貫かれて赤豚が騒いでおりますな。

「ここが年貢の納め時ですぞ」

 その姿をお義父さんとエクレアは静かに見つめておりますぞ。
 やがてエクレアがポツリと言いました。

「メルロマルクの姫を騙る冒険者マイン。女王からの伝言を仰せつかっている。『貴方はやりすぎました』だそうだ」
「ブヒィ! ブィ!」

 思いのほかタフですな。
 ですが、この豚の鳴き声は耳障りですぞ。
 素早く仕留めるべきですな。

「バーストランスⅩ!」
「ブヒイイイイイイィィィィィィィィィ―――……」

 槍で突きさした物を爆発させるスキルですぞ。
 俺が刺して吊り上げていた赤豚が、槍の先で爆発して跡形も残らずに消え去りました。

「……」

 エクレアが何やら考えながら俺を……ではありませんな。
 赤豚がいた辺りを見つめておりますぞ。
 その足元にはクズがこちらに手を伸ばしておりますな。

「マルティイイイイイイイイ!」

 クズが絶叫しましたぞ。
 また一つこの世のゴミが消えましたぞ。
 何やら気が晴れる様な気がしますな。

「悪いがこれ以上騒がれては面倒だ。失礼する!」

 ゴスッとエクレアがクズの後頭部を強打し、クズが意識を失ったのかぐったりしましたぞ。

「「「ウォオオオオオオオ!」」」

 勝利の声がシルトヴェルト軍とエクレアが連れてきたメルロマルク軍の両方から聞こえてきましたな。


「まだ戦いは終わっていないけど、これで一息出来る……かな?」
「後はシルドフリーデンが諦めてくれれば良いけど」
「無理ですな。あの残党のアオタツ種を仕留めないときっと終わらないですぞ」
「そう……だね。だけど、不利を悟ったんだから少しは時間が稼げると思うよ」
「ああ、幸いにしてどの国も波と戦う為の戦力を損なう程には損耗していない」
「というか、どうしてメルロマルク軍が俺達の味方に?」

 お義父さんの質問も尤もですな。
 先程言っていたエクレアの言葉通り、メルロマルクの女王が理由でしょうが。

「元々女王は戦争には否定的だ。更に言えばキタムラ殿の話す未来の話も私から伝えた。それだけではないが、様々な要素を考慮して、波と戦う為の戦力が失われない様に動く方針を取る事になった」
「なるほど、シルトヴェルトとメルロマルク……どちらかが滅びても波と戦うのが厳しくなっちゃうんだ……」
「うむ。他、鞭の勇者であるタクトの死亡と同時にフォーブレイで複数の七星武器所有者がいなくなった事が確認された。これを受けてフォーブレイはシルドフリーデンに協力するつもりはなく、原因の解明に努めるという事になった」
「そっか。これで戦争をやめて、波と本気で戦える様になると良いんだけど」

 そうですな。
 タクトの推進していた飛行機は全て叩き落としてやりましたし、切り札だった樹もこの通りですぞ。
 後はやってくる波に備えれば良いですな。
 ん?

「話が違うではないか!」

 戦闘から立ち直った樹の仲間、豪華な鎧を着けた……確か未来で燻製になった奴が騒ぎ始めましたぞ。
 クーデターの時の話です。
 お義父さんの命で城下町をフィロリアル様達と共に制圧した、あの時の主犯だったかと。
 ちなみにこの燻製、最初の世界で国が選んだ錬の仲間だったかと。
 数日で抜けて樹のパーティーに入っていったかと。

「う……あ……」

 樹は俺のパラライズランスを受けている為、麻痺して動けないのですな。

「何が正義の味方だ! この正義を騙る偽者め!」
「そうだそうだ!」

 何やら不穏な気配がしてきましたぞ。
 即座に仕留めるには樹が近すぎますな。
 内輪揉めと思って、お義父さん達も僅かに反応が遅れましたぞ。

「弱い偽者の弓の勇者め! 成敗してくれる!」

 と、燻製達が地面に落としていた武器を振りかざして、麻痺で動けない樹に振りおろしました。
 その動作の速さに、俺も出遅れてしまいました。
 何せ赤豚を仕留める為に少し離れていたのですからな。

 エイミングランサーも狙うタイムラグで間に合いませんぞ。
 ブリューナク……グングニル……エアストジャベリンを放つにも樹が近すぎて、精々一人か二人を黙らせる事が出来るか。

「エアストジャベリン! グングニル!」
「樹! エアスト――」

 俺の反応に応じて、お義父さんが咄嗟に防御のスキルを放とうとしました。

「ぐあ!」
「て、てが――」

 俺もスキルで二人ほど、少々乱暴ですが、武器を持つ手を吹き飛ばしてやりました。
 ですが、燻製のリーダー格である派手な鎧を着た奴が、動けない樹に向けて斧を振り下ろしてしまいました。

「あ……が――!!」
「ハッハッハ! 偽者の弓の勇者を倒したぞ! これで我等の勝利だ! 盾と槍の勇者様! 私達は騙されていたのです」

 樹だったものから鮮血が吹き出し、燻製は謎の味方面で俺達の方に言い放っていました。
 顔からして、俺達に味方したつもりなのでしょう。
 この燻製、どう落とし前を付けてやりましょうか。

「そんな……やっと戦争を終わらせる目処が立ったのに……」
「貴様等!」

 エクレアが燻製に向かって剣で切りつけようと駆け寄りますぞ。
 ですが――。

「……元康くん。どうやら、巻き戻りの条件が達成されてしまったみたいだ」

 お義父さんは全てを悟った表情で告げました。
 そう、残された時間は樹の命が尽きる極々短い時間。

「すいません。この元康の力が及ばないばかりに……」
「……本当はお礼を沢山言いたいんだけど、時間が無いから言いたい事だけを言うよ」
「わかりました。なんでもおっしゃってください」
「まず、君だけに苦労を掛けてごめん。今の俺はここまでみたいだけど応援してるよ」
「お義父さんにその様な言葉を受ける事、この元康、とても誉れですぞ」
「あはは……なんかいつのまにか、お義父さんって言われるのに慣れちゃったね。元康くんが好きな、そのフィーロって子にも会いたかったな……」
「……そうですな」
「で、真面目な話、元康くんはかなり過激な所があるから自分の行動に注意して。間違っても国や宗教を滅ぼせば争いは無くなるとか、そういう考えはやめた方が良い。絶対に失敗する。どんな組織も頭を潰しただけじゃタクトと同じ様に残党が暴れまわるだけだ。それ所か頭が替わるだけで終わっちゃう」
「わかりましたぞ。心に刻んでおきます」

 やがてお義父さんは苦笑の様な、悟った様な複雑な笑みを浮かべました。

「この世界で元康くんに助けてもらえて、俺は凄く嬉しかった。ありがとう。短い間だったけど、本当に楽しかったよ。もしも巻き戻るのだとしたら、次はこんな失敗をしない様に……お願いす――」

 と、お義父さんの声が途中で途切れました。

 視界に弓のアイコンが点灯しました。
 世界が灰色になり、全てが止まってしまいましたぞ。
 そして……槍が震え……時計が出現して巻き戻り始めましたぞ。

「わかりましたぞ、お義父さん。この元康、次こそはお義父さんの頼み通り……出来る限り戦争が起こらない様、未来の知識が役立つように立ち回りますぞ」

 どうやら、お義父さんを守るためにシルトヴェルトに行くと世界を巻きこんだ戦争になってしまうご様子。
 タクトのいるシルドフリーデンでも同様の結果になるでしょうな。
 こんな風にならない様に、もっと考えなければなりません。
 それがお義父さんの望みです。
 となると……戦争が無い世界にはどうすれば出来ますかな?

 ……そういえば最初の世界では内乱こそあれど、戦争は殆ど起こりませんでした。
 それがどういう事なのかを分析して行動すれば自然とお義父さんの願いを叶える事に繋がるでしょうな。

 暴力が力であると同時に知力もまた力。
 ループによって得た情報を元にお義父さんとの約束を守るのですぞ。

 こうして俺は――過去へと舞い戻るのでした。
シルトヴェルト編終了です。
次回からメルロマルク編に移行します。
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