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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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残り香

「よろしくね」

 お義父さんが国の派遣した兵士に挨拶を行います。
 兵士は敬礼し、あの生き物の手綱を握っております。

「グルル」

 あの生き物が俺の気配やユキちゃん達を見て苛立っておりますぞ。

「ほら、元康くん」
「わかっておりますぞ……」

 寒気がするのを堪え、震える足で一歩踏み出し、あの生き物に乗るお義父さんの手を掴んで乗り込みましたぞ。

「グルア!」
「コラ! 大人しくするんだ!」

 あの生き物……飛竜が不快そうに背中を揺らしますが、兵士が大人しくさせましたぞ。

「サクラちゃん達は相性が悪いらしいから乗れないね」
「えー……サクラ、ナオフミを守りたい」
「大丈夫だから、サクラちゃんは地上でみんなを守ってて」
「わかったー! サクラ、みんなを守る!」

 お義父さんの言葉にサクラちゃんが力強く言いますぞ。

「私達は元康様の援護をする為に儀式魔法に入りますわよ! さあ、みんな準備ですわ」

 ユキちゃんの指示にフィロリアル様達が喉を鳴らしますぞ。
 その様子を見届けながら、飛竜が羽ばたいてふわりと浮かびました。
 ああ、どうして空を飛ぶフィロリアル様はフィーロたんだけなのですか?
 フィーロたんのその素晴らしき天使の羽でこの元康を空へと連れて行って欲しいですぞ。

 この元康、夢見心地で昇天出来るはずなのに、今は内股から少しずつかゆみが出てきてますぞ。
 全身に寒気とジンマシンとかぶれが侵食する前に、飛竜から降りねばなりません。
 と、良く考えてみれば愛すべきフィーロたんのお義父さんが目の前に居るではありませんか。
 お義父さんに抱きつく事で少しは気がまぎれるかもしれませんぞ。

「わ! 元康くん。何処に手をまわしてるの!?」

 お義父さんに後ろから抱きついて、俺は精神を集中しますぞ。

「首筋で匂いをかがないで! 俺はホモじゃないから気持ち悪い!」
「うー……フィーロたーん……」

 あ、お義父さんから微かにフィーロたんの残り香がする気がしますぞ。
 くんかくんか!

「え、あ……ちょっと元康くんやめて匂いを嗅がないで! うわ! 今舐めた? お願いだから正気に戻って!」

 フィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたんフィーロたん!

「うわぁあああああ! 誰か元康くんを正気に戻して!」
「グルァ!」

 飛竜の咆哮で、俺はサッと敵意を感知しましたぞ。

「ハッ!」
「元康くん、正気に戻った?」
「お義父さんからフィーロたんの残り香がするような気がしますぞ」
「元康くん、お願いだからこんな所で錯乱するのはやめて! それに俺に付いてる匂いってサクラちゃんでしょ! さっきまで背中に乗ってたんだから」

 むう……そうでしたな。
 気がつけば大分空高く飛んでいる様ですぞ。
 地面に居るユキちゃん達があんなに小さいですな。

「元康くん!」

 お義父さんに声を掛けられて俺は意識を集中しますぞ。
 前方に飛行機が五機……隊列を組みながら突撃してきますな。
 少しずつ飛竜に乗っている事が気にならなくなってきましたぞ。

 あそこにタクトの残党の豚が乗っている。
 そう思ったらやる気が出てきました。
 バババと音を立てて、飛行機から弾丸が放たれます。

「エアストフェザーシールドⅤ!」

 お義父さんが盾を展開して敵の攻撃からこちらを守りますぞ。
 その間に飛行機はこちらに突撃して、旋回しようとしています。
 相手はタクトの残党……Lvも相当高い者でしょう。
 エイミングランサーでは殺しきれるか分かりませんし、グングニルでは一機しか落とせませんな……。
 難しい塩梅です。

 ですが、この元康、やりますぞ。
 ヒューッとタイミングよくこちらに突撃してくる奴がいますな。
 俺は槍を構えて狙いますぞ。
 良く考えてみれば、こういう時に役に立つ攻撃がありましたな。
 ブリューナクを習得してから使用頻度が下がったあのスキルが火を噴きますぞ。

「流星槍Ⅹ!」

 流星槍……それは放つと流れ星の様に煌めく星を散りばめながら飛んで行くスキルですぞ。
 錬の流星剣に始まり、流星槍もその系譜と同じく星が散りばめられます。
 過去にお義父さんに放った事があるスキルですな。
 お義父さんには受け止められてしまいましたが、直接攻撃の後に、星が追加で当たるスキルなのですぞ。

 今回、俺は流星槍で飛行機を一機、すれ違い様に命中させ、その射程範囲内に居た他の二機に星を当てましたぞ。
 エイミングランサーよりも火力の高い範囲攻撃、どうですかな?
 槍が命中した飛行機は赤い閃光を放ちながら爆散しましたぞ。

 確かな手ごたえ、そして流星槍の星が他の二機に高速で命中して行きます。
 煙を放ちながら、二機も徐々に高度を落として爆発しましたぞ。
 燃料に火が付いたのですかな?

「後二機だよ元康くん! がんばって!」
「はいですぞ!」

 残り二機、ならばやる事は一つですな。
 槍を構えてターゲットをロックしますぞ。
 命中特化の高威力スキル!

「グングニルⅩ!」

 槍が勢いよく飛んでいき、飛行機を一機、貫きましたぞ。

「よし!」

 お義父さんが手でガッツポーズをしてくださいました。
 最後の一機がこちらに向かって突撃してきますぞ。
 これは死ぬ気の特攻ですな。
 お義父さんは盾を前に向けて、スキルを唱えました。

「エアワンウェイシールド!」

 俺達の前に風の塊の様な何かが生成され、飛竜が体勢を変えて滞空しましたぞ。
 その先に、特攻してきた飛行機が突撃し……竜巻の様に横に回転しながら上へと巻きあげられました。

「方向転換させる風の盾を作り出すスキルだよ。元康くん! トドメを!」
「わかりましたぞ」

 ブリューナクを放つには命中の点で不安がありますな。
 ここは魔法で行きますぞ。
 意識を集中し、槍を天に掲げながら魔法を唱えましたぞ。

「リベレイション・ファイアストームⅩ!」

 槍の先から炎の竜巻が生成されて飛んでいきますぞ。
 お義父さんの空気の盾が炎を吸いこみ、俺の唱えた炎の竜巻は巨大化して最後の一機を焼き尽くしますぞ。
 上空の雲があっという間に消え去って辺りはカラッカラの日差しが強すぎる天候になりましたな。

「うわぁ……元康くん。スキルで狙い撃つよりもその魔法を放った方が早かったんじゃない?」
「一網打尽には出来ないと思いますぞ」

 旋回されたら狙うのが大変でしたな。

「よし、これで爆撃は止んだはず。元康くんの精神が保てている間に……急いで降下するよ!」
「は!」

 お義父さんの指示で竜騎兵は急いで地上に向かって下降を始めましたぞ。


「あー……全身が痒いですぞ!」

 俺は飛竜から降りて、ジンマシンが出ている所を掻きむしりますぞ。
 地上に降りたお陰で少しはかゆみが発散された様な気がしますな。

「後は……戦場の方にタクトの残党はいる?」
「現在、シルドフリーデン軍の先頭集団にそのような者はいないとの報告が来ています」

 作戦司令部でお義父さんが急いで尋ねます。

「わかったよ。どうにか撤退してもらえそう?」
「厳しい所です」

 シュサク種の代表が言い辛そうに答えますぞ。
 上空の対処は俺とお義父さんでしましたが、こちらは難しい状況な様です。

「下賎な奴等は自身の信仰対象を殺されたと躍起になっているのもありますが、シルドフリーデンのアオタツ種の長が指示を出している手前、撤退を辞さないよう動いています故……」
「そう……」
「ですが、白兵戦では我が国の方が一歩先を行くので、勝てない戦にはさせません」
「わかったよ。何かあったら教えてほしい。タクトの関係者が攻めてきたらこっちも出る!」
「ハ!」

 そこに兵士が駆けつけてきましたぞ。

「緊急事態発生!」
「なんだ!」
「姿を暗ましていたメルロマルク軍が参戦致しました!」
「く……こんな時に……いや、こんな時だからこそ攻めてきたのだな!」
「メルロマルク軍の陣形を確認! 後方に英知の賢王を携え、先方には三勇教の教皇が謎の武器を振りかざして進軍中!」
「謎の武器!? それは一体何だ?」
「それが……過去に使われたと言われる四聖の複製品かと思われます!」

 そういえば教皇がそのような武器を持っていましたな。
 確かに強力な武器に該当するでしょうな。あの武器は。
 お義父さんが呪われた盾のスキルで仕留めなければ、過去の俺達は敗北していたと思われるほど、強力な武器でしたぞ。
 あの時点では。

「元康くん……これはどうしたら良い? 俺の読みではシルドフリーデン軍の方はシルトヴェルトに任せて、俺達はメルロマルク軍の方に行った方が良い気がするんだけど」

 ふむ……どうしたらよいですかな?
 お義父さんの言う通り、あのクズと教皇は無視できないですぞ。
 おそらく、シルドフリーデンと協力して攻め込む算段だったのでしょうな。
 ですが、シルドフリーデンの切り札である飛行機はおそらく全て撃墜しましたぞ。
 通達が来た時には既に攻め込んでいたと見て良いですな。

「そうですな。ではお義父さん、俺達はメルロマルク軍の方へ行きましょう」
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