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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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鞭の勇者一行

 会議室から出てお義父さんは肩を落としました。

「波と、七星勇者かー……頑張らないとね」
「そうですぞ」
「元康くんのお陰で、戦力は事足りるけど……」

 お義父さんが困ったようにシルトヴェルトの方々に視線を移しますぞ。
 そうですな。勇者の仲間をするだけで相当の権力が得られるような状況、仲間にする者を考えないといけませんからな。
 だからお義父さんは、この元康からフィロリアル様を仲間にしておられますぞ。
 フィロリアル様は俺と共にいる安全な勢力ですからな。
 サクラちゃんはお義父さんにとても懐いている様ですし、他のフィロリアル様達もお義父さんとの関係は良好です。

「男の人を頼んだらホモと疑われかねないし、女の人を頼めば襲われる危険性があるし……」

 お義父さんがポツリと呟きましたぞ。
 そういえばシュサク種の代表の血縁者とゲンム種の老人の血縁者が候補に居るのでしたな。

「とりあえず仲間の育成は波が終わってからにしようか」
「わかりましたぞ」
「エクレールさんもメルロマルクの女王様に話をしに行くって出かけちゃったからねー……当面は、毎度おなじみ波に備えるのと行方不明のツメの勇者を捜索しなきゃね」
「ユキちゃん達の報告では依然消息は掴めておりませんぞ」
「うん。シルトヴェルトの人達も、ツメの勇者に化けてた魔物が何なのかを調査してるけど……何処かの国で封じられていた化け物じゃないかって話が上がってるけど、他国だから調べきれないらしいよ」
「この元康が調査に行くのはどうですかな?」
「そうだね。波が一区切り付いたらお願いするかもしれない。何せあの魔物を仕留めたのは元康くんだし」

 ビーストスピアが勝手に倒したのでしたな。
 フィロリアル様の聖域で手に入れた槍ですぞ。
 この槍を握りしめるとぼんやりとあの狐の化け物に対する感情が伝わってきますぞ。
 おそらくは、このビーストスピアは奴を仕留めるために作られた槍だったのでしょう。

「隊列の練習をしますわよ。みんな!」
「「「はーい!」」」

 シルトヴェルトの訓練場ではユキちゃんが先頭に立って、波に備えて準備をしておられです。

「うわー……沢山フィロリアルがいるねー……」

 お義父さんがユキちゃんを先頭にして行われるフィロリアル様の訓練を見て声を漏らしております。
 この元康が買い占めたフィロリアル様達が順調に育っておりますぞ。
 もう城の庭ではせまくなって来ましたな。

「城の人達の訓練の邪魔になってるんじゃ……」
「何を言うのですかな? ユキちゃん達は優秀なフィロリアル様ですぞ」

 ユキちゃん達の訓練相手にシルトヴェルトの兵が混じっておられますぞ。
 人間とは異なるので、獣化とかしてトリッキーな動きをしますな。
 そう言えば……お義父さんの村にも変身する亜人がいましたな。
 豚に変身する犬とか記憶しております。
 お義父さんの作る料理にご執心でした。

「隊列も順調に出来ているみたいなら、次の波は問題は無さそうだね」
「そうですな!」

 こうして波の準備は着実に進んで行ったのですぞ。
 その日の夜、お義父さんは波に挑む人員の整理とかをしていたと聞いております。


 翌日……。
 空に飛行船がこちらに向かって飛んでくるのが確認できましたぞ。
 他に飛行機らしきものが飛んでますな。

「へー、この世界には飛行機があるんだ? もしかしてアレにシルドフリーデンとフォーブレイの管轄をしている七星勇者が乗ってるのかな?」
「その様に報告を受けております」

 空には飛竜に乗った兵士が警戒をしながら、飛行船は城の近くの広場に停泊しましたぞ。
 飛行船からぞろぞろと人が降りて来て、徐々に騒がしくなってきましたな。
 その後、お義父さんと俺は城の玉座の間で謁見を待つ事になったのですぞ。

「七星勇者ってどんな人なの?」
「天才と言われております。幼少のときから魔法を習得し、製紙技術の改革を行ったとの話です」

 シュサク種の長がお義父さんに説明なさっています。
 俺もポツリポツリと思い出してきましたぞ。
 ですが経歴しか思い出せませんな。

「他、あの……過去の時代に存在したと言われる乗り物を復刻させるのに尽力を注いだとの話です」
「へー……凄い人もいるもんだね。まあ、定期的に勇者が召喚されるなら飛行船や飛行機くらい作られても不思議じゃないよね」
「飛竜がいれば難しくは無い交通手段ではありますが」

 シュサク種の長がポツリと呟きますな。

「まあ、そうかもね。コスト面で考えても、ドラゴンとかに任せた方がこの世界じゃ安上がりなのかもしれないね」

 相手を察したのか、お義父さんはそう続けました。

「沢山の人を運べて夢があるんじゃない? 異世界で飛行船を飛ばすってさ」
「盾の勇者様の命ずるままに」

 シュサク種の長が敬礼しましたぞ。

「ではこれから我が国は飛行技術の研究を促進させましょう」
「そういう意味じゃ無くて……あー……やっちゃったよ」

 お義父さんが失言したと呟いていますな。

「鞭の勇者様のおなーりー」

 と、兵士が声を上げ、玉座の間の扉が開いて七星勇者がやってきましたぞ。
 ……今度はビーストスピアは反応しておりませんな。
 ツカツカと軽い歩調で、一人の男がやってきましたぞ。

 中々顔は良い方では無いですかな?
 金髪碧眼というフィーロたんに通じる物を持った男ですな。
 ジャケットにデニムのズボンを着用していて、センスは悪くは無いですな。
 ただ、少々浮いた感じですが、フォーブレイでは確かこんな感じのファッションが流行っているのでしたな。

「鞭の勇者をしているタクト=アルサホルン=フォブレイと申します。以後お見知りおきを」

 片膝を付き、敬礼するようにして頭を下げた鞭の勇者が、従者らしき豚を数名連れて挨拶をしましたぞ。

「ブー!」

 その後ろで、龍のような角を生やした豚が何やら喋っております。

「シルドフリーデンの代表まで我等が国に来るとは……勇者様一行を、我がシルトヴェルトは出来る限りに歓迎を致しましょう」

 と、表面上は歓迎するようにシュサク種の長は言いましたぞ。

「ありがたき幸せ、で……さっそくですが、貴公達の国の勇者様と謁見がしたいのですが……」

 鞭の勇者はそう言うと俺とお義父さんに目を向けましたぞ。
 場の空気を読んでお義父さんが一歩前に出ました。

「盾の勇者の岩谷尚文です。これからよろしくお願いします」

 これは俺も続くべきですな。
 同様に一歩前に出て敬礼気味に言い切りますぞ。

「愛の狩人の北村元康ですぞ!」
「元康くん、外さないね。えっと、彼は槍の勇者なんだ。少し変わってるけどとても強いから頼りにすると良いよ」
「……わかりました。よろしくお願いします」

 鞭の勇者は一呼吸置いてから頷きましたぞ。
 何やら視線が怪しいですな。

「あの飛行船は貴方が復刻させたんだっけ? 凄いね、異世界に飛行船があるなんて」
「ああ……そんな難しいものじゃない。燃料の生成が面倒だけど」

 挨拶を終えると、若干乱暴な態度で鞭の勇者は告げますぞ。
 お義父さんはその返答に、若干残念そうにしていますな。
 期待していた返答とは少し異なるご様子。

「で? 波が来るまでにツメの勇者に化けていたって化け物……魔物を調査したいんだけど良いか?」

 横柄な言い方に若干不満そうな顔を浮かべるシュサク種の長ですが、相手は他国の勇者で血筋も良いらしく、雑には扱えないとの話。
 渋々と言った様子で部下に命じますぞ。

「ではこちらに」
「俺達も同行しようか?」

 お義父さんが尋ねると、鞭の勇者は流し眼でこちらを睨みますぞ。

「気にする必要はない。四聖の勇者様方の手を煩わせる程でも無い」
「そ、そう……?」

 豚共が銃器を持っていて、なんとも不快な感じがしますな。
 何でしょう。思い出せそうで思い出せないイヤな感じが付きまといますな。
 先制攻撃で処分したらどうなるでしょう?
 お義父さんに叱られそうだから、特に理由も無く攻撃するのは我慢しましょう。

「ところでその勇者のフリをした者を倒したのは……」
「私ですぞ」
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