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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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ビーストスピア

「どうかお怒りを鎮めください! 盾の勇者様!」

 重鎮共が全て頭を下げておりますな。
 なんとも素晴らしい光景、お義父さんに皆が頭を垂れる光景ですぞ。

「ああ、安易な暗殺を企てようものなら元康くんに消してもらうのもいいね?」
「お任せされましたぞ!」

 俺は一歩前に出ますぞ。

「この元康、お義父さんの言葉なら何でも実行致しましょう」
「じゃあ、城の外……そうだね。あの山に向かってメルロマルクの国境でやったように魔法をぶつけて、ああ、もちろん死人は出さない様にね?」
「わかりましたぞ」

 俺は玉座の間の窓から遠くの山を確認しますぞ。
 人がいるかどうかはわかりかねますな。
 ですが、警告には良いでしょう。

「リベレイション・ファイアストームⅩ!」

 意識を集中して、作り出した魔法を圧縮して思い切り投げつけましたぞ。
 魔法の玉は流線型を描いて、城の先……塀を飛び越えてから形となり、巨大な炎の竜巻となって移動を開始して行きます。
 侵攻速度をある程度調整して、逃げられるだけの速度で……ゆっくりと炎の大きな竜巻は山の中腹にまでのぼり、弾けさせます。
 その進路上にはマグマの様になった地面が姿を露わしておりますな。

「その気になればあの山を破壊して見せましょうぞ」
「いいよ。それは……次の手段だから」
「ヒィ!」

 お義父さんの鋭い眼光が、シルトヴェルトの重鎮に向けられ、仰け反ります。
 同時に、お義父さんの権威を崇拝しているかのように深々と頭を下げる者もいるようですぞ。

「確かに、力を持つ者が自分達に取って困った事をしたら困るのはわかるよ? だけどこっちだって殴られっぱなしでいるつもりはないし、やすやすと殺されるつもりもない。それにね、元康くんはこうして強いけど、逆に考えて欲しいんだ」
「と、言いますと?」
「ここまで強いのに……元康くんは負けたらしいんだ。この世界の未来で起こった波で」
「な、なんですと……!?」

 お義父さんの目的がわかりましたぞ。
 力を見せつけ、恐怖で支配するのではなく、この力でも通じない程の強敵が控えているという恐怖を植え付けたのですぞ。
 お義父さんは溜息混じりに答えますぞ。

「盾の勇者ってだけで命を狙われるみたいだし、自分達の身くらいは守るよ。だけど、波以外での戦いで俺達をやり玉に挙げるようなら……全力で潰しに行く事を覚悟していてくれればいいよ。ね? 元康くん」
「わかりましたぞ。この元康、お義父さんの命あらばどのような国であろうとも跡形も残しませんぞ」

 普段はここでお義父さんが何かを言ってやめさせますが、今回は笑顔で続けます。

「ほら、盾の勇者って相手を自分の力で殆ど倒せないんだ。だから、俺の方針としては戦争なんてしない。不満なら出て行ってもらうし、みんなが戦う気なら俺が出ていく……だって盾の勇者の必要性ないでしょ? 人を名目に戦いたいなら……勝手にやってて」

 一呼吸置きますぞ。
 お義父さんの発言の強さは、この場に居る者達はみんな理解したようですな。

「だから……俺への縁談とか、自分達の国の生活とか、そういう事は……波を終わらせてからすべきなんじゃないの?」
「は、ハハー!」

 こうしてシルトヴェルトでお義父さんに歯向かおうとする暗殺者は、表面上退治されたのですぞ。

「まあ、堅苦しい、俺達への暗殺とかは出来ない事を理解したと思うから話をしようか」
「は、はい!」
「次はこの国の七星勇者が会談に来るんだっけ?」
「そう承っております。あと、七星勇者様側の勢力が盾の勇者様の命を狙っている可能性が、幾ばくか存在します」
「別にその程度なら……まずはその七星勇者と話をする必要があるしね。どんな人なの?」
「自身を磨く事に意識を割かれておられる方で、最近も山籠りをなさって公務には余り出てきません」
「武人みたいな人だね。それは俺達も変わらないと思うから、安心して」
「盾の勇者様の慈悲に感謝いたします」

 お義父さんが言いつけたお陰で国の重鎮達は下がって行きましたぞ。
 まあ、腹の中では何を考えているかわかりませぬが、お義父さんの前では無謀な事はきっとしないでしょうな。
 毒殺とかも、勇者相手に簡単に出来ないと悟ったでしょうし、お義父さん相手に不意打ちも効果が無い事くらい承知したでしょう。
 神を僭称する偽者とかいう可能性は……先程のプレゼンで理解したでしょうから、文句は言えますまいですな。

「ふう……」

 脱力した様にお義父さんは玉座にもたれ掛かりましたぞ。

「あー……やっちゃったー……」

 そこに扉を開けてエクレアとゲンム種の老人がやって来ましたぞ。

「聞いたぞイワタニ殿、色々とやらかしたようだな」
「あ、エクレールさん、ゴメンね。サクラちゃん達に毒を盛られそうになったからカッとなっちゃって」
「私もその場に居たら同じように怒ったであろう。その怒りは当然の権利だ。気にしなくても良い。むしろ私としてはイワタニ殿の様な者を怒らせる方が相当だと思う」
「盾の勇者様、我が国で戦争をやりたい訳ではないと宣言したその口振り……それだけで十分に効果はありますな。過激派もこれで少しは静かになるでしょう。その間に、各国と調整をすれば良いのです」
「うん。別に俺は世界統一とかしたい訳じゃないんだ。こう……ね。言い方は悪いけど、この世界を見て回りたい……世界を知りたい。この世界に召喚されてから、元康くんやエクレールさん、サクラちゃん達と旅をしていて見つけた夢なんだ」

 と、お義父さんは俺とエクレアを見た後、サクラちゃんを撫でました。
 なんとその様な夢を!
 この元康、最大限協力しますぞ。

「まあ、少々急ではありますが、こちらでどうにか調整を致しましょう」
「すいません」
「なーに……我が国の者達が犯した事ゆえ、盾の勇者様は波への準備を整えてくだされば良いのです」
「ありがとうございます……こう、やりすぎてしまったとは反省しているんです。すいません」

 ゲンム種の老人は気にするなと手を振ってお義父さんと話を続けたのでしたぞ。
 途中眠くなったこの元康は立ったまま仮眠をしたのでした。



「で……七星勇者がそろそろ来るって話だったっけ?」

 玉座の間に重鎮が戻ってきて、今日の日程を説明しましたぞ。
 丁度七星勇者が到着し、盾の勇者と謁見するとの話です。

「シルトヴェルトの七星勇者ってどんな人なの?」
「我が国でも有能な方です」

 そういえば七星勇者とは……あった事があったのでしたっけ?
 余り良く思い出せませんぞ。
 ただ、イヤな事があった様な覚えがありますな。

「さっきも聞いたけど武人みたいな人なんだよね?」
「はい」
「種族とかは? 俺達と同じ異世界人? 確か七星勇者は異世界人である事もあるんだよね?」
「いえ、我がシルトヴェルトの七星勇者はこの世界の者が武器に選定されて任命されておられます」
「そうなんだ。同じ日本から来たならいろんな話が出来ると思ったんだけどな」

 お義父さんが俺の方を見ておられますな。
 そうでしょうとも、俺と同じくお義父さんと絆を築くことが出来るかもしれませんな。

「種族は狼人……ワーフル種です。我が国を担う四種族ではございませんが、歴戦の猛者。盾の勇者様と共に戦果を期待できましょう」
「武人かー……ちょっと会うのが楽しみだね」

 などとおっしゃっている最中に、兵士が玉座の間にやって来ましたぞ。

「ツメの勇者様のおなーりー」

 ガチャンと音を立てて、玉座の間が開いて、ツメの勇者である男が入って来ましたぞ。
 その姿は青い毛並みの……筋肉が盛り上がった狼男のような人物でしたな。
 歩調は軽く、それでありながらも筋骨隆々。
 所々に傷跡があり、その傷跡が男らしさを引きあげるかのよう……。
 まるで傷が勲章のような感じでありましたぞ。
 上半身は半裸で、下はズボンですな。
 動きがとても良さそうですぞ。

「ツメの勇者様よ……盾の勇者様の御前である。変化を解くのだ」

 シュサク種の代表が注意すると、ツメの勇者は深々と頭を下げてから亜人の姿になりましたぞ。
 年齢は……幾らくらいですかな?
 戦いに慣れた鋭い眼光が第一に入る……オールバックの髪型をした男でしたぞ。

 顔の作りは悪くありませんな。
 二十代後半から三十代前半くらいでしょうか?
 若さよりも渋み……が出て来て、このくらいの年齢を好む豚も居るのを俺は知っておりますぞ。

 ツカツカと軽い歩調で玉座の間に入って来ましたぞ。
 俺はジッとツメの勇者を凝視しております。
 七星勇者……記憶に靄が掛っていて、上手く思い出せないのですが、警戒すべきだったのではないかと本能が囁いています。

 が、それよりも、俺は槍がカタカタと震えているのに気づきました。
 そしてリーンと甲高い音を立てましたぞ。
 何でしょう?

 そう思ってステータスを確認するとウェポンブックが反応していますぞ。
 開いて見ると、反応している武器が表示されました。

 武器名はビーストスピア。

 確か……おお、フィロリアル様達の聖域で見つけた槍だったかと思いますぞ。
 このビーストスピアにはオートで敵を見つけて攻撃するという技能がありますぞ。
 他に特定の魔物に対して特攻……妖魔滅殺等色々な専用効果があるのです。

 しかし、何故この場で作動するのですかな?
 ですが……これも何かの縁、ビーストスピアにしてみますぞ。

「お?」

 槍をビーストスピアに変えた瞬間、槍が勝手にツメの勇者に狙いを定めて飛んで行きましたぞ。

「槍の勇者様! 何を!?」
「元康くん!?」

 急いで踏み留まりますが、槍が勝手にエアストジャベリンを放ちました。
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